2014/04/05(土) - 13:26
カンチェラーラ、サガン、ボーネンの三強が、大声援に包まれながら、パテルベルグを駆け上がるだろう。雨の予報も出ているロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)の見どころをチェックしておこう。
勝負を決める「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」
ロンド・ファン・フラーンデレン2014 image:www.rondevanvlaanderen.be「モニュメント」と呼ばれる世界を代表する5つのワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが、「クラシックの王様」の異名を持つロンド・ファン・フラーンデレンだ。
コッペンベルグでバイクを押す選手たち photo:Cor Vos1913年に第1回大会が開催され、今年で開催98回目。フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれるフランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」と言い切っていいだろう。自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上には黄色のフランドルフラッグが翻る。今年もフランドル地方の熱気はこのロンドで頂点に達する。
2013年 パテルベルグでバトルを繰り広げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vosロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。石畳に覆われた急坂がいくつも登場する。
スタート地点はブルージュで、フィニッシュ地点はレース博物館のあるオウデナールデ。昨年コースから取り払われた名物の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」は今年も登場しない。代わって「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースが勝負を決める。
今年は最大勾配22%の「コッペンベルグ」が例年よりもフィニッシュに近いのが特徴だ。渋滞によってバイクを押す選手が続出するこの激坂を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取りも重要なファクターを担うだろう。
連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。ゴールから13kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。
天気予報によれば、フィニッシュ地点オウデナールデの気温は最高18度、最低12度(昨年は最高6度、最低-1度)。曇り時々雨という予報が出ており、雨が降れば濡れた石畳が牙を剥く。フランドル地方特有の気まぐれな天候がレース展開に大きく影響するだろう。
ロンド・ファン・フラーンデレン2014 image:www.rondevanvlaanderen.be
登場する17カ所の急坂
1 109km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
2 119km地点 コルテケール アスファルト 平均6.4% 最大17.1% 長さ1000m
3 127km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
4 130km地点 ウォルヴェンベルグ アスファルト 平均6.8% 最大17.3% 長さ666m
5 142km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
6 163km地点 レベルグ アスファルト 平均6.1% 最大14% 長さ700m
7 171km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
8 181km地点 カペリイ アスファルト 平均5.5% 最大9% 長さ1000m
9 189km地点 カナリーベルグ アスファルト 平均7.7% 最大14% 長さ1000m
10 205km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
11 208km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
12 215km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
13 220km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
14 222km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
15 233km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m
16 243km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
17 246km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
今年も注目はカンチェラーラ、ボーネン、サガン
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele昨年「パテルベルグ」でペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)を力で引き離し、独走で2度目のロンド制覇を果たしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)は優勝候補の筆頭だ。
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleカンチェラーラは例年よりもコンディショニングが遅れ気味と見られていたが、ミラノ〜サンレモで2位の成績を残すと、その後のセミクラシックで調子の良さを見せた。まだシーズン0勝だが、連覇の懸かったロンドに向けて調子を合わせてきた。今年も独走のスイッチが入ったカンチェラーラを止める選手は現れないかも知れない。
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos同じく2度の優勝経験者であるチームメイトのステイン・デヴォルデル(ベルギー)はカンチェラーラにとって非常に心強い存在のはずだ。ベルギーチャンピオンの、セカンドエースとしての動きに注意したい。
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele初出場した2011年大会はDNFに終わったが、以後、2012年大会5位、2013年大会2位と、順調すぎるほどのステップアップを見せているサガンは、1週間前のE3ハレルベークで優勝し、ヘント〜ウェベルヘムで3位に。オスカル・ガット(イタリア)を従えての出場で、初の「モニュメント」制覇に向けて準備は整っている。
2005年、2006年、2012年大会の優勝者で、地元ベルギーの英雄トム・ボーネン(ベルギー)は、屈強なオメガファーマ・クイックステップのエースとして出場。仮に優勝を果たすことが出来れば、歴代最多4度目の勝利となる(現在ビュイス、マーニ、ルマン、ムセーウと並ぶ3勝)。
