2013/10/10(木) - 11:36
「Faster From Every Angle」をテーマに掲げ、ブランコプロサイクリング(現ベルキンプロサイクリング)の選手の活躍により華々しいデビューを遂げたエアロロードバイク・PROPEL(プロペル)。今回のインプレッションでは、セカンドグレードにあたる「ADVANCED」にスポットライトを当て、そのテクノロジーと性能を検証していく。
ジャイアント PROPEL ADVANCED 2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
従来、ピュアレーシング用であるTCRと、エンデュランス用のDEFYという2つのラインナップを擁してきたジャイアント。そしてTRINITYというエピックなTTバイクを展開してきたにも関わらず、その中間、つまりエアロロードバイクのラインナップは存在しなかった。
しかし世界第一の規模を誇り、幾多の大手ブランドのOEM生産を手がけるジャイアントが、それを良しとする筈が無い。プロペルは2年という歳月、そしてコンピュータ上、風洞、レース現場での幾多のテストを経て生み出された究極のエアロロードバイク。それも単に空力のみならず、登坂でも充分に使えるペダリング剛性と軽量製、一般的なロードバイクと遜色の無い素直なハンドリングなど走行性能も併せて追い求められている。
縦に薄く、横に幅広いヘッドチューブ周辺の造形
極限の薄さを実現している。この角度から見るとTTバイクそのものだ
TRPと共同開発したSPPED CONTROL SL ブレーキシステム
プロペル開発におけるキーフィーチャーは、ボトルを搭載することを前提としたフォルムや、プロチームに所属する選手を模った独自の可動マネキンを乗車させるなど、実際の走行で想定されるシチュエーションを踏まえて研究が重ねられたことだ。
ホリゾンタルデザインを採用したフレームには、フレーム/フロントフォーク形状と一体化するブレーキキャリパーが組み合わせられる。TRPと共同開発したこの「SPEED CONTROLブレーキシステム」は、前方投影面積に影響せず、かつ車体と組み合わせた際に翼断面形状を形成するというエピックなプロダクトだ。
細身かつ弱ホリゾンタルデザインのトップチューブ
くびれを設けたヘッドチューブ。OverDrive2を採用し、ヘッド剛性向上に貢献する
ダウンチューブ下部はボトルを取り付けた際の空力を踏まえ設計されている
オリジナルのCONTACT SLR AEROハンドル&ステムをアッセンブル
縦に薄く、横に幅広いというエアロロード然としたフォルムを持つプロペルだが、注視するとBBやヘッド周りなど、しっかりとボリューム感ある造形とされている事に気づく。これは、前述した通りレーシングバイクとして必要なオールラウンドな性能を持たせるための工夫である。
そうして完成されたプロペルは、時速40kmで、風の方向(ヨー角)を真向かいから徐々に増やしていくシミュレーションでは、ライバル車種と比較して常に低い空気抵抗値を記録し続け、特にヨー角10°では他を大きく上回る結果を出した。またプロペルで40km/hで距離40kmのタイムトライアルをした場合、2位のバイクに対して12秒、それ以下に対して30秒以上離す記録を計上してみせた。これはライバルを合計した平均値に対し、1km走るごとに1秒をリードしていくという、圧倒的なアドバンテージである。
BB86を用いたボトムブラケットはマッシブな作り込みだ
極限までシェイプされたチェーンステー
更にBBやヘッド剛性もテストの末、優秀な値をマーク。それぞれの結果こそ目立っていないが、トータルでは最もバランスに秀でている。つまり安定した剛性バランスを実現したのである。しかも、ライバルに対して圧倒的な軽量性(シートポストやブレーキセット、ヘッドパーツ含)を兼ね備えながら。
プロペルには上級モデルの「ADVANCED SL」と、今回のテスト車両である「ADVANCED」の2種類がある。上級モデルの「ADVANCED SL」はISPシートポストや専用コラムスペーサー、カーボン製ブレーキキャリパーなど、エリートアマチュアやプロフェッショナルライダーの使用を前提としている一方、「ADVANCED」ではこれらを廃しフィッティングの幅を広げ、ブレーキキャリパーをアルミ製とすることで高いコントロール性を確保。また、フレームの素材をT700グレードのカーボンに変更することで、アマチュアライダーに最適な剛性としているのである。
TTバイク然とした専用シートポスト。臼を用いて固定する
ミニVブレーキタイプの専用キャリパーを用いるブレーキ
限界ぎりぎりまでリアホイールに沿わせ空力性能を追求
圧倒的なエアロダイナミクスと、従来のエアロロードバイクを上回る剛性バランス、そして走行性能を兼ね備えたプロペル。この最新バイクをテストライダー両氏はどのように判断するのだろうか。今回はエアロロードの不得意とする、ケーブルのルーティングやメンテナンスについても言及していく。その性能や如何に。
ーインプレッション
「このバイクならではの高速域の気持ち良さを、是非味わってほしい」錦織大祐(フォーチュンバイク)
エアロロードとしては挙動が素直というのが第一印象です。翼断面形状チューブを使用したバイクは癖があるのが常ですが、プロペルは一般的なロードバイクに近い、ニュートラルな挙動をするバイクですね。ディテールとは異なる乗り味には良い意味で想像を裏切られました。
コンセプトの通りにスピードを求めたり、高い速度域での巡航性を重視するライダーに向いているバイクですね。プロペルは時速35~40km以上に達するとバイクの進み方やフィーリングが急激に変わる感触がありました。ぐんぐんとスピードに乗り、挙動も安定します。長距離を乗り込まないと明確には判断できませんが、ゆっくりと乗るバイクではないことだけ確かでしょう。
