2014/07/15(火) - 20:26
ヴォージュ山塊3連戦のクイーンステージを迎える朝、イギリスから続いた雨模様はスタートを待つ間だけ晴れてフランス革命記念日に明るさを添えてくれた。ギャロパンのマイヨジョーヌのお披露目だ。
ロット・べリソルのバスの前には黄色く彩られたリドレーのバイクが誇らしげに置かれていた。急遽手配され、朝までに組み上げられたという。そしてそのそばでギャロパンの登場を待つ、敢闘賞のポディウムガールにしてロット・ベリソル女子チームのフランス人選手マリオン・ルッスさん。リクエストに応えて早めに登場したギャロパンとマリオンさんはさっそく熱いキッスを交わし、黄色いリドレーとともに写真に収まってくれた。
女子サイクリストのセクシーカレンダーや各モデルに抜擢されるほどの美貌を持つルッスさんは、ギャロパンと見るからにラブラブで目のやり場に困るほど。ルッスさんと一緒にいたいからロット・ベリソルに移籍したとも言われるギャロパン。喜びいっぱいのマイヨジョーヌだ。
元チームメイトのトレックファクトリーレーシングの皆からも祝福されて、フランス人マイヨジョーヌは最高に人気者だ。伯父のアラン・ガロパン監督も感激の表情。今は他チームの選手であるのにアラン氏に握手を求める人が絶えない。フランス革命記念日に若きフランス人がマイヨジョーヌを着ているという理想的なプロトンがアルザスの街ミュルーズから走りだした。
コンタドール落車リタイアの衝撃
結局、晴れ間はつかの間だった。ヴォージュ山地へ向かうプロトンは雨とめまぐるしく変わる天気の洗礼を受けた。勾配の変化が厳しい狭く険しい山道が続くヴォージュの山で、優勝候補のコンタドールが落車、リタイアした。フルームに続き、ツールの2大優勝候補が10日目にしてふたりともいなくなってしまった。
コンタドールの落車については集団の最前方で起こったことであるため多くの選手が目撃したようだ。話を総合するとコンタドールは1級山岳プティバロンのダウンヒルを60〜70kmほどで下っていて、背中のポケットの補給食などを取ろうと片手を離したとき、路面のくぼみにはまり、弾みでハンドルから手を滑らせて落車してしまったようだ。
再び自転車にまたがって集団を追ったが、2度めの落車もあったようだ。治療のため長くストップして、チームメイトと痛めた右膝のまま再び走るも、痛みのためリタイアを決意した。
コンタドールが落車したのは、下りで集団内のポジションをあげようと他の選手たちを追い抜いているときだったようだ。下りでも動きまわるのはコンタドール独特の動き。バイクコントロールが巧く、ダウンヒルが得意なコンタドールだが、それは危険な走りだったとユルゲン・ファンデンブロック(ロット・ベリソル)は言う。
「僕はラッキーだった。コンタドールの落車は彼自身のミス。皆が安全に下ろうとしていた。僕は集団のなかでチームメイトの後ろに位置して下っている時、コンタドールが僕らを追い抜いていこうとした。僕は安全のために前と少し距離をとって下っていたけれど、それを追い越そうとしたんだ。それは彼の典型的なスタイル」。
「彼は路面のギャップに弾かれた勢いでハンドルバーから前へ越えて転んでしまった。僕の前輪は彼の頭のすぐ横を通った。僕も危うく巻き込まれそうになったんだ。そこで一つ位置を上げることになぜそんな危険を冒したのか理解できない。彼が転んだ時、恐ろしいほどの落車だったから即リタイアしてもおかしくないと思ったけれど、彼が走り続けようとしたことは驚きだ」。
フレフ・ファンアフェルマート(BMCレーシング)は言う。「サクソ・ティンコフ全員がポジションをあげようとしていた。彼らはすでに集団の前方25位ぐらいに位置していたのに、それ以上に位置をあげようとしていたんだ。僕はそんな下りではその位置をキープする走りなのに、彼らはもっと前に上がろうとした。真っ直ぐな直線で、馬鹿げた落車だった。まったく馬鹿げているよ」。
