第96回ツール・ド・フランスは、パリ・シャンゼリゼで逃げた別府史之(日本、スキル・シマノ)が敢闘賞を獲得する大健闘で幕を閉じた。ステージ優勝はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)。アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が2度目の総合優勝に輝いた。

チームメイトとシャンパングラスで乾杯するマイヨジョーヌのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)チームメイトとシャンパングラスで乾杯するマイヨジョーヌのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vosパリ・シャンゼリゼ通りに帰着するツール第21ステージは、例年通り、グランツールの最終日特有の和やかな雰囲気のスタートを切った。3週間闘い抜いた選手たちが、それぞれの健闘を讃えながらパリに向かって走るのが恒例だ。

選手たちは快晴のパリ郊外を平均35km/hに満たないスピードで駆け抜け、コンタドールを総合優勝に導いたアスタナチームは恒例のシャンパングラスで乾杯。グランツール最終日は優勝チームの凱旋レース的な要素が強く、パリ市内が近づくとアスタナが集団先頭に陣取った。

先頭グループを形成して逃げる別府史之(日本、スキル・シマノ)ら7名先頭グループを形成して逃げる別府史之(日本、スキル・シマノ)ら7名 photo:Makoto Ayanoツールの締めくくりは、シャンゼリゼ通り〜コンコルド広場〜テュイルリー庭園を通る6.5kmの特設コースを8周(52km)。この周回コース突入前のアタックは御法度で、マイヨジョーヌチームを先頭に、大歓声に包まれたシャンゼリゼ通りへ。1周目、実質的なレーススタートとともに、早速レースは動いた。

アスタナが牽引するメイン集団から我先に飛び出したのはシルヴァン・カルザッティ(フランス、アグリチュベル)。このアタックによってスピードが上がった集団から、続いて意を決した別府史之が飛び出した。

シャンゼリゼ周回コースで熱い走りを披露した別府史之(日本、スキル・シマノ)シャンゼリゼ周回コースで熱い走りを披露した別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoシャンゼリゼ通りで、凱旋門に向かって飛び出した別府史之。この動きにサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)やカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)ら6名が合流し、早速7名の先頭グループが形成。メイン集団はこの7名を先行させることでレースの沈静化を図った。

協力して逃げる7名の先頭グループはメイン集団を最大35秒引き離したが、スプリント狙いのチームコロンビア・HTCがメイン集団を牽引してタイム差をコントロール。別府史之は1つ目のスプリントポイントを2番手で通過し、積極的に先頭グループを引いて逃げた。

発射台レンショーとともに両手を挙げてゴールするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)発射台レンショーとともに両手を挙げてゴールするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vosしかし30秒で推移していたタイム差は、ゴールまで20kmを切ると縮小を開始。ゴールまで1周半を残して先頭グループから別府史之ら3名が飛び出し、諦めずに逃げ続けたが、最終周回突入後しばらくして吸収。力を出し尽くした別府史之は、ゴール5km手前で集団に飲み込まれた。

最後の集団スプリントに向け、チームコロンビア・HTCとガーミンの2チームが先頭を競り合うカタチでゴールへ。先行したガーミンからフラムルージュ(ラスト1km)でジョージ・ヒンカピー(アメリカ)が牽くコロンビアトレインが主導権を奪い、マーク・レンショー(オーストラリア)がカヴェンディッシュを連れ出して最終コーナーをクリア。

表彰台に上る4賞ジャージ受賞者、山岳賞ペッリツォッティ、ポイント賞フースホフト、総合優勝コンタドール、新人賞Aシュレク表彰台に上る4賞ジャージ受賞者、山岳賞ペッリツォッティ、ポイント賞フースホフト、総合優勝コンタドール、新人賞Aシュレク photo:Makoto Ayanoこのコーナリングが勝敗を分け、レンショーとカヴェンディッシュがライバルチームを引き離して最終ストレートでスプリント体勢に。タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)の追い上げは届かず、猛烈な勢いで突き進んだカヴェンディッシュが先頭でゴール。レンショーが2位に入り、ワンツー勝利を飾った。

カヴェンディッシュは圧巻のステージ6勝。スプリントでは負け無しの強さを見せたカヴェンディッシュと、山岳ステージでもポイントを稼いだトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)。マイヨヴェール争いは10ポイント差でフースホフトに軍配が上がった。

敢闘賞のトロフィーを受け取った別府史之(日本、スキル・シマノ)敢闘賞のトロフィーを受け取った別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoそしてコンタドールの総合優勝が決定。下馬評通り、コンタドールは安定した走りで自身2度目の総合優勝を掴み取った。現役復帰のランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)も総合3位に入り、アスタナが表彰台に2人を送り込むことに成功。ツールの未来を担うアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は総合2位に入り、マイヨブランを獲得した。

マイヨブラン・ア・ポワ・ルージュはフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)が獲得。山岳ステージでポイントを狙ってアタックを繰り返したペッリツォッティは総合敢闘賞に輝いている。

笑顔でシャンゼリゼ通りをパレード走行する新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)笑顔でシャンゼリゼ通りをパレード走行する新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano日本勢は新城幸也(Bboxブイグテレコム)が20位でフィニッシュ。残り5kmまで逃げ続けた別府史之は力尽きて集団から脱落し、27秒遅れの134位でレースを終えている。粘り強く逃げた別府史之は第21ステージ敢闘賞に輝いた。

日本人選手2人はただ完走するだけでなく、逃げをうち、集団スプリントで上位に絡み、そして敢闘賞を獲得した。フランス国内の注目度も高く、レース中盤までフミ&ユキヤの日本人コンビの姿を何度も国際映像が大映しに。3週間に渡る2人の挑戦は、成功のうちに幕を閉じた。

レースの模様はフォトギャラリーをご覧下さい!

ツール・ド・フランス2009第21ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h02'18"
2位 マーク・レンショー(オーストラリア、チームコロンビア・HTC)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
4位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
5位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
7位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
8位 マルコ・バンディエラ(イタリア、ランプレ)
9位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
10位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
20位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
134位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+27"

第21ステージ敢闘賞
別府史之(日本、スキル・シマノ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)85h48'35"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+4'11"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+5'24"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+6'01"
5位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+6'04"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+6'42"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+7'35"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+12'04"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+14'16"
10位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)+14'25"
112位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2h55'21"
129位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+3h16'44"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)280pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)270pts
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)172pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)210pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)135pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)126pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)85h52'46"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+3'24"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+10'05"

チーム総合成績
1位 アスタナ 256h02'58"
2位 ガーミン・スリップストリーム +22'35"
3位 サクソバンク +28'34"

総合敢闘賞
フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)

最新ニュース(全ジャンル)