「このバイクならではの高速域の気持ち良さを、是非味わってほしい」錦織大祐(フォーチュンバイク)
縦剛性と横剛性のバランスが悪いバイクは、シッティングでは良いものの、ダンシング時などバイクに捩れる状態で、不安定さを感じさせることが多いと思います。しかしプロペルは恐らくカーボンの積層を工夫して横剛性を確保しているため、エアロロード特有の「乗りづらさ」が押さえ込まれているのでしょう。様々な方向からの風に対する挙動も安定していて、バイクが煽られることはありませんでした。
ただ縦方向の剛性が圧倒的に高いと感じます。そのため路面のギャップなど大きな衝撃は必要以上に伝えてくる性格がありました。荒れたシチュエーションでは身体で振動を吸収する乗り方をすることであまりストレスには感じなくなるはずです。
ただやはりTTバイク然と言うべきなのか、コーナリングでの細かい切り返しは苦手です。挙動が安定しているため高速コーナーではとても安心していられますが、テクニカルな下りでは挙動の遅れが積み重なり、結果ラインが膨らんでしまったりするようです。しっかりとそういった癖を把握し、コーナリングに望む必要があるでしょう。
気になるブレーキング性能ですが、近年では専用ブレーキをエアロフレームに組み合わせたバイクが多く、調整しづらいものや制動力にかけるものが多々ある中で、しっかりと完成度は高められています。絶対的なストッピングパワーこそデュラエースなどには劣りますが、制動が急激に立ち上がることがなく当て効きがしっかりと出来る印象ですね。何ら不安はありませんでした。
完成車としてのパーツアッセンブルもよく考えられた構成になっていますね。P-SLR1ホイールは回転性能が良い上に、フレームの特性と良くマッチしています。翼断面形状のハンドルにもしっかりと整流効果がある様で、風が乱れることなく真っ直ぐ流れてる事が感じ取れます。ハイレベルなレースに即出場出来るパッケージで、42万円というプライスは実にお買い得です。
レーサーはもちろんですが、例えば「週末の2日間で3時間ずつしか乗れないけど、気持ちよく風を切りたい」といった方にもオススメしたい。このバイクならではの高速域の気持ち良さを是非味わってほしいと思います。
「適正にぴたりとはまるレースなら大きなアドバンテージになる」渡辺将大(タキザワサイクル)
非常に直進性が強く、乾いた乗り味と軽さ。さながら軽量なTTバイクというイメージですね。ホリゾンタルデザイン、縦方向に薄いチュービング、などTTバイクに近い造形に起因しているのでしょう。
平坦での巡航は、まさしくTTバイク。標準装備されたディープリムのホイールがとても利いている印象があり、空気がスムーズに流れている様に感じました。専用ブレーキも正面から見ると非常に薄く、所有欲も高めてくれますね。
「適正にぴたりとはまるレースなら大きなアドバンテージになる」渡辺将大(タキザワサイクル)
縦方向の剛性が高いため、踏み込むペダリングをするとスピードが伸びていく傾向にあります。ギアを掛けたり、ダンシングやペースが上下させる走りではなく、常に一定出力を出せる方に特に向いています。その性格は登りでも同様です。
ツール・ド・フランスでは、様々なコースプロフィールのステージで使用されていましたね。集団の前でトレインを組んで牽引するシーンでは明らかにメリットがあると思います。強風下でも煽られる感覚は薄く、明らかに抵抗が少ないと感じました。
専用ブレーキに不満は無い。片効きにだけ注意したい 国内ではサーキットエンデューロやクリテリウム、タイムトライアルに最適でしょう。キツい斜度があるコースは苦手ですが、バイクの適正にぴたりとはまるレース・コースなら大きなアドバンテージを得ることができますね。コースに関わらずペースが非常に速い、海外の上級ホビーレースに出るならば間違いなくプロペルを選びます。
一点、リアバックが硬く縦の振動がいなしきれないため、荒れた場面では粘りきれずトラクションが抜けてしまう可能性があります。多少の癖はあるため慣れが必要ですが、エアロロードとしては良いレベルに収まっていると言えるでしょう。
今回試乗したアドバンスドグレードにはアルミ製のブレーキが装着されており、十分な制動力を持っていました。キャリパーブレーキとは制動の立ち上がり方などが異なるものの、慣れてしまえば違和感無く使用出来るでしょう。ただし、Vブレーキに起こりがちな片利きには留意が必要で、専用品であるため他に選択肢がないことにも留意する必要があると思います。
フォークコラムの後ろからフレームの中に通す特殊なワイヤールーティングですから、特に引きの重さを気にされる方もいると思います。ですがレバーの引きもスムーズで、特段気になることもありませんでした。
ジャイアント PROPEL ADVANCED 2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ジャイアント PROPEL ADVANCED 2
サイズ:XS、S、M、ML
フレーム:GIANT Advanced-Grade Composite
フォーク:GIANT Advanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
ブレーキ:シマノ 6800系アルテグラ+GIANT SPEED CONTROL SL
ホイール:GIANT P-SLR1 AERO
タイヤ:GIANT P-SL1 23c
重 量:7.6kg(XS)
価 格:420,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
渡辺将大(タキザワサイクル) 渡辺将大(タキザワサイクル)
群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル
錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe

