2009/07/21(火) - 11:33
いよいよツール最終週の戦いに突入、山岳の厳しい今年のツールにおける真の闘いが始まる。フランスから国境を越えてスイスへ。山頂ゴールのヴェルビエに向かうアルプス決戦が重要な答えを出すことになる。
今中大介さん一家がスタート地点を訪問
スタート地点となるポンタリエには今中大介さんが奥さんの志摩さん、子供の雄介くん・陽介くんら家族で登場。じつはツールの1ステージを走る市民レース「エタップ・デュ・ツール」参戦のためにやってきて、レース本番を明日に控えてツール観戦にやってきたという。準備をするフミ&ユキヤにも声をかけることができたという。この日は関係者に挨拶回りをし、コース途中の3級山岳に先回りして観戦するそうだ。
ボーネンがリタイヤ
ベルギーチャンピオンジャージを着るボーネンがリタイアを決めた。朝バスでスタート地点までは来たが、すでに昨夜からウィルスにやられて体調を崩していて、道中も3度吐いたとか。ドラッグ問題に関わらずモナコのスタートにこぎつけるなど話題をまいたが、結局は目立つ走りが出来ないままツールを去ることになった。落車やトラブルにも泣きスプリント勝負にはまったく絡めず、第11ステージの16位がステージ最高順位だった。
アームストロングVSコンタドール
朝から雨が降ったり止んだり。嫌な天気だが、スイス方面に向かえば晴れるとの予報。スタート待ちの選手のなかでもっとも注目を浴びるのがアームストロングだ。自身にとっての重要なステージだというのに、今日はメディアの取材攻勢にも余裕をもって応える。その横をコンタドールが素通りする。アームストロングが他へ行ってしまえば記者もコンタドールに集まるが、メディアが殺到するのはアームストロング。今日のキーを握るのはアームストロングの未知数の走りだ。
第13ステージのプラツェルヴァゼル峠で強さを見せたアームストロングの限界とは、どの程度なのか。果たしてコンタドールと一緒に、または対してアタックするのか? もしアームストロング遅れるなら、それが2人のリーダー体制に決着がつくときだ。
"ミニ・ラルプデュエズ" ヴェルビエ
ゴールのヴェルヴィエがツールに採用されるのは初めてのこと。コースプロフィールもスケール感も、ちょうど伝説の峠ラルプデュエズのミニ版と言っていい。上り距離が8.8km、平均勾配は7.5%で、勾配が急なところはなく、平均的に上がる。ラルプデュエズの有名な21のコーナー数に対して、15のコーナーがある九十九折れ。ラルプよりも細かくターンするイメージだ。
これから総合争いの勝負を決するハードな山岳ステージが続くツールの重要なバロメーターになる。
逃げを許さなかったアスタナ
プロトンは2つの山岳ポイントを越え、スイスへ入国。そして美しいレマン湖に迫る山並みのさらに3つの山岳ポイントを越えて決戦の山頂ゴール、ヴェルヴィエの麓へ。
この日マイヨジョーヌを失うことを最初から盛り込み済みのアージェードゥーゼルは、集団をコントロールする仕事を放棄することをあらかじめ宣言していた。つまり今日のレースは最初からアスタナに指導権を譲ったのだ。
最後の峠で有利な展開に持ち込みたいリクイガス、サクソバンク、ミルラムらが抵抗するが、逃げグループに対してアスタナはメイン集団のペースをコントロールして順調に追い込んだ。ライプハイマーが抜けたとえいえ、レースをコントロールする力は十二分に備えている。
コンタドール最強の証明
アスタナのパターンに持ち込まれることを嫌がったサクソバンクやガーミンが麓からハイペースに持ち込むが、コンタドールはゴールまで6kmもの距離を残した時点で早々のアタックを決めた。そして先行する選手たちを軽々とパスし、独走フィニッシュを決めた。ライバルたちに翻弄されることを好まず、しかし早く行くことに何の不安も感じさせない走りだった。
アンディ・シュレクが反応するも及ばず、ただ離れて追走するのみ。エヴァンス、サストレらはなす術なくコンタドールを見送るしかなかった。その圧倒的な走りからは、この先もコンタドールに敵う選手がいないことは明らか。ついにコンタドールが絶対的な地位を手に入れた。
