2014/04/18(金) - 09:32
高度な技術力を基に、カーボンフレームが主流となったロードバイクフレーム市場において常に革新的な製品を世に送り出し続けてきたスコット。自転車界のトレンドセッターである同社が放つコンフォートフレームがSOLACE(ソレイス)だ。シリアスレーサーからの評価が高いスコットが放つ、その実力とは。
スコットの名を世に轟かせたのは、2004年に発表したフレーム重量880gという当時としては驚異の軽さを誇ったCR-1だ。10年後の現在でも一線級の重量を誇るこのモデルは、カーボンフレームのベンチマークとして競合他社の目標となった。だがスコットはそれに満足せず、3年後の2007年には更に軽量なレーシングモデル、フレーム重量790gのADDICT(アディクト)を発表した。まず、超軽量フレームという分野で大きな成功を収めることで、シリアスレーサーの支持を勝ち取ったのである。
次にスコットが目をつけたのがエアロダイナミクスというテーマ。メルセデス・ベンツF1チームとパートナシップを組み、徹底した風洞実験の結果生まれたのが、Foil(フォイル)だ。剛性バランスを犠牲にすることなく最大のエアロ効果を発揮する形状として、カムテール形状をいち早く採用したフォイル。その後、続々とカムテール形状のエアロダイナミクスバイクが登場しているのは、周知の事実だろう。
そんなスコットが次なるテーマとして取り上げたのがコンフォートバイクである。2010年にモデルチェンジした2代目CR-1がスコットのコンフォートラインを担っていたが、位置づけとしてはミドルレンジのフレームであり、トップレンジにおいて快適性を重視したフレームをこれまでラインナップされていなかった。
今回のテストバイクであるSolaceは、FoilやADDICTといったレーシングフレームと並ぶ位置づけの車種として展開されている。それは、ただ柔らかいだけコンフォートバイクではなく、長距離を高速かつ、快適に走り抜けるためのアグレッシブなレーサーとして開発開発されたことを意味するのだ。
スコットはSOLACEの開発にあたり、快適性と剛性という相反する要素をバランスさせるためにフレームの各部位を、ペダリング踏力を効率的に推進力に変換するための「パワーゾーン」と、積極的に振動を吸収し快適性を高めるための「コンフォートゾーン」という2つのカテゴリーに分け、それぞれの役割に沿った形状とし、カーボンレイアップの最適化を図った。
特にキモとなるコンフォートゾーンにおいて、最も目を引くポイントはシートチューブの横から伸びる極細のシートステーだ。リアエンドからシートチューブ集合部にかけてテーパーを描くチューブは最も細い部分で直径10.8mmと小指ほどの太さになっており、フレキシブルな動きを演出する。加えて、シートステーにはリアブレーキを配置せず、チェーンステー裏に取り付けられるダイレクトマウントブレーキを採用しているため、極細のチュービングでも安心したブレーキングができる。また過剰な剛性を持たないためにより快適な乗り心地を得ているのだ。
フロントフォークも衝撃吸収性を向上させるための設計が行われている。ブレード部分は適度にたわませるためのカーボンレイアップが施されており、不快な振動をライダーに伝えないようにフィルタリングしている。さらにフォークエンド部分を後方にオフセットさせ、小さなサスペンションのように動かすことで快適性をさらに高めている。
一方、ヘッドチューブからチェーンステーにかけてのパワーゾーンは、FoilやADDICT譲りのテクノロジーによって強化されている。下側1-1/4インチのテーパードヘッドチューブやBB86といった、各チューブのボリュームを増し、剛性向上に寄与する規格を採用することで、横方向へのたわみを抑えている。一見、細く見えるチェーンステーも左右非対称の設計となり、特に駆動側を強化することでパワーロスを防いでいる。
これらのテクノロジーを盛り込んだ結果、SOLACEは2代目CR-1と比較して、柔軟性を42%、剛性を17%向上させることに成功している。また、軽量フレームを得意とするスコットらしく、フレーム重量は890gと他社の最軽量バイク並となっていることも特徴的だ。エンデュランスモデルらしくヘッドチューブが長めであることも、コラムスペーサーを多用することなくリラックスしたポジションを可能としている。
SOLACEではカーボンレイアップを変えることで、異なるサイズでも同一の乗り味になるように調整されている。コストはかかるのだろうが、スコットの考える理想の「コンフォート」はどんな人にも通用するという自信の表れでもあるだろう。4種類の販売パッケージの中から今回チョイスしたテストバイクは、コンポーネントにシマノ105、ホイールに同WH-RS11を装備する「Solace 30」。それでは早速インプレッションに移ろう。
