2014/02/12(水) - 16:30
今シーズンのワールドカップ7戦中5戦で勝利し、シリーズチャンピオンに輝いたケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・シクロクロスコレクティブ)。レース翌日にインタビューを行い、レースのこと、普段のこと、新バイク、トレーニングについて聞いた。
インタビューを行ったのはレース翌日、招待選手が宿泊していたホテルのロビーでのこと。「ちょっと今はレースの疲れがあるけれど、これでシーズンが終わったので気は楽」と、現アメリカナショナル兼UCIワールドカップシリーズチャンピオンは終止柔らかい表情で言う。
シクロクロス東京はどんなレースでしたか?
こうなるだろう、と予想していたよりも実際はかなりハードでとてもテクニカルなコースでしたね。林間セクションは根っこと泥で滑り、砂は体力を削いでくる。でも様々なシチュエーションがあって個人的にはとても楽しめました。
サンドセクションに関して言うと、アメリカの砂とも、ベルギーで有名なコクサイデ(ベルギー)の砂とも違うトリッキーさがお台場の特徴。ベルギーの砂は重たく一度轍に入ると比較的走りやすく、アメリカの砂は基本的にサラサラとしているのであまりラインを気にすること無く走りやすいことが特徴です。
でも昨日のお台場の砂はその中間。走る轍を1本に限定しなくても良いけれど、でも全てを無視して走れるほどには軽くない。砂がやや重いから一度ラインを外すと復帰が難しいという走りづらさがありました。本当の意味でパワーライダー向けの砂だと思いますね。私にとってフィットするコースでした。もう少し距離が長ければより良いかなとは思いましたが、ギャラリーにとっては選手たちをより多く見れるから良かったと思います。全てのサポートや応援が力になりました。
攻略のポイントとしては、踏みどころと休みどころを作ること。砂浜は100%の力で走って、ホームストレートでは回復する。ただ闇雲に走っただけではすぐに体力を消費してしまいますよね。
1週間前の世界選手権前後では花粉アレルギーから来る喘息が出てしまって、脚の調子が良いのに呼吸がうまくできず酷いレースになってしまいました。落ち込んだしイライラしたけど、今回のレースでは体調の心配をすることなく追い込むことができました。良いパフォーマンスで走ることができて良かった。
—雪は特に気になりませんでしたか?
アメリカではコロラドに住んでいるので雪は慣れたもの。東京はシャットダウン状態になったけれど、個人的にはこんなシチュエーションでスノーレースができるなんて!と興奮していたの(笑)。
—新しいバイク、Booneについて教えて下さい。開発にも携わったそうですね。
一言で言うと、「最高」のバイク。新しいジオメトリーを採用していてハンドリングも良いし、IsoSpeedのおかげで悪路でもスムーズだし、何と言っても最高に良く走ります。トレックは本当に良くやってくれたと思う。このバイクに乗ることができてとても嬉しいですね。
開発に関してはジオメトリーのセッティングを担当していました。最初に乗った時には今までのバイクとは違いすぎて本当に驚きました。こんなに良いバイクをテストでは使っていたのに、発表前のレースでは乗れなかったのが辛かったですね(笑)。
—特に気に入っている部分はどこですか?
1カ所に限定するのは難しい!もちろん純粋なレースバイクならではのアグレッシブなポジションもそうだし、テクニカルセクションで楽ができる安定したハンドリング、とにかく完成度が高いので、どんなところでも走れます。普段MTBで走るようなシングルトラックにも行きますし。乗っていて楽しさのあるバイクです。
—バイクのセッティングについて教えて下さい。特に皆は空気圧について知りたいと思いますが。
日曜日は気温が上がってスリッピーだったから、おそらく1.1〜1.2気圧くらい。指でタイヤを押してリムにつくぐらいがベストでした。アドバイスとしては、そのコースの最も難しいセクションにあわせて圧を調整することですね。
—かなり前傾姿勢を意識したポジションですね?
そう。大多数の人よりもアグレッシブなポジションで、主に下ハンドルを持つことが多いです。52サイズを使って120mmステムと前に出したサドル、175mmクランクというセッティングですね。
—シフトレバーには滑り止めのコーディングをしていますね。
余りに寒いとシフトミスをするので、それを防ぐためにマットが考えた工作です。このコーディングをしてからは滑ることがなくなりました。サンドペーパーを貼り付けたこともあったけれどイマイチで、これは特にオススメ。疲れている時にも効果抜群です(笑)。
—ディスクブレーキは使わないのですか?