そしてアームストロングは苦しみ、クレーデンに引かれながらゴールを目指した。ツール7連覇を達成して以来初めて見せる苦しみの表情だった。しかしエヴァンスとのタイム差は最小限に抑え、コンタドールから1分35秒遅れにとどめた。やはり2005年のときの強さとは同じではなかったが、その走りはテンポを保ち、決して敗北の走りではなかった。まだ総合2位だ。
もうコンタドールはアームストロングとのチーム内ライバル関係をとやかく言われる筋合いは無いだろう。クレーデンは相変わらず忠実なアシストに徹したが、自身も総合4位につけていることを考えると、今後アームストロングとの関係が微妙になってきそうだ。
驚くべきはブラドレー・ウィギンス(ガーミン・スリップストリーム)の5位。タイムトライアルのスペシャリストからオールラウンダーへの変身。タイムトライアルの力を考慮すれば、パリの表彰台は現実味を帯びてくる。
プレッシャーから開放されたコンタドール
マイヨジョーヌに袖を通したコンタドールは言う。「僕はずっとプレッシャーに支配されていた。けれどロード上でそれを跳ねのけることが出来たことを誇りに思う。それはランスに対してということだけでなく、すべてのライバルたちに対してだ。今日僕が心配していたのは自分自身のことだけ。本当に調子がいいかどうか、少しだけ不安を感じた。でも強さを証明することが出来た。
でもツールはまだ終わっっていない。本当に厳しいステージはこれからだし、数日後はもっと大変なステージになるだろう。順位を上げるライバルたちには注意を怠らない。ランスが僕のために走ってくれるのは嬉しい。」
一方で、アームストロングはコンタドールに対し敗北宣言とも取れる発言だ。「麓からすぐ限界だった。苦しんだ。とてもハードだった。皆が限界に達していたと思う。アルベルトのような加速を、僕はすることができなかった。
誰が世界で最高の選手か、誰がこのレースで最高の選手かが分かった。皆が限界に達しているとき、そこからさらに加速して勝つことこそがツールに勝つことだ。それが過去の僕だった。今、アルベルトがそれをやってのけた。彼が最高の選手だ」。
アームストロングはもうパリで8度目のマイヨジョーヌを獲る事をこの日諦めた。そしてコンタドールのためのアシストをすることを受け入れたようだ。
「もう僕のためのレースはありえない。僕の考えとしては、喜んで彼のアシストになるよ。彼を誇りに思っている」。
アームストロングとコンタドールのライバル関係はもう終わり。アスタナはコンタドールのシングルエース体制でツール最終週に臨むことになる。アームストロングはコンタドールのアシストをしながらも自身の総合2位が守れるか。あるいはクレーデンの表彰台も視野に入れつつ走るのだろうか。
フミ、山頂ゴールで57位の好結果
ヴァルヴィエの麓から、メイン集団前方を固めるアスタナ勢のすぐ後ろにつけて上り始めたフミ。積極的に行き、力を出し切ってトップのコンタドールから5分52秒遅れの57位という好結果。このポジションで日本人選手が山頂ゴールにあがってくるというのは、正直驚きだ。
この走りには本人はまだまだ満足はしていない様子だったが、総合も145位から129位に上げた。2週を終え、ますます体調を上げているという。多くの選手が疲れに支配され始めるツール終盤。フミはステージを終えてなおファンとの交流を楽しむ余裕をみせた。
グルペット内でゴールを果たしたユキヤは、麓にとめたチームバスに自走で下るダウンヒルの途中ですれ違い、「お疲れ様!」と声をかけるとニッコリ笑顔を返してくれた。総合順位を2つ下げ、143位。話をすることが出来なかったが、フミと総合差が逆転してしまったことをちょっぴり悔しがっていたとか。しかし長らく落車の影響が残っていた腰の具合は日に日に良くなってきているという。
2度目の休息日はこの渓谷一帯に点在するホテルに分宿する各チームが、美しいスイスの山岳風景を楽しみながら最後の調整をすることになる。明日はユキヤのホテルが近いので共同インタビューと、マッサージの様子を撮影できるように調整してもらっっている。残っているステージはいずれも過酷なもの。今年のツールが本当に厳しくなるのはここからだ。2人が無事乗り切れるよう祈りたい。
