2014/07/04(金) - 18:29
ツール・ド・フランスの栄光を掴むのは果たして誰か。総合優勝者に与えられるマイヨジョーヌを狙って、世界各国のトップレーサーがイギリスに上陸。マイヨジョーヌ候補の筆頭はクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)だ。
昨年ツール初制覇を果たしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が、ディフェンディングチャンピオンとして母国イギリス(出身はケニア)で3週間の闘いをスタートさせる。2月のツアー・オブ・オマーン総合優勝でシーズンを華々しくスタートさせたフルームは、その後ボルタ・ア・カタルーニャ総合6位、ツール・ド・ロマンディ総合優勝、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ開幕ステージ2連勝という成績を残している。
しかしフルームは連覇が懸かった6月のドーフィネで落車。大怪我は免れたものの、落車の影響もあって総合12位に。ポイント賞ではトップに立ったが、苦しみながら前哨戦を終えた。昨年ほどの好調ぶりではないことは自他ともに認めるところ。「今年はツールに向けたコンディショニングに苦労した」とフルームは記者会見で語っている。「ディフェンディングチャンピオンはより大きなプレッシャーを背負うことになる」とも。
「落車以前のペダリングを取り戻すために力を尽くした」と打ち明けているが、ツール前のトレーニング強度を下げたことで「いつもよりフレッシュな状態でツール2〜3週目に挑めると思う」と前向きに捉えている。
フルームの右腕を担うのは相棒リッチー・ポート(オーストラリア)だ。レースに復帰したばかりのセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)は落車骨折により欠場。ミケル・ニエベ(スペイン)やダビ・ロペスガルシア(スペイン)らが山岳ステージで強力にフルームをアシストする。
コンディショニングに不安を残すフルームに対し、全盛期の調子の良さを取り戻したのがアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)だ。大会3連覇を狙うチームスカイの勢いを止めるのは、2007年と2009年大会の覇者コンタドールと言っていいだろう。
コンタドールは2010年に3度目の総合優勝を果たしたが、ドーピング違反によって後にタイトルが剥奪されている。2012年にブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を飾ったものの、ツールでは目立った活躍を見せることが出来ず、2011年総合5位、2013年総合4位。
2013年シーズンわずか1勝に終わったコンタドールだが、2014年に入って息を吹き返した。ティレーノ〜アドリアティコとブエルタ・アル・パイスバスコで総合優勝を果たしており、強いコンタドールが帰ってきた感がある。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、ライバルを圧倒しながらも総合2位に入った。
直前になってロマン・クロイツィゲル(チェコ)欠場という痛いニュースが入ってきたが、ティンコフ・サクソはラファル・マイカ(ポーランド)やヘスス・エルナンデス(スペイン)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド)、マイケル・ロジャース(オーストラリア)らがコンタドールの山岳アシストを務めることになるだろう。
直前のイタリア選手権で初優勝し、イタリアチャンピオンとしてツールに挑むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は、フルームとコンタドールの二強に割って入る存在となるか。ニーバリは連覇が懸かったジロを蹴ってまでツールに集中している。
これまでジロとブエルタで総合優勝を果たしているニーバリのツールにおける最高位は2012年の総合3位。アスタナにはヤコブ・フグルサング(デンマーク)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア)、タネル・カンゲルト(エストニア)といった強力なアシスト陣が揃っている。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでビッグネームを退けて総合優勝を飾ったアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)も注目の的だ。タランスキーは2013年ツール総合10位。アメリカ人選手の中でマイアミ出身の25歳が最もマイヨジョーヌに近い存在だと言える。
同じくアメリカ出身の25歳ティージェイ・ヴァンガーデレンはBMCレーシングのエースとして出場。2012年大会で総合5位に入ってマイヨブランを獲得したヴァンガーデレンは、2013年ツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝。しかしツールでは総合45位に終わっている。
スペインからはコンタドールの他にも、順調な仕上がりを見せているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)や2013年総合9位のダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)らが出場。ジロを落車リタイアした2013年総合3位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)はブエルタを見据えながらツールを走る。
開催国フランスの威信をかけて、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)やティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)といったクライマー系オールラウンダーが総合上位を狙う。何と言ってもフランス人の総合優勝者は1985年のベルナール・イノー以降一人も出ていない。
2013年総合6位バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)の他、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、若き才能ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)も上位争いに絡んでくるだろう。2013年のブエルタ覇者クリストファー・ホーナー(アメリカ)と、前哨戦ツール・ド・スイスで大会3連覇を果たした世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル)を揃えるランプレ・メリダにも注目だ。
ツール・ド・フランス2013総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 83h56'40"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +4'20"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'04"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +6'27"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +7'27"
6位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +11'42"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ) +12'17"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +15'26"
9位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +15'52"
10位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +17'39"
歴代のツール総合優勝者
2013年 クリス・フルーム(イギリス)
2012年 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)
2011年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2010年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ
2009年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2008年 カルロス・サストレ(スペイン)
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年 オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ
2005年ランス・アームストロング(アメリカ)
2004年ランス・アームストロング(アメリカ)
2003年ランス・アームストロング(アメリカ)
2002年ランス・アームストロング(アメリカ)
2001年ランス・アームストロング(アメリカ)
2000年ランス・アームストロング(アメリカ)
1999年ランス・アームストロング(アメリカ)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1996年 ビャルヌ・リース(デンマーク)
1995年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1994年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1993年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1991年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1990年 グレッグ・レモン(アメリカ)
