2014/01/04(土) - 11:52
フィジークより登場した新作モデル「VOLTA(ヴォルタ)」。フィジークは骨盤の柔軟性に応じたスパインコンセプトを導入しているが、ヴォルタはそれらとは別のアプローチから開発が進められた意欲作だ。
始まりは「新しいコンセプトのサドルが続々と発表される現代においても、クラシカルなサドルを使い続けるライダーが多くいるのは何故か?」という素朴な疑問から。今なおプロにも愛用者が絶えないクラシックフォルムのサドルを現代の技術を持って突き詰めている。
開発にあたりフィジークは、プロ選手にも愛用者が多かったセライタリアのフライトやターボ、サンマルコのリーガルやコンコール、ストラーダなどの形状をCTスキャンまで行い、詳細に分析。それぞれの寸法に数ミリ程度の違いしかないことと、断面形状が全てかまぼこ状の「ラウンドシェイプ」であることを突き止めた。これを最新の解釈に基づいてヴォルタのデザインに反映させた。
フィジークのサドル選択システム「スパインコンセプト」ではアリオネと同じく「スネーク」に分類され、サドル長もアリオネに近いが、断面形状の違いから乗り心地や使用感は大きく異なる。
長めのサイド形状を持つ「ラウンドシェイプ」によって、前後はもちろん左右への骨盤の動きを妨げず、腰痛の発生を軽減する効果があるという。外観は現代の最新フレームにもマッチするよう仕上げられており、古めいた印象は与えない。また、ヴォルタはクラシックサドルの形状を追求しただけでなく、ベースやレールに軽量素材を採用し、軽量化をも図っている。
そのラインナップは2種類。最新フォーム成型技術とカーボンコンポジットシェル、カーボンレールの採用により165gと超軽量に仕上げられた「R1」と、グラスファイバーコンポジットシェルとキウムレールを組み合わせたエントリーモデル「R3」がラインナップされる。
レールは「メビウス」と名付けられたフィジーク独自の形状だ。メビウスレールは坐骨が当たる部分にレールが来ないため、突き上げを和らげる効果が高くなっている。実際に裏から見ると、支えているのはサドルの先端とテールの端となっている。ベースもツインフレックスを採用し、会陰部の圧迫を回避するためにシェルに開けられた穴にラバーを埋め込んでいる。これらの構造によりハンモック効果が得られ、高い快適性を確保する。
加えてレール自体も耐久性の高さを保ちつつ多少の伸縮性が持たせてあると言う。R3に採用されるキウムレールも基本的には材質が代わるだけでR1と構造は同じだ。それではインプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「クラシックサドルを愛するライダーに、一度は試してもらいたいサドル」細田雄一郎(cyclowired.jp)
この度、フィジークのニューサドル、ヴォルタをインプレッションする機会を得た。私は特にレース等の実績があるわけではない一介のホビーライダーなのだが、クラシック系サドルの愛用派として今回声をかけていただいた。
私はクラシックサドルの中でもサンマルコのコンコール・ライトを愛用している。長年このサドルを使っており、正直なところ同じクラシック系のシェイプをしているとは言え、今さら別のサドルが身体に合うのかやや疑念もあった。何と言っても他のサドルをいくつも試してから行き着いたのがこのサドルである。
しかし、結論から先に述べると、全く違和感なくヴォルタへ移行出来ただけでなく、それ以上の好感触を得られた。
今回のインプレッションで使用したのは、メビウスカーボンレールを採用した『VLOTA R1 Braided』。自宅から奥多摩湖までの120kmのロングライドも行っており、延べ走行距離は200kmほど。
初日は高さのみを合わせ、地面と座面を平行にセッティングし、その後延べ80kmほど乗りながらポジションの微調整を行った。私の場合、上りで若干後ろに滑る感覚があったが、わずかに前傾させることでピタリと来た。これはコンコール・ライトの後部に反りがあり、後ろからも臀部を支える構造になっているため、それに慣れていたせいもあるだろう。
ちなみに今回はフィジークのシートポスト、『Cyrano Seatpost』をセットで使い、これがポジション調整に役立った。従来の2ボルト方式のシートポストは調整に手間がかかりがちだが、これは前側のボルトが手で回せるようになっており、微調整が容易に行えた。
そしてヴォルタが真価を発揮したのは、後日行った120kmほどのロングライドだ。長い距離を乗ることで、よりその良さが伝わってきた。