―インプレッション
「重量を感じさせない、軽やかな走行感がある」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
今回の試乗車に乗る前は重いというイメージを思っていたのですが、実際に乗ってみると軽快さが目立つバイクという印象を受けました。今年から新登場したコンフォートモデルということもあり、レーシングな乗り味ではないタレント性を持つバイクでした。
バイクの軽快さは踏み出しやハンドリングといった場面で感じましたね。バイクに乗せられているという感覚ではなくて、自分でバイクをコントロールしているという印象が強いです。フレームにコンフォートというタレント性を持たせたモデルで、ロングライドにマッチしていると思いますね。高いカーボン成型技術力を持つスコットだけあり、とても安心感のる乗り心地が仕上がっています。
また、フレームの形状に加え、他のバイク以上にカーボンの素材やレイアップが乗り味に影響していると思います。特にボトムブラケットシェルにはBB86を採用していますが、剛性が高いという訳ではなく、漕いだ時の感触はフレームでためを作るような柔らかさを持っていました。
そのため、このバイクは高ケイデンスでクイックなレスポンスを求めるよりも、トルクを掛けて踏み込んだ時にリズム良くできるでしょう。高ケイデンスでパワーを入力をした時はフレームにパワーが吸われている印象を受けました。一方で、荒いペダリングでも跳ね返されることがないので、疲れた時や初心者の方には優しく作られていますね。
ダイレクトマウントブレーキを採用はエアロ効果の向上とシートステーの柔軟性を向上を図っていますね。柔軟性を持ったリアバックは、短いストロークの中で振動が収束されるので、荒れた路面でも安心感を持って走行できることにつながっているのでしょう。一方で、フレームが柔軟なのでハンドリングはクイックではないです。コーナー手前で膨らみつつ、イン側に切り込んでいくアウト・イン・アウトを描く挙動になるでしょう。
ポジションが取りやすいジオメトリーや、柔らかいサドル、幅広なハンドル、長めのクランクはケイデンスを下げた時に踏み込みやすいように仕上げられていました。これはスコットのアジアンフィットの考えのもとにパーツアッセンブルが行われていますね。
完成車のパッケージのコストパフォーマンスは高いです。カーボンバイクに初めて乗ろうという方の手が届く価格帯でしょう。完成車からシマノのWH-9000やRS-81のC24などリムハイトが低くソフトな乗り味なクリンチャーホイールに変えることで、よりバイクの性能を楽しめると思いますね。
カーボンバイクが普及し始めてから随分と時間がたちましたが、コンフォートに乗り続けている人も納得できるほど評価が高いバイクでしょう。レーシングバイクが多く存在する中で、コンフォートバイクという立ち位置は楽しく自転車に乗ることを目的としているはずです。レーシングではなく乗りやすく楽しめるバイクを探している方にオススメです。
「全体が高いレベルでまとめられているロングライド向けバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
このバイクは要所ごとに剛性アップが図られているという印象はなく、乗りやすさを重視しているために全体でまとまっているという印象を受けました。やはり振動吸収性や安定感に優れているバイクですね。長い距離をマイペースで走りたい方にマッチしていると思います。
今回の試乗で一番光ったポイントは、振動吸収性ですね。最近のバイクは要所で剛性バランスを変化させて全体でまとめている一方で、Solaceはバイク全体が硬すぎず柔らかすぎない剛性になっています。特に、剛性を出し過ぎないようにヘッドチューブが小さいサイジングであるなど、あえて柔軟性を持たせている印象も受けますね。
一見したところのリアバックは非常に細い造形となっていますが、このセクションが群を抜いて振動をカットしているという感じは受けませんでしたね。やはり、バイク全体で振動を吸収しているという印象を受けます。一方で、パイプが細く力を入れた時はしなりが出ており、ダンシングをした時はためを作っていました。
細いリアバックにも見られるようにこのバイクはトルクをかけて前進していくタイプのバイクではないようです。一定のペースで淡々としたペダリングをした時は反応よく進んでくれました。そのため、ダンシングでグイグイと進むよりはシッティングで進んでいったほうが気持ちが良いです。