事前の記者会見でボーネンはトップコンディションに達していないことを打ち明けたが、昨年レース序盤に落車リタイアを喫しているだけに、ロンドの頂点へ返り咲くことに闘志を燃やしているはず。チームにはニキ・テルプストラ(オランダ)やゼネク・スティバル(チェコ)、ギヨーム・ファンケイルスブルク(ベルギー)ら、自らも勝利を狙えるアシストが揃っている。チームにとってシーズンで最も獲りたいタイトルに違いない。
もう一つのベルギーチーム、ロット・ベリソルはユルゲン・ルーランズ(ベルギー)とトニー・ギャロパン(フランス)の二枚看板。他にもセプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)らが地元での栄光を夢見て出場する。
アウトサイダーとしては、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)とともに出場するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)や、ワイルドカード枠で出場するIAMサイクリングのシルヴァン・シャヴァネル(フランス)らにも注目。展開によっては、春先から好調ぶりを見せているスプリンターのアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)らが上位に絡んでくるだろう。
text:Kei Tsuji
勝負を決める「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」
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スタート地点はブルージュで、フィニッシュ地点はレース博物館のあるオウデナールデ。昨年コースから取り払われた名物の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」は今年も登場しない。代わって「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースが勝負を決める。
今年は最大勾配22%の「コッペンベルグ」が例年よりもフィニッシュに近いのが特徴だ。渋滞によってバイクを押す選手が続出するこの激坂を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取りも重要なファクターを担うだろう。
連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。ゴールから13kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。
天気予報によれば、フィニッシュ地点オウデナールデの気温は最高18度、最低12度(昨年は最高6度、最低-1度)。曇り時々雨という予報が出ており、雨が降れば濡れた石畳が牙を剥く。フランドル地方特有の気まぐれな天候がレース展開に大きく影響するだろう。
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登場する17カ所の急坂
1 109km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
2 119km地点 コルテケール アスファルト 平均6.4% 最大17.1% 長さ1000m
3 127km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
4 130km地点 ウォルヴェンベルグ アスファルト 平均6.8% 最大17.3% 長さ666m
5 142km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
6 163km地点 レベルグ アスファルト 平均6.1% 最大14% 長さ700m
7 171km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
8 181km地点 カペリイ アスファルト 平均5.5% 最大9% 長さ1000m
9 189km地点 カナリーベルグ アスファルト 平均7.7% 最大14% 長さ1000m
10 205km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
11 208km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
12 215km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
13 220km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
14 222km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
15 233km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m
16 243km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
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今年も注目はカンチェラーラ、ボーネン、サガン
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2005年、2006年、2012年大会の優勝者で、地元ベルギーの英雄トム・ボーネン(ベルギー)は、屈強なオメガファーマ・クイックステップのエースとして出場。仮に優勝を果たすことが出来れば、歴代最多4度目の勝利となる(現在ビュイス、マーニ、ルマン、ムセーウと並ぶ3勝)。
事前の記者会見でボーネンはトップコンディションに達していないことを打ち明けたが、昨年レース序盤に落車リタイアを喫しているだけに、ロンドの頂点へ返り咲くことに闘志を燃やしているはず。チームにはニキ・テルプストラ(オランダ)やゼネク・スティバル(チェコ)、ギヨーム・ファンケイルスブルク(ベルギー)ら、自らも勝利を狙えるアシストが揃っている。チームにとってシーズンで最も獲りたいタイトルに違いない。
もう一つのベルギーチーム、ロット・ベリソルはユルゲン・ルーランズ(ベルギー)とトニー・ギャロパン(フランス)の二枚看板。他にもセプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)らが地元での栄光を夢見て出場する。
アウトサイダーとしては、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)とともに出場するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)や、ワイルドカード枠で出場するIAMサイクリングのシルヴァン・シャヴァネル(フランス)らにも注目。展開によっては、春先から好調ぶりを見せているスプリンターのアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)らが上位に絡んでくるだろう。
text:Kei Tsuji
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