2015/01/20(火) - 09:06
スペイン・バスク地方に居を構える老舗バイクブランド、オルベアを代表するロードバイクのフラッグシップがフルモデルチェンジを果たし、「ORCA OMR」が登場した。一切の虚飾を廃して、純粋に性能を追い求めた5代目は、新たなORCA像を確立できるのか。
オルベア ORCA。この名前を聞いて貴方はどんなフレームを思い浮かべるだろう。初代の魚のような有機的なデザインのフレーム?それとも、曲線を用いた女性的な美しさを持つ第2世代?女性的な美しさはそのままに、よりレーシングスペックを追い求めた第3世代?それとも、直線的でメカニカルなフレームワークの第4世代?
そのどれもが際立った個性を持つバイクで、その時代のオルベアというブランドを象徴する存在だった。もともとは、ラグジュアリーバイクとして2003年にデビューしたORCA。まだ、トップレースの現場ではカーボンバイクとアルミバイク両方が半々だった時代に、ロングライド向けの快適性重視のバイクとして設計されたのがルーツだ。
しかし、当時サポートしていたバスク地方のプロチーム、エウスカルテルの選手たちによってレース現場で使われ、好評を博したことでレース機材としても高い性能を持つことが知れ渡った。特に長丁場のレースでは好んで用いられ、その実力を遺憾なく発揮した。
そして、2007年にはORCAの名を盤石のものにするモデルチェンジが行われる。女性デザイナーが手掛けた2代目ORCAは、優しげな曲線で構成された端正な佇まいと高次元でバランスされたレーシングスペックを併せ持つ稀有なバイクとして、爆発的な人気を獲得。同時にレース界でも様々なビッグレースで勝利に貢献し、その中にはサムエル・サンチェス(スペイン)による北京オリンピック制覇もある。
2009年には、シートステイやフロントフォークを強化した第3世代がデビュー。外見的な変化は少なかったものの、プロ選手の要望に応えてより高剛性になり、レース機材として正当に進化したフレームとしてサイクリストに受け入れられた。
大きな成功を収めたORCAであったが、2011年に再び大きな進化を果たした。それまでの有機的なデザインからは一転、直線を多用した男性的なフレームワークを手に入れた。速さを求めて、上下異径ヘッドやエアロダイナミクスを意識したパイプデザインを得たORCAは、ブエルタ・ア・エスパーニャをはじめとして多くの勝利をおさめ、その優秀性を証明した。
長々とORCAの歴史を綴ってきたが、その歴史はピュアレーシング化の道程ともいえる。ラグジュアリーモデルとして生まれたORCAだが、時間の研磨は無駄を削ぎ落とし、より速く遠くまで走るための性能の結晶として煮詰められてきたことがわかる。
デビュー以来4度目となるモデルチェンジを遂げた今回のORCAは、その歴史の流れの中にあって順当に進化を遂げたバイクだ。一切の装飾的要素を排したシンプル極まりないシルエットは、往年の芸術的なORCAを愛好する人の琴線には触れないかもしれない。しかし、その代わりにオルベア史上最軽量のロードレーサーとして完成したのだ。
その設計思想は単純明快。剛性を司るダウンチューとチェーンステーには大きなボリュームを持たせ、快適性を司るトップチューブとシートステーは必要最小限の重量で構成することで、軽量かつ高剛性なレーシングスペックを実現している。
また、オルベアはXCレーシングバイクALMAの設計を応用することで、新たな次元の快適性をORCAにもたらした。ライダーが乗車し、荷重がかかった状態でのフレームの挙動を研究し、フィードバックすることで実際の路面の凹凸を吸収しトラクションをかける能力を高めている。
使用されるカーボンファイバーもアップデートされている。カーボンによって2グレード展開される新型ORCAのうち、上位グレードのOMRでは従来よりも25%強度を上昇させた高弾性のカーボン素材「オルベア・モノコック・レース・カーボン」を使用することで、より少ない重量で高い強度のフレームを製作することが可能となった。新たな設計と素材によって、前作から100g以上の軽量化を果たし、フレーム重量は850gを達成している。
今回インプレッションするのは、ワイヤー式デュラエースに新型のカンパニョーロ BORA ULTRAが組み合わせられたバイクだ。タイヤにはハッチンソンのカーボンコンプがアッセンブルされ、パーツ一つとっても隙のない構成のレーシングスペックだ。
