ツール・ド・フランスではマルセル・キッテル(ドイツ)の陰に隠れたアルゴス・シマノのもう一人のスプリンター、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)がフランス有数のクラシックレースで勝利。パリ〜トゥール名物グラモン大通りのゴールスプリントで24歳のジャーマンスプリンターが勝利した。



晴れ渡ったフランス中部を駆ける晴れ渡ったフランス中部を駆ける photo:Cor Vos今年で106回目を迎える伝統のパリ〜トゥールが10月13日、フランス中部の平野部で開催された。2008年にUCIプロツアー(現UCIワールドツアー)からHC(超級)クラスに格下げされたものの、その格式は依然として高い。イル・ロンバルディアの開催時期が早められたため、このパリ〜トゥールが実質的なヨーロッパ最終戦にあたる。

アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)ら4名が序盤から逃げるアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)ら4名が序盤から逃げる photo:Cor Vos一見完全なるスプリンター向きのクラシックだが、過去には何度も逃げ切りが決まっている。過去25年間の闘いを見てみると、スプリント10回、逃げ切り15回と言う比率。その秘密はラスト10kmを切ってから連続する細かなアップダウンにある。

ラスト10km地点で「ボーソレイユ」の登りをクリアし、休む間もなくラスト7km地点で「レパン」が登場。いずれもスプリンターがパワーで乗り切れる短い登りだが、毎年ここで堰を切ったようにアタックが掛かる。

これらの短い登りでどれだけ集団を引き離したとしても、タイム差は20秒ほどまでしか広がらない。しかしトゥール郊外特有の曲がりくねった細いコースが、少人数の逃げグループに味方する。大集団は縦に長く伸びてしまい、追撃モードに入りにくい。そのため少人数で逃げる選手にもチャンスがあるのだ。

レースは序盤からアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)ら4名が逃げ、これをFDJ.frやアルゴス・シマノ、ガーミン・シャープ率いるメイン集団が追う展開に。ゴール30km手前の「クロシュ」の登りに差し掛かったところで勝負に向けた動きが始まった。



パリ〜トゥール2013コース高低図パリ〜トゥール2013コース高低図 image:A.S.O.パリ〜トゥール2013ラスト13km高低図パリ〜トゥール2013ラスト13km高低図 image:A.S.O.



FDJ.frやアルゴス・シマノがコントロールするメイン集団FDJ.frやアルゴス・シマノがコントロールするメイン集団 photo:Cor Vosオメガファーマ・クイックステップやベルキンプロサイクリングが登りで積極的にアタックを仕掛けたものの、スプリンターチーム率いるメイン集団を引き離すことは出来ず。逃げグループから1人で飛び出して最後まで抵抗したサラモティンスも、ゴール10km手前の「ボーソレイユ」を前に吸収される。

単独で逃げ続けるアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)単独で逃げ続けるアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング) photo:Cor Vos「ボーソレイユ」で強力なアタックを仕掛けたのは、ディフェンディングチャンピオンのマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)だった。来季キャノンデールプロサイクリングに移籍するマルカートのアタックに、セプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキンプロサイクリング)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)が直ぐさま反応する。

遅れてシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)やイェツ・ボル(オランダ、ベルキンプロサイクリング)、アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)、ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)が追いついて先頭は7名に。

ゴールまで9kmを残して形成された強力な先頭グループ。しかしスプリンターの多さから協調体制が築けず、単独追走の末に追いついたフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)とともに「レパン」通過後に吸収される。先頭ではボルが単独で逃げ続けた。



ゴール10km手前の「ボーソレイユ」でアタックするマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)ゴール10km手前の「ボーソレイユ」でアタックするマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vos


グラモン大通りでのスプリントで勝利したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)グラモン大通りでのスプリントで勝利したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos先頭ボルを追ったのは、デゲンコルブでスプリントを狙うアルゴス・シマノ。トゥールの街に差し掛かり、名物グラモン大通りの最終ストレートに入ったところでボルは吸収される。チームメイトのリードアウトを受けたアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)の後ろから、デゲンコルブがスプリントを開始した。

シーズン最後のタイトルを手にしたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)シーズン最後のタイトルを手にしたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos時折フィニッシュラインを確認しながら、頭を上下に激しく振ってもがくデゲンコルブ。デマールやモルコフを振り切ったデゲンコルブが勝利した。

「常にスピードが速く、ころころとシチュエーションが変わる荒れたレースだった。そんな中でチームは作戦に忠実に、スマートな走りが出来たと思う。重要な動きには常にチームメイトが反応していたし、常にチームメイトが逃げを捕まえようと動いていた。集団が一つにまとまったとき、これはゴールスプリント勝負になると思った。チームメイトたちが最高のサポートで、逃げを捕まえ、集団スプリントに持ち込んでくれたんだ」とデゲンコルブはチームに感謝する。

ヴァッテンフォールサイクラシックスやジロ・デ・イタリア第5ステージに続く勝利を「キャリアの中での大きなハイライト」と語るデゲンコルブ。今シーズンはロンド・ファン・フラーンデレンで9位に入るなど、「登れるスプリンター」としての地位を確立した。

「ワンデークラシックが得意ということを改めて証明することが出来たと思う」。アルゴス・シマノのセカンドエースはそう語る。デゲンコルブは直前のパリ〜ブールジュでも勝利しており、シーズン6勝目で2013年を締めくくった。



パリ〜トゥール2013結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)
2位 ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)
3位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 ミカエル・ファンスタイエン(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
6位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
7位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ヨン・アベラストゥリ(スペイン、エウスカルテル)
9位 イオアニス・タモウリディス(ギリシャ、エウスカルテル)
10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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