前年度覇者コンタドールを欠く第64回ブエルタ・ア・エスパーニャ。しかし総合狙いの選手ラインアップは実に豪華だ。ヴィノクロフ、バルベルデ、サンチェス、バッソ、エヴァンス、ヘーシンク、シュレク兄弟、モスケラ・・・。今年もマイヨ・オロを巡る闘いは混沌としそうだ。

2006年大会総合優勝者のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)2006年大会総合優勝者のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Cor Vosついに8月29日にスタートするブエルタ・ア・エスパーニャ。マイヨ・オロをかけて闘う有力なオールラウンダーたちをピックアップして見ていこう。

タイトルホルダーのアスタナは、ディフェンディングチャンピオンのアルベルト・コンタドール(スペイン)に代わって、ブエルタ開幕5日前にチーム合流を発表したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)がエースに立てる。ヴィノクロフはカザフスタンチームで出場したツール・ド・ランで復帰後初勝利を飾り、アジア選手権TTで優勝。しかしそのコンディションには未知数な部分が多い。

ドーフィネ・リベレで総合優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)ドーフィネ・リベレで総合優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vosコンタドールとメンショフが欠場するため、ヴィノクロフが唯一の総合優勝経験者(2006年)。このカザフの大将を支えるのは、クリストファー・ホーナー(アメリカ)やアイマル・スベルディア(スペイン)ら、経験豊富な山岳スペシャリストたちだ。アスタナはヴィノを中心に大会連覇、そしてグランツール連覇を目指す。(※追記:後日ヴィノは総合ではなくステージ優勝を狙うと宣言)

前哨戦ドーフィネ・リベレで総合優勝を飾りながらも、イタリアで噴出したドーピングスキャンダルによってツール・ド・フランスを欠場したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、シーズン最大の目標をこのブエルタに切り替えてきた。

北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Cor Vosバルベルデは8月上旬のブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝。ツール欠場で溜め込んだ鬱憤を、地元スペインで晴らすことが出来るだろうか? 初のグランツール制覇を目指すバルベルデのモチヴェーションは高い。昨年総合6位の良き相棒ホアキン・ロドリゲス(スペイン)も健在だ。

他にも、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)らが、ツールに出場せずにブエルタに的を絞ってきた。

ツールをスキップしたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ツールをスキップしたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji北京五輪ロードレース金メダリストのサンチェスは、2007年ブエルタでステージ3勝を飾り、チームに初のグランツール総合表彰台(総合3位)をもたらした。持ち前のスプリント力、TT能力、ダウンヒル能力でライバルたちを撹乱してくるだろう。チームには2007年ブエルタ総合8位のイゴール・アントン(スペイン)や、昨年ブエルタ総合9位のエゴイ・マルティネス(スペイン)もいる。

出場停止処分を経て昨年10月に復帰したバッソは、5月のジロで総合5位。2006年にジロを制した時のような圧倒的な走りは影を潜めたが、安定感のある走りを披露した。初出場のブエルタの山岳でその力は発揮されるのか。

ツールで苦戦を強いられたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ツールで苦戦を強いられたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット) photo:Cor Vosバッソの後ろには、ドーフィネのモンヴァントゥーを制したシルヴェスタ・シュミット(ポーランド)や、ツール・ド・ロマンディを制し、クラシカ・サンセバスティアンで2位に入った若手有力株ロマン・クロイツィゲル(チェコ)ら、心強いアシスト陣が控えている。

このブエルタで再起を狙うのが、カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア・HTC)ら、ツールで思うような結果を残せなかった選手たち。

オールラウンダーとして力を伸ばすロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)オールラウンダーとして力を伸ばすロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosエヴァンスはツール総合優勝候補に挙げられながらも、山岳と個人TTで大敗を喫し、総合30位でツールを終えた。ブエルタには過去3度出場し、2007年には総合4位に入っている。スイス・メンドリシオで開催されるロード世界選手権を見据えるエヴァンスは、このブエルタで復調なるか。

手首骨折によりツール序盤ステージで姿を消したヘーシンクは、昨年のブエルタで初出場ながら総合7位。山岳の比重が高いブエルタでは上位に絡むことが予想される。昨年山岳賞&総合8位のダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)も、山岳で攻撃を仕掛けてくるだろう。

強力なサクソバンクを率いるヤコブ・フグルサング(デンマーク)強力なサクソバンクを率いるヤコブ・フグルサング(デンマーク) photo:Cor Vosチーム力の面で他の追随を許さないのが、ツールに引き続きシュレク兄弟(ルクセンブルク)を送り込むサクソバンクだ。ツール総合2位&新人賞のアンディと、2年連続ツール総合5位のフランク。トップコンディションで挑めば総合優勝最有力候補の2人だが、シーズン序盤からの疲労を考えるとコンディションに疑問が残る。

シュレク兄弟に代わって総合成績を狙うのは、ツール・ド・スロベニアツアー・オブ・デンマークで総合優勝を飾ったヤコブ・フグルサング(デンマーク)だ。現在24歳のフグルサングは、ドーフィネ・リベレモンヴァントゥーステージで5位に入り、ツールの主役級選手に混じって総合6位に入った注目株。初挑戦のグランツールでどこまで力を発揮出来るのか、注目が集まる。

今年は前年度の総合トップスリー(コンタドール、ライプハイマー、サストレ)が全員欠場する。昨年総合4位に入ったエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)は、2007年の初出場以降、コンスタントに上位入賞を続けている。今年こそ目指すは総合表彰台だ。

2004年のジロ覇者ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)もスタートリストに入っているが、あくまでもブエルタは世界選手権に向けての調整レース的な位置付けのため、総合成績は狙わない。クネゴの他にも、世界選手権を見据える選手たちが、後半のステージで続々とリタイアする可能性は高い。これは開催時期が4月から9月に移された1995年以降、ブエルタが抱え続けている悩みの種だ。

ブエルタ歴代総合優勝者
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 ロベルト・エラス(スペイン)
2002年 アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年 アンヘル・カセロ(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 アブラハム・オラーノ(スペイン)
1997年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1996年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1991年 メルチョル・マウリ(スペイン)
1990年 マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア)


text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Kei Tsuji

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