高い芸術性やエアロ性能といった、歴代のORCAが持っていたものは、このORCAにはない。代わりに与えられたのは、軽さと剛性。10年以上続く名シリーズの最新作として、煮詰められたピュアレーシングバイクをインプレライダーの二人はどう評価するのか。インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「まるでFFのスポーツカーの様な乗り心地」山崎敏正(シルベストサイクル)
良い自転車ですね。良いカーボンを使って、カラっと乾いた乗り味に仕上げている感覚があります。軽快感があって、バランスが良いため、登りの気持ちよさは特筆すべきものがあります。特にダンシングでは小気味いい加速感を堪能できるクライミングバイクです。
一方で、シッティングでももちろん良く進んでくれます。例えるならば、まるでFFのスポーツカーの様な乗り心地。登りを走っていても、前からぐいぐいと引っ張ってくれているのではないか?と錯覚してしまいそうになるほどの進み方です。
これは、まずは素姓の良いカーボンファイバーを材料に使っていることが一番大きな要因だと思います。それに加えて、フロントフォークの性能が高くなっており、前作に比べて前後のバランスがとても改善されているのも、卓越した走行性能に寄与しているのでしょう。。
フォークの前後方向への剛性が高くなっているので、ブレーキングもしっかりとしていますし、ハンドリングもとてもキビキビとしていて良いですね。下りでも安心して車体を傾けていくことができます。素直なハンドリングで、ビギナーユーザーでも無理なく乗れそうなフィーリングですね。
リア三角の剛性も非常に良くて、踏んだ分だけ進むというより、踏んだ分以上に進んでくれる、まるで1踏むと1.2くらい進んでくれるような伸びのあるバイクですね。ゴチゴチに硬すぎず、ぴったりの剛性感で心地よい踏み味に仕上がっています。
加えて、振動吸収性も高いレベルでまとまっています。カーボン素材の弾性率が高いので、路面からのレスポンスも良いため、ロードインフォメーションを良く伝えてくれます。その一方で、振動自体の収束が速く、身体へのダメージは少なく抑えられているという印象ですね。瞬時に伝えて、瞬時に収まるといった感じです。
総じてレースに向いた自転車だと思います。特に登りが多く含まれるロードレースやヒルクライムレースがもっとも力を発揮できる場ではないでしょうか。なんといっても加速感に優れたバイクですので、登り返しのダッシュなどでライバルを置き去りにするような鋭い走りができるといいですね。ついついアタックを仕掛けたくなる、ある意味身を削りたくなるフレームです。
組み合わせるホイールもカーボンディープからロープロファイルの軽量モデルまで、ホイールの良さを十分活かしてくれるでしょう。レースコースのシチュエーション、普段自分が良く走るコースのプロファイルなどによって、履き替えると楽しみが広がると思います。
フレームセットで42万円というプライスですが、性能を考えるとけして高いとは感じません。むしろレースをシリアスに勝ちにいく競技者にとっては、妥当かむしろ割安だと感じるほどの性能を持ったバイクです。とはいえピーキーな扱いづらさといったものは無いので、初心者が乗っても問題ない懐の深さを持っています。予算に余裕があってレーシーなバイクを欲するのであれば、どんなレベルの人も満足できるでしょう。自然と競争したくなるようなバイクだと思いますよ。
「全ての性能が高次元でバランスしているレーシングバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
非常に良いカーボン素材を使っているのか、パリッとした踏み心地でいかにもハイエンドレーシングバイクといった趣の乗り味を持っているバイクですね。かといって、ガチガチの高剛性バイクではなく幅広い層に受け入れられるだろう適度な剛性感をフレーム全体で演出しています。
特にダンシングが軽やかで、ひとこぎひとこぎに反応して進んでいく感覚が非常に心地良いバイクです。シッティングからダンシングに移行するときに感じるスムーズさは特筆すべきものがあります。なので、シッティングとダンシングを織り交ぜながら登っていくような長い登りで真価を発揮するでしょう。
