降りしきる雨、5つのヒルクライムによって総合争いの激しさが増したパリ~ニース第6ステージ。ヒルクライムでアタックを決め後続を30秒離したトニー・ギャロパンが独走勝利しマイヨジョーヌを獲得した。総合優勝の行方は最終ステージまで持ち越された。



終始雨が降るなか走行することとなったパリ~ニース2015第6ステージ終始雨が降るなか走行することとなったパリ~ニース2015第6ステージ (c)A.S.O


レース前握手をする、マイヨジョーヌのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)レース前握手をする、マイヨジョーヌのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) (c)A.S.O大観衆の中ヴァンスの街中を進むプロトン大観衆の中ヴァンスの街中を進むプロトン (c)CorVos30名ほどとなった巨大逃げグループをけん引するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)30名ほどとなった巨大逃げグループをけん引するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) (c)A.S.Oヒルクライムで自ら集団をけん引するミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ヒルクライムで自ら集団をけん引するミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) (c)CorVos最終日前日の第6ステージはニースにフィニッシュする山岳コース。3つの2級山岳と2つの1級山岳、そしてテクニカルかるハイスピードなダウンヒルを経てニースの海岸通へ。登りだけではなく、最後の下りに全神経を集中しなければパリ~ニース制覇は見えてこない。この日はもはや「メイン集団」という概念が存在しないほどにめまぐるしく、そして混沌とした一日となった。

148名の選手たちがスタートラインを切ると早くも4km地点で14名が先行。更に15名の追走グループが追いついたことで巨大な逃げグループが形成され、アップダウンの中で人数のシャッフルが掛かっていく。この中には総合山岳賞に意欲を燃やすトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)も入り、序盤の1級山岳と続く2級山岳を共に先頭通過してみせる。これによって一挙得点を稼いだデヘントは以降のKOMを待つこと無く山岳賞を確定させ、集団に戻っていく。

116地点の山岳をクリアした時点で、マイヨジョーヌのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)擁するエティックス・クイックステップが牽引する集団に残っていたのは僅か20名ほど。ここにはリッチー・ポート(オーストラリア)などスカイ勢やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)、トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)ら有力勢が入る。山岳では冷たい雨が降り続け、「太陽へのレース」のイメージは一転、厳しいサバイバルレースの様相を呈していくこととなる。

先頭グループが10名、1分半差で20名のマイヨジョーヌグループが追いかける展開の中、127km地点の1級山岳サンロッシュを通過すると、濡れて危険な20kmのロングダウンヒルでマイヨジョーヌが動く。チームメイトのトニ・マルティン(ドイツ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)と共に抜け出すと、反応したギャロパンを引き連れて人数を減らしていた先頭グループに追いついてみせる。

この攻撃を食らったチームスカイはゲラント・トーマス(イギリス)が追走役を買って出たものの、すぐさまタイムギャップを詰めることができない。しかし攻撃に出たクヴィアトコウスキーもアシストを使い果たしてしまい、両者ともに圧倒的有利な状況には持ち込めない。そんな中、クヴィアトコウスキーの動きに合わせたギャロパンが登りでアタック。動けないライバル勢を尻目に、着実にリードを奪っていった。

すると後方からポートらがマイヨジョーヌグループに遂に合流し、追いつきざまにアタックを仕掛けると、消耗していたクヴィアトコウスキーはドロップ。先頭ギャロパン、追走(ポート、トーマス、フグルサングら)、クヴィアトコウスキーという順で1級山岳コート・ド・ペイルを通過し、ニースへと続くダウンヒルへと歩みを進めた。

しかしスリッピーなダウンヒルでポートがスリップダウン。次いでトーマスも落車を食ってしまい、有利に事を進めていたはずのチームスカイの作戦は暗転。二人共に大きなダメージは無かったものの、復帰以降もペースが上がらず、結局後方のクヴィアトコウスキーグループに吸収されてしまった。

これまでの混沌を極める展開によって、勝負は先頭ギャロパンと、追走するルイ・コスタ(ポルトガル)&ラファル・バルス(スペイン)のランプレ・メリダ2名とヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)、サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)に絞り込まれたが、2位グループも消耗したことでペースが上がらない。平坦に入ってからも30秒差を守り切ったギャロパンが単独ニースに到達し、両手を勢い良く振り上げた。



後続に36秒差をつけて勝利したトニー・ギャロパン(ロット・ソウダル)後続に36秒差をつけて勝利したトニー・ギャロパン(ロット・ソウダル) (c)CorVos


マイヨジョーヌを獲得したトニー・ギャロパン(ロット・ソウダル)マイヨジョーヌを獲得したトニー・ギャロパン(ロット・ソウダル) (c)CorVosトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)の山岳賞も確定したトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)の山岳賞も確定した (c)A.S.Oそしてポートやクヴィアトコウスキーが入った第3グループはギャロパンから1分遅れたため、ギャロパンはポートを37秒、クヴィアトコウスキーを38秒上回って総合リーダーに急浮上。見事な走りでステージ優勝を挙げると共に、マイヨジョーヌも獲得。ロット・ソウダルはデヘントの山岳賞確定と共に最良の一日となった。

「少人数でのスプリントゴールを予想していただけに、今日の勝利は信じられないくらいうれしいよ。雨が降っていてプロトンはナーバスになっていたけど、僕は落ち着いてレースを進められたんだ」とはギャロパン。「明日の結果は全く予想できないけど、僕は全力をつくしてスペシャリストたちに対抗するつもりだ」と加える。

落車を喫しギャロパンに総合成績で36秒差つけられたポート。「雨で路面は滑りやすくコントロールが難しかった。トーマスと僕にとってはとても残念な1日だよ」と振り返る。

マイヨジョーヌを失ったクヴィアトコウスキーは「今日は明日の個人TTに備えてチームスカイのポートやトーマスとタイム差をつけるために厳しいレース展開にするつもりだった。レースは最も強かったギャロパンが勝利したけど、僕はポートたちと同時にフィニッシュしたから問題ないレースとなった。まだ総合優勝の望みは消えていないから、明日はハードに攻めるよ」とレース後に語った。

翌日最終ステージは、コル・ド・エズ山頂へと至る山岳個人タイムトライアル。出場選手の中で頭抜けた登坂力を持つポートが逆転総合優勝を奪うのか、それともギャロパンがマイヨジョーヌマジックで首位を守り抜くか。その展開から目が離せない。



パリ~ニース2015第6ステージ結果
1位 トニー・ギャロパン(ロット・ソウダル)
2位 サイモン・スピラック(カチューシャ)
3位 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)
4位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ)
5位 ラファエル・バルス(ランプレ・メリダ)
6位 ミカエル・アンデルセン(ティンコフ・サクソ)
7位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
8位 シルヴァン・シャヴァネル(IAMサイクリング)
9位 アルテュール・ヴィショ(FDJ)
10位 ニコラス・エデ(コフィディス)
4h52'57"
+ 00'32''


+ 00'35''
+ 01'00''






個人総合成績
1位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
7位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
8位 ラファル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
10位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)
28h49'42"
+36"
+37"
+38"
+38"
+42"
+53"
+1'01''
+1'19''
+2'00''


ポイント賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:So.Isobe
photo:CorVos

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