2014/07/26(土) - 19:04
降り続いた雨、雨、雨。プロトンはずぶ濡れで208.5kmの道のりをこなした。危険でタフな一日の末に待っていたのは、エースのリタイアという不運に見舞われたチームを救うリトアニアの若手の大きな勝利だった。
今日も沿道には沢山のひまわりが咲き誇っていた photo:A.S.O.
スタート地点では地元の吹奏楽団がツールを歓迎 photo:Makoto Ayanoスタート地点”モブルゲ・ペイ・ドゥ・ヴァルダドゥール”では地元の吹奏楽団がツールを歓迎。長い名前の小さな町にやってきたツールを盛大に盛り上げてくれる。しかしツールも最終盤だというのに、選手たちの間に浮かれた雰囲気はまだ皆無。貴重なステージ勝利へのチャンスに向けて集中する様子が伺えた。そして悪化しそうな天候に備えてレインギアを慌ただしく用意するスタッフたち。
小さなキッズにファンサービスするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)。その背中からは王者の風格が漂っている photo:A.S.O.ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)はサインを済ませると待ち構えるメディアから逃げるようにそそくさと去った。スプリンター向きではあるけれど最後の4級の丘がピュアスプリンターにとっては難所。サガン向きのコースだ。
TTでの総合順位逆転の可能性を語るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Makoto Ayano総合6位につけるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)はリラックスした表情で話す。
手作りの4勝ジャージと自転車を吊り下げて、ツールを歓迎 photo:A.S.O.「火曜(第16ステージ)のクラック(大きく遅れた)が今でも悔やまれる。あのとき持ちこたえていればパリで表彰台に立てたかもしれない。しかしロマン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)を逆転しての5位は可能性がある。2年前と同じ5位を目指すよ。昨年は何もできずに終わった。ツールは世界最高峰のレース。改めてその難しさを痛感するよ」。
クリス・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)は9月のブエルタ・ア・エスパーニャで連覇を狙うことを表明した。ルイ・コスタとともに患った喘息の症状もなくなり、調子が上がってきていると言う。
「ツールが終わったらアメリカに帰ってツアー・オブ・ユタに出て再調整する。調整レースとしてツールを走らせてくれたチームに感謝している。シェイプしたらブエルタではもちろん勝利を狙う。ブエルタは僕向き。そして一度勝ったレースにはまた勝ちたいからね!」。
総合上位争いの選手と同じく、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)はすでに土曜の個人TTにフォーカスしている。「皆が疲れきっている。最終週のTTではサプライズがあるはずだ。僕はいい調子を保っているけど、3週間のレースの後だから運も必要だ」。
この日ステージ優勝を飾ることになるラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)はチームメイトと陽気に喋っていた。手にしたエナジーバーをもてあそんでケラケラと笑う。誰にでも可愛がられる弟キャラでチーム内でも人気者。そういった様子はいつも通りだった。
大量の雨が降る嵐のステージ
大雨のフランス西部を走るプロトン photo:Tim de Waele
牙の立派な象も沿道から逃げ集団を応援 photo:A.S.O.スタートして第1アタックはシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が成功させた。それにマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)、トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、アルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ)の4名が追いついて5名となる。
相変わらずトマ・ヴォクレールの応援はもっとも多い photo:Makoto Ayanoゴティエはここまで合計8ステージでアタックを敢行し、エルミガーは通算611km逃げている。それぞれ敢闘賞を2度獲得したこのふたりは、現在パリで表彰されるスーパー敢闘賞にノミネートされている。ジャージ無しのこの賞も大きな栄誉。フェアに、アグレッシブに、走りでアピールするしかない。
天気は走りだしてしばらくはもちこたえていたが、やがて暗雲が垂れ込めて雷が鳴り出すと、風も吹き出し、雨が強く降りだした。その後は雨はほぼ一日中降り続いた。ときにものすごい土砂降りとなり、滝のような大雨に。「こんなにも大量の雨が叩きつけるなかを、はたして自転車で走れるのか?」と心配になるほど。ロメン・バルデはレース後に振り返る。「後半は大量の雨で集団は神経質になっていた。本当に強い風と、大量の雨だったんだ!」。
クレベゾン、クレベゾン!
