2014/03/12(水) - 11:00
2012年3月12日から18日までの7日間、イタリアで第49回ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)が開催される。グランツールにも勝る豪華な布陣が集まる「二つの海のレース」に、今年は新城幸也(ユーロップカー)が出場。グランツールを見据える全日本チャンピオンの走りに注目したい。
密度の濃い1週間のレースはさながら「ミニ・ジロ」
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCS Sportが主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、半島を横断してアドリア海沿岸に至る。2つの海を結ぶその行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力スプリンターやオールラウンダーたちが大勢出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分ける。
近年は個人タイムトライアルや山岳ステージが積極的に取り入れられ、オールラウンダーによる本格的な総合争いが見どころとなっている。1週間の闘いの始まりを告げるのは、ティレニア海に近いドノラティコを舞台にした18.5kmのチームタイムトライアルだ。
最速タイムで平坦コースを駆け抜けたチームの、先頭でフィニッシュラインを切った選手が、海を表現した青いリーダージャージを着て翌日のスタートラインに立つ。ピサの近くにフィニッシュする第2ステージは数少ないスプリンター向きの平坦ステージだ。
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)の生まれ故郷アレッツォにフィニッシュする第3ステージは一見平坦だが、残り1kmの平均勾配は5%。石畳が敷かれた最大11%の登りをクリアしてフィニッシュラインにたどり着く。ピュアスプリンターではなく、登りで鋭いアタックを決めるようなパンチャー系の選手に有利なレイアウトだ。
チッタレアーレにあるスキー場セルヴァロトンダにフィニッシュする第4ステージは今大会のクイーンステージ。距離も244kmと長く、標高のあるGPM(カテゴリー山岳)が後半にかけて3つ連続する。標高1535mにあるスキー場に向かって、距離14km/平均勾配5.3%の登りを駆け上がる。トップオールラウンダーたちの競演に注目したい。
"ティレーノらしさ"が詰まっているのが第5ステージ。注目はゴール29km手前のランチャーノ峠ではなく、残り1.4kmから始まる長さ610mの「ムーロ・ディ・グアルディアグレーレ」だ。平均勾配22.2%・最大勾配30%という正真正銘の「壁」を越え、さらに12%の短い登りを経てようやくフィニッシュ。この「壁」が勝負の行方を分からないものにする。
平坦な第6ステージをこなし、もはや定番化している第7ステージのサンベネデットデルトロント9.1km個人タイムトライアルで1週間の闘いは幕を閉じる。チームTT、石畳フィニッシュ、標高1535mのスキー場フィニッシュ、最大30%の壁、そして最終個人TTが、総合争いにおけるポイントだ。
ティレーノ〜アドリアティコ2014ステージリスト
3月12日(水)第1ステージ ドノラティコ〜サンヴィンチェンツォ 18.5km(チームTT)
3月13日(木)第2ステージ サンヴィンチェンツォ〜カシーナ 166km
3月14日(金)第3ステージ カシーナ〜アレッツォ 210km
3月15日(土)第4ステージ インディカトーレ〜チッタレアーレ 244km
3月16日(日)第5ステージ アマトリーチェ〜グアルディアグレーレ 192km
3月17日(月)第6ステージ ブッキアーニコ〜ポルトサンテルピディオ 187km
3月18日(火)第7ステージ サンベネデットデルトロント 9.1km(個人TT)
トップオールラウンダーの集結で激戦必至の総合争い
第49回大会に出場するのは、18あるUCIプロチームに、ワイルドカード枠で出場するバルディアーニ・CSF、MTNキュベカ、IAMサイクリング、ネットアップ・エンデューラを加えた22チーム。参照→スタートリスト(.pdf)。
ディフェンディングチャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は現在パリ〜ニース参戦中。だからと言って魅力が半減したとは言えない。むしろパリ〜ニースよりもずっと濃いメンバーがイタリアレース制覇を目論んでいる。
昨年のパリ〜ニース覇者リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)は、フルームに代わって急遽ティレーノ〜アドリアティコでエースを担うことに。ジロ・デ・イタリアを見据えるポートは、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)という心強い伴侶を得て、初日のチームTTから有利にレースを進めるはずだ。
この数年でメキメキと力を付け、ストラーデビアンケを制したばかりのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)はまさに時の人。リゴベルト・ウラン(コロンビア)を従えての出場で、山岳ステージで主導権を握ることも考えられる。
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)ら、登坂力に秀でたスパニッシュライダーの他、昨年ツール・ド・フランス総合2位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)といったコロンビア勢からも目が離せない。
地元イタリア勢としてはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)やイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)らが有力。
他にも、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者クリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)、ポートと同じくジロ狙いのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、リエージュ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)ら、名前を上げるとキリがないほどのトップ選手が集う。
豪華なのはスプリンターも同じ。マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)という世界の三強がイタリアで激突する。
ここにペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)、アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)がどう絡んでくるかに注目したい。
また、最終日の個人タイムトライアルでは、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)の三大TTスペシャリストの勝負の行方にも注目だ。
全日本チャンピオン新城幸也(ユーロップカー)は、このティレーノ〜アドリアティコでヨーロッパでのレース活動を再開する。タイ合宿を終えたばかりの新城の仕上がりは如何に。2つのグランツール出場も見据えた新城の本格的なシーズンが始まる。
