2014/05/23(金) - 09:14
ベルギーの過酷なレース環境において技術と信頼を積み重ねてきたリドレー。今回のインプレッションバイクは、ミドルグレードのカーボンバイクである「FENIX」のアルミバージョンとして新登場した「FENIX AL」だ。カーボン全盛時代に新たにデビューしたアルミモデルの実力に迫る。
リドレー FENIX AL (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
古くはエディ・メルクスから、近くはトム・ボーネンや、フィリップ・ジルベールといった数多の名選手を輩出するベルギー。自転車競技を国技とするベルギーにおいて、トップレベルのロードバイクフレームを製作するブランドがリドレーだ。春先に開催され、ロードレースシーズンの本格的な開幕を告げるクラシックレースの中でも石畳や激坂といった過酷なセクションが登場する大会はほぼベルギーを舞台としていることからもわかるように、ベルギーのサイクリストはロードレーサーに対して非常に高い要求を持っている。
塗装工場にルーツを持つリドレーは、このようなお国事情の中で鍛え上げられてきた。例えば、リドレーは全てのバイクをパヴェの上で走行テストを行うことで、その耐久性を証明している。そういったものづくりへの姿勢があり、現在のグローバルブランドとしての成功を確たるものとしている。
ボリュームのあるヘッドチューブにはシフトケーブルの挿入口が設けられる
わずかにベンドするカーボン製フロントフォーク
リドレーのアイデンティティであるエッジチュービングをアルミで実現した
現在はプロツアーチームのロット・ベリソルにフレームを供給し、ロードレースの一線で活躍し続けるリドレー。ブレーキ内蔵エアロフレームの先駆けとなったNOAH FASTや、軽量ヒルクライムモデルのHELLIUM SLといったハイエンドモデルはもちろん、今回紹介するFENIX ALの原型となったFENIXもクラシックレースを中心にワールドツアーで活躍するほどのポテンシャルをもっている。
FENIX ALはそんなリドレーのロードバイクラインナップの一角を担うものとして、ワールドツアーで活躍するフレームからのフィードバックを受けて開発されている。リドレーの持つさまざまなテクノロジーがアルミフレームであるFENIX ALにも活かされているのだ。
応力集中による破損を防止するために溶接部は滑らかに仕上げられている
シフトが内蔵の一方、ブレーキケーブルは外出しとされている
シフトインナーケーブルはダウンチューブのBB付近で外に出される
チェーンステーは可能な限り太くすることで剛性を高めている
DAMOCLESやFENIXといった名車に連なるフレームとして、リドレーバイクの特徴ともいえる「エッジチュービング」をトップチューブとダウンチューブに採用。7005系アルミトリプルバテッドパイプをハイドロフォーミングによって成型することで、エッジの立った特徴的な迫力のあるエクステリアをもたらすと共に、エッジがリブとして作用することでねじれ剛性の向上に一役買っている。
また、ダウンチューブはヘッドチューブ側の接合部を縦に、BB側の接合部を横へ変形させることで、おのおのの接合部分を増大させている。この成型によって推進力を受け止めるフレームのボトムラインの剛性を向上させ、ライダーの踏力を余すところなく推進力へと変換する。
加えて、ヘッドチューブには上側1-1/8”、下側1-1/2”の上下異径のヘッドパーツを採用することでフロント周りの剛性向上を実現。ハンドリング性能を向上させ、さらには剛性強化によりブレーキングによるたわみも抑えることにより、高い制動力も獲得している。今では多くのロードレーサーが採用するこの規格だが、リドレーはかなり早い段階でこの規格の有効性に気づき導入してきたブランドだ。
リア三角は全て丸断面のチュービングとしている
ハンドル周りとサドルはリドレーのパーツブランドである4ZAで統一
ボリュームのあるヘッドチューブを利用して、工作されるシフトケーブル受けを介してシフトワイヤーが内装される。空気抵抗を減らすとともに、ケーブルの劣化を遅らせる効果が期待できる。FENIXと近い形状を持ち、フォーククラウン付近でベントするフロントフォークは荒れた路面でも振動を吸収しよりスムーズな走行を可能とすると共に、ストレートなフォークブレードにより、クイックなハンドリングを実現している。
ボリュームのあるヘッドチューブ、ダウンチューブ、トップチューブのフロントセクションに対し、リアセクションはHELIUMからのフィードバックによるシートステーを採用している。シートステー中央部分を横方向に薄く扁平加工させることで振動吸収性を大幅に向上させている。アルミフレームでありながら優れた衝撃吸収性を獲得している。