座面は後方と下方に向けて緩やかに広がっており、乗っていても全体で体圧を分散させてくれているのがわかる。やはり近年の穴あきサドルなどより、こういった昔ながらの形状の方が私にあっているようだ。座面が滑らかかつサイドまで伸びていて、ペダリングしていてサポート感があり、回しやすい。
デザインとしては全長が長く、座面の面積が広いため、上から見ると少々大柄に感じ、装着当初はバイク本体とのバランスが気になった。だが、改めて横から見てみると意外にシャープな印象だ。私のフレームサイズ49の小さなバイクと合わせても圧迫感は少ない。より大きなサイズのフレームであれば、さらに収まりが良くなると思う。
メビウスカーボンレールを採用したR1は、165gとクラシックフォルムのサドルとしては異例の軽さで、ダンシングも軽快に行える。
実はポジション調整をした日のライド後半にダートも走ってみたのだが、地面からの突き上げがソフトになっているのがすぐにわかった。座面の受けの広さに加え、ツインフレックス構造のベースとメビウスカーボンレールが、程よく地面からの衝撃を和らげてくれていたのだと推測する。
こうした様々な要素が相まって、ロングライド時も疲労を軽減してくれたようだ。もちろん脚は走った分だけ疲れていたが、臀部や股間の痛みはほとんどなかった。
メビウスカーボンレールのVOLTA R1 Braidedは3万円ほどと、なかなか手を出しにくい面はあると思う。そんな場合には2万円を切る価格で金属製のキウムレールを採用したR3もラインナップされており、こちらをお勧めしたい。衝撃吸収性はR1に比較してやや劣る可能性はあるが、サドル本体の形状や構造はR1と同じだ。
クラシックサドルを愛するライダーに、一度は試してもらいたいサドルであることは間違いない。
フィジーク VOLTA R1 ブレイデッド
シェル:カーボン/サーモプラスチック・コンポジット、ウィングフレックス
レール:カーボンブレイデッドレール 7×9mm
重 量:165g
カラー:ブラック、ホワイト
価 格:30,730円(税込)
フィジーク VOLTA R3
シェル:グラスファイバー/サーモプラスチック・コンポジット
レール:k:iumレール
価 格:18,780円(税込)
text:Yuichiro Hosoda
photo:Makoto.AYANO, Yuichiro Hosoda
始まりは「新しいコンセプトのサドルが続々と発表される現代においても、クラシカルなサドルを使い続けるライダーが多くいるのは何故か?」という素朴な疑問から。今なおプロにも愛用者が絶えないクラシックフォルムのサドルを現代の技術を持って突き詰めている。
開発にあたりフィジークは、プロ選手にも愛用者が多かったセライタリアのフライトやターボ、サンマルコのリーガルやコンコール、ストラーダなどの形状をCTスキャンまで行い、詳細に分析。それぞれの寸法に数ミリ程度の違いしかないことと、断面形状が全てかまぼこ状の「ラウンドシェイプ」であることを突き止めた。これを最新の解釈に基づいてヴォルタのデザインに反映させた。
フィジークのサドル選択システム「スパインコンセプト」ではアリオネと同じく「スネーク」に分類され、サドル長もアリオネに近いが、断面形状の違いから乗り心地や使用感は大きく異なる。
長めのサイド形状を持つ「ラウンドシェイプ」によって、前後はもちろん左右への骨盤の動きを妨げず、腰痛の発生を軽減する効果があるという。外観は現代の最新フレームにもマッチするよう仕上げられており、古めいた印象は与えない。また、ヴォルタはクラシックサドルの形状を追求しただけでなく、ベースやレールに軽量素材を採用し、軽量化をも図っている。
そのラインナップは2種類。最新フォーム成型技術とカーボンコンポジットシェル、カーボンレールの採用により165gと超軽量に仕上げられた「R1」と、グラスファイバーコンポジットシェルとキウムレールを組み合わせたエントリーモデル「R3」がラインナップされる。
レールは「メビウス」と名付けられたフィジーク独自の形状だ。メビウスレールは坐骨が当たる部分にレールが来ないため、突き上げを和らげる効果が高くなっている。実際に裏から見ると、支えているのはサドルの先端とテールの端となっている。ベースもツインフレックスを採用し、会陰部の圧迫を回避するためにシェルに開けられた穴にラバーを埋め込んでいる。これらの構造によりハンモック効果が得られ、高い快適性を確保する。