コース途中の自転車の飾り物に大粒の雨が降る photo:Makoto Ayanoコースも言われていた平坦と言うにはほど遠く、細かなアップダウンを繰り返す幅の狭い田舎道が多くを占めた。小砂利が浮いた路面はお世辞にもスムーズとはいえず、きっとトラクターや農作業の重機が通る農道なのだろう、平滑でなく窪みや凸凹が絶えない。
この日のラジオツールは「◯◯選手、クレベゾン(パンク)! 」というコールをひっきりなしに繰り返した。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)は「今までにこんな多くのパンクが起こったレースを見たことがない。常にあちこちで、たぶん50回はパンクがあった。天気が本当に悪くて、普通じゃなかった」。とレース後に話した。この日チャンスのあったマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)も2度名前を呼ばれていた。
ガーミン・シャープの「計画通りの勝利」
逃げ切ったラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ) photo:Makoto Ayano
スタート前に談笑するラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ) photo:Makoto Ayanoスラグテルが逃げグループから残り32kmで単独アタック。最後の4級の丘を利用してメイン集団からアタックしたナヴァルダスカスがスラグテルに追いつき、そのまま先行。得意なTT走法で13kmの独走勝利を果たした。雨が激しく降っていたことが単身のアタックには有利に働いた。後方の集団で起こったラスト3kmの落車で追走がストップしたことも逃げ切りに大きく味方した。ジロでもTTスタイルの独走勝利を挙げたナヴァルダスカスは、リトアニア人初のツールのステージ勝者になった。
ラヴァルダックの村を通過するシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)率いる逃げグループ photo:Makoto Ayanoナヴァルダスカスの勝利は、早い段階で落車によってツールを去った総合狙いのエース、アンドリュー・タランスキー(アメリカ)を失ったガーミン・シャープを失望から救うものになった。ちょうどアルベルト・コンタドール(スペイン)を失ったティンコフ・サクソがマイケル・ロジャース(オーストラリア)とラファエル・マイカ(ポーランド)の勝利で救われたように。ガーミン・シャープは第15ステージでもジャック・バウアー(ニュージーランド)が逃げ切りのステージ勝利にトライしたが、ゴール前ラスト100mで集団に捉えられてハートブレイクな結果に終わっていた。
チームメイトの勝利に喜びを表しながらゴールするトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ) photo:Makoto.AYANOスラグテルとのリレーアタックが実を結んだ勝利。ナヴァルダスカスはこの作戦が朝の段階で計画していたものだったことを明かした。「走り出す前からこのアタック計画があったんだ。トムは今日とてもアグレッシブだった。峠の頂上では素晴らしい引きで僕を前に送り出してくれた。彼は本当に強くて勇敢。これは最初からチームで計画していた走りで、チーム全体がこの走りのために働いた。すべてオーガナイズされたとおり。そして僕がアタック。トムは最後に僕を強く引いてくれ、僕はゴールまでの残り距離を最後まで全力でタイムトライアルした」。
ステージ優勝を飾ったラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ) photo:Makoto Ayanoスラグテルがそれほど引けなかったようにも見えるが、ナヴァルダスカスはスラグテルの協力を最大限に讃える(おそらく愛されキャラはそこにあるのだろう)。
逃げにメンバーを送り込み、最後はナヴァルダスカスで勝負するというガーミン・シャープの明快な作戦がプラン通りに実を結んだ。チャールズ・ウェゲリゥス監督は言う。「チャンスが小さなことは判っていた。ナヴァルダスカスが前を行く間、チームは集団前方へも選手を上げてライバルたちの追走をスローダウンさせた。多くにチームが疲れて明確なプランがないままにバラバラな動きでまとまらないかな、ガーミン・シャープはとてもうまくまとまった動きができたんだ」。
チームが勝利を託したナヴァルダスカスは、ツール直前に病気になって現役最後のツール出場を諦めざるを得なかったデーヴィッド・ミラー(イギリス)の代打として出場が決まった選手。キャプテンとしてのチームのまとめ役にしてファンの多いミラーの欠場を惜しむ声は大きかった。ミラーは出場が決まったナヴァルダスカスに対して「誰かが自分の抜けた穴を埋めなければならない。それが君だと聞いて嬉しいよ」というメッセージを送っていた。ナヴァルダスカスは今年で引退を決めているミラーの無念にも報いたというわけだ。
最初に転んだのはサガン 今ツール9度目のトップ10
残り3kmを切ってから発生した大落車 photo:Tim de Waele
落車して勝負に絡めなかったペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)が腕をかばいながらフィニッシュに辿り着いた photo:Makoto Ayanoラスト3kmで発生した落車で最初に転んだのがサガンだった。ウィリーの名手にしてテクニシャンのサガンが集団落車のきっかけになるとは誰が想像しただろう。雨で滑りやすかった路面はサガンのテクニックをもってしても予測不能なものだった?