最終区間の激坂バトル 地元の山で切れ味鋭い走りを披露したピノ
ゴールの1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユは、2年前に初めてツールに登場した山頂ゴールだ。5.9kmへ平均勾配が8.5%。しかし残り250mから勾配は最大20%にまで達する。トップ選手でも蛇行してしまうこの坂で、2年前にフルームが全員を置き去りにして両手を突き上げた。
先行していたホアキン”プリート”ロドリゲス(カチューシャ)をフラムルージュで交わし、大歓声のなかをトップで駆け上がったニーバリ。その上り区間のタイムはフルームが勝利した時に比べると30秒遅かったという。
とにかく勾配の厳しい最後の上り区間。残り250mから150mにかけての100mで区間順位は大いにシャッフルした。残り200mまで粘ったプリートだが、この激坂区間に大失速。ここはまったく惰性では登れない、とんでもない激坂だ。代わりに後方から切れ味するどい加速で交わしていったのがフランス期待のティボー・ピノ(FDJ.fr)だ。そしてプリートは後ろから迫ったバルベルデグループにもパスされた。この激坂は大詰めで順位を大いにシャッフルした。
この地域が地元のピノ。とくに最後から2番目のシュヴレール峠はピノの住むメリゼー村から数キロしか離れておらず、ピノがプロ入り前からホームコースとしてきた峠だ。ピノは同じく地元出身の親友アルテュール・ヴィショ(FDJ.fr)と一緒に、かつてこの峠の路面に自分たちの名前をペイントしたことがあるという。アマチュア時代から何度も駆け上がった馴染みの峠を越え、最後のラプランシェ・デ・ベルフィーユでパンチ力のある素晴らしいクライミングを見せたピノ。勝利はできなかったが、2位という結果には満足している様子だ。そして昨年できなかった総合争いについても前向きな姿勢を見せた。
「昨日はプレッシャーのあまり緊張してあまり眠れなかったんだ。長い間この地にゴールするツールでステージで勝利することを夢見てきた。勝つことはできなかったけど、ツールで自分のレベルに達したことが確認できたのは重要。僕の目標は前と変わらずトップ10に入ること。そしてマイヨ・ブランも。ツールは毎日何かを失うね。コンタドールでさえも。今日のステージは総合争いとステージ争いの2つの闘いがあった。僕はニーバリとレースをしていた。彼に着いていればいい総合順位は手に入るけれど、僕が逃げに入ることは誰も許してくれない」。
序盤に動いて中間ポイントを加算したマイヨヴェールのサガンは大きく遅れて帰ってきた。激坂区間では観客たちのリクエストに応えてウィリーを披露。そこからさらに遅れて帰ってきたのはエースのコンタドールを失ったサクソ・ティンコフの選手たち。チームにとっては悪夢の一日。途中でコンタドールに自転車を差し出したロッシュ、マイカ、トザット、パウリーニョらが失意の表情でフィニッシュラインを越える。迎える中野喜文マッサーはつとめて冷静に、ゴール後の動きの指示を出す。
ロランをアシストしたユキヤ コンタドールのリタイアに気を引き締める
新城幸也(ユーロップカー)は残り2つの1級山岳シュヴレール峠までピエール・ロランとともにメイン集団に残り、総合順位のための位置取りを手助けした。しかしロランも思うようにペースがあがらず、4分14秒遅れの28位でゴール。ロランは総合16位に後退してしまった。ユキヤは16分遅れの69位でゴール。総合は93位に上げた。
「今日は最初から最後まで全開。ただそれだけ。ピエールのためにできることはやった。(今日も落車が多かったが、)無事にゴールできて、やっと休養日を迎えられる」。コンタドールの落車には少なからずショックを受けている様子が感じられる。「何があるかわからない。そして、誰が勝つかわからない。どんなに強い選手でもゴールは簡単じゃない。これがツールだ」とコメントしている。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
