2014/09/28(日) - 13:15
昨日に引き続き、手がかじかむような寒さのなかで、個人ロードレース種目の2日目を迎えた。スペインはヨーロッパの西端に位置しており、ここの夜明けはとにかく遅い。選手たちが会場でウォーミングアップを始める8時になっても薄暗く、スタッフたちがレース準備を始める早朝にいたっては、夜空に星が瞬いているほど。
穏やかな雰囲気のなかでウォーミングアップをするジュニア男子選手。遠征や合宿を重ね、お互いの絆が深まっている photo:Sonoko.Tanaka
寒さのため、保温効果の高いマッサージクリームを足に塗込む photo:Sonoko.Tanaka
出走サインを終えて、記念撮影に応じるジュニア男子4選手。左から孫崎大樹(北桑田高校)、草場啓吾(北桑田高校)、石上優大(横浜高校)、中村圭佑(昭和第一学園高校) photo:Sonoko.Tanaka
熱心にジュニア世代の育成にあたる柿木孝之コーチ photo:Sonoko.Tanaka
スタートを待つジュニア男子選手 photo:Sonoko.Tanakaロードレース2日目の男子ジュニアのレースで幕開けした。日本ナショナルチームは、石上優大(横浜高校)、孫崎大樹(北桑田高校)、中村圭佑(昭和第一学園高校)、草場啓吾(北桑田高校)と4名の高校生が出場した。柿木孝之コーチは「誰もが集団が30名ほどに絞られても残れるし、勝負できるメンバー」だと彼らの実力に太鼓判を押す。
終盤に集団内で走る石上優大(横浜高校) photo:Sonoko.Tanaka現在、日本自転車競技連盟の事業として、ジュニアおよびU23カテゴリーは積極的に海外遠征を行っている。今回世界選手権に出場したジュニア選手たちは、これまでに何度もジュニアのネイションズカップやアジア選手権など世界の舞台で戦ってきており、7月にカナダで開催されたネイションズカップのステージレースでは、チームワークが実って孫崎が念願のステージ優勝を挙げた。
そのような経験から、現在のジュニアチームのメンバーたちは、お互いのことをよく理解し、草場は「1人の力では勝てなくても、チームで協力したら勝つことができる」と、世界を相手にしたチームでのロードレースの走り方を学んでいる。
ジュニアカテゴリーは全7周回で開催されたが、スタート直後から日本ナショナルチームは不運に見舞われる。スプリントを得意とする孫崎が1周回目に3回ほど落車に巻き込まれ、ここでレースを終えてしまう。ジュニアカテゴリーの世界選手権は、希望すればどの国も出場できることもあり、ここで初めて世界のレースを経験する選手もいる。そのため「世界選手権で落車は必ず起るもので避けられないと思っている」と柿木氏。その後、6周回目では中村が落車し、その落車に草場が巻き込まれて集団から遅れてしまう。
最後まで集団に残ったのは、ジュニア1年目の石上だった。登坂を得意とする選手だが、ゴールに向けて加速する集団に残って17位でゴールし、「ジュニアの場合、ギア制限があるので、もう踏めるギアはなく、なだれこむような感じでスプリントも何もなかったです。ただペダルを回すのは得意なので、チャンスがあると思っていたんですが、自分のラインが詰まってしまい、そのままゴールしてしまいました。もうちょっといけそうな気がしたので悔しいですね。ただ、もう脚は残っていなかったので、勝つためにはもっとパワーを付けないといけないと思います」と、ゴール後に振り返った。
男子ジュニアのゴールスプリント。中央に石上優大(横浜高校)の姿が見える photo:Sonoko.Tanaka
落車の影響で遅れてしまった草場啓吾(北桑田高校)。集団に残れたら、いい順位を狙えたと悔やむ photo:Sonoko.Tanaka
唯一集団でゴールした石上優大(横浜高校) photo:Sonoko.Tanaka
ジュニアカテゴリーは2年間のため、毎年ナショナルチームは約半数の選手が入れ替わる。柿木氏は「まだ日本チームは、常に世界のレースで一桁に入れるレベルではないので、ここより下に行かないことが最低限の目標。そして、ここからいかに上に行くか考えていきたいですね。それだけのことができる選手がいますし、またいい選手たちが入ってきます。今回、ジュニア1年目の石上と中村はいい経験をしましたので、誰も世界選手権を経験したメンバーがいなかった今年と比べて、来年が楽しみです」と、今後も精力的にジュニア世代の強化を推し進めていく。
犬を肩に乗せてMTBで山頂まで上がってきた男性 photo:Sonoko.Tanaka
ベルギーから駆けつけた熱心なファン photo:Sonoko.Tanaka
初めての世界選手権を走り終えたジュニア選手たちが、さまざまな感情をもってチームパーキングに戻ると、入れ替わりに、午後にレースを控えるエリート女子選手がウォーミングアップを始めていた。男子ジュニアと同じ距離で開催される女子のレースには、全日本チャンピオンの萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)と與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が出走する。
日本人として唯一、UCI登録の女子チームに所属して世界のレースを転戦する萩原と、東京五輪を目標に掲げて独自のスタイルで年々進化を遂げる與那嶺。女子のレースでも落車が頻発したが、2選手ともうまくトラブルを避けて、終盤の勝負どころまでメイン集団に残り、勝負がかかるのを待っていた。
緊張した面持ちの萩原麻由子(ウィグル・ホンダ) photo:Sonoko.Tanaka
レース準備をする與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) photo:Sonoko.Tanaka
萩原麻由子と與那嶺恵理がポンフェラーダ城の前を通過する photo:Sonoko.Tanaka
