2014/01/24(金) - 18:46
ツアー・ダウンアンダーは後半戦に突入。ピュアスプリンターたちが登りと横風に苦戦する中、"登れるスプリンター"のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が抜群のスプリントを披露した。
アデレード市内で行なわれる最終日の第6ステージを除いて、今大会唯一と言っていい平坦基調の第4ステージ。アンレーからヴィクターハーバーまでの148.5kmは、ピュアスプリンター向きと思われた。しかし、僅差の総合争いが演出したボーナスタイム争いと、ハイスピードな展開、さらにKOM直後に吹き付けた横風がスプリンターたちを悩ませた。
第3ステージを終えた時点で、総合首位エヴァンスと総合2位ゲランスの総合タイム差は12秒。2つのスプリントポイントでボーナスタイムを獲得しようと、オリカ・グリーンエッジは序盤から全開でレースをコントロールした。
アタックに次ぐアタックで逃げグループが形成されては、オリカ・グリーンエッジが引き戻すハイスピードな展開。ゴールスプリントさながらのリードアウトを受けたゲランスが、25km地点の第1スプリントを先頭通過してボーナスタイム3秒を獲得する。すると再びアタックの応酬が始まる。
直線的な平坦路で形成されたのは5名の逃げグループ。この中に、全日本チャンピオンジャージを着る新城幸也(ユーロップカー)の姿があった。「今日はスプリントになれば僕がエースで、僕以外の選手が逃げに乗る予定だったんです。でも(チームメイトのアタックとアタックの)間を繋ぐために飛び出した動きがそのまま決まってしまった」と新城は振り返る。
タイム差は1分、2分、3分と広がり、順調に4分のリードを築いた先頭5名。しかしティンコフ・サクソのミカエル・アンデルセン(デンマーク)が先頭交代を拒否し、新城の徹底マークを始める。5名の中から飛び出したアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル)とキャメロン・ウルフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング)の2人を、新城は見送るしかなかった。
「タイム差が4分まで開いたところで、まだゴールまで100kmもあるのに、何故か引かない選手が出てしまった。個人的には消化不良ですが、監督命令で後ろに下がりました」と新城。「明日の第5ステージで頑張りたい」と語る新城は、力を温存して13分55秒遅れの第2集団でゴールしている。
先頭を逃げるドモンとウルフは、ゴール53km手前のKOMマイポンガに突入。頂上が吹きっさらしのこのKOMで集団が分裂し、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするピュアスプリンターが脱落する。約60名に絞られた第1集団は、早めに先頭2名をキャッチ。キッテルらが第2集団に復帰することはなかった。
116km地点の第2スプリントポイントは、ゲランスを下したネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が先頭通過。こうしてハイスピードを維持しながら進行するメイン集団が、海に面したヴィクターハーバーのゴール地点に向けて突進する。
ゴール5km手前の小さな丘で飛び出したヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)らは、ゴールのわずか600m手前で吸収。登りで生き残ったロット・ベリソルのトレインが、最終ストレートでグライペルを解き放った。
観光地として知られ、この日ブライアン・クックソンUCI会長を含む6600人が参加した「ブーパチャレンジ」というライドイベントの終着地ヴィクターハーバーでグライペルがスプリント。精鋭集団の中にグライペルに敵うスプリンターは残っておらず、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー)とのワンツー勝利が決まった。
前座のクリテリウムでキッテルに破れ、第1ステージでゲランスに破れていたグライペルが復活の勝利。大柄ながら"登れるスプリンター"としての力を見せつけた。「ここまで小さなミスで勝利を失ってきたけど、今日は自信があった。一日中ナーバスだったけど、2つ目のスプリントポイントを過ぎてからロット・ベリソルが主導権を握り、勝負に持ち込んだんだ」。
ステージ4位のゲランスはボーナスタイム獲得を逃したものの、2つのスプリントポイントで合計5秒のボーナスタイムを獲得。あわや落車というシーンが何度か見られた総合首位エヴァンスとの総合タイム差を7秒に詰めている。
翌日の第5ステージ、ウィランガヒル山頂フィニッシュで、再びエヴァンスとゲランス、そしてリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)らによる総合バトルが加熱する。「まだ何も決まったわけじゃない」。それが各陣営が出す共通のコメントだ。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツアー・ダウンアンダー2014第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h33'07"
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
4位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
6位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ティンコフ・サクソ)
9位 アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
122位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'55"
個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 14h19'46"
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07"
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14"
4位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ) +23"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +30"
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +33"
8位 ロリー・スザーランド(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
68位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +15'47"
スプリント賞
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 62pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 42pts
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 35pts
山岳賞
1位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) 24pts
2位 アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル) 22pts
3位 ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック) 20pts
ヤングライダー賞
1位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) 14h21'04"
2位 カルロス・ベローナ(スペイン、オメガファーマ・クイックステップ) +1'19"
3位 ケニー・エリッソンド(フランス、FRJ.fr) +13'38"
チーム総合成績
1位 BMCレーシングチーム 43h00'38"
2位 オリカ・グリーンエッジ +1'24"
3位 ガーミン・シャープ +1'45"
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