一方で、快適性もかなり高いレベルに仕上がっています。パリッとした剛性感から受ける印象とは裏腹に、まるでグランフォンドバイクといっても通用するほどの上質な振動吸収性を持っています。なので、平地でも非常にスムーズに進んで行きますね。路面のギャップにはじかれて跳ねてしまう様な事がないので、トラクションも良好です。
フレーム各部の作りも面白くて、シートクランプ下の造形とか、ヘッドチューブの形や、フロントフォークの形状といったところで非常に工夫されているのが伝わってきますね。こういった各所の作りこみが、剛性と快適性の両立に役立っているのでしょうね。ハンドリングも非常に素直でスムースなので、下りのワインディングも非常に気持ち良く曲がっていくことができます。
総じて、全ての性能が高次元でバランスしているレーシングバイクと言えるでしょう。その中でも特に強みとなるのが、登り性能ですね。ですので、組み合わせるホイールとしては、今回のインプレッションで装着していたBORAも非常に良いのですが、登りを重視するのであればもう少しリムハイトの低いホイールだとより気持ちよく登っていくことができると思います。
クライミングバイクにありがちな、腰高感やユニークなリズム感といった扱いづらいクセもないので、どんなレベルのライダーでも乗りこなしやすいバイクです。登りが得意で、より気持ちよく坂を上っていきたいというヒルクライマーにはまさにうってつけの1台でしょう。
オルベア ORCA OMR
フレーム:オルカOMRカーボン
フォーク:OMRカーボン、カーボンコラム、カーボンドロップエンド、1-1/8~1-1/5
カラー:ブルーピンク、ブラック
サイズ:47、49、51、53、55、57、60
フロントメカ:直付
シートポスト径:27.2mm
BB規格:PF86
付属品:ケーブル・ワイヤーセット付属
パワーメーター対応
価 格:420,000円(税抜、フレームセット)、1,380,000円(税抜、デュラエースDi2完成車)
インプレライダーのプロフィール
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
ウエアのインプレッションはこちら
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
オルベア ORCA。この名前を聞いて貴方はどんなフレームを思い浮かべるだろう。初代の魚のような有機的なデザインのフレーム?それとも、曲線を用いた女性的な美しさを持つ第2世代?女性的な美しさはそのままに、よりレーシングスペックを追い求めた第3世代?それとも、直線的でメカニカルなフレームワークの第4世代?
そのどれもが際立った個性を持つバイクで、その時代のオルベアというブランドを象徴する存在だった。もともとは、ラグジュアリーバイクとして2003年にデビューしたORCA。まだ、トップレースの現場ではカーボンバイクとアルミバイク両方が半々だった時代に、ロングライド向けの快適性重視のバイクとして設計されたのがルーツだ。
しかし、当時サポートしていたバスク地方のプロチーム、エウスカルテルの選手たちによってレース現場で使われ、好評を博したことでレース機材としても高い性能を持つことが知れ渡った。特に長丁場のレースでは好んで用いられ、その実力を遺憾なく発揮した。
そして、2007年にはORCAの名を盤石のものにするモデルチェンジが行われる。女性デザイナーが手掛けた2代目ORCAは、優しげな曲線で構成された端正な佇まいと高次元でバランスされたレーシングスペックを併せ持つ稀有なバイクとして、爆発的な人気を獲得。同時にレース界でも様々なビッグレースで勝利に貢献し、その中にはサムエル・サンチェス(スペイン)による北京オリンピック制覇もある。
2009年には、シートステイやフロントフォークを強化した第3世代がデビュー。外見的な変化は少なかったものの、プロ選手の要望に応えてより高剛性になり、レース機材として正当に進化したフレームとしてサイクリストに受け入れられた。
大きな成功を収めたORCAであったが、2011年に再び大きな進化を果たした。それまでの有機的なデザインからは一転、直線を多用した男性的なフレームワークを手に入れた。速さを求めて、上下異径ヘッドやエアロダイナミクスを意識したパイプデザインを得たORCAは、ブエルタ・ア・エスパーニャをはじめとして多くの勝利をおさめ、その優秀性を証明した。
