2013/09/16(月) - 13:32
今回が2回めとなる信州の新しいロングライドイベント、北アルプス山麓グランフォンドが9月8日に開催された。あいにくの雨天になったが、630人が白馬・仁科三湖周辺のライドを楽しんだ。
「北アルプス山麓グランフォンド」は、山紫水明の地、青木湖や日向山高原、大町温泉郷などを巡るロングライドイベント。グランフォンドの名が付いているが、距離はロングコースで100kmとやや短め。しかしそのコースの険しさから走りごたえたっぷりの大会だ。同時に信州のグルメを思う存分味わえることでも人気だ。
昨2012年が第1回大会で、今年が2回めの開催となる。新しいイベントだが、近いエリアで開催される6月のアルプスあづみのセンチュリーライドと姉妹大会で、元MTBプロライダーの鈴木雷太さん(BIKE RANCH)が大会プロデューサーをつとめてコースの設定をしたこともあって初回から成功を収めた。
編集部では今年も自転車での実走取材を楽しみにしていたが、天気予報はあいにくの雨予報。しかも大雨警報が出ていることに大いに気を揉みつつ、前日イベントから取材に伺った。
スキー場の鹿島槍スポーツヴィレッジがメイン会場で、昼から雷太さんによるロングライド講座が行われた。基本に立ち返ったロングライドのアドバイスとコースの注意点などの走り方ガイドや、雨の中を走るコツなどをレクチャーしてくれた。
「自分の内面に入っていく感じがして、雨の中を走るのがじつは好き」と雷太さん。ウェアや装備さえしっかりしておけば走るのは苦ではないというのは、サイクリストなら納得できる話だろう。
前日のお楽しみ「三蔵呑み歩き」でほろ酔い気分
その後の土曜日のお楽しみは、麓の街・信濃大町の市街地で開催される地元イベント「三蔵呑み歩き」だ。銘酒・白馬錦の工場や、市街の酒蔵、商店街において、お酒や肴を振舞ってくれるというこのイベント。「のんべえ」にはたまらない。
街のあちこちにふるまい酒スポットがあり、パスポート代わりに1500円で購入したお猪口(ちょこ)があればお酒と肴がほぼ呑み・食べ放題というもの。街のあちこちで車座になってお酒を楽しむ地元の人に混じって、グランフォンド参加者も楽しんでいた。
三蔵呑み歩きへは大会会場からシャトルバスが運行され、マイカーでなくても行くことができる。今年から大町温泉郷など周辺の宿泊施設とタイアップしたことで大町周辺に宿をとってこのイベントを楽しんじゃった人も多いことだろう。全国の酒呑みが集まるというのも納得のイベントだ。
大会当日は雨。ロングコースは短縮で開催
大会当日朝、やはり天気予報どおり雨模様だ。しかし雨は小降りでそれほど寒さを感じない気温。しかし昨日のうちにアナウンスされていたとおり、安全をとってコースの短縮が決定された。
100㎞のロングコース部門がとりやめられ、(もともと設定されている)70kmのミドルコースを走ることに。ほかに35kmのエンジョイコースがある。
距離にして30kmの短縮だが、美麻から日向山高原、唐花見湿原、大峰高原を通過する山岳の厳しい区間がざっくりとカットされた。このため大幅にイージーなコースになったが、この区間はもともと三つの峠のダウンヒルが急で危険な区間だったので、懸命な判断だったと思う。ガッツリ走りたい派も概ね歓迎だったようだ。今年はマヴィックのニュートラルカーが機材サポートに随行してくれ、安心だ。
ほかに昨年と違うところは、スタート地点が鹿島槍スキー場になったこと(昨年は下り切ったところにスタートが設けられた)。長くて急なダウンヒル区間を経て、仁科三湖へ。中綱湖、青木湖の湖畔道路を走る。アルプスあづみのでも折り返し地点となっている白馬八方尾根スキー場のジャンプ台を目指す。
