2014/07/26(土) - 11:18
大雨によって完全にウェットな状態になったベルジュラックの街に差し掛かったところで、メイン集団の中に落車が発生。優勝候補の一人サガンらが巻き込まれる中、残り13kmでアタックしたラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)がフィニッシュまで独走した。
ピレネー山脈に別れを告げて、プロトンはパリへの北上を開始する。その道中に大きな山や丘は存在しない。208.5kmの道のりはほとんど真っ平らであり、目立つ起伏と言えば残り13km地点で登場する4級山岳モンバジャック(1.3km/7.6%)だけだ。
山岳ステージをグルペットで乗り越えてきたスプリンターたちにとって、決して落とすわけにはいかない貴重なチャンス。しかしモチベーションが高いのはまだステージ優勝を掴んでいない逃げのスペシャリストたちも同様だ。この日もシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)のファーストアタックでレースが動き始めた。
ゴティエにはマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)、トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、アルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ)の4名が追いついて先頭は5名に。
曇り空のモブルゲ・ペイ・ドゥ・ヴァルダドゥールを経った時点では曇り空だったが、レースが進むうちに雨雲が選手たちの頭上に広がるようになる。5時間近いレースのうちそのほとんどが雨降りに。アシストたちはレインジャケットやジレを取るためにチームカーに下がった。
先頭5名とメイン集団のタイム差は2〜4分を行ったり来たり。ステージ優勝狙いのキャノンデールやジャイアント・シマノ、ロット・ベリソル、カチューシャが集団のペースをコントロールする。
同時に先頭4名も慎重にペースをコントロール。互いの間合いを計りながら、降り続く雨に眼を細めて走り続けた。
タイム差が1分に近づく頃、先頭グループでは早くも次なる動きが生まれる。ガーミン・シャープのチームカーを運転するロバート・ハンター監督の指示を受けて、残り32km地点でスラグテルがアタック。一発で4名を振り切ったスラグテルが独走を開始する。
一方のメイン集団では残り20km地点でヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)がアタックするなど落ち着かない。完全にウェットなコースで中切れを起こしながらも、この日唯一の4級山岳モンバジャックで先頭スラグテルを視界に捉えた。
葡萄畑の丘を駆け上がる登りでマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするピュアスプリンターは脱落。すると頂上手前でナヴァルダスカスがメイン集団から勢い良くアタック。すぐさまナヴァルダスカスは頂上通過後に先頭に追いついたものの、チームメイトのスラグテルはそのハイペースに対応出来ずに千切れた。
こうしてナヴァルダスカスの単独エスケープが始まった。4級山岳の頂上からフィニッシュラインまでは13km。4級山岳でスプリンターチームが人数を失ったため、メイン集団のペースが上がり切らない。
第15ステージで惜しくも逃げ切りを逃したジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)が集団先頭でローテーションを阻害する好プレー。ナヴァルダスカスは20秒リードで独走を続けた。
残り6km地点でティンコフ・サクソとオメガファーマ・クイックステップがトレインを組んで追撃したものの、濡れた路面も影響してペースが上がり切らない。すると残り3kmを切ったところで優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)らを含む大落車が発生する。地面に叩き付けられたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)をはじめとして多くの選手が足止めを食らったが、3km以内の救済措置によってタイム差はついていない。
集団先頭で難を逃れたスプリンターたちが最終ストレートでスプリントを開始したものの、その7秒前でナヴァルダスカスが歓喜のガッツポーズ。リトアニア出身の現TTナショナルチャンピオンが独走勝利を果たした。
敢闘賞を獲得したスラグテルと表彰台裏で抱き合ったナヴァルダスカス。2013年ジロ・デ・イタリアでの独走勝利を飾っており、これがツールでのステージ初優勝。チームとして掴んだ初勝利を喜んだ。「今日がラストチャンスだったのでチームで何かを成し遂げたかった。誰かを逃げに送り込んで、最後の4級山岳でアタックする作戦だったんだ。トム(スラグテル)の逃げはインプレッシブだったし、ジャック(バウアー)とセバスティアン(ラングヴェルト)は後方で集団をパトロールしてくれた。自分に出来ることは、TTスペシャリストのように独走することだった」。
終盤に落車が発生したものの、マイヨジョーヌ、マイヨヴェール、マイヨアポワ、マイヨブラン争いに影響は無し。安全にリカバリーに励んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が揺るぎない総合リードを保ったまま翌日の個人タイムトライアルに挑む。総合2位以下3名が15秒差にひしめく混戦状態は継続中だ。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第18ステージ結果
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
マイヨヴェール(ポイント賞)
マイヨアポワ(山岳賞)
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
ピレネー山脈に別れを告げて、プロトンはパリへの北上を開始する。その道中に大きな山や丘は存在しない。208.5kmの道のりはほとんど真っ平らであり、目立つ起伏と言えば残り13km地点で登場する4級山岳モンバジャック(1.3km/7.6%)だけだ。
山岳ステージをグルペットで乗り越えてきたスプリンターたちにとって、決して落とすわけにはいかない貴重なチャンス。しかしモチベーションが高いのはまだステージ優勝を掴んでいない逃げのスペシャリストたちも同様だ。この日もシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)のファーストアタックでレースが動き始めた。
ゴティエにはマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)、トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、アルノー・ジェラール(フランス、ブルターニュ・セシェ)の4名が追いついて先頭は5名に。