加えてレール自体も耐久性の高さを保ちつつ多少の伸縮性が持たせてあると言う。R3に採用されるキウムレールも基本的には材質が代わるだけでR1と構造は同じだ。それではインプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「クラシックサドルを愛するライダーに、一度は試してもらいたいサドル」細田雄一郎(cyclowired.jp)
この度、フィジークのニューサドル、ヴォルタをインプレッションする機会を得た。私は特にレース等の実績があるわけではない一介のホビーライダーなのだが、クラシック系サドルの愛用派として今回声をかけていただいた。
私はクラシックサドルの中でもサンマルコのコンコール・ライトを愛用している。長年このサドルを使っており、正直なところ同じクラシック系のシェイプをしているとは言え、今さら別のサドルが身体に合うのかやや疑念もあった。何と言っても他のサドルをいくつも試してから行き着いたのがこのサドルである。
しかし、結論から先に述べると、全く違和感なくヴォルタへ移行出来ただけでなく、それ以上の好感触を得られた。
今回のインプレッションで使用したのは、メビウスカーボンレールを採用した『VLOTA R1 Braided』。自宅から奥多摩湖までの120kmのロングライドも行っており、延べ走行距離は200kmほど。
初日は高さのみを合わせ、地面と座面を平行にセッティングし、その後延べ80kmほど乗りながらポジションの微調整を行った。私の場合、上りで若干後ろに滑る感覚があったが、わずかに前傾させることでピタリと来た。これはコンコール・ライトの後部に反りがあり、後ろからも臀部を支える構造になっているため、それに慣れていたせいもあるだろう。
ちなみに今回はフィジークのシートポスト、『Cyrano Seatpost』をセットで使い、これがポジション調整に役立った。従来の2ボルト方式のシートポストは調整に手間がかかりがちだが、これは前側のボルトが手で回せるようになっており、微調整が容易に行えた。
そしてヴォルタが真価を発揮したのは、後日行った120kmほどのロングライドだ。長い距離を乗ることで、よりその良さが伝わってきた。
座面は後方と下方に向けて緩やかに広がっており、乗っていても全体で体圧を分散させてくれているのがわかる。やはり近年の穴あきサドルなどより、こういった昔ながらの形状の方が私にあっているようだ。座面が滑らかかつサイドまで伸びていて、ペダリングしていてサポート感があり、回しやすい。
デザインとしては全長が長く、座面の面積が広いため、上から見ると少々大柄に感じ、装着当初はバイク本体とのバランスが気になった。だが、改めて横から見てみると意外にシャープな印象だ。私のフレームサイズ49の小さなバイクと合わせても圧迫感は少ない。より大きなサイズのフレームであれば、さらに収まりが良くなると思う。
メビウスカーボンレールを採用したR1は、165gとクラシックフォルムのサドルとしては異例の軽さで、ダンシングも軽快に行える。
実はポジション調整をした日のライド後半にダートも走ってみたのだが、地面からの突き上げがソフトになっているのがすぐにわかった。座面の受けの広さに加え、ツインフレックス構造のベースとメビウスカーボンレールが、程よく地面からの衝撃を和らげてくれていたのだと推測する。
こうした様々な要素が相まって、ロングライド時も疲労を軽減してくれたようだ。もちろん脚は走った分だけ疲れていたが、臀部や股間の痛みはほとんどなかった。
メビウスカーボンレールのVOLTA R1 Braidedは3万円ほどと、なかなか手を出しにくい面はあると思う。そんな場合には2万円を切る価格で金属製のキウムレールを採用したR3もラインナップされており、こちらをお勧めしたい。衝撃吸収性はR1に比較してやや劣る可能性はあるが、サドル本体の形状や構造はR1と同じだ。
クラシックサドルを愛するライダーに、一度は試してもらいたいサドルであることは間違いない。
フィジーク VOLTA R1 ブレイデッド
シェル:カーボン/サーモプラスチック・コンポジット、ウィングフレックス
レール:カーボンブレイデッドレール 7×9mm
重 量:165g
カラー:ブラック、ホワイト
価 格:30,730円(税込)
フィジーク VOLTA R3
シェル:グラスファイバー/サーモプラスチック・コンポジット
レール:k:iumレール
価 格:18,780円(税込)
text:Yuichiro Hosoda
photo:Makoto.AYANO, Yuichiro Hosoda