2015/03/11(水) - 21:37
フィニッシュラインまで10mほどを残して、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が笑顔で両手を挙げる。前日に失ったリーダージャージはもう戻ってこないが、最速スプリンターの座はやはりグアルディーニのものだった。
2015年大会の正式名称は「プロトン・ル・ツール・ド・ランカウイ」。マレーシア航空に代わってマレーシアの自動車メーカー「プロトン」がタイトルスポンサー(メインスポンサーの格上)についたためだ。
販売台数ではダイハツ工業との合弁会社である小型車専門の「プロドゥア」に次ぐマレーシア第二の自動車メーカーで、純マレーシアメーカーとしては国内トップ。イギリスのロータス社はプロトン社の子会社。ツール・ド・ランカウイの大会関係車両はチーム用のバン(ハイエース)を除いてプロトン車で統一されている。
なお、綴りはPROTONであり、メイン集団を意味する「プロトン(PELOTON)」とは発音も違う。
ツール・ド・ランカウイ第4ステージはタイとの国境に面したクランタン州の州都コタバルをスタートする。マレーシアの中で最もイスラム色の強い地域であり、街中にはアラビア文字も目立つ。
最高気温は33度ほどまで上がったが、前日までよりも湿度が低いため比較的過ごしやすい。とは言っても太陽の光は強烈で、スタート寸前まで選手たちはテントの陰に隠れていた。
街と街を繋ぐ平坦な幹線道路でアタック合戦が繰り広げられた結果、30km経過してようやく逃げが決まる。7名の逃げグループの中には、昨年までカチューシャに所属していた3度のロシアTTチャンピオンであるウラディミール・グセフ(ロシア、スカイダイブドバイ)の姿もあった。
スプリントポイントでボーナスタイムを獲得し、総合4位まで順位を上げたピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)が集団に戻る中、グセフら6名は最大5分のリードを築く。レースはクランタン州からトレンガヌ州に入った。
リーダーチームとして集団牽引に力を尽くしたオリカ・グリーンエッジを援護したのは、フィニッシュ地点クアラベランで2013年にステージ2位に入っているフランチェスコ・キッキ(イタリア)擁するアンドローニ・ベネズエラ。逃げグループとのタイム差はフィニッシュまで50kmを残して3分半に。
ここから逃げグループは粘りを見せた。グセフが中心となってペースアップを図るとタイム差の縮小は停滞する。残り20kmでタイム差2分をキープ。しかし、残り15kmでグセフが右足の痙攣によって脱落したことで逃げグループの馬力が落ちてしまう。
残り10kmで1分10秒のリードを保ったものの、MTNキュベカやアスタナの牽引によってキンキンに伸びた集団が後方に迫る。コントロールを失った逃げグループはフィニッシュまで2kmを残して吸収された。
ティンコフ・サクソやオリカ・グリーンエッジが競り合う中、主導権を握ったのはサウスイースト。発射台アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)が最終ストレートでヤクブ・マレツコ(イタリア)を解き放つ。しかし時を同じくして飛び立ったグアルディーニのスプリントが伸びた。
第1ステージと第2ステージで連勝しながら第3ステージの1級山岳で脱落し、リーダージャージを失ったグアルディーニが勝利。しかもフィニッシュラインの10m手前で勝利を確信して両手を上げるほど、そのスプリント力は頭一つ抜けていた。
「スプリントで勝てたことも嬉しいけど、SRMで記録した最大ワット数にも満足している」とグアルディーニは語る。もちろんワット数は明らかにしなかったが、その笑顔を見る限り大きな自信を得ている様子。「とても良い状態なので勝利数を伸ばせると思う」とも。
ステージ3位に入ったリーダージャージのイワンについてグアルディーニは「成績だけを見ると僕の方が速いかもしれないが、ロードレースには色んな要素が絡む。彼は平坦コースだけではなく様々なコースに対応する」と評する。この先のステージでも両者は火花を散らすことになるだろう。
グアルディーニの後方で愛三工業レーシングのブルージャージが並んでフィニッシュラインを切る。牽引役の小森亮平がトップ10フィニッシュした。
ステージ12位に入ったエーススプリンターの福田真平は「残り500mから小森(亮平)に連れられて前に上がったんですが、仕事を終えて下がってくる牽引役の選手に塞がれて失速してしまい、そのまま並んでフィニッシュする形になりました。今日は集団のスピードが速く、混戦状態の中からのスプリントだったので位置どりが難しかった。もがけなかったけど(スプリントまでの)形はできていたし、誰も転ばなかったので良かったです」とコメントしている。
ツール・ド・ランカウイ2015第3ステージ
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 3h43’14”
2位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
3位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
5位 ケン・ハンソン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
7位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
8位 ラファ・シティウイ(チュニジア、スカイダイブドバイ)
9位 オレクサンドル・スルトコヴィチ(ウクライナ、シナジーバクサイクリング)
10位 小森亮平(日本、愛三工業レーシング)
12位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 14h46’02”
2位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) +17”
3位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) +20”
4位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア) +22”
7位 フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ) +23”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +24”
9位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
10位 ロビン・マヌリアン(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +25”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)
チーム総合成績
