前日のダウンヒルに引き続き、オーストラリア北東部、クイーンズランド州のケアンズで開催されたMTBワールドカップXCO第2戦を、日本人選手達の活躍を中心にレポートする。



優勝したジュリアン・アブサロン(BMC) 。コース最奥部のロックセクションを下る優勝したジュリアン・アブサロン(BMC) 。コース最奥部のロックセクションを下る photo:Hiroyuki.NAKAGAWA


スタートで発生した落車の瞬間。右端に山本幸平(スペシャライズド)の姿が見えるスタートで発生した落車の瞬間。右端に山本幸平(スペシャライズド)の姿が見える photo:Hiroyuki.NAKAGAWA25日に開催されたDHに続き、26日はXCOが開催され、スペシャライズドからは山本幸平が登場した。開幕戦の南アフリカでは19位と好走したが、もうその順位で驚く事はなくなってしまった。世界のトップチームに在籍して3年目となる山本が求めているのは、夢ではなく、現実としてのトップ10入りであり、それはもう手の届くところにある。

コースサイドに横断幕を掲げていた山本幸平(スペシャライズド)のファンコースサイドに横断幕を掲げていた山本幸平(スペシャライズド)のファン photo:Hiroyuki.NAKAGAWAまた今期、ブリヂストンアンカーに移籍した斉藤亮がワールドカップ初挑戦としてケアンズ入り、U23を走るチームメイトの沢田時、同じくU23のフランスチャンピオン、ジュリアンと共にレースまでの調整を行った。

斉藤はクロスカントリースキー選手時代にワールドカップや多くのビッグレースを転戦していた経験から、独特の雰囲気に飲まれる事もなく、この舞台にやってきた事を噛み締めるようにコースをチェックしていた。一方の女子にはダウンヒル競技で10年以上、ワールドカップのトップランカーとして活躍してきた末政実緒がユニオールツールズの一員としてクロカンに転向、自身初めてとなるクロカン選手としての参戦となった。

後半のロックセクションを走る山本幸平(スペシャライズド)後半のロックセクションを走る山本幸平(スペシャライズド) photo:Hiroyuki.NAKAGAWAコースは全長4900mとスタートループが1600m。エリート男子は6周回、女子は5周回の設定だ。長い直線から4Xコースのような起伏のあるリズムセクション、そこから一気に登ってテクニカルな下りの岩場が3カ所、そこからハイスピードな林間セクションを下ってフィードに戻るレイアウトだ。

もの凄い勢いで進化するコースアレンジへの工夫はここでも例外ではなく、日本国内のコースでは考えられないような段差、急斜面、ジャンプなどが採用されていた。土曜日のダウンヒルでは最悪のマッドコンディションだったが、日曜日には路面もずいぶんと回復し、一部を除いてドライに近い状況でレースは争われた。

ワールドカップ初挑戦となった斉藤亮(ブリヂストン・アンカー)ワールドカップ初挑戦となった斉藤亮(ブリヂストン・アンカー) photo:Hiroyuki.NAKAGAWA太陽が照りつける中でスタートした男子エリートは、最初の直線で集団落車が発生、最前列の選手達はそのまま加速を続けたが、2列目だった山本幸平がこの落車に巻き込まれて、復帰した時には最後尾となる最悪のスタートとなってしまった。初参加の斉藤亮は後方からのスタートだったが、この落車を避けてスタートループに進む事ができた。

現在、最強の実力を持つニノ・シューター(スコット)がツール・ド・ロマンディ参加のためキャンセルとなったこのレース。2周目はトーマス・リッチャー(マルチバン・メリダ)を先頭にマルコ・フォンタナ(キャノンデール)、ジュリアン・アブサロン(BMC)と続く。

中盤、パンクで順位を下げたリッチャーに変わって、先頭はマティアス・フルッキガー(ストックリ)に。一時は30秒近く後続を引き離して独走態勢となったフルッキガーだが、それにアブサロンが追いついて後半はランデブーに。ファイナルラップの上りでアブサロンがスパートを決め、そのまま優勝。2位にフルッキガー、3位にマキシム・マロッテ(BHサンツアーKMC)が3位に入った。



ゴール直後、メディカルに直行した山本幸平(スペシャライズド)ゴール直後、メディカルに直行した山本幸平(スペシャライズド) photo:Hiroyuki.NAKAGAWA山本幸平(スペシャライズド)は左半身にたくさんの傷を負っていた山本幸平(スペシャライズド)は左半身にたくさんの傷を負っていた photo:Hiroyuki.NAKAGAWA



粘り強く追い上げを見せていた山本だが、後半に再び転倒「なんとか粘っていたんですけど、さすがに後半の転倒で気持ちが切れそうになりました」と苦しいレース展開で29位でフィッシュ。左半身の肩、腕、腰、足に酷い擦過傷を追っていた山本は、そのままメディカルセンターに直行して手当を受けた。ゴール直後は鎖骨の痛みを訴えていた山本だが、帰国後の診断で脱臼との診断が出ているが、「次戦は大丈夫と思います」とコメントしている。

初のワールドカップ参戦で-1Lapの44位となった斉藤は「完全にオーバーペースで走り続けるようなレースでした。下りの難しさなどは経験した事のないレベルで、本番の余裕が無い状態では試走の時のような走りができなかったです。もちろん悔しさもありますが、今回のレースでワールドカップのイメージはつかめたような気がしています。次につなげていきたいですね」と良い経験になったようだ。



クロカン初挑戦の末政実緒は-1Lapの26位

ダウンヒル選手らしい、豪快な下りを披露した末政実緒(ユニオールズツール)ダウンヒル選手らしい、豪快な下りを披露した末政実緒(ユニオールズツール) photo:Hiroyuki.NAKAGAWA


1周目のロックセクションで転倒してしまった沢田時(ブリヂストン・アンカー)1周目のロックセクションで転倒してしまった沢田時(ブリヂストン・アンカー) photo:Hiroyuki.NAKAGAWAダウンヒルからクロカンに転向しての初レースだった末政実緒(ユニオールツールズ)は「キツい、とってもキツいレースでした。スタートから凄いスピードで展開していくので、これはもう周回遅れになるんじゃないかって、スタートループでそう思いました。だけど、走り続けるうちに、だんだんと雰囲気がわかってきて、行けるところまでやってやろうって思いながら走りました」とコメント。新しいステップに向けて、良いスタートを切ったと言えるだろう。

U23に登場した沢田時(ブリヂストンアンカー)は1周回目のロックセクションで大きく転倒、その衝撃でチューブラータイヤがリムから外れ、復帰に大きくタイムロス。-1Lapの19位でレースを終えている。次戦のワールドカップXCOは舞台をヨーロッパに移し、5月24-25日にかけてチェコで開催予定だ。

その他中川カメラマンによるレース写真はフォトギャラリーから!



MTBワールドカップDHI第2戦 ケアンズ 結果
1位 ジュリアン・アブサロン(BMC) 
2位 マティアス・フルッキガー(ストックリ)
3位 マキシム・マロッテ(BHサンツアーKMC)
4位 ダニエル・マッコーネル(トレック)
5位 ホセ・ヘルミダ(マルチバン・メリダ)

29位 山本幸平(スペシャライズド)
44位 斉藤亮(ブリヂストンアンカー)
1h38:22
+0:16
+0:24
+0:28
+0:32

+8:47
-1Lap


photo&text:Hiroyuki.NAKAGAWA/SLm


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