ボトムブラケットハンガーは近年珍しくなった、JIS規格を採用。トラディショナルな構造だが、トラブルが起こりづらく堅実な規格だ。アルミフレーム化による強度と耐久性の向上の結果、多少ラフな扱いにも耐えられる頑丈なモデルであるFENIX AL。その長所を伸ばすためにあえてトラディショナルな技術を採用し、トラブルリスクを軽減し信頼性を高めるという目的がわかりやすく好感が持てる。
赤白緑のトリコローレが至る箇所に配されている
フランドル地方の石畳で行われる厳しい開発テストを乗り越えて製品化された
シンプルなリアトライアングル。カラーリングはポッツァートが09年に乗っていたバイクと全く同じ
2013年の登場以来、高い人気を誇るFENIXのエンデュランスロードとしての性能をアルミ素材を使用しながら高いレベルで再現したFENIX AL。こだわりのカラーリングも魅力の一つ。過去にリドレーバイクが獲得したナショナルチャンピオンカラーをFENIX AL用にリメイクし復活させている。往年のリドレーファンには感涙もののカラーリングだろう。
販売パッケージとしては11速となった新型のシマノ105、ホイールに同WH-RS010を採用。今回は残念ながら新型105が間に合わず、インプレ車両には10速のシマノ105 、ホイールにR-500をアッセンブルしている。それでは早速インプレッションに移ろう。
―インプレッション
「1台目として長く付き合っていける」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
クラシックレースで使うというだけのことはあり、不整地路面でもはじかれるようなことはなく、荒れた路面でアタックをかけるような場面があれば最高のバイクになるでしょう。23~25Cといった、一般的なロードバイクタイヤで走れるようなコンディションの路面状況ではアドバンテージがあるでしょう。
直進安定性も高く、最近のロードバイクとしては標準的なコーナーリング特性を持っています。急に切れ込みすぎるような挙動はなく、初心者の方が乗るにあたっては穏やかで非常に安心感のある素直なステアリング特性を持っています。最近流行のグラベルグラインダーのような使い方もできるかもしれません。
より軽量・高剛性でキレのあるホイールを組み合わせれば、より下りのコーナーを攻めていく快感を味わえるでしょう。ブレーキングに関しても、フレームやフロントフォークがボトルネックとなっている部分はありません。アッセンブルされているブレーキを交換すれば、文句のつけようはないでしょう。
「1台目として長く付き合っていける」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
高いポテンシャルを持っているフレームなので、パーツを交換していけばフレームの持っている性能を最大限に引き出していくことができるでしょう。走行性能面以外でも、ハイドロフォーミングによって成型されたエッジの立ったフレームワークは独特で高級感があるため、所有欲を満たしてくれます。
ヒルクライムにおいても、重量面以外でのハンデはありません。ライダーの持てる力を受け止めて登っていってくれるバイクです。反応性に関しても、多少のしなやかさはあるもののきちんと踏んだ力を受け止めて前へ前へと進んでくれるので、アタックする場面でも不利には働きません。
重心が低く安定性が高いため、路面が荒れているレースやロングツーリングやブルベといったようなシチュエーションで非常に有利なバイクです。フレーム自体の性能が高いため、後々のグレードアップにも対応していくため、初心者の1台目として長く付き合っていける一台ではないでしょうか。
漫画の登場人物が乗っているということで人気が出ているモデルとのことですが、そういった選び方をしても後悔させないだけの性能は持っているバイクです。コストパフォーマンスだけを求めてスペック重視で買われた方よりも、見た目重視で買われた方のほうが、結果的に自転車を大事に長く乗っている場合が多いので、グラフィックが気に入ったなら買いの一台でしょう。
「路面からの衝撃を推進力に変えてしまう」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
インプレバイクはかなり小さめのサイズだったのですが、このサイズにありがちなぎこちない挙動は一切なく、非常に乗りやすいバイクでした。アルミバイクの中ではかなりやわらかい部類にはいる乗り心地です。