text:Kei Tsuji
昨年ツール初制覇を果たしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が、ディフェンディングチャンピオンとして母国イギリス(出身はケニア)で3週間の闘いをスタートさせる。2月のツアー・オブ・オマーン総合優勝でシーズンを華々しくスタートさせたフルームは、その後ボルタ・ア・カタルーニャ総合6位、ツール・ド・ロマンディ総合優勝、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ開幕ステージ2連勝という成績を残している。
しかしフルームは連覇が懸かった6月のドーフィネで落車。大怪我は免れたものの、落車の影響もあって総合12位に。ポイント賞ではトップに立ったが、苦しみながら前哨戦を終えた。昨年ほどの好調ぶりではないことは自他ともに認めるところ。「今年はツールに向けたコンディショニングに苦労した」とフルームは記者会見で語っている。「ディフェンディングチャンピオンはより大きなプレッシャーを背負うことになる」とも。
「落車以前のペダリングを取り戻すために力を尽くした」と打ち明けているが、ツール前のトレーニング強度を下げたことで「いつもよりフレッシュな状態でツール2〜3週目に挑めると思う」と前向きに捉えている。
フルームの右腕を担うのは相棒リッチー・ポート(オーストラリア)だ。レースに復帰したばかりのセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)は落車骨折により欠場。ミケル・ニエベ(スペイン)やダビ・ロペスガルシア(スペイン)らが山岳ステージで強力にフルームをアシストする。
コンディショニングに不安を残すフルームに対し、全盛期の調子の良さを取り戻したのがアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)だ。大会3連覇を狙うチームスカイの勢いを止めるのは、2007年と2009年大会の覇者コンタドールと言っていいだろう。
コンタドールは2010年に3度目の総合優勝を果たしたが、ドーピング違反によって後にタイトルが剥奪されている。2012年にブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を飾ったものの、ツールでは目立った活躍を見せることが出来ず、2011年総合5位、2013年総合4位。
2013年シーズンわずか1勝に終わったコンタドールだが、2014年に入って息を吹き返した。ティレーノ〜アドリアティコとブエルタ・アル・パイスバスコで総合優勝を果たしており、強いコンタドールが帰ってきた感がある。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、ライバルを圧倒しながらも総合2位に入った。
直前になってロマン・クロイツィゲル(チェコ)欠場という痛いニュースが入ってきたが、ティンコフ・サクソはラファル・マイカ(ポーランド)やヘスス・エルナンデス(スペイン)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド)、マイケル・ロジャース(オーストラリア)らがコンタドールの山岳アシストを務めることになるだろう。
直前のイタリア選手権で初優勝し、イタリアチャンピオンとしてツールに挑むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は、フルームとコンタドールの二強に割って入る存在となるか。ニーバリは連覇が懸かったジロを蹴ってまでツールに集中している。
これまでジロとブエルタで総合優勝を果たしているニーバリのツールにおける最高位は2012年の総合3位。アスタナにはヤコブ・フグルサング(デンマーク)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア)、タネル・カンゲルト(エストニア)といった強力なアシスト陣が揃っている。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでビッグネームを退けて総合優勝を飾ったアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)も注目の的だ。タランスキーは2013年ツール総合10位。アメリカ人選手の中でマイアミ出身の25歳が最もマイヨジョーヌに近い存在だと言える。
同じくアメリカ出身の25歳ティージェイ・ヴァンガーデレンはBMCレーシングのエースとして出場。2012年大会で総合5位に入ってマイヨブランを獲得したヴァンガーデレンは、2013年ツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝。しかしツールでは総合45位に終わっている。
スペインからはコンタドールの他にも、順調な仕上がりを見せているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)や2013年総合9位のダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)らが出場。ジロを落車リタイアした2013年総合3位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)はブエルタを見据えながらツールを走る。
開催国フランスの威信をかけて、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)やティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)、ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)といったクライマー系オールラウンダーが総合上位を狙う。何と言ってもフランス人の総合優勝者は1985年のベルナール・イノー以降一人も出ていない。
2013年総合6位バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)の他、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、若き才能ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)も上位争いに絡んでくるだろう。2013年のブエルタ覇者クリストファー・ホーナー(アメリカ)と、前哨戦ツール・ド・スイスで大会3連覇を果たした世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル)を揃えるランプレ・メリダにも注目だ。
ツール・ド・フランス2013総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 83h56'40"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +4'20"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'04"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) +6'27"
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +7'27"
6位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +11'42"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ) +12'17"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +15'26"
9位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +15'52"
10位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +17'39"
歴代のツール総合優勝者
2013年 クリス・フルーム(イギリス)
2012年 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)
2011年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2010年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ
2009年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2008年 カルロス・サストレ(スペイン)
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年 オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1996年 ビャルヌ・リース(デンマーク)
1995年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1994年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1993年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1991年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1990年 グレッグ・レモン(アメリカ)
text:Kei Tsuji
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