長々とORCAの歴史を綴ってきたが、その歴史はピュアレーシング化の道程ともいえる。ラグジュアリーモデルとして生まれたORCAだが、時間の研磨は無駄を削ぎ落とし、より速く遠くまで走るための性能の結晶として煮詰められてきたことがわかる。
デビュー以来4度目となるモデルチェンジを遂げた今回のORCAは、その歴史の流れの中にあって順当に進化を遂げたバイクだ。一切の装飾的要素を排したシンプル極まりないシルエットは、往年の芸術的なORCAを愛好する人の琴線には触れないかもしれない。しかし、その代わりにオルベア史上最軽量のロードレーサーとして完成したのだ。
その設計思想は単純明快。剛性を司るダウンチューとチェーンステーには大きなボリュームを持たせ、快適性を司るトップチューブとシートステーは必要最小限の重量で構成することで、軽量かつ高剛性なレーシングスペックを実現している。
また、オルベアはXCレーシングバイクALMAの設計を応用することで、新たな次元の快適性をORCAにもたらした。ライダーが乗車し、荷重がかかった状態でのフレームの挙動を研究し、フィードバックすることで実際の路面の凹凸を吸収しトラクションをかける能力を高めている。
使用されるカーボンファイバーもアップデートされている。カーボンによって2グレード展開される新型ORCAのうち、上位グレードのOMRでは従来よりも25%強度を上昇させた高弾性のカーボン素材「オルベア・モノコック・レース・カーボン」を使用することで、より少ない重量で高い強度のフレームを製作することが可能となった。新たな設計と素材によって、前作から100g以上の軽量化を果たし、フレーム重量は850gを達成している。
今回インプレッションするのは、ワイヤー式デュラエースに新型のカンパニョーロ BORA ULTRAが組み合わせられたバイクだ。タイヤにはハッチンソンのカーボンコンプがアッセンブルされ、パーツ一つとっても隙のない構成のレーシングスペックだ。
高い芸術性やエアロ性能といった、歴代のORCAが持っていたものは、このORCAにはない。代わりに与えられたのは、軽さと剛性。10年以上続く名シリーズの最新作として、煮詰められたピュアレーシングバイクをインプレライダーの二人はどう評価するのか。インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「まるでFFのスポーツカーの様な乗り心地」山崎敏正(シルベストサイクル)
良い自転車ですね。良いカーボンを使って、カラっと乾いた乗り味に仕上げている感覚があります。軽快感があって、バランスが良いため、登りの気持ちよさは特筆すべきものがあります。特にダンシングでは小気味いい加速感を堪能できるクライミングバイクです。
一方で、シッティングでももちろん良く進んでくれます。例えるならば、まるでFFのスポーツカーの様な乗り心地。登りを走っていても、前からぐいぐいと引っ張ってくれているのではないか?と錯覚してしまいそうになるほどの進み方です。
これは、まずは素姓の良いカーボンファイバーを材料に使っていることが一番大きな要因だと思います。それに加えて、フロントフォークの性能が高くなっており、前作に比べて前後のバランスがとても改善されているのも、卓越した走行性能に寄与しているのでしょう。。
フォークの前後方向への剛性が高くなっているので、ブレーキングもしっかりとしていますし、ハンドリングもとてもキビキビとしていて良いですね。下りでも安心して車体を傾けていくことができます。素直なハンドリングで、ビギナーユーザーでも無理なく乗れそうなフィーリングですね。
リア三角の剛性も非常に良くて、踏んだ分だけ進むというより、踏んだ分以上に進んでくれる、まるで1踏むと1.2くらい進んでくれるような伸びのあるバイクですね。ゴチゴチに硬すぎず、ぴったりの剛性感で心地よい踏み味に仕上がっています。
加えて、振動吸収性も高いレベルでまとまっています。カーボン素材の弾性率が高いので、路面からのレスポンスも良いため、ロードインフォメーションを良く伝えてくれます。その一方で、振動自体の収束が速く、身体へのダメージは少なく抑えられているという印象ですね。瞬時に伝えて、瞬時に収まるといった感じです。
総じてレースに向いた自転車だと思います。特に登りが多く含まれるロードレースやヒルクライムレースがもっとも力を発揮できる場ではないでしょうか。なんといっても加速感に優れたバイクですので、登り返しのダッシュなどでライバルを置き去りにするような鋭い走りができるといいですね。ついついアタックを仕掛けたくなる、ある意味身を削りたくなるフレームです。