ペーター・サガン(キャノンデール)が落車で痛めた右半身には以前の落車の古傷が有る photo:Makoto.AYANOサガンは言う。「ラスト3kmでは9番手にいた。(勝利を狙うのに)とてもいい位置だった。コーナーの出口で、濡れた路面にホイールが滑って転んでしまった。なぜ転んだのか分からない。止まれなかった。僕が最初に転んだんだ」。
ゴールには(鎖骨を折った選手が必ずするように)左腕をかばうような姿勢で帰ってきたサガン。「もしや鎖骨か腕の骨折?」の心配の声が挙がるが、怪我は軽傷で済んだようだ。サガンは言う「体の右側に擦り傷があるけど大丈夫、骨折はしていない。それは良かった。このツール・ド・フランスはただ不運だ。今日はとてもいいチャンスでベストを尽くしたかった。でも落車したんだ」。
マイヨヴェールは独走状態で、3年連続のポイント賞獲得のハットトリックが間違いなく決まりそうだ。しかし9度目のトップ10フィニッシュという、ほろ苦くも素晴らしいリザルトも更に更新することになった。
サガンは言う。「本当にもう、なんと言っていいか分からない。『これは運命だ』『これが自転車レースだ』って言ってきたけど、たぶん僕は来年10ステージに勝つよ。でも今はこの事実を受け入れるしかないんだ。マイヨヴェールを着てパリに行きたい。それが僕のツールでのゴール。パリでもう一度チャンスがあるけど、その前に今日の落車の怪我からのリカバリーをしなくては」。
ユキヤは危険を回避してクルーズ
集団の最後尾がほぼ定位置の新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto Ayano
ユーロップカーの応援旗を持つ観客「ベルノドー(GM)ボーイズ万歳!」 photo:Makoto Ayano
新城幸也(ユーロップカー)は落車には巻き込まれれず、3分10秒遅れの71位でゴール。総合は63位に付けている。シリル・ゴティエのアタックが決まってからは集団内の定位置である最後尾で長い時間を過ごした。「今日は逃げに乗りたかったけど、シリルが逃げたので自分の役目は変わった。とにかくこの天候の中で、チームメイトと共に無事にゴールできて良かった。ツールもあと2ステージしかないのかと言う感じ。本当にいいツールだったと言えるよう、無事にパリにゴールしたい」とコメントしている。
最終決戦の個人TTへ フランス人2人の表彰台は実現するか?
コース途中の村々に立ち寄るツールの大使的役目をもつ英雄ベルナール・イノー photo:Makoto Ayano心配されたような大きな怪我の報告もなく、この日のリタイヤは無し。ツールは第20ステージを前に表彰台争いの順位は変わらず、ニーバリ以下の15秒以内に3人がいる混戦状態で日を越す。
総合2位を巡り激しいバトルを繰り広げるジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)とティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)が握手を交わす photo:A.S.O.ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)とジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)のフランス人2人にポディウムのチャンスが有るという、フランスにとって永年の不振の末の快挙とも言える状況。フランス人がシャンゼリゼのポディウムに立つことが実現すれば、それは1997年のリシャール・ヴィランク以来のこととなる。
フランス人による優勝は1985年のベルナールイノーが飾っているが、パリのポディウムにフランス人ふたりが乗ったのはローラン・フィニョンが優勝してイノーが2位になった1984年のこと。いずれにせよフランス人ファンが心待ちにしてきたフランス革命がまさに起ころうとしている。しかし、ピノとペロー、その隙を狙うバルベルデの順位は、明日を待たなければ分からない。距離の長い54kmの孤独なTTが勝負を決める。
安全に走り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Makoto Ayanoピノは2位の死守に自信があるように見える。「ルーラー向きだったツール・ド・ロマンディとスイスの個人TT(トップ10入りした)よりも期待している。明日は違うタイプのTTになる。3週間の後の、54kmものTTだ。いい脚の状態があれば、だ。ストレスは全く無いよ。僕はTTがとても好きだ。昨年末からはトラックでのTTトレーニングを取り入れて、ポジション改善にも取り組んできた。明日はその成果が出るだろう。まだ試走はしていないので明日の朝チームカーで下見をする。この近所に住んでいる(ミカエル)ドラージュにはアドバイスを貰った。ハードなTTだけどコースはテクニカルじゃないことも知っている」。
TT能力よりも、体力の残り具合や脚の強さがモノを言う最終TT。バルベルデに逆転されることを心配されているが、ピノは続ける。「僕の今の調子は10で言えば12だ。でも誰もが疲れている。明日は言い訳はしない。3人のうち強い2人がポディウムに上る。僕が上れることを願っているよ」。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