従来、ピュアレーシング用であるTCRと、エンデュランス用のDEFYという2つのラインナップを擁してきたジャイアント。そしてTRINITYというエピックなTTバイクを展開してきたにも関わらず、その中間、つまりエアロロードバイクのラインナップは存在しなかった。
しかし世界第一の規模を誇り、幾多の大手ブランドのOEM生産を手がけるジャイアントが、それを良しとする筈が無い。プロペルは2年という歳月、そしてコンピュータ上、風洞、レース現場での幾多のテストを経て生み出された究極のエアロロードバイク。それも単に空力のみならず、登坂でも充分に使えるペダリング剛性と軽量製、一般的なロードバイクと遜色の無い素直なハンドリングなど走行性能も併せて追い求められている。



プロペル開発におけるキーフィーチャーは、ボトルを搭載することを前提としたフォルムや、プロチームに所属する選手を模った独自の可動マネキンを乗車させるなど、実際の走行で想定されるシチュエーションを踏まえて研究が重ねられたことだ。
ホリゾンタルデザインを採用したフレームには、フレーム/フロントフォーク形状と一体化するブレーキキャリパーが組み合わせられる。TRPと共同開発したこの「SPEED CONTROLブレーキシステム」は、前方投影面積に影響せず、かつ車体と組み合わせた際に翼断面形状を形成するというエピックなプロダクトだ。