柔軟性を持たせているバイクはコーナーで踏ん張りがきかずに逃げていってしまうという印象があるかもしれませんが、ハンドリングは至ってニュートラルでした。クイックなハンドリングが苦手な直進安定性が高いバイクであり、レーシングバイクのようにコーナに切れ込むと、コーナー出口で膨らんでしまうため、速く走らせるには慣れが必要です。
長いヘッドチューブを持つジオメトリーや走行性能がロングライドに特化されており、ホノルルセンチュリーライドなど人と競わずに自分のペースで気持よく走りたい方向けのバイクに仕上げられています。ブルベやグランフォンドのような山あり荒れた路面ありのコースの場合は空気圧調整をするだけで更にストレスなく乗れますね。
パーツアッセンブルは内臓ケーブルやチェーンガードなど細かいギミックに最近のトレンドを取り入れていたり、メインコンポーネントがシマノで構成されていて安心感がありますね。突出した特徴は見当たりませんでしたが、全体のまとまりが高いレベルで実現されています。
軽量なホイールを履かせたり、25cタイヤで自分にマッチした空気圧を見つけることで、より気持ちよく走ってくれるバイクになるでしょう。リムハイトが高くエアロを追求してしまうと、状況が変化するようなロングライドでは対応できないかもしれないので、私は全てのまとまりが良い35mmハイトのカンパニョーロBORA35をおススメします。
ネガティブな要素が見当たらない完成度が高いこのバイクは、既にロードバイクに乗っており、これからカーボンバイクに乗り換えたい方におススメできます。その中でも、センチュリーライドのように自分のペースで気持よく走れるコース設定のロングライドが好きな方には最適でしょう。
スコット SOLACE 30
サイズ:47、49、52、54、56、58、61
フレーム:SOLACE CARBON,HMF FIBER
フォーク:HMFカーボンコラム
カラー:ブルー
コンポーネント:シマノ 105
ホイール:シマノ WH-RS11
重 量:8.06kg
※ワイヤー式/電動式変速両対応
価 格:250,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。
ショップHP
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウェア協力:レリック
text:Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
スコットの名を世に轟かせたのは、2004年に発表したフレーム重量880gという当時としては驚異の軽さを誇ったCR-1だ。10年後の現在でも一線級の重量を誇るこのモデルは、カーボンフレームのベンチマークとして競合他社の目標となった。だがスコットはそれに満足せず、3年後の2007年には更に軽量なレーシングモデル、フレーム重量790gのADDICT(アディクト)を発表した。まず、超軽量フレームという分野で大きな成功を収めることで、シリアスレーサーの支持を勝ち取ったのである。
次にスコットが目をつけたのがエアロダイナミクスというテーマ。メルセデス・ベンツF1チームとパートナシップを組み、徹底した風洞実験の結果生まれたのが、Foil(フォイル)だ。剛性バランスを犠牲にすることなく最大のエアロ効果を発揮する形状として、カムテール形状をいち早く採用したフォイル。その後、続々とカムテール形状のエアロダイナミクスバイクが登場しているのは、周知の事実だろう。
そんなスコットが次なるテーマとして取り上げたのがコンフォートバイクである。2010年にモデルチェンジした2代目CR-1がスコットのコンフォートラインを担っていたが、位置づけとしてはミドルレンジのフレームであり、トップレンジにおいて快適性を重視したフレームをこれまでラインナップされていなかった。
今回のテストバイクであるSolaceは、FoilやADDICTといったレーシングフレームと並ぶ位置づけの車種として展開されている。それは、ただ柔らかいだけコンフォートバイクではなく、長距離を高速かつ、快適に走り抜けるためのアグレッシブなレーサーとして開発開発されたことを意味するのだ。
スコットはSOLACEの開発にあたり、快適性と剛性という相反する要素をバランスさせるためにフレームの各部位を、ペダリング踏力を効率的に推進力に変換するための「パワーゾーン」と、積極的に振動を吸収し快適性を高めるための「コンフォートゾーン」という2つのカテゴリーに分け、それぞれの役割に沿った形状とし、カーボンレイアップの最適化を図った。