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クリス・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)は9月のブエルタ・ア・エスパーニャで連覇を狙うことを表明した。ルイ・コスタとともに患った喘息の症状もなくなり、調子が上がってきていると言う。
「ツールが終わったらアメリカに帰ってツアー・オブ・ユタに出て再調整する。調整レースとしてツールを走らせてくれたチームに感謝している。シェイプしたらブエルタではもちろん勝利を狙う。ブエルタは僕向き。そして一度勝ったレースにはまた勝ちたいからね!」。
総合上位争いの選手と同じく、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)はすでに土曜の個人TTにフォーカスしている。「皆が疲れきっている。最終週のTTではサプライズがあるはずだ。僕はいい調子を保っているけど、3週間のレースの後だから運も必要だ」。
この日ステージ優勝を飾ることになるラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)はチームメイトと陽気に喋っていた。手にしたエナジーバーをもてあそんでケラケラと笑う。誰にでも可愛がられる弟キャラでチーム内でも人気者。そういった様子はいつも通りだった。
大量の雨が降る嵐のステージ
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クレベゾン、クレベゾン!
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この日のラジオツールは「◯◯選手、クレベゾン(パンク)! 」というコールをひっきりなしに繰り返した。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)は「今までにこんな多くのパンクが起こったレースを見たことがない。常にあちこちで、たぶん50回はパンクがあった。天気が本当に悪くて、普通じゃなかった」。とレース後に話した。この日チャンスのあったマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)も2度名前を呼ばれていた。
ガーミン・シャープの「計画通りの勝利」
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チームが勝利を託したナヴァルダスカスは、ツール直前に病気になって現役最後のツール出場を諦めざるを得なかったデーヴィッド・ミラー(イギリス)の代打として出場が決まった選手。キャプテンとしてのチームのまとめ役にしてファンの多いミラーの欠場を惜しむ声は大きかった。ミラーは出場が決まったナヴァルダスカスに対して「誰かが自分の抜けた穴を埋めなければならない。それが君だと聞いて嬉しいよ」というメッセージを送っていた。ナヴァルダスカスは今年で引退を決めているミラーの無念にも報いたというわけだ。
最初に転んだのはサガン 今ツール9度目のトップ10
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マイヨヴェールは独走状態で、3年連続のポイント賞獲得のハットトリックが間違いなく決まりそうだ。しかし9度目のトップ10フィニッシュという、ほろ苦くも素晴らしいリザルトも更に更新することになった。
サガンは言う。「本当にもう、なんと言っていいか分からない。『これは運命だ』『これが自転車レースだ』って言ってきたけど、たぶん僕は来年10ステージに勝つよ。でも今はこの事実を受け入れるしかないんだ。マイヨヴェールを着てパリに行きたい。それが僕のツールでのゴール。パリでもう一度チャンスがあるけど、その前に今日の落車の怪我からのリカバリーをしなくては」。
ユキヤは危険を回避してクルーズ
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最終決戦の個人TTへ フランス人2人の表彰台は実現するか?
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フランス人による優勝は1985年のベルナールイノーが飾っているが、パリのポディウムにフランス人ふたりが乗ったのはローラン・フィニョンが優勝してイノーが2位になった1984年のこと。いずれにせよフランス人ファンが心待ちにしてきたフランス革命がまさに起ころうとしている。しかし、ピノとペロー、その隙を狙うバルベルデの順位は、明日を待たなければ分からない。距離の長い54kmの孤独なTTが勝負を決める。
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TT能力よりも、体力の残り具合や脚の強さがモノを言う最終TT。バルベルデに逆転されることを心配されているが、ピノは続ける。「僕の今の調子は10で言えば12だ。でも誰もが疲れている。明日は言い訳はしない。3人のうち強い2人がポディウムに上る。僕が上れることを願っているよ」。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
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※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
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