ロット・べリソルのバスの前には黄色く彩られたリドレーのバイクが誇らしげに置かれていた。急遽手配され、朝までに組み上げられたという。そしてそのそばでギャロパンの登場を待つ、敢闘賞のポディウムガールにしてロット・ベリソル女子チームのフランス人選手マリオン・ルッスさん。リクエストに応えて早めに登場したギャロパンとマリオンさんはさっそく熱いキッスを交わし、黄色いリドレーとともに写真に収まってくれた。
女子サイクリストのセクシーカレンダーや各モデルに抜擢されるほどの美貌を持つルッスさんは、ギャロパンと見るからにラブラブで目のやり場に困るほど。ルッスさんと一緒にいたいからロット・ベリソルに移籍したとも言われるギャロパン。喜びいっぱいのマイヨジョーヌだ。
元チームメイトのトレックファクトリーレーシングの皆からも祝福されて、フランス人マイヨジョーヌは最高に人気者だ。伯父のアラン・ガロパン監督も感激の表情。今は他チームの選手であるのにアラン氏に握手を求める人が絶えない。フランス革命記念日に若きフランス人がマイヨジョーヌを着ているという理想的なプロトンがアルザスの街ミュルーズから走りだした。
コンタドール落車リタイアの衝撃
結局、晴れ間はつかの間だった。ヴォージュ山地へ向かうプロトンは雨とめまぐるしく変わる天気の洗礼を受けた。勾配の変化が厳しい狭く険しい山道が続くヴォージュの山で、優勝候補のコンタドールが落車、リタイアした。フルームに続き、ツールの2大優勝候補が10日目にしてふたりともいなくなってしまった。
コンタドールの落車については集団の最前方で起こったことであるため多くの選手が目撃したようだ。話を総合するとコンタドールは1級山岳プティバロンのダウンヒルを60〜70kmほどで下っていて、背中のポケットの補給食などを取ろうと片手を離したとき、路面のくぼみにはまり、弾みでハンドルから手を滑らせて落車してしまったようだ。
再び自転車にまたがって集団を追ったが、2度めの落車もあったようだ。治療のため長くストップして、チームメイトと痛めた右膝のまま再び走るも、痛みのためリタイアを決意した。
コンタドールが落車したのは、下りで集団内のポジションをあげようと他の選手たちを追い抜いているときだったようだ。下りでも動きまわるのはコンタドール独特の動き。バイクコントロールが巧く、ダウンヒルが得意なコンタドールだが、それは危険な走りだったとユルゲン・ファンデンブロック(ロット・ベリソル)は言う。
「僕はラッキーだった。コンタドールの落車は彼自身のミス。皆が安全に下ろうとしていた。僕は集団のなかでチームメイトの後ろに位置して下っている時、コンタドールが僕らを追い抜いていこうとした。僕は安全のために前と少し距離をとって下っていたけれど、それを追い越そうとしたんだ。それは彼の典型的なスタイル」。
「彼は路面のギャップに弾かれた勢いでハンドルバーから前へ越えて転んでしまった。僕の前輪は彼の頭のすぐ横を通った。僕も危うく巻き込まれそうになったんだ。そこで一つ位置を上げることになぜそんな危険を冒したのか理解できない。彼が転んだ時、恐ろしいほどの落車だったから即リタイアしてもおかしくないと思ったけれど、彼が走り続けようとしたことは驚きだ」。
フレフ・ファンアフェルマート(BMCレーシング)は言う。「サクソ・ティンコフ全員がポジションをあげようとしていた。彼らはすでに集団の前方25位ぐらいに位置していたのに、それ以上に位置をあげようとしていたんだ。僕はそんな下りではその位置をキープする走りなのに、彼らはもっと前に上がろうとした。真っ直ぐな直線で、馬鹿げた落車だった。まったく馬鹿げているよ」。
最終区間の激坂バトル 地元の山で切れ味鋭い走りを披露したピノ