text:Kei Tsuji
密度の濃い1週間のレースはさながら「ミニ・ジロ」
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCS Sportが主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、半島を横断してアドリア海沿岸に至る。2つの海を結ぶその行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力スプリンターやオールラウンダーたちが大勢出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分ける。
近年は個人タイムトライアルや山岳ステージが積極的に取り入れられ、オールラウンダーによる本格的な総合争いが見どころとなっている。1週間の闘いの始まりを告げるのは、ティレニア海に近いドノラティコを舞台にした18.5kmのチームタイムトライアルだ。
最速タイムで平坦コースを駆け抜けたチームの、先頭でフィニッシュラインを切った選手が、海を表現した青いリーダージャージを着て翌日のスタートラインに立つ。ピサの近くにフィニッシュする第2ステージは数少ないスプリンター向きの平坦ステージだ。
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)の生まれ故郷アレッツォにフィニッシュする第3ステージは一見平坦だが、残り1kmの平均勾配は5%。石畳が敷かれた最大11%の登りをクリアしてフィニッシュラインにたどり着く。ピュアスプリンターではなく、登りで鋭いアタックを決めるようなパンチャー系の選手に有利なレイアウトだ。
チッタレアーレにあるスキー場セルヴァロトンダにフィニッシュする第4ステージは今大会のクイーンステージ。距離も244kmと長く、標高のあるGPM(カテゴリー山岳)が後半にかけて3つ連続する。標高1535mにあるスキー場に向かって、距離14km/平均勾配5.3%の登りを駆け上がる。トップオールラウンダーたちの競演に注目したい。
"ティレーノらしさ"が詰まっているのが第5ステージ。注目はゴール29km手前のランチャーノ峠ではなく、残り1.4kmから始まる長さ610mの「ムーロ・ディ・グアルディアグレーレ」だ。平均勾配22.2%・最大勾配30%という正真正銘の「壁」を越え、さらに12%の短い登りを経てようやくフィニッシュ。この「壁」が勝負の行方を分からないものにする。
平坦な第6ステージをこなし、もはや定番化している第7ステージのサンベネデットデルトロント9.1km個人タイムトライアルで1週間の闘いは幕を閉じる。チームTT、石畳フィニッシュ、標高1535mのスキー場フィニッシュ、最大30%の壁、そして最終個人TTが、総合争いにおけるポイントだ。
ティレーノ〜アドリアティコ2014ステージリスト
3月12日(水)第1ステージ ドノラティコ〜サンヴィンチェンツォ 18.5km(チームTT)
3月13日(木)第2ステージ サンヴィンチェンツォ〜カシーナ 166km
3月14日(金)第3ステージ カシーナ〜アレッツォ 210km
3月15日(土)第4ステージ インディカトーレ〜チッタレアーレ 244km
3月16日(日)第5ステージ アマトリーチェ〜グアルディアグレーレ 192km
3月17日(月)第6ステージ ブッキアーニコ〜ポルトサンテルピディオ 187km
3月18日(火)第7ステージ サンベネデットデルトロント 9.1km(個人TT)
トップオールラウンダーの集結で激戦必至の総合争い
第49回大会に出場するのは、18あるUCIプロチームに、ワイルドカード枠で出場するバルディアーニ・CSF、MTNキュベカ、IAMサイクリング、ネットアップ・エンデューラを加えた22チーム。参照→スタートリスト(.pdf)。
ディフェンディングチャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は現在パリ〜ニース参戦中。だからと言って魅力が半減したとは言えない。むしろパリ〜ニースよりもずっと濃いメンバーがイタリアレース制覇を目論んでいる。
昨年のパリ〜ニース覇者リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)は、フルームに代わって急遽ティレーノ〜アドリアティコでエースを担うことに。ジロ・デ・イタリアを見据えるポートは、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)という心強い伴侶を得て、初日のチームTTから有利にレースを進めるはずだ。
この数年でメキメキと力を付け、ストラーデビアンケを制したばかりのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)はまさに時の人。リゴベルト・ウラン(コロンビア)を従えての出場で、山岳ステージで主導権を握ることも考えられる。
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)ら、登坂力に秀でたスパニッシュライダーの他、昨年ツール・ド・フランス総合2位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)といったコロンビア勢からも目が離せない。
地元イタリア勢としてはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)やイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)らが有力。
他にも、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者クリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)、ポートと同じくジロ狙いのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、リエージュ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)ら、名前を上げるとキリがないほどのトップ選手が集う。
豪華なのはスプリンターも同じ。マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)という世界の三強がイタリアで激突する。
ここにペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)、アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)がどう絡んでくるかに注目したい。
また、最終日の個人タイムトライアルでは、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)の三大TTスペシャリストの勝負の行方にも注目だ。
全日本チャンピオン新城幸也(ユーロップカー)は、このティレーノ〜アドリアティコでヨーロッパでのレース活動を再開する。タイ合宿を終えたばかりの新城の仕上がりは如何に。2つのグランツール出場も見据えた新城の本格的なシーズンが始まる。
text:Kei Tsuji
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