ブレーキが効きすぎてしまうので、まだ個人的にディスクブレーキを好きになれずカンチブレーキ仕様車を使っています。ディスクブレーキだとフレームもホイールも重くなるし、今シーズンの序盤にはカンチかディスクかを決めてくれとトレックに言われましたが、メンテナンスのことも考えてよりシンプルなカンチにしたんです。もちろん今シーズンも幾つかのレースではディスクブレーキの方が適している場面もありましたけどね。でも仕様を選択できるようにしてくれたトレックには感謝していますよ。
—トレックのサポート体制について教えて下さい。
他のブランドと比べて、細かな要求に対してとてもフレキシブルに動いてくれることが特徴ですね。Booneの開発に携わらせてくれたし、私にも、他の選手に対してもサポートが手厚い。トレックとサポート選手との関係は家族のようなもので、皆とても良い関係を保てています。
—ヨーロッパのトップレースを走るときは何台のバイクを使っているんですか?
だいたい4台です。多いでしょ!(笑)。レースのコンディションにもよりますが、ひどい泥レースでは半周(=ダブルピット)毎にバイク交換をするので、洗車や調整が追いつかない場面がありますからね。ドライレースでは1台がレース用、2台がピット、1台がローラー台用と分けています。私は良いけれど、(夫でメカニックの)マットが大変なの(笑)。
—メカニックにとっては月曜日が一番忙しいのでは?
本当にそう!全てのバイクのケーブル、ハウジング、ベアリングにブレーキパッド…とにかく全部をフル整備するの。特にベルギーはいつもウェットコンディションだからブロワーとウエスでタイヤとホイールの砂を飛ばして乾かして…。
これをしないと5日後にはタイヤに水が浸みてしまって使い物にならなくなる。私の家族もバンを掃除したり、ウェアの洗濯したりと色々手伝ってくれています。月曜日が私の日曜日。休息日には料理をしたりパンを焼いたり、テレビを見たり読書をしたりしますね。
—素朴な質問なのですが、アメリカチャンピオンジャージに、UCIワールドカップジャージなど白いジャージが多いですよね?洗濯が大変ではないですか?
幸いなことにワールドカップの場合はレース毎に新品がもらえるので、洗濯に関しては心配がありません(笑)。でもベルギーの泥はシミになりやすくて洗濯が大変です。ベルギー滞在時には母親が洗濯を担当してくれているけれど、一度洗濯を手伝おうとしたら「私がやるから良い」と言われてそれっきり(笑)。だからどんな洗剤でどんな洗い方をしているか知らないけれど、綺麗になってます。多分ベルギーの人たちは泥落としのノウハウがあるんでしょう(笑)。
—失礼ながらベテラン選手ですが、年々強さを増しているように感じます。どこからそのモチベーションは生まれているのですか?
私は自分自身がアスリートであることが大好きなんです。つまり毎日トレーニングをして、しっかりと食事と休養を取って、レースに出る。そうした日々の生活が好きだから続けられる。シクロクロスが本業だけれど、ロードもMTBもトラックバイクにも乗るし、様々なバイクを乗り換えることでリフレッシュできます。例えば1週間バイクに乗らなかったら不機嫌になってしまうし、とにかく身体を動かすことが好きですね。
練習はパワーメーターを使いながら、春〜夏はベーストレーニング、シーズンインが近くなればより負荷を掛けた練習。FTPですか?(笑)だいたい280Wくらいかしら…(笑)。でも時期にもよるし、集中して練習しない時はパワーメーターを外してただ乗ることを楽しんでいます。ただ練習してばかりでもつまらないし、気分転換をして純粋に楽しむことも大事だと思いますよ。
—今朝は築地市場に行ったと聞きました。初めての日本の印象はどうでしたか?
