2013/08/31(土) - 11:27
スプリンターチームの隙を突く、残り10kmのアタック。テクニカルコースでリードを広げたロード世界チャンピオンと元シクロクロス世界チャンピオンが、僅差で逃げ切った。スプリント一騎打ちはゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)に軍配が上がっている。
引き続きイベリア半島を南下するブエルタ・ア・エスパーニャは、第7ステージでアンダルシア州に達した。ゴール地点はアンダルシア州都セビーリャ近郊にあるマイレナ・デル・アルハファレ。この日はアンダルシア名物の熱波が選手たちを襲った。
気温37度の暑さの中、地元セビーリャで一花咲かそうとアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)らがレース序盤から積極的にアタック。しかしピエドラのアタックは失敗に終わり、逃げの常連ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)とマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)、クリスティアン・クネース(ドイツ、スカイプロサイクリング)の3人による逃げが決まる。
ブエルタのシンボル的存在である牛の看板を横目に、逃げグループに最大7分のリードを与えたプロトン。レース中盤に差し掛かると、ガーミン・シャープ、オメガファーマ・クイックステップ、アルゴス・シマノ、オリカ・グリーンエッジ、ランプレ・メリダというスプリンターチームがペースアップを開始する。
レース終盤、マイレナ・デル・アルハファレを起点にした周回コース(31km x 1.5周)に差し掛かると、早くもタイム差は1分台に。多くの観客が詰めかけたこの周回コースは、高速道路と街中の通りを複雑に組み合わせたもの。コーナーが連続し、道幅が断続的に変わる。危険回避を目的にした総合系のチームも前に上がったため、メイン集団のスピードはますます上がる。残り15km地点で逃げは吸収された。
残り13kmでガーミン・シャープのエーススプリンターを務めるタイラー・ファラー(アメリカ)がパンクで後退し、その直後に総合エースのダニエル・マーティン(アイルランド)が落車。マーティンを復帰させるべくガーミン・シャープは全力を尽くしたが、スピードの上がったメイン集団には追いつかず、結局マーティンは1分33秒を失った。
いよいよ今大会3度目の集団スプリントに向けて各チームが隊列を組む頃、勝利に向けたアタックが決まる。道幅のある幹線道路から街中の狭路に差し掛かる直前のタイミングで、フィニッシュラインまでおよそ10kmを残して、ジルベールとスティバルがメイン集団から飛び出した。
「ゴール前がトリッキーで狭い道だったのでアタックした。スティバルとメイン集団を抜け出して、中継バイクのスリップストリームの恩恵を受けながらリードを広げたんだ」と、アルカンシェルを着て走るジルベールは振り返る。
慌ててオリカ・グリーンエッジやロット・ベリソル、ランプレ・メリダ、モビスターがメイン集団を率いて追走。直線区間でタイム差は縮まり、残り5kmでタイム差は6秒まで縮まる。しかしテクニカルコーナーが続く区間でタイム差が広がり、残り3kmでタイム差は12秒に。
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)らの牽引も虚しく、スピードを繋ぎながら連続コーナーをクリアするジルベール&スティバルが逆にリードを広げる。残り2kmで17秒。メイン集団の牽制も手伝って、2人の逃げ切りが決まった。
残り1kmを切ってアントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)らがカウンターアタックを仕掛けたが、ジルベール&スティバルには届かない。スプリントに向けて先に腰を上げたのはスティバルで、ジルベールがタイミングを待ってから踏んで行く。残り数十メートルでジルベールは一気に加速してスティバルに並び、両者ハンドルを投げ込んでフィニッシュ。両手を挙げたのはスティバルだった。
「アクセル全開だった。もともとメールスマンで勝負する作戦だったけど、残り100kmの時点で、逃げが生まれるような展開になればトライしてみたいと監督と話していたんだ。周回コースでフィニッシュラインを一度通過した時に、これは逃げが決まるコースだと確信した。もっと多くの選手がアタックすると予想していたよ」。狙い澄ましたアタックで、有言実行の勝利を捥ぎとったスティバルはそう語る。
2010年と2011年にシクロクロスの世界チャンピオンに輝き、現在はロードに専念するゼネク・スティバル、27歳。クラシックのスペシャリストとして成長を続け、8月のエネコツアーではステージ2勝&総合優勝に輝いている。
「ブエルタ開幕の時点では(エネコツアーの)疲労が抜けていなくて、最初の数ステージは苦しんでいた。ステージ優勝を狙っていたけど、まさか大会7日目にそれを達成出来るとは思っていなかった」とスティバル。元シクロクロス世界チャンピオンがグランツールで初めての栄冠を手にした。
一方のロード世界チャンピオンジルベールは未だ勝てずにいる。積極的な走りを見せているものの、今シーズン0勝。「結果は残念だけど、自分のコンディションには満足だ。良い感触が戻って来ている。ブエルタで日々調子を上げて、チャンスがあるステージでまた勝負したい」。アルカンシェル着用中になんとか1勝は挙げたいところだ。
マイヨロホはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープ。平坦ステージ3連戦を終えたブエルタは、前半戦の山場であるアンダルシア山岳ステージ3連戦に突入する。1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスにゴールする第8ステージで再び総合成績が大きく動くはずだ。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第7ステージ結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) 4h51'27"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 ロバート・ワグナー(ドイツ、ベルキンプロサイクリング) +01"
4位 アドリアン・プティ(フランス、コフィディス)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
8位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
9位 クラース・ロデウィック(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 レイナード・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、アルゴス・シマノ)
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 27h29'35"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +16"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +21"
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード) +26"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +28"
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +38"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +42"
プントス(ポイント賞)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 53pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ) 40pts
モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 11pts