アデレード市内で行なわれる最終日の第6ステージを除いて、今大会唯一と言っていい平坦基調の第4ステージ。アンレーからヴィクターハーバーまでの148.5kmは、ピュアスプリンター向きと思われた。しかし、僅差の総合争いが演出したボーナスタイム争いと、ハイスピードな展開、さらにKOM直後に吹き付けた横風がスプリンターたちを悩ませた。
第3ステージを終えた時点で、総合首位エヴァンスと総合2位ゲランスの総合タイム差は12秒。2つのスプリントポイントでボーナスタイムを獲得しようと、オリカ・グリーンエッジは序盤から全開でレースをコントロールした。
アタックに次ぐアタックで逃げグループが形成されては、オリカ・グリーンエッジが引き戻すハイスピードな展開。ゴールスプリントさながらのリードアウトを受けたゲランスが、25km地点の第1スプリントを先頭通過してボーナスタイム3秒を獲得する。すると再びアタックの応酬が始まる。
直線的な平坦路で形成されたのは5名の逃げグループ。この中に、全日本チャンピオンジャージを着る新城幸也(ユーロップカー)の姿があった。「今日はスプリントになれば僕がエースで、僕以外の選手が逃げに乗る予定だったんです。でも(チームメイトのアタックとアタックの)間を繋ぐために飛び出した動きがそのまま決まってしまった」と新城は振り返る。
タイム差は1分、2分、3分と広がり、順調に4分のリードを築いた先頭5名。しかしティンコフ・サクソのミカエル・アンデルセン(デンマーク)が先頭交代を拒否し、新城の徹底マークを始める。5名の中から飛び出したアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル)とキャメロン・ウルフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング)の2人を、新城は見送るしかなかった。
「タイム差が4分まで開いたところで、まだゴールまで100kmもあるのに、何故か引かない選手が出てしまった。個人的には消化不良ですが、監督命令で後ろに下がりました」と新城。「明日の第5ステージで頑張りたい」と語る新城は、力を温存して13分55秒遅れの第2集団でゴールしている。
先頭を逃げるドモンとウルフは、ゴール53km手前のKOMマイポンガに突入。頂上が吹きっさらしのこのKOMで集団が分裂し、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)をはじめとするピュアスプリンターが脱落する。約60名に絞られた第1集団は、早めに先頭2名をキャッチ。キッテルらが第2集団に復帰することはなかった。
116km地点の第2スプリントポイントは、ゲランスを下したネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が先頭通過。こうしてハイスピードを維持しながら進行するメイン集団が、海に面したヴィクターハーバーのゴール地点に向けて突進する。
ゴール5km手前の小さな丘で飛び出したヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)らは、ゴールのわずか600m手前で吸収。登りで生き残ったロット・ベリソルのトレインが、最終ストレートでグライペルを解き放った。
観光地として知られ、この日ブライアン・クックソンUCI会長を含む6600人が参加した「ブーパチャレンジ」というライドイベントの終着地ヴィクターハーバーでグライペルがスプリント。精鋭集団の中にグライペルに敵うスプリンターは残っておらず、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー)とのワンツー勝利が決まった。
前座のクリテリウムでキッテルに破れ、第1ステージでゲランスに破れていたグライペルが復活の勝利。大柄ながら"登れるスプリンター"としての力を見せつけた。「ここまで小さなミスで勝利を失ってきたけど、今日は自信があった。一日中ナーバスだったけど、2つ目のスプリントポイントを過ぎてからロット・ベリソルが主導権を握り、勝負に持ち込んだんだ」。
ステージ4位のゲランスはボーナスタイム獲得を逃したものの、2つのスプリントポイントで合計5秒のボーナスタイムを獲得。あわや落車というシーンが何度か見られた総合首位エヴァンスとの総合タイム差を7秒に詰めている。
翌日の第5ステージ、ウィランガヒル山頂フィニッシュで、再びエヴァンスとゲランス、そしてリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)らによる総合バトルが加熱する。「まだ何も決まったわけじゃない」。それが各陣営が出す共通のコメントだ。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ツアー・ダウンアンダー2014第4ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h33'07"
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
4位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
6位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ティンコフ・サクソ)
9位 アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
122位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'55"
個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 14h19'46"
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07"
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14"
4位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ) +23"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +30"
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
7位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +33"
8位 ロリー・スザーランド(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
68位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +15'47"
スプリント賞
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 62pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 42pts
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 35pts
山岳賞
1位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) 24pts
2位 アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル) 22pts
3位 ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック) 20pts
ヤングライダー賞
1位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) 14h21'04"
2位 カルロス・ベローナ(スペイン、オメガファーマ・クイックステップ) +1'19"
3位 ケニー・エリッソンド(フランス、FRJ.fr) +13'38"
チーム総合成績
1位 BMCレーシングチーム 43h00'38"
2位 オリカ・グリーンエッジ +1'24"
3位 ガーミン・シャープ +1'45"
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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