縦に薄く、横に幅広いというエアロロード然としたフォルムを持つプロペルだが、注視するとBBやヘッド周りなど、しっかりとボリューム感ある造形とされている事に気づく。これは、前述した通りレーシングバイクとして必要なオールラウンドな性能を持たせるための工夫である。
そうして完成されたプロペルは、時速40kmで、風の方向(ヨー角)を真向かいから徐々に増やしていくシミュレーションでは、ライバル車種と比較して常に低い空気抵抗値を記録し続け、特にヨー角10°では他を大きく上回る結果を出した。またプロペルで40km/hで距離40kmのタイムトライアルをした場合、2位のバイクに対して12秒、それ以下に対して30秒以上離す記録を計上してみせた。これはライバルを合計した平均値に対し、1km走るごとに1秒をリードしていくという、圧倒的なアドバンテージである。


更にBBやヘッド剛性もテストの末、優秀な値をマーク。それぞれの結果こそ目立っていないが、トータルでは最もバランスに秀でている。つまり安定した剛性バランスを実現したのである。しかも、ライバルに対して圧倒的な軽量性(シートポストやブレーキセット、ヘッドパーツ含)を兼ね備えながら。
プロペルには上級モデルの「ADVANCED SL」と、今回のテスト車両である「ADVANCED」の2種類がある。上級モデルの「ADVANCED SL」はISPシートポストや専用コラムスペーサー、カーボン製ブレーキキャリパーなど、エリートアマチュアやプロフェッショナルライダーの使用を前提としている一方、「ADVANCED」ではこれらを廃しフィッティングの幅を広げ、ブレーキキャリパーをアルミ製とすることで高いコントロール性を確保。また、フレームの素材をT700グレードのカーボンに変更することで、アマチュアライダーに最適な剛性としているのである。



圧倒的なエアロダイナミクスと、従来のエアロロードバイクを上回る剛性バランス、そして走行性能を兼ね備えたプロペル。この最新バイクをテストライダー両氏はどのように判断するのだろうか。今回はエアロロードの不得意とする、ケーブルのルーティングやメンテナンスについても言及していく。その性能や如何に。
ーインプレッション
「このバイクならではの高速域の気持ち良さを、是非味わってほしい」錦織大祐(フォーチュンバイク)
エアロロードとしては挙動が素直というのが第一印象です。翼断面形状チューブを使用したバイクは癖があるのが常ですが、プロペルは一般的なロードバイクに近い、ニュートラルな挙動をするバイクですね。ディテールとは異なる乗り味には良い意味で想像を裏切られました。
コンセプトの通りにスピードを求めたり、高い速度域での巡航性を重視するライダーに向いているバイクですね。プロペルは時速35~40km以上に達するとバイクの進み方やフィーリングが急激に変わる感触がありました。ぐんぐんとスピードに乗り、挙動も安定します。長距離を乗り込まないと明確には判断できませんが、ゆっくりと乗るバイクではないことだけ確かでしょう。