ゴールの1級山岳ラプランシェ・デ・ベルフィーユは、2年前に初めてツールに登場した山頂ゴールだ。5.9kmへ平均勾配が8.5%。しかし残り250mから勾配は最大20%にまで達する。トップ選手でも蛇行してしまうこの坂で、2年前にフルームが全員を置き去りにして両手を突き上げた。
先行していたホアキン”プリート”ロドリゲス(カチューシャ)をフラムルージュで交わし、大歓声のなかをトップで駆け上がったニーバリ。その上り区間のタイムはフルームが勝利した時に比べると30秒遅かったという。
とにかく勾配の厳しい最後の上り区間。残り250mから150mにかけての100mで区間順位は大いにシャッフルした。残り200mまで粘ったプリートだが、この激坂区間に大失速。ここはまったく惰性では登れない、とんでもない激坂だ。代わりに後方から切れ味するどい加速で交わしていったのがフランス期待のティボー・ピノ(FDJ.fr)だ。そしてプリートは後ろから迫ったバルベルデグループにもパスされた。この激坂は大詰めで順位を大いにシャッフルした。
この地域が地元のピノ。とくに最後から2番目のシュヴレール峠はピノの住むメリゼー村から数キロしか離れておらず、ピノがプロ入り前からホームコースとしてきた峠だ。ピノは同じく地元出身の親友アルテュール・ヴィショ(FDJ.fr)と一緒に、かつてこの峠の路面に自分たちの名前をペイントしたことがあるという。アマチュア時代から何度も駆け上がった馴染みの峠を越え、最後のラプランシェ・デ・ベルフィーユでパンチ力のある素晴らしいクライミングを見せたピノ。勝利はできなかったが、2位という結果には満足している様子だ。そして昨年できなかった総合争いについても前向きな姿勢を見せた。
「昨日はプレッシャーのあまり緊張してあまり眠れなかったんだ。長い間この地にゴールするツールでステージで勝利することを夢見てきた。勝つことはできなかったけど、ツールで自分のレベルに達したことが確認できたのは重要。僕の目標は前と変わらずトップ10に入ること。そしてマイヨ・ブランも。ツールは毎日何かを失うね。コンタドールでさえも。今日のステージは総合争いとステージ争いの2つの闘いがあった。僕はニーバリとレースをしていた。彼に着いていればいい総合順位は手に入るけれど、僕が逃げに入ることは誰も許してくれない」。
序盤に動いて中間ポイントを加算したマイヨヴェールのサガンは大きく遅れて帰ってきた。激坂区間では観客たちのリクエストに応えてウィリーを披露。そこからさらに遅れて帰ってきたのはエースのコンタドールを失ったサクソ・ティンコフの選手たち。チームにとっては悪夢の一日。途中でコンタドールに自転車を差し出したロッシュ、マイカ、トザット、パウリーニョらが失意の表情でフィニッシュラインを越える。迎える中野喜文マッサーはつとめて冷静に、ゴール後の動きの指示を出す。
ロランをアシストしたユキヤ コンタドールのリタイアに気を引き締める
新城幸也(ユーロップカー)は残り2つの1級山岳シュヴレール峠までピエール・ロランとともにメイン集団に残り、総合順位のための位置取りを手助けした。しかしロランも思うようにペースがあがらず、4分14秒遅れの28位でゴール。ロランは総合16位に後退してしまった。ユキヤは16分遅れの69位でゴール。総合は93位に上げた。
「今日は最初から最後まで全開。ただそれだけ。ピエールのためにできることはやった。(今日も落車が多かったが、)無事にゴールできて、やっと休養日を迎えられる」。コンタドールの落車には少なからずショックを受けている様子が感じられる。「何があるかわからない。そして、誰が勝つかわからない。どんなに強い選手でもゴールは簡単じゃない。これがツールだ」とコメントしている。
photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
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