雨のため白馬岳や後立山連峰の山容は臨めないが、いつもより神秘的な雰囲気の増した仁科三湖の湖畔ライドが景観のハイライトになった。暖かいきのこ汁が振る舞われた五輪ジャンプ台で折り返したら、木崎湖もルートに加わる。木崎湖奥側の湖畔道路は湖水が道路すぐのところまで迫るほど近く、眺めも良かった。
特別謳ってはいないものの、エイドステーションでのグルメな補給食に力を入れているこの大会。休憩ごとに地元の食材を活かした美味しい食べ物が用意されるのが、走りながらの楽しみになる。
霧に煙る幻想的な天候。雨でしっとりした田畑や、白い花のじゅうたんが続く蕎麦畑の風景は信州ならでは。田んぼも濡れることで色合いが鮮やかになり、雨なら雨で楽しめる風景はある。都会に比べてやっぱり空気は美味しいし、雷太さんの言うとおり、自分と対話しながら黙々とペダルを漕ぐ雨中ライドもなかなか良いものだ。
後半の大町温泉郷エイドがグルメ補給食のハイライトスポット。ねぎ味噌をつけて食べるつやつや白米のおにぎりや、この地域特産の大豆を使った豆腐、地元の新鮮野菜、創意工夫たっぷりのお漬物、そしておなじみ洋菓子喫茶店アンマリーレさんによる焼きドーナツなどが楽しめて、濡れた身体の参加者も大いに楽しめたようだ。ただし雨中ライドでは長い休憩ストップは禁物。身体が冷えないように早めに走り出すのが吉だ。
短縮ルートはアップダウンが少ないため、速い人なら2時間半程度でゴールできた。ゆっくりの人たちも昼前にはゴール。結局、短縮コースの最難関箇所は、ゴール前のラスト2kmの上りにあった。
平均7~8%の坂の最後の上り口に立てられた手作り看板の「ラストスパートいつかけるの? 今でしょ!」にちょっぴり笑いながら、鹿島槍スキー場までの九十九折れを蛇行して上り、ゴールへ。
100kmコースが無くなったことで、本来はその区間に用意されるはずだったエイドステーション用の補給食はゴール地点に大集合した。あったかいきのこ汁と、この地方特有の名物、納豆菌で練ったうどん「おざんざ」、そして信じられないぐらい甘いぶどう「ナガノパープル」やブルーベリー、りんごなど信州フルーツもたっぷり振る舞われた。ゴール時間はちょうどお昼どき。これらがお昼ごはん代わりになった人が多かったようだ。
ほとんどの人がゴールした頃になると雨が完全に止み、雲の間から晴れ間さえ見えてきたのは、何かお約束のような気もする(笑)。しかし幸い、走っている間も幸い雨の降りはそれほどでもなく、それほど辛くはなかったようだ。エントリーした630人のほとんどが走ったようだから、サイクリストの皆さんはやっぱり大したものである。
ロングコース申込者は30kmのコース短縮でずいぶん楽な思いをしたようだ。でも、終わってから思えばこの大会本来のアップダウンが厳しい山岳コースをくじけそうになりながらも頑張って走り切るというのも、やっぱりいい。来年はまた走りにこよう。
「走り応えのあるコースとグルメ。また来年も走りに来てください」
鈴木雷太さん(プロデューサー)
「本来の北アルプス山麓グランフォンドのロングコースは、距離は100kmと短いのですが、アップダウンが多く、急勾配の坂も多いため大変厳しいものです。しかし昨年の第1回大会の参加者アンケートによれば、距離と難易度のバランスが適度で、満足度が非常に大きいと評価されました。同じエリアで開催される初夏の”アルプスあづみのセンチュリーライド”が距離が長くても平坦路が多くを占めるのに対し、差別化のためにも本大会は坂が厳しいところが良いと思っています。
雨が降ったのは残念ですが、本来なら走りやすい気候のなか山岳美とグルメが堪能できる素晴らしい大会です。また来年もパワーアップしますので、皆さんぜひ走りに来てくださいね」。
photo&text:Makoto.AYANO
北アルプス山麓グランフォンド2013PV (パブリックレコード制作)