穴田マッサー特製のジャムパンをもって、スタートする photo:Sonoko.Tanaka残り2周となり、激しい雨が集団を活性化させた。萩原が前に出て動く場面もあったが、繰り返されるアタックにより集団がペースアップすると、萩原は「動きがかかったとき、頭は反応できたんですが、脚が痛くなってしまって踏み込めなかった」と後退してしまう。
レース終盤、加速するメイン集団内で走る與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) photo:Sonoko.Tanakaそして勝負が大きく動いた最終周回で、與那嶺がトップ選手に食らいつくも、連続する2つ目の上りで遅れてしまう。「前のパックに残りたかったし、残るつもりで走っていたんですが、脚が残っていなかったですね」と振り返る與那嶺は第2集団、22位でゴールを迎えた。
與那嶺は「もう1つ前の集団で世界のトップを見ながら、力負けしてもその位置で走りたかったです。それができなかったのは残念です。来年の目標は、世界選手権のタイムトライアル。トップ10に入れば、その選手がそのままリオ五輪に出場できるので、絶対に狙いたいです。今年のタイムトライアルで自信がついたので、このまま頑張りたいです」とレース後にコメント。今後はシクロクロスに参戦し、年明けから北米を中心にトレーニングに打ち込む予定だと言う。
一方の萩原は「何もできなくて、情けなかった」と、5分51秒差の52位でゴール。8月末の落車による膝のケガが響き、彼女本来の走りができなかった。しかし、「これから来年に向けてまたしっかりと準備して、来年はまた違う形で挑めたらいいなと思いました」と前を向く。この世界選手権が今シーズンのラストレースであり、オフシーズンは「まずはしっかりと痛めた膝を完治させて、何もやり残したことがないよう完璧な状態で新しいシーズンを迎えるように準備したい」と話している。
最終周回、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が第2集団を牽引する photo:Sonoko.Tanaka
第2集団でゴールした與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)。もう1つ前の集団に入りたかったと悔やむ photo:Sonoko.Tanaka
レースを終えた萩原麻由子(ウィグル・ホンダ) photo:Sonoko.Tanaka
1週間に渡って開催されていた世界選手権も、ついにエリート男子のロードレースを残すのみとなり、「去年のフィレンツェはもっと大勢の観客がいたよ!」と言われてしまっていた会場も徐々に熱気を帯びてきた。ただ心配されているのは天気。エリート女子のレース中から崩れはじめ、明日も雨の予報が出ているが、兎にも角にも年に一度の世界王者をかけた大決戦。日本ナショナルチームのエース、新城幸也(ユーロップカー)をはじめ、すべての選手にとって良いレースになってほしい。
text&photo:Sonoko.Tanaka
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ジュニアカテゴリーは全7周回で開催されたが、スタート直後から日本ナショナルチームは不運に見舞われる。スプリントを得意とする孫崎が1周回目に3回ほど落車に巻き込まれ、ここでレースを終えてしまう。ジュニアカテゴリーの世界選手権は、希望すればどの国も出場できることもあり、ここで初めて世界のレースを経験する選手もいる。そのため「世界選手権で落車は必ず起るもので避けられないと思っている」と柿木氏。その後、6周回目では中村が落車し、その落車に草場が巻き込まれて集団から遅れてしまう。
最後まで集団に残ったのは、ジュニア1年目の石上だった。登坂を得意とする選手だが、ゴールに向けて加速する集団に残って17位でゴールし、「ジュニアの場合、ギア制限があるので、もう踏めるギアはなく、なだれこむような感じでスプリントも何もなかったです。ただペダルを回すのは得意なので、チャンスがあると思っていたんですが、自分のラインが詰まってしまい、そのままゴールしてしまいました。もうちょっといけそうな気がしたので悔しいですね。ただ、もう脚は残っていなかったので、勝つためにはもっとパワーを付けないといけないと思います」と、ゴール後に振り返った。
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日本人として唯一、UCI登録の女子チームに所属して世界のレースを転戦する萩原と、東京五輪を目標に掲げて独自のスタイルで年々進化を遂げる與那嶺。女子のレースでも落車が頻発したが、2選手ともうまくトラブルを避けて、終盤の勝負どころまでメイン集団に残り、勝負がかかるのを待っていた。
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與那嶺は「もう1つ前の集団で世界のトップを見ながら、力負けしてもその位置で走りたかったです。それができなかったのは残念です。来年の目標は、世界選手権のタイムトライアル。トップ10に入れば、その選手がそのままリオ五輪に出場できるので、絶対に狙いたいです。今年のタイムトライアルで自信がついたので、このまま頑張りたいです」とレース後にコメント。今後はシクロクロスに参戦し、年明けから北米を中心にトレーニングに打ち込む予定だと言う。
一方の萩原は「何もできなくて、情けなかった」と、5分51秒差の52位でゴール。8月末の落車による膝のケガが響き、彼女本来の走りができなかった。しかし、「これから来年に向けてまたしっかりと準備して、来年はまた違う形で挑めたらいいなと思いました」と前を向く。この世界選手権が今シーズンのラストレースであり、オフシーズンは「まずはしっかりと痛めた膝を完治させて、何もやり残したことがないよう完璧な状態で新しいシーズンを迎えるように準備したい」と話している。
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text&photo:Sonoko.Tanaka
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