特にキモとなるコンフォートゾーンにおいて、最も目を引くポイントはシートチューブの横から伸びる極細のシートステーだ。リアエンドからシートチューブ集合部にかけてテーパーを描くチューブは最も細い部分で直径10.8mmと小指ほどの太さになっており、フレキシブルな動きを演出する。加えて、シートステーにはリアブレーキを配置せず、チェーンステー裏に取り付けられるダイレクトマウントブレーキを採用しているため、極細のチュービングでも安心したブレーキングができる。また過剰な剛性を持たないためにより快適な乗り心地を得ているのだ。
フロントフォークも衝撃吸収性を向上させるための設計が行われている。ブレード部分は適度にたわませるためのカーボンレイアップが施されており、不快な振動をライダーに伝えないようにフィルタリングしている。さらにフォークエンド部分を後方にオフセットさせ、小さなサスペンションのように動かすことで快適性をさらに高めている。
一方、ヘッドチューブからチェーンステーにかけてのパワーゾーンは、FoilやADDICT譲りのテクノロジーによって強化されている。下側1-1/4インチのテーパードヘッドチューブやBB86といった、各チューブのボリュームを増し、剛性向上に寄与する規格を採用することで、横方向へのたわみを抑えている。一見、細く見えるチェーンステーも左右非対称の設計となり、特に駆動側を強化することでパワーロスを防いでいる。
これらのテクノロジーを盛り込んだ結果、SOLACEは2代目CR-1と比較して、柔軟性を42%、剛性を17%向上させることに成功している。また、軽量フレームを得意とするスコットらしく、フレーム重量は890gと他社の最軽量バイク並となっていることも特徴的だ。エンデュランスモデルらしくヘッドチューブが長めであることも、コラムスペーサーを多用することなくリラックスしたポジションを可能としている。
SOLACEではカーボンレイアップを変えることで、異なるサイズでも同一の乗り味になるように調整されている。コストはかかるのだろうが、スコットの考える理想の「コンフォート」はどんな人にも通用するという自信の表れでもあるだろう。4種類の販売パッケージの中から今回チョイスしたテストバイクは、コンポーネントにシマノ105、ホイールに同WH-RS11を装備する「Solace 30」。それでは早速インプレッションに移ろう。
―インプレッション
「重量を感じさせない、軽やかな走行感がある」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
今回の試乗車に乗る前は重いというイメージを思っていたのですが、実際に乗ってみると軽快さが目立つバイクという印象を受けました。今年から新登場したコンフォートモデルということもあり、レーシングな乗り味ではないタレント性を持つバイクでした。
バイクの軽快さは踏み出しやハンドリングといった場面で感じましたね。バイクに乗せられているという感覚ではなくて、自分でバイクをコントロールしているという印象が強いです。フレームにコンフォートというタレント性を持たせたモデルで、ロングライドにマッチしていると思いますね。高いカーボン成型技術力を持つスコットだけあり、とても安心感のる乗り心地が仕上がっています。
また、フレームの形状に加え、他のバイク以上にカーボンの素材やレイアップが乗り味に影響していると思います。特にボトムブラケットシェルにはBB86を採用していますが、剛性が高いという訳ではなく、漕いだ時の感触はフレームでためを作るような柔らかさを持っていました。
そのため、このバイクは高ケイデンスでクイックなレスポンスを求めるよりも、トルクを掛けて踏み込んだ時にリズム良くできるでしょう。高ケイデンスでパワーを入力をした時はフレームにパワーが吸われている印象を受けました。一方で、荒いペダリングでも跳ね返されることがないので、疲れた時や初心者の方には優しく作られていますね。
ダイレクトマウントブレーキを採用はエアロ効果の向上とシートステーの柔軟性を向上を図っていますね。柔軟性を持ったリアバックは、短いストロークの中で振動が収束されるので、荒れた路面でも安心感を持って走行できることにつながっているのでしょう。一方で、フレームが柔軟なのでハンドリングはクイックではないです。コーナー手前で膨らみつつ、イン側に切り込んでいくアウト・イン・アウトを描く挙動になるでしょう。
ポジションが取りやすいジオメトリーや、柔らかいサドル、幅広なハンドル、長めのクランクはケイデンスを下げた時に踏み込みやすいように仕上げられていました。これはスコットのアジアンフィットの考えのもとにパーツアッセンブルが行われていますね。
完成車のパッケージのコストパフォーマンスは高いです。カーボンバイクに初めて乗ろうという方の手が届く価格帯でしょう。完成車からシマノのWH-9000やRS-81のC24などリムハイトが低くソフトな乗り味なクリンチャーホイールに変えることで、よりバイクの性能を楽しめると思いますね。