フォトギャラリー(CW FaceBookアルバム)
「北アルプス山麓グランフォンド」は、山紫水明の地、青木湖や日向山高原、大町温泉郷などを巡るロングライドイベント。グランフォンドの名が付いているが、距離はロングコースで100kmとやや短め。しかしそのコースの険しさから走りごたえたっぷりの大会だ。同時に信州のグルメを思う存分味わえることでも人気だ。
昨2012年が第1回大会で、今年が2回めの開催となる。新しいイベントだが、近いエリアで開催される6月のアルプスあづみのセンチュリーライドと姉妹大会で、元MTBプロライダーの鈴木雷太さん(BIKE RANCH)が大会プロデューサーをつとめてコースの設定をしたこともあって初回から成功を収めた。
編集部では今年も自転車での実走取材を楽しみにしていたが、天気予報はあいにくの雨予報。しかも大雨警報が出ていることに大いに気を揉みつつ、前日イベントから取材に伺った。
スキー場の鹿島槍スポーツヴィレッジがメイン会場で、昼から雷太さんによるロングライド講座が行われた。基本に立ち返ったロングライドのアドバイスとコースの注意点などの走り方ガイドや、雨の中を走るコツなどをレクチャーしてくれた。
「自分の内面に入っていく感じがして、雨の中を走るのがじつは好き」と雷太さん。ウェアや装備さえしっかりしておけば走るのは苦ではないというのは、サイクリストなら納得できる話だろう。
前日のお楽しみ「三蔵呑み歩き」でほろ酔い気分
その後の土曜日のお楽しみは、麓の街・信濃大町の市街地で開催される地元イベント「三蔵呑み歩き」だ。銘酒・白馬錦の工場や、市街の酒蔵、商店街において、お酒や肴を振舞ってくれるというこのイベント。「のんべえ」にはたまらない。
街のあちこちにふるまい酒スポットがあり、パスポート代わりに1500円で購入したお猪口(ちょこ)があればお酒と肴がほぼ呑み・食べ放題というもの。街のあちこちで車座になってお酒を楽しむ地元の人に混じって、グランフォンド参加者も楽しんでいた。
三蔵呑み歩きへは大会会場からシャトルバスが運行され、マイカーでなくても行くことができる。今年から大町温泉郷など周辺の宿泊施設とタイアップしたことで大町周辺に宿をとってこのイベントを楽しんじゃった人も多いことだろう。全国の酒呑みが集まるというのも納得のイベントだ。
大会当日は雨。ロングコースは短縮で開催
大会当日朝、やはり天気予報どおり雨模様だ。しかし雨は小降りでそれほど寒さを感じない気温。しかし昨日のうちにアナウンスされていたとおり、安全をとってコースの短縮が決定された。
100㎞のロングコース部門がとりやめられ、(もともと設定されている)70kmのミドルコースを走ることに。ほかに35kmのエンジョイコースがある。
距離にして30kmの短縮だが、美麻から日向山高原、唐花見湿原、大峰高原を通過する山岳の厳しい区間がざっくりとカットされた。このため大幅にイージーなコースになったが、この区間はもともと三つの峠のダウンヒルが急で危険な区間だったので、懸命な判断だったと思う。ガッツリ走りたい派も概ね歓迎だったようだ。今年はマヴィックのニュートラルカーが機材サポートに随行してくれ、安心だ。
ほかに昨年と違うところは、スタート地点が鹿島槍スキー場になったこと(昨年は下り切ったところにスタートが設けられた)。長くて急なダウンヒル区間を経て、仁科三湖へ。中綱湖、青木湖の湖畔道路を走る。アルプスあづみのでも折り返し地点となっている白馬八方尾根スキー場のジャンプ台を目指す。
雨のため白馬岳や後立山連峰の山容は臨めないが、いつもより神秘的な雰囲気の増した仁科三湖の湖畔ライドが景観のハイライトになった。暖かいきのこ汁が振る舞われた五輪ジャンプ台で折り返したら、木崎湖もルートに加わる。木崎湖奥側の湖畔道路は湖水が道路すぐのところまで迫るほど近く、眺めも良かった。