曇り空のモブルゲ・ペイ・ドゥ・ヴァルダドゥールを経った時点では曇り空だったが、レースが進むうちに雨雲が選手たちの頭上に広がるようになる。5時間近いレースのうちそのほとんどが雨降りに。アシストたちはレインジャケットやジレを取るためにチームカーに下がった。
先頭5名とメイン集団のタイム差は2〜4分を行ったり来たり。ステージ優勝狙いのキャノンデールやジャイアント・シマノ、ロット・ベリソル、カチューシャが集団のペースをコントロールする。
同時に先頭4名も慎重にペースをコントロール。互いの間合いを計りながら、降り続く雨に眼を細めて走り続けた。
タイム差が1分に近づく頃、先頭グループでは早くも次なる動きが生まれる。ガーミン・シャープのチームカーを運転するロバート・ハンター監督の指示を受けて、残り32km地点でスラグテルがアタック。一発で4名を振り切ったスラグテルが独走を開始する。
一方のメイン集団では残り20km地点でヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)がアタックするなど落ち着かない。完全にウェットなコースで中切れを起こしながらも、この日唯一の4級山岳モンバジャックで先頭スラグテルを視界に捉えた。
葡萄畑の丘を駆け上がる登りでマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするピュアスプリンターは脱落。すると頂上手前でナヴァルダスカスがメイン集団から勢い良くアタック。すぐさまナヴァルダスカスは頂上通過後に先頭に追いついたものの、チームメイトのスラグテルはそのハイペースに対応出来ずに千切れた。
こうしてナヴァルダスカスの単独エスケープが始まった。4級山岳の頂上からフィニッシュラインまでは13km。4級山岳でスプリンターチームが人数を失ったため、メイン集団のペースが上がり切らない。
第15ステージで惜しくも逃げ切りを逃したジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)が集団先頭でローテーションを阻害する好プレー。ナヴァルダスカスは20秒リードで独走を続けた。
残り6km地点でティンコフ・サクソとオメガファーマ・クイックステップがトレインを組んで追撃したものの、濡れた路面も影響してペースが上がり切らない。すると残り3kmを切ったところで優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)らを含む大落車が発生する。地面に叩き付けられたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)をはじめとして多くの選手が足止めを食らったが、3km以内の救済措置によってタイム差はついていない。
集団先頭で難を逃れたスプリンターたちが最終ストレートでスプリントを開始したものの、その7秒前でナヴァルダスカスが歓喜のガッツポーズ。リトアニア出身の現TTナショナルチャンピオンが独走勝利を果たした。
敢闘賞を獲得したスラグテルと表彰台裏で抱き合ったナヴァルダスカス。2013年ジロ・デ・イタリアでの独走勝利を飾っており、これがツールでのステージ初優勝。チームとして掴んだ初勝利を喜んだ。「今日がラストチャンスだったのでチームで何かを成し遂げたかった。誰かを逃げに送り込んで、最後の4級山岳でアタックする作戦だったんだ。トム(スラグテル)の逃げはインプレッシブだったし、ジャック(バウアー)とセバスティアン(ラングヴェルト)は後方で集団をパトロールしてくれた。自分に出来ることは、TTスペシャリストのように独走することだった」。
終盤に落車が発生したものの、マイヨジョーヌ、マイヨヴェール、マイヨアポワ、マイヨブラン争いに影響は無し。安全にリカバリーに励んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が揺るぎない総合リードを保ったまま翌日の個人タイムトライアルに挑む。総合2位以下3名が15秒差にひしめく混戦状態は継続中だ。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・フランス2014第18ステージ結果
1位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ・サクソ)
6位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
8位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
9位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ・サクソ)
6位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
8位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
9位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
4h43'41"
+07"
+07"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
7位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキン)
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
3位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
7位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキン)
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
85h29'33"
+7'10"
+7'23"
+7'25"
+9'27"
+11'34"
+13'56"
+14'15"
+14'37"
+16'25"
+7'10"
+7'23"
+7'25"
+9'27"
+11'34"
+13'56"
+14'15"
+14'37"
+16'25"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
417pts
253pts
247pts
253pts
247pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
181pts
168pts
112pts
168pts
112pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
85h36'43"
+2'17"
+1h09'35"
+2'17"
+1h09'35"
チーム総合成績
1位 AG2Rラモンディアール
2位 ベルキン
3位 モビスター
2位 ベルキン
3位 モビスター
256h52'21"
+28'33"
+1h05'47"
+28'33"
+1h05'47"
ステージ敢闘賞
トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano
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