「路面からの衝撃を推進力に変えてしまう」山崎嘉貴(ブレアサイクリング) エッジのたったチュービングとは裏腹のやさしい乗り心地で荒れた路面でも跳ねないばかりか、路面からの衝撃を逆に推進力に変えてしまうぐらいの性能を持っているフレームです。路面追従性がよく、トラクションがかかりやすいので、初心者にもおすすめのバイクです。
路面にいい意味でべったりと吸い付くような乗り心地で、コーナーリング中も恐怖感がなく曲がっていける感覚をもたらしてくれるバイクです。旋回中に路面にギャップがあったとしてもそれをいなしてくれるため、非常に安心して乗っていられるでしょう。
登りについても、平地から登り区間への斜度の変化がある部分で速度がガクッと落ちるような感覚がなくスムーズに抜けていくことのできる自転車です。特にレースではそういった部分で足を使わされるバイクだとハンデを背負うことになりますが、そういったネガティブな部分はありません。おそらくこの特性は選手からのフィードバックによるものであると思われます。
平地や下りにおいても、きれいで平滑な路面状況であればアルミ的な硬さが顔を覗かせるのですが、荒れた状況になるほど、優れたトラクション性能を発揮し安定感のある乗り心地となります。このバイクの真価はそういったタフな路面状況でも進んでいくことができるという点にあるでしょう。
一つネガティブな部分をあげると、内蔵されたシフトケーブルがダウンチューブにあたって常に音が出ているということです。変速などの実際の性能には影響はありませんが、シャカシャカという音が常に鳴っているため、きちんとしたショップでライナーを通すなどして異音の発生を抑えてもらったほうが良いでしょう。
アッセンブルとしては柔らかい乗り心地のホイールがよいでしょう。アルミスポークの乗り味が固い車輪ではなくて、ステンレススポークやカーボンスポークのホイールが良いでしょう。タイヤも25cぐらいの太目のタイヤを履いて快適性にフォーカスしていくことで、ロングライドに特化したバイクとしてもよいかもしれません。
もちろん、アッセンブル次第ではレースでも使える性能をもっていると思います。特にエンデューロレース、それも速度が高めのサーキットでのレースが相性が良いのではないでしょうか。
リドレー FENIX AL (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
リドレー FENIX AL(JP14-A) (c)ジェイピースポーツグループ
リドレー FENIX AL(JP14-B) (c)ジェイピースポーツグループ
リドレー FENIX AL
サイズ : XXS、XS、S、M
フレーム素材 : トリプルバテッド7005アルミ
フレーム重量 : 1,230g
フォーク重量 : 560g
カラー: JP14-A(ベルギー)、JP14-B(オーストラリア)、JP14-C(イタリア)
コンポーネント:シマノ5800系105(11S)
価 格 :185,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
山崎嘉貴(ブレアサイクリング) 山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にある「ブレアサイクリング」店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリング
三上和志(サイクルハウスMIKAMI) 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:GRIDE
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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古くはエディ・メルクスから、近くはトム・ボーネンや、フィリップ・ジルベールといった数多の名選手を輩出するベルギー。自転車競技を国技とするベルギーにおいて、トップレベルのロードバイクフレームを製作するブランドがリドレーだ。春先に開催され、ロードレースシーズンの本格的な開幕を告げるクラシックレースの中でも石畳や激坂といった過酷なセクションが登場する大会はほぼベルギーを舞台としていることからもわかるように、ベルギーのサイクリストはロードレーサーに対して非常に高い要求を持っている。
塗装工場にルーツを持つリドレーは、このようなお国事情の中で鍛え上げられてきた。例えば、リドレーは全てのバイクをパヴェの上で走行テストを行うことで、その耐久性を証明している。そういったものづくりへの姿勢があり、現在のグローバルブランドとしての成功を確たるものとしている。