今中大介さん一家がスタート地点を訪問
スタート地点となるポンタリエには今中大介さんが奥さんの志摩さん、子供の雄介くん・陽介くんら家族で登場。じつはツールの1ステージを走る市民レース「エタップ・デュ・ツール」参戦のためにやってきて、レース本番を明日に控えてツール観戦にやってきたという。準備をするフミ&ユキヤにも声をかけることができたという。この日は関係者に挨拶回りをし、コース途中の3級山岳に先回りして観戦するそうだ。
ボーネンがリタイヤ
ベルギーチャンピオンジャージを着るボーネンがリタイアを決めた。朝バスでスタート地点までは来たが、すでに昨夜からウィルスにやられて体調を崩していて、道中も3度吐いたとか。ドラッグ問題に関わらずモナコのスタートにこぎつけるなど話題をまいたが、結局は目立つ走りが出来ないままツールを去ることになった。落車やトラブルにも泣きスプリント勝負にはまったく絡めず、第11ステージの16位がステージ最高順位だった。
アームストロングVSコンタドール
朝から雨が降ったり止んだり。嫌な天気だが、スイス方面に向かえば晴れるとの予報。スタート待ちの選手のなかでもっとも注目を浴びるのがアームストロングだ。自身にとっての重要なステージだというのに、今日はメディアの取材攻勢にも余裕をもって応える。その横をコンタドールが素通りする。アームストロングが他へ行ってしまえば記者もコンタドールに集まるが、メディアが殺到するのはアームストロング。今日のキーを握るのはアームストロングの未知数の走りだ。
第13ステージのプラツェルヴァゼル峠で強さを見せたアームストロングの限界とは、どの程度なのか。果たしてコンタドールと一緒に、または対してアタックするのか? もしアームストロング遅れるなら、それが2人のリーダー体制に決着がつくときだ。
"ミニ・ラルプデュエズ" ヴェルビエ
ゴールのヴェルヴィエがツールに採用されるのは初めてのこと。コースプロフィールもスケール感も、ちょうど伝説の峠ラルプデュエズのミニ版と言っていい。上り距離が8.8km、平均勾配は7.5%で、勾配が急なところはなく、平均的に上がる。ラルプデュエズの有名な21のコーナー数に対して、15のコーナーがある九十九折れ。ラルプよりも細かくターンするイメージだ。
これから総合争いの勝負を決するハードな山岳ステージが続くツールの重要なバロメーターになる。
逃げを許さなかったアスタナ
プロトンは2つの山岳ポイントを越え、スイスへ入国。そして美しいレマン湖に迫る山並みのさらに3つの山岳ポイントを越えて決戦の山頂ゴール、ヴェルヴィエの麓へ。
この日マイヨジョーヌを失うことを最初から盛り込み済みのアージェードゥーゼルは、集団をコントロールする仕事を放棄することをあらかじめ宣言していた。つまり今日のレースは最初からアスタナに指導権を譲ったのだ。
最後の峠で有利な展開に持ち込みたいリクイガス、サクソバンク、ミルラムらが抵抗するが、逃げグループに対してアスタナはメイン集団のペースをコントロールして順調に追い込んだ。ライプハイマーが抜けたとえいえ、レースをコントロールする力は十二分に備えている。
コンタドール最強の証明
アスタナのパターンに持ち込まれることを嫌がったサクソバンクやガーミンが麓からハイペースに持ち込むが、コンタドールはゴールまで6kmもの距離を残した時点で早々のアタックを決めた。そして先行する選手たちを軽々とパスし、独走フィニッシュを決めた。ライバルたちに翻弄されることを好まず、しかし早く行くことに何の不安も感じさせない走りだった。
アンディ・シュレクが反応するも及ばず、ただ離れて追走するのみ。エヴァンス、サストレらはなす術なくコンタドールを見送るしかなかった。その圧倒的な走りからは、この先もコンタドールに敵う選手がいないことは明らか。ついにコンタドールが絶対的な地位を手に入れた。
そしてアームストロングは苦しみ、クレーデンに引かれながらゴールを目指した。ツール7連覇を達成して以来初めて見せる苦しみの表情だった。しかしエヴァンスとのタイム差は最小限に抑え、コンタドールから1分35秒遅れにとどめた。やはり2005年のときの強さとは同じではなかったが、その走りはテンポを保ち、決して敗北の走りではなかった。まだ総合2位だ。