特別謳ってはいないものの、エイドステーションでのグルメな補給食に力を入れているこの大会。休憩ごとに地元の食材を活かした美味しい食べ物が用意されるのが、走りながらの楽しみになる。
霧に煙る幻想的な天候。雨でしっとりした田畑や、白い花のじゅうたんが続く蕎麦畑の風景は信州ならでは。田んぼも濡れることで色合いが鮮やかになり、雨なら雨で楽しめる風景はある。都会に比べてやっぱり空気は美味しいし、雷太さんの言うとおり、自分と対話しながら黙々とペダルを漕ぐ雨中ライドもなかなか良いものだ。
後半の大町温泉郷エイドがグルメ補給食のハイライトスポット。ねぎ味噌をつけて食べるつやつや白米のおにぎりや、この地域特産の大豆を使った豆腐、地元の新鮮野菜、創意工夫たっぷりのお漬物、そしておなじみ洋菓子喫茶店アンマリーレさんによる焼きドーナツなどが楽しめて、濡れた身体の参加者も大いに楽しめたようだ。ただし雨中ライドでは長い休憩ストップは禁物。身体が冷えないように早めに走り出すのが吉だ。
短縮ルートはアップダウンが少ないため、速い人なら2時間半程度でゴールできた。ゆっくりの人たちも昼前にはゴール。結局、短縮コースの最難関箇所は、ゴール前のラスト2kmの上りにあった。
平均7~8%の坂の最後の上り口に立てられた手作り看板の「ラストスパートいつかけるの? 今でしょ!」にちょっぴり笑いながら、鹿島槍スキー場までの九十九折れを蛇行して上り、ゴールへ。
100kmコースが無くなったことで、本来はその区間に用意されるはずだったエイドステーション用の補給食はゴール地点に大集合した。あったかいきのこ汁と、この地方特有の名物、納豆菌で練ったうどん「おざんざ」、そして信じられないぐらい甘いぶどう「ナガノパープル」やブルーベリー、りんごなど信州フルーツもたっぷり振る舞われた。ゴール時間はちょうどお昼どき。これらがお昼ごはん代わりになった人が多かったようだ。
ほとんどの人がゴールした頃になると雨が完全に止み、雲の間から晴れ間さえ見えてきたのは、何かお約束のような気もする(笑)。しかし幸い、走っている間も幸い雨の降りはそれほどでもなく、それほど辛くはなかったようだ。エントリーした630人のほとんどが走ったようだから、サイクリストの皆さんはやっぱり大したものである。
ロングコース申込者は30kmのコース短縮でずいぶん楽な思いをしたようだ。でも、終わってから思えばこの大会本来のアップダウンが厳しい山岳コースをくじけそうになりながらも頑張って走り切るというのも、やっぱりいい。来年はまた走りにこよう。
「走り応えのあるコースとグルメ。また来年も走りに来てください」
鈴木雷太さん(プロデューサー)
「本来の北アルプス山麓グランフォンドのロングコースは、距離は100kmと短いのですが、アップダウンが多く、急勾配の坂も多いため大変厳しいものです。しかし昨年の第1回大会の参加者アンケートによれば、距離と難易度のバランスが適度で、満足度が非常に大きいと評価されました。同じエリアで開催される初夏の”アルプスあづみのセンチュリーライド”が距離が長くても平坦路が多くを占めるのに対し、差別化のためにも本大会は坂が厳しいところが良いと思っています。
雨が降ったのは残念ですが、本来なら走りやすい気候のなか山岳美とグルメが堪能できる素晴らしい大会です。また来年もパワーアップしますので、皆さんぜひ走りに来てくださいね」。
photo&text:Makoto.AYANO
北アルプス山麓グランフォンド2013PV (パブリックレコード制作)
フォトギャラリー(CW FaceBookアルバム)
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