MTNキュベカ
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
2015年大会の正式名称は「プロトン・ル・ツール・ド・ランカウイ」。マレーシア航空に代わってマレーシアの自動車メーカー「プロトン」がタイトルスポンサー(メインスポンサーの格上)についたためだ。
販売台数ではダイハツ工業との合弁会社である小型車専門の「プロドゥア」に次ぐマレーシア第二の自動車メーカーで、純マレーシアメーカーとしては国内トップ。イギリスのロータス社はプロトン社の子会社。ツール・ド・ランカウイの大会関係車両はチーム用のバン(ハイエース)を除いてプロトン車で統一されている。
なお、綴りはPROTONであり、メイン集団を意味する「プロトン(PELOTON)」とは発音も違う。
ツール・ド・ランカウイ第4ステージはタイとの国境に面したクランタン州の州都コタバルをスタートする。マレーシアの中で最もイスラム色の強い地域であり、街中にはアラビア文字も目立つ。
最高気温は33度ほどまで上がったが、前日までよりも湿度が低いため比較的過ごしやすい。とは言っても太陽の光は強烈で、スタート寸前まで選手たちはテントの陰に隠れていた。
街と街を繋ぐ平坦な幹線道路でアタック合戦が繰り広げられた結果、30km経過してようやく逃げが決まる。7名の逃げグループの中には、昨年までカチューシャに所属していた3度のロシアTTチャンピオンであるウラディミール・グセフ(ロシア、スカイダイブドバイ)の姿もあった。
スプリントポイントでボーナスタイムを獲得し、総合4位まで順位を上げたピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)が集団に戻る中、グセフら6名は最大5分のリードを築く。レースはクランタン州からトレンガヌ州に入った。
リーダーチームとして集団牽引に力を尽くしたオリカ・グリーンエッジを援護したのは、フィニッシュ地点クアラベランで2013年にステージ2位に入っているフランチェスコ・キッキ(イタリア)擁するアンドローニ・ベネズエラ。逃げグループとのタイム差はフィニッシュまで50kmを残して3分半に。
ここから逃げグループは粘りを見せた。グセフが中心となってペースアップを図るとタイム差の縮小は停滞する。残り20kmでタイム差2分をキープ。しかし、残り15kmでグセフが右足の痙攣によって脱落したことで逃げグループの馬力が落ちてしまう。
残り10kmで1分10秒のリードを保ったものの、MTNキュベカやアスタナの牽引によってキンキンに伸びた集団が後方に迫る。コントロールを失った逃げグループはフィニッシュまで2kmを残して吸収された。
ティンコフ・サクソやオリカ・グリーンエッジが競り合う中、主導権を握ったのはサウスイースト。発射台アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)が最終ストレートでヤクブ・マレツコ(イタリア)を解き放つ。しかし時を同じくして飛び立ったグアルディーニのスプリントが伸びた。
第1ステージと第2ステージで連勝しながら第3ステージの1級山岳で脱落し、リーダージャージを失ったグアルディーニが勝利。しかもフィニッシュラインの10m手前で勝利を確信して両手を上げるほど、そのスプリント力は頭一つ抜けていた。
「スプリントで勝てたことも嬉しいけど、SRMで記録した最大ワット数にも満足している」とグアルディーニは語る。もちろんワット数は明らかにしなかったが、その笑顔を見る限り大きな自信を得ている様子。「とても良い状態なので勝利数を伸ばせると思う」とも。
ステージ3位に入ったリーダージャージのイワンについてグアルディーニは「成績だけを見ると僕の方が速いかもしれないが、ロードレースには色んな要素が絡む。彼は平坦コースだけではなく様々なコースに対応する」と評する。この先のステージでも両者は火花を散らすことになるだろう。
グアルディーニの後方で愛三工業レーシングのブルージャージが並んでフィニッシュラインを切る。牽引役の小森亮平がトップ10フィニッシュした。
ステージ12位に入ったエーススプリンターの福田真平は「残り500mから小森(亮平)に連れられて前に上がったんですが、仕事を終えて下がってくる牽引役の選手に塞がれて失速してしまい、そのまま並んでフィニッシュする形になりました。今日は集団のスピードが速く、混戦状態の中からのスプリントだったので位置どりが難しかった。もがけなかったけど(スプリントまでの)形はできていたし、誰も転ばなかったので良かったです」とコメントしている。
ツール・ド・ランカウイ2015第3ステージ
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 3h43’14”
2位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
3位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)
5位 ケン・ハンソン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
7位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
8位 ラファ・シティウイ(チュニジア、スカイダイブドバイ)
9位 オレクサンドル・スルトコヴィチ(ウクライナ、シナジーバクサイクリング)
10位 小森亮平(日本、愛三工業レーシング)
12位 福田真平(日本、愛三工業レーシング)
個人総合成績
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 14h46’02”
2位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) +17”
3位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) +20”
4位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア) +22”
7位 フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ) +23”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +24”
9位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
10位 ロビン・マヌリアン(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +25”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)
チーム総合成績
MTNキュベカ
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
Amazon.co.jp