組み合わせるホイールもカーボンディープからロープロファイルの軽量モデルまで、ホイールの良さを十分活かしてくれるでしょう。レースコースのシチュエーション、普段自分が良く走るコースのプロファイルなどによって、履き替えると楽しみが広がると思います。
フレームセットで42万円というプライスですが、性能を考えるとけして高いとは感じません。むしろレースをシリアスに勝ちにいく競技者にとっては、妥当かむしろ割安だと感じるほどの性能を持ったバイクです。とはいえピーキーな扱いづらさといったものは無いので、初心者が乗っても問題ない懐の深さを持っています。予算に余裕があってレーシーなバイクを欲するのであれば、どんなレベルの人も満足できるでしょう。自然と競争したくなるようなバイクだと思いますよ。
「全ての性能が高次元でバランスしているレーシングバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
非常に良いカーボン素材を使っているのか、パリッとした踏み心地でいかにもハイエンドレーシングバイクといった趣の乗り味を持っているバイクですね。かといって、ガチガチの高剛性バイクではなく幅広い層に受け入れられるだろう適度な剛性感をフレーム全体で演出しています。
特にダンシングが軽やかで、ひとこぎひとこぎに反応して進んでいく感覚が非常に心地良いバイクです。シッティングからダンシングに移行するときに感じるスムーズさは特筆すべきものがあります。なので、シッティングとダンシングを織り交ぜながら登っていくような長い登りで真価を発揮するでしょう。
一方で、快適性もかなり高いレベルに仕上がっています。パリッとした剛性感から受ける印象とは裏腹に、まるでグランフォンドバイクといっても通用するほどの上質な振動吸収性を持っています。なので、平地でも非常にスムーズに進んで行きますね。路面のギャップにはじかれて跳ねてしまう様な事がないので、トラクションも良好です。
フレーム各部の作りも面白くて、シートクランプ下の造形とか、ヘッドチューブの形や、フロントフォークの形状といったところで非常に工夫されているのが伝わってきますね。こういった各所の作りこみが、剛性と快適性の両立に役立っているのでしょうね。ハンドリングも非常に素直でスムースなので、下りのワインディングも非常に気持ち良く曲がっていくことができます。
総じて、全ての性能が高次元でバランスしているレーシングバイクと言えるでしょう。その中でも特に強みとなるのが、登り性能ですね。ですので、組み合わせるホイールとしては、今回のインプレッションで装着していたBORAも非常に良いのですが、登りを重視するのであればもう少しリムハイトの低いホイールだとより気持ちよく登っていくことができると思います。
クライミングバイクにありがちな、腰高感やユニークなリズム感といった扱いづらいクセもないので、どんなレベルのライダーでも乗りこなしやすいバイクです。登りが得意で、より気持ちよく坂を上っていきたいというヒルクライマーにはまさにうってつけの1台でしょう。
オルベア ORCA OMR
フレーム:オルカOMRカーボン
フォーク:OMRカーボン、カーボンコラム、カーボンドロップエンド、1-1/8~1-1/5
カラー:ブルーピンク、ブラック
サイズ:47、49、51、53、55、57、60
フロントメカ:直付
シートポスト径:27.2mm
BB規格:PF86
付属品:ケーブル・ワイヤーセット付属
パワーメーター対応
価 格:420,000円(税抜、フレームセット)、1,380,000円(税抜、デュラエースDi2完成車)
インプレライダーのプロフィール
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
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ウエア協力:reric
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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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