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現在はプロツアーチームのロット・ベリソルにフレームを供給し、ロードレースの一線で活躍し続けるリドレー。ブレーキ内蔵エアロフレームの先駆けとなったNOAH FASTや、軽量ヒルクライムモデルのHELLIUM SLといったハイエンドモデルはもちろん、今回紹介するFENIX ALの原型となったFENIXもクラシックレースを中心にワールドツアーで活躍するほどのポテンシャルをもっている。
FENIX ALはそんなリドレーのロードバイクラインナップの一角を担うものとして、ワールドツアーで活躍するフレームからのフィードバックを受けて開発されている。リドレーの持つさまざまなテクノロジーがアルミフレームであるFENIX ALにも活かされているのだ。
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また、ダウンチューブはヘッドチューブ側の接合部を縦に、BB側の接合部を横へ変形させることで、おのおのの接合部分を増大させている。この成型によって推進力を受け止めるフレームのボトムラインの剛性を向上させ、ライダーの踏力を余すところなく推進力へと変換する。
加えて、ヘッドチューブには上側1-1/8”、下側1-1/2”の上下異径のヘッドパーツを採用することでフロント周りの剛性向上を実現。ハンドリング性能を向上させ、さらには剛性強化によりブレーキングによるたわみも抑えることにより、高い制動力も獲得している。今では多くのロードレーサーが採用するこの規格だが、リドレーはかなり早い段階でこの規格の有効性に気づき導入してきたブランドだ。
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ボリュームのあるヘッドチューブ、ダウンチューブ、トップチューブのフロントセクションに対し、リアセクションはHELIUMからのフィードバックによるシートステーを採用している。シートステー中央部分を横方向に薄く扁平加工させることで振動吸収性を大幅に向上させている。アルミフレームでありながら優れた衝撃吸収性を獲得している。
ボトムブラケットハンガーは近年珍しくなった、JIS規格を採用。トラディショナルな構造だが、トラブルが起こりづらく堅実な規格だ。アルミフレーム化による強度と耐久性の向上の結果、多少ラフな扱いにも耐えられる頑丈なモデルであるFENIX AL。その長所を伸ばすためにあえてトラディショナルな技術を採用し、トラブルリスクを軽減し信頼性を高めるという目的がわかりやすく好感が持てる。
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販売パッケージとしては11速となった新型のシマノ105、ホイールに同WH-RS010を採用。今回は残念ながら新型105が間に合わず、インプレ車両には10速のシマノ105 、ホイールにR-500をアッセンブルしている。それでは早速インプレッションに移ろう。
―インプレッション
「1台目として長く付き合っていける」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
クラシックレースで使うというだけのことはあり、不整地路面でもはじかれるようなことはなく、荒れた路面でアタックをかけるような場面があれば最高のバイクになるでしょう。23~25Cといった、一般的なロードバイクタイヤで走れるようなコンディションの路面状況ではアドバンテージがあるでしょう。
直進安定性も高く、最近のロードバイクとしては標準的なコーナーリング特性を持っています。急に切れ込みすぎるような挙動はなく、初心者の方が乗るにあたっては穏やかで非常に安心感のある素直なステアリング特性を持っています。最近流行のグラベルグラインダーのような使い方もできるかもしれません。
より軽量・高剛性でキレのあるホイールを組み合わせれば、より下りのコーナーを攻めていく快感を味わえるでしょう。ブレーキングに関しても、フレームやフロントフォークがボトルネックとなっている部分はありません。アッセンブルされているブレーキを交換すれば、文句のつけようはないでしょう。
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高いポテンシャルを持っているフレームなので、パーツを交換していけばフレームの持っている性能を最大限に引き出していくことができるでしょう。走行性能面以外でも、ハイドロフォーミングによって成型されたエッジの立ったフレームワークは独特で高級感があるため、所有欲を満たしてくれます。