カーボンバイクが普及し始めてから随分と時間がたちましたが、コンフォートに乗り続けている人も納得できるほど評価が高いバイクでしょう。レーシングバイクが多く存在する中で、コンフォートバイクという立ち位置は楽しく自転車に乗ることを目的としているはずです。レーシングではなく乗りやすく楽しめるバイクを探している方にオススメです。
「全体が高いレベルでまとめられているロングライド向けバイク」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
このバイクは要所ごとに剛性アップが図られているという印象はなく、乗りやすさを重視しているために全体でまとまっているという印象を受けました。やはり振動吸収性や安定感に優れているバイクですね。長い距離をマイペースで走りたい方にマッチしていると思います。
今回の試乗で一番光ったポイントは、振動吸収性ですね。最近のバイクは要所で剛性バランスを変化させて全体でまとめている一方で、Solaceはバイク全体が硬すぎず柔らかすぎない剛性になっています。特に、剛性を出し過ぎないようにヘッドチューブが小さいサイジングであるなど、あえて柔軟性を持たせている印象も受けますね。
一見したところのリアバックは非常に細い造形となっていますが、このセクションが群を抜いて振動をカットしているという感じは受けませんでしたね。やはり、バイク全体で振動を吸収しているという印象を受けます。一方で、パイプが細く力を入れた時はしなりが出ており、ダンシングをした時はためを作っていました。
細いリアバックにも見られるようにこのバイクはトルクをかけて前進していくタイプのバイクではないようです。一定のペースで淡々としたペダリングをした時は反応よく進んでくれました。そのため、ダンシングでグイグイと進むよりはシッティングで進んでいったほうが気持ちが良いです。
柔軟性を持たせているバイクはコーナーで踏ん張りがきかずに逃げていってしまうという印象があるかもしれませんが、ハンドリングは至ってニュートラルでした。クイックなハンドリングが苦手な直進安定性が高いバイクであり、レーシングバイクのようにコーナに切れ込むと、コーナー出口で膨らんでしまうため、速く走らせるには慣れが必要です。
長いヘッドチューブを持つジオメトリーや走行性能がロングライドに特化されており、ホノルルセンチュリーライドなど人と競わずに自分のペースで気持よく走りたい方向けのバイクに仕上げられています。ブルベやグランフォンドのような山あり荒れた路面ありのコースの場合は空気圧調整をするだけで更にストレスなく乗れますね。
パーツアッセンブルは内臓ケーブルやチェーンガードなど細かいギミックに最近のトレンドを取り入れていたり、メインコンポーネントがシマノで構成されていて安心感がありますね。突出した特徴は見当たりませんでしたが、全体のまとまりが高いレベルで実現されています。
軽量なホイールを履かせたり、25cタイヤで自分にマッチした空気圧を見つけることで、より気持ちよく走ってくれるバイクになるでしょう。リムハイトが高くエアロを追求してしまうと、状況が変化するようなロングライドでは対応できないかもしれないので、私は全てのまとまりが良い35mmハイトのカンパニョーロBORA35をおススメします。
ネガティブな要素が見当たらない完成度が高いこのバイクは、既にロードバイクに乗っており、これからカーボンバイクに乗り換えたい方におススメできます。その中でも、センチュリーライドのように自分のペースで気持よく走れるコース設定のロングライドが好きな方には最適でしょう。
スコット SOLACE 30
サイズ:47、49、52、54、56、58、61
フレーム:SOLACE CARBON,HMF FIBER
フォーク:HMFカーボンコラム
カラー:ブルー
コンポーネント:シマノ 105
ホイール:シマノ WH-RS11
重 量:8.06kg
※ワイヤー式/電動式変速両対応
価 格:250,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。
ショップHP
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
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ウェア協力:レリック
text:Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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