もうコンタドールはアームストロングとのチーム内ライバル関係をとやかく言われる筋合いは無いだろう。クレーデンは相変わらず忠実なアシストに徹したが、自身も総合4位につけていることを考えると、今後アームストロングとの関係が微妙になってきそうだ。
驚くべきはブラドレー・ウィギンス(ガーミン・スリップストリーム)の5位。タイムトライアルのスペシャリストからオールラウンダーへの変身。タイムトライアルの力を考慮すれば、パリの表彰台は現実味を帯びてくる。
プレッシャーから開放されたコンタドール
マイヨジョーヌに袖を通したコンタドールは言う。「僕はずっとプレッシャーに支配されていた。けれどロード上でそれを跳ねのけることが出来たことを誇りに思う。それはランスに対してということだけでなく、すべてのライバルたちに対してだ。今日僕が心配していたのは自分自身のことだけ。本当に調子がいいかどうか、少しだけ不安を感じた。でも強さを証明することが出来た。
でもツールはまだ終わっっていない。本当に厳しいステージはこれからだし、数日後はもっと大変なステージになるだろう。順位を上げるライバルたちには注意を怠らない。ランスが僕のために走ってくれるのは嬉しい。」
一方で、アームストロングはコンタドールに対し敗北宣言とも取れる発言だ。「麓からすぐ限界だった。苦しんだ。とてもハードだった。皆が限界に達していたと思う。アルベルトのような加速を、僕はすることができなかった。
誰が世界で最高の選手か、誰がこのレースで最高の選手かが分かった。皆が限界に達しているとき、そこからさらに加速して勝つことこそがツールに勝つことだ。それが過去の僕だった。今、アルベルトがそれをやってのけた。彼が最高の選手だ」。
アームストロングはもうパリで8度目のマイヨジョーヌを獲る事をこの日諦めた。そしてコンタドールのためのアシストをすることを受け入れたようだ。
「もう僕のためのレースはありえない。僕の考えとしては、喜んで彼のアシストになるよ。彼を誇りに思っている」。
アームストロングとコンタドールのライバル関係はもう終わり。アスタナはコンタドールのシングルエース体制でツール最終週に臨むことになる。アームストロングはコンタドールのアシストをしながらも自身の総合2位が守れるか。あるいはクレーデンの表彰台も視野に入れつつ走るのだろうか。
フミ、山頂ゴールで57位の好結果
ヴァルヴィエの麓から、メイン集団前方を固めるアスタナ勢のすぐ後ろにつけて上り始めたフミ。積極的に行き、力を出し切ってトップのコンタドールから5分52秒遅れの57位という好結果。このポジションで日本人選手が山頂ゴールにあがってくるというのは、正直驚きだ。
この走りには本人はまだまだ満足はしていない様子だったが、総合も145位から129位に上げた。2週を終え、ますます体調を上げているという。多くの選手が疲れに支配され始めるツール終盤。フミはステージを終えてなおファンとの交流を楽しむ余裕をみせた。
グルペット内でゴールを果たしたユキヤは、麓にとめたチームバスに自走で下るダウンヒルの途中ですれ違い、「お疲れ様!」と声をかけるとニッコリ笑顔を返してくれた。総合順位を2つ下げ、143位。話をすることが出来なかったが、フミと総合差が逆転してしまったことをちょっぴり悔しがっていたとか。しかし長らく落車の影響が残っていた腰の具合は日に日に良くなってきているという。
2度目の休息日はこの渓谷一帯に点在するホテルに分宿する各チームが、美しいスイスの山岳風景を楽しみながら最後の調整をすることになる。明日はユキヤのホテルが近いので共同インタビューと、マッサージの様子を撮影できるように調整してもらっっている。残っているステージはいずれも過酷なもの。今年のツールが本当に厳しくなるのはここからだ。2人が無事乗り切れるよう祈りたい。
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