縦剛性と横剛性のバランスが悪いバイクは、シッティングでは良いものの、ダンシング時などバイクに捩れる状態で、不安定さを感じさせることが多いと思います。しかしプロペルは恐らくカーボンの積層を工夫して横剛性を確保しているため、エアロロード特有の「乗りづらさ」が押さえ込まれているのでしょう。様々な方向からの風に対する挙動も安定していて、バイクが煽られることはありませんでした。
ただ縦方向の剛性が圧倒的に高いと感じます。そのため路面のギャップなど大きな衝撃は必要以上に伝えてくる性格がありました。荒れたシチュエーションでは身体で振動を吸収する乗り方をすることであまりストレスには感じなくなるはずです。
ただやはりTTバイク然と言うべきなのか、コーナリングでの細かい切り返しは苦手です。挙動が安定しているため高速コーナーではとても安心していられますが、テクニカルな下りでは挙動の遅れが積み重なり、結果ラインが膨らんでしまったりするようです。しっかりとそういった癖を把握し、コーナリングに望む必要があるでしょう。
気になるブレーキング性能ですが、近年では専用ブレーキをエアロフレームに組み合わせたバイクが多く、調整しづらいものや制動力にかけるものが多々ある中で、しっかりと完成度は高められています。絶対的なストッピングパワーこそデュラエースなどには劣りますが、制動が急激に立ち上がることがなく当て効きがしっかりと出来る印象ですね。何ら不安はありませんでした。
完成車としてのパーツアッセンブルもよく考えられた構成になっていますね。P-SLR1ホイールは回転性能が良い上に、フレームの特性と良くマッチしています。翼断面形状のハンドルにもしっかりと整流効果がある様で、風が乱れることなく真っ直ぐ流れてる事が感じ取れます。ハイレベルなレースに即出場出来るパッケージで、42万円というプライスは実にお買い得です。
レーサーはもちろんですが、例えば「週末の2日間で3時間ずつしか乗れないけど、気持ちよく風を切りたい」といった方にもオススメしたい。このバイクならではの高速域の気持ち良さを是非味わってほしいと思います。
「適正にぴたりとはまるレースなら大きなアドバンテージになる」渡辺将大(タキザワサイクル)
非常に直進性が強く、乾いた乗り味と軽さ。さながら軽量なTTバイクというイメージですね。ホリゾンタルデザイン、縦方向に薄いチュービング、などTTバイクに近い造形に起因しているのでしょう。
平坦での巡航は、まさしくTTバイク。標準装備されたディープリムのホイールがとても利いている印象があり、空気がスムーズに流れている様に感じました。専用ブレーキも正面から見ると非常に薄く、所有欲も高めてくれますね。

縦方向の剛性が高いため、踏み込むペダリングをするとスピードが伸びていく傾向にあります。ギアを掛けたり、ダンシングやペースが上下させる走りではなく、常に一定出力を出せる方に特に向いています。その性格は登りでも同様です。
ツール・ド・フランスでは、様々なコースプロフィールのステージで使用されていましたね。集団の前でトレインを組んで牽引するシーンでは明らかにメリットがあると思います。強風下でも煽られる感覚は薄く、明らかに抵抗が少ないと感じました。

一点、リアバックが硬く縦の振動がいなしきれないため、荒れた場面では粘りきれずトラクションが抜けてしまう可能性があります。多少の癖はあるため慣れが必要ですが、エアロロードとしては良いレベルに収まっていると言えるでしょう。
今回試乗したアドバンスドグレードにはアルミ製のブレーキが装着されており、十分な制動力を持っていました。キャリパーブレーキとは制動の立ち上がり方などが異なるものの、慣れてしまえば違和感無く使用出来るでしょう。ただし、Vブレーキに起こりがちな片利きには留意が必要で、専用品であるため他に選択肢がないことにも留意する必要があると思います。
フォークコラムの後ろからフレームの中に通す特殊なワイヤールーティングですから、特に引きの重さを気にされる方もいると思います。ですがレバーの引きもスムーズで、特段気になることもありませんでした。

ジャイアント PROPEL ADVANCED 2
サイズ:XS、S、M、ML
フレーム:GIANT Advanced-Grade Composite
フォーク:GIANT Advanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column
コンポーネント:シマノ 6800系アルテグラ
ブレーキ:シマノ 6800系アルテグラ+GIANT SPEED CONTROL SL
ホイール:GIANT P-SLR1 AERO
タイヤ:GIANT P-SL1 23c
重 量:7.6kg(XS)
価 格:420,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール

群馬県のタキザワサイクルにてチーフメカニックとして勤務する傍ら、シクロクロスを含むレース参加や林道ツーリングを通して、10代から60代まで幅広い年齢層のユーザーに自転車の楽しみ方を提供している。かつては高校大学と名門校にて競技生活を送り、ベルギーやオランダでの競技経験、1年間のオーストラリア競技留学経験を持つ。グラベルライディングを嗜み、レースだけにとらわれない幅広い自転車の楽しみ方を追求中。
タキザワサイクル

幼少のころから自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
フォーチュンバイク
ウエア協力:reric
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,So.Isobe
Amazon.co.jp