そう、凄かったですね!とてもクール。めちゃくちゃに忙しくて、騒がしくて、皆が叫んでいて、人と魚がごちゃ混ぜで…。そこで寿司を食べたけれど、今まで食べた中で一番美味しかった。Twitterで「I need food vacation」とつぶやいたほど日本の、特に食事は気に入りました。だから是非また来年の大会にも来てみたい。もちろんその時はアルカンシエルも一緒にね。
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,So.Isobe
インタビューを行ったのはレース翌日、招待選手が宿泊していたホテルのロビーでのこと。「ちょっと今はレースの疲れがあるけれど、これでシーズンが終わったので気は楽」と、現アメリカナショナル兼UCIワールドカップシリーズチャンピオンは終止柔らかい表情で言う。
シクロクロス東京はどんなレースでしたか?
こうなるだろう、と予想していたよりも実際はかなりハードでとてもテクニカルなコースでしたね。林間セクションは根っこと泥で滑り、砂は体力を削いでくる。でも様々なシチュエーションがあって個人的にはとても楽しめました。
サンドセクションに関して言うと、アメリカの砂とも、ベルギーで有名なコクサイデ(ベルギー)の砂とも違うトリッキーさがお台場の特徴。ベルギーの砂は重たく一度轍に入ると比較的走りやすく、アメリカの砂は基本的にサラサラとしているのであまりラインを気にすること無く走りやすいことが特徴です。
でも昨日のお台場の砂はその中間。走る轍を1本に限定しなくても良いけれど、でも全てを無視して走れるほどには軽くない。砂がやや重いから一度ラインを外すと復帰が難しいという走りづらさがありました。本当の意味でパワーライダー向けの砂だと思いますね。私にとってフィットするコースでした。もう少し距離が長ければより良いかなとは思いましたが、ギャラリーにとっては選手たちをより多く見れるから良かったと思います。全てのサポートや応援が力になりました。
攻略のポイントとしては、踏みどころと休みどころを作ること。砂浜は100%の力で走って、ホームストレートでは回復する。ただ闇雲に走っただけではすぐに体力を消費してしまいますよね。
1週間前の世界選手権前後では花粉アレルギーから来る喘息が出てしまって、脚の調子が良いのに呼吸がうまくできず酷いレースになってしまいました。落ち込んだしイライラしたけど、今回のレースでは体調の心配をすることなく追い込むことができました。良いパフォーマンスで走ることができて良かった。
—雪は特に気になりませんでしたか?
アメリカではコロラドに住んでいるので雪は慣れたもの。東京はシャットダウン状態になったけれど、個人的にはこんなシチュエーションでスノーレースができるなんて!と興奮していたの(笑)。
—新しいバイク、Booneについて教えて下さい。開発にも携わったそうですね。
一言で言うと、「最高」のバイク。新しいジオメトリーを採用していてハンドリングも良いし、IsoSpeedのおかげで悪路でもスムーズだし、何と言っても最高に良く走ります。トレックは本当に良くやってくれたと思う。このバイクに乗ることができてとても嬉しいですね。
開発に関してはジオメトリーのセッティングを担当していました。最初に乗った時には今までのバイクとは違いすぎて本当に驚きました。こんなに良いバイクをテストでは使っていたのに、発表前のレースでは乗れなかったのが辛かったですね(笑)。
—特に気に入っている部分はどこですか?
1カ所に限定するのは難しい!もちろん純粋なレースバイクならではのアグレッシブなポジションもそうだし、テクニカルセクションで楽ができる安定したハンドリング、とにかく完成度が高いので、どんなところでも走れます。普段MTBで走るようなシングルトラックにも行きますし。乗っていて楽しさのあるバイクです。
—バイクのセッティングについて教えて下さい。特に皆は空気圧について知りたいと思いますが。
日曜日は気温が上がってスリッピーだったから、おそらく1.1〜1.2気圧くらい。指でタイヤを押してリムにつくぐらいがベストでした。アドバイスとしては、そのコースの最も難しいセクションにあわせて圧を調整することですね。
—かなり前傾姿勢を意識したポジションですね?
そう。大多数の人よりもアグレッシブなポジションで、主に下ハンドルを持つことが多いです。52サイズを使って120mmステムと前に出したサドル、175mmクランクというセッティングですね。
—シフトレバーには滑り止めのコーディングをしていますね。
余りに寒いとシフトミスをするので、それを防ぐためにマットが考えた工作です。このコーディングをしてからは滑ることがなくなりました。サンドペーパーを貼り付けたこともあったけれどイマイチで、これは特にオススメ。疲れている時にも効果抜群です(笑)。
—ディスクブレーキは使わないのですか?