ヒルクライムにおいても、重量面以外でのハンデはありません。ライダーの持てる力を受け止めて登っていってくれるバイクです。反応性に関しても、多少のしなやかさはあるもののきちんと踏んだ力を受け止めて前へ前へと進んでくれるので、アタックする場面でも不利には働きません。
重心が低く安定性が高いため、路面が荒れているレースやロングツーリングやブルベといったようなシチュエーションで非常に有利なバイクです。フレーム自体の性能が高いため、後々のグレードアップにも対応していくため、初心者の1台目として長く付き合っていける一台ではないでしょうか。
漫画の登場人物が乗っているということで人気が出ているモデルとのことですが、そういった選び方をしても後悔させないだけの性能は持っているバイクです。コストパフォーマンスだけを求めてスペック重視で買われた方よりも、見た目重視で買われた方のほうが、結果的に自転車を大事に長く乗っている場合が多いので、グラフィックが気に入ったなら買いの一台でしょう。
「路面からの衝撃を推進力に変えてしまう」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
インプレバイクはかなり小さめのサイズだったのですが、このサイズにありがちなぎこちない挙動は一切なく、非常に乗りやすいバイクでした。アルミバイクの中ではかなりやわらかい部類にはいる乗り心地です。
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路面にいい意味でべったりと吸い付くような乗り心地で、コーナーリング中も恐怖感がなく曲がっていける感覚をもたらしてくれるバイクです。旋回中に路面にギャップがあったとしてもそれをいなしてくれるため、非常に安心して乗っていられるでしょう。
登りについても、平地から登り区間への斜度の変化がある部分で速度がガクッと落ちるような感覚がなくスムーズに抜けていくことのできる自転車です。特にレースではそういった部分で足を使わされるバイクだとハンデを背負うことになりますが、そういったネガティブな部分はありません。おそらくこの特性は選手からのフィードバックによるものであると思われます。
平地や下りにおいても、きれいで平滑な路面状況であればアルミ的な硬さが顔を覗かせるのですが、荒れた状況になるほど、優れたトラクション性能を発揮し安定感のある乗り心地となります。このバイクの真価はそういったタフな路面状況でも進んでいくことができるという点にあるでしょう。
一つネガティブな部分をあげると、内蔵されたシフトケーブルがダウンチューブにあたって常に音が出ているということです。変速などの実際の性能には影響はありませんが、シャカシャカという音が常に鳴っているため、きちんとしたショップでライナーを通すなどして異音の発生を抑えてもらったほうが良いでしょう。
アッセンブルとしては柔らかい乗り心地のホイールがよいでしょう。アルミスポークの乗り味が固い車輪ではなくて、ステンレススポークやカーボンスポークのホイールが良いでしょう。タイヤも25cぐらいの太目のタイヤを履いて快適性にフォーカスしていくことで、ロングライドに特化したバイクとしてもよいかもしれません。
もちろん、アッセンブル次第ではレースでも使える性能をもっていると思います。特にエンデューロレース、それも速度が高めのサーキットでのレースが相性が良いのではないでしょうか。
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リドレー FENIX AL
サイズ : XXS、XS、S、M
フレーム素材 : トリプルバテッド7005アルミ
フレーム重量 : 1,230g
フォーク重量 : 560g
カラー: JP14-A(ベルギー)、JP14-B(オーストラリア)、JP14-C(イタリア)
コンポーネント:シマノ5800系105(11S)
価 格 :185,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
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長野県飯田市にある「ブレアサイクリング」店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリング
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:GRIDE
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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