ブレーキが効きすぎてしまうので、まだ個人的にディスクブレーキを好きになれずカンチブレーキ仕様車を使っています。ディスクブレーキだとフレームもホイールも重くなるし、今シーズンの序盤にはカンチかディスクかを決めてくれとトレックに言われましたが、メンテナンスのことも考えてよりシンプルなカンチにしたんです。もちろん今シーズンも幾つかのレースではディスクブレーキの方が適している場面もありましたけどね。でも仕様を選択できるようにしてくれたトレックには感謝していますよ。
—トレックのサポート体制について教えて下さい。
他のブランドと比べて、細かな要求に対してとてもフレキシブルに動いてくれることが特徴ですね。Booneの開発に携わらせてくれたし、私にも、他の選手に対してもサポートが手厚い。トレックとサポート選手との関係は家族のようなもので、皆とても良い関係を保てています。
—ヨーロッパのトップレースを走るときは何台のバイクを使っているんですか?
だいたい4台です。多いでしょ!(笑)。レースのコンディションにもよりますが、ひどい泥レースでは半周(=ダブルピット)毎にバイク交換をするので、洗車や調整が追いつかない場面がありますからね。ドライレースでは1台がレース用、2台がピット、1台がローラー台用と分けています。私は良いけれど、(夫でメカニックの)マットが大変なの(笑)。
—メカニックにとっては月曜日が一番忙しいのでは?
本当にそう!全てのバイクのケーブル、ハウジング、ベアリングにブレーキパッド…とにかく全部をフル整備するの。特にベルギーはいつもウェットコンディションだからブロワーとウエスでタイヤとホイールの砂を飛ばして乾かして…。
これをしないと5日後にはタイヤに水が浸みてしまって使い物にならなくなる。私の家族もバンを掃除したり、ウェアの洗濯したりと色々手伝ってくれています。月曜日が私の日曜日。休息日には料理をしたりパンを焼いたり、テレビを見たり読書をしたりしますね。
—素朴な質問なのですが、アメリカチャンピオンジャージに、UCIワールドカップジャージなど白いジャージが多いですよね?洗濯が大変ではないですか?
幸いなことにワールドカップの場合はレース毎に新品がもらえるので、洗濯に関しては心配がありません(笑)。でもベルギーの泥はシミになりやすくて洗濯が大変です。ベルギー滞在時には母親が洗濯を担当してくれているけれど、一度洗濯を手伝おうとしたら「私がやるから良い」と言われてそれっきり(笑)。だからどんな洗剤でどんな洗い方をしているか知らないけれど、綺麗になってます。多分ベルギーの人たちは泥落としのノウハウがあるんでしょう(笑)。
—失礼ながらベテラン選手ですが、年々強さを増しているように感じます。どこからそのモチベーションは生まれているのですか?
私は自分自身がアスリートであることが大好きなんです。つまり毎日トレーニングをして、しっかりと食事と休養を取って、レースに出る。そうした日々の生活が好きだから続けられる。シクロクロスが本業だけれど、ロードもMTBもトラックバイクにも乗るし、様々なバイクを乗り換えることでリフレッシュできます。例えば1週間バイクに乗らなかったら不機嫌になってしまうし、とにかく身体を動かすことが好きですね。
練習はパワーメーターを使いながら、春〜夏はベーストレーニング、シーズンインが近くなればより負荷を掛けた練習。FTPですか?(笑)だいたい280Wくらいかしら…(笑)。でも時期にもよるし、集中して練習しない時はパワーメーターを外してただ乗ることを楽しんでいます。ただ練習してばかりでもつまらないし、気分転換をして純粋に楽しむことも大事だと思いますよ。
—今朝は築地市場に行ったと聞きました。初めての日本の印象はどうでしたか?
そう、凄かったですね!とてもクール。めちゃくちゃに忙しくて、騒がしくて、皆が叫んでいて、人と魚がごちゃ混ぜで…。そこで寿司を食べたけれど、今まで食べた中で一番美味しかった。Twitterで「I need food vacation」とつぶやいたほど日本の、特に食事は気に入りました。だから是非また来年の大会にも来てみたい。もちろんその時はアルカンシエルも一緒にね。
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,So.Isobe
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