2位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 8pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 6pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 8pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 13pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 19pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード 81h29'16"
2位 サクソ・ティンコフ +05"
3位 ベルキンプロサイクリング +1'10"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic/Graham Watson
引き続きイベリア半島を南下するブエルタ・ア・エスパーニャは、第7ステージでアンダルシア州に達した。ゴール地点はアンダルシア州都セビーリャ近郊にあるマイレナ・デル・アルハファレ。この日はアンダルシア名物の熱波が選手たちを襲った。
気温37度の暑さの中、地元セビーリャで一花咲かそうとアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)らがレース序盤から積極的にアタック。しかしピエドラのアタックは失敗に終わり、逃げの常連ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)とマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)、クリスティアン・クネース(ドイツ、スカイプロサイクリング)の3人による逃げが決まる。
ブエルタのシンボル的存在である牛の看板を横目に、逃げグループに最大7分のリードを与えたプロトン。レース中盤に差し掛かると、ガーミン・シャープ、オメガファーマ・クイックステップ、アルゴス・シマノ、オリカ・グリーンエッジ、ランプレ・メリダというスプリンターチームがペースアップを開始する。
レース終盤、マイレナ・デル・アルハファレを起点にした周回コース(31km x 1.5周)に差し掛かると、早くもタイム差は1分台に。多くの観客が詰めかけたこの周回コースは、高速道路と街中の通りを複雑に組み合わせたもの。コーナーが連続し、道幅が断続的に変わる。危険回避を目的にした総合系のチームも前に上がったため、メイン集団のスピードはますます上がる。残り15km地点で逃げは吸収された。
残り13kmでガーミン・シャープのエーススプリンターを務めるタイラー・ファラー(アメリカ)がパンクで後退し、その直後に総合エースのダニエル・マーティン(アイルランド)が落車。マーティンを復帰させるべくガーミン・シャープは全力を尽くしたが、スピードの上がったメイン集団には追いつかず、結局マーティンは1分33秒を失った。
いよいよ今大会3度目の集団スプリントに向けて各チームが隊列を組む頃、勝利に向けたアタックが決まる。道幅のある幹線道路から街中の狭路に差し掛かる直前のタイミングで、フィニッシュラインまでおよそ10kmを残して、ジルベールとスティバルがメイン集団から飛び出した。
「ゴール前がトリッキーで狭い道だったのでアタックした。スティバルとメイン集団を抜け出して、中継バイクのスリップストリームの恩恵を受けながらリードを広げたんだ」と、アルカンシェルを着て走るジルベールは振り返る。
慌ててオリカ・グリーンエッジやロット・ベリソル、ランプレ・メリダ、モビスターがメイン集団を率いて追走。直線区間でタイム差は縮まり、残り5kmでタイム差は6秒まで縮まる。しかしテクニカルコーナーが続く区間でタイム差が広がり、残り3kmでタイム差は12秒に。
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)らの牽引も虚しく、スピードを繋ぎながら連続コーナーをクリアするジルベール&スティバルが逆にリードを広げる。残り2kmで17秒。メイン集団の牽制も手伝って、2人の逃げ切りが決まった。
残り1kmを切ってアントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)らがカウンターアタックを仕掛けたが、ジルベール&スティバルには届かない。スプリントに向けて先に腰を上げたのはスティバルで、ジルベールがタイミングを待ってから踏んで行く。残り数十メートルでジルベールは一気に加速してスティバルに並び、両者ハンドルを投げ込んでフィニッシュ。両手を挙げたのはスティバルだった。
「アクセル全開だった。もともとメールスマンで勝負する作戦だったけど、残り100kmの時点で、逃げが生まれるような展開になればトライしてみたいと監督と話していたんだ。周回コースでフィニッシュラインを一度通過した時に、これは逃げが決まるコースだと確信した。もっと多くの選手がアタックすると予想していたよ」。狙い澄ましたアタックで、有言実行の勝利を捥ぎとったスティバルはそう語る。
2010年と2011年にシクロクロスの世界チャンピオンに輝き、現在はロードに専念するゼネク・スティバル、27歳。クラシックのスペシャリストとして成長を続け、8月のエネコツアーではステージ2勝&総合優勝に輝いている。
「ブエルタ開幕の時点では(エネコツアーの)疲労が抜けていなくて、最初の数ステージは苦しんでいた。ステージ優勝を狙っていたけど、まさか大会7日目にそれを達成出来るとは思っていなかった」とスティバル。元シクロクロス世界チャンピオンがグランツールで初めての栄冠を手にした。
一方のロード世界チャンピオンジルベールは未だ勝てずにいる。積極的な走りを見せているものの、今シーズン0勝。「結果は残念だけど、自分のコンディションには満足だ。良い感触が戻って来ている。ブエルタで日々調子を上げて、チャンスがあるステージでまた勝負したい」。アルカンシェル着用中になんとか1勝は挙げたいところだ。
マイヨロホはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープ。平坦ステージ3連戦を終えたブエルタは、前半戦の山場であるアンダルシア山岳ステージ3連戦に突入する。1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスにゴールする第8ステージで再び総合成績が大きく動くはずだ。
選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第7ステージ結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) 4h51'27"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 ロバート・ワグナー(ドイツ、ベルキンプロサイクリング) +01"
4位 アドリアン・プティ(フランス、コフィディス)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
8位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
9位 クラース・ロデウィック(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 レイナード・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、アルゴス・シマノ)
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 27h29'35"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) +08"
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード) +16"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +21"
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード) +26"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング) +28"
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ) +38"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +42"
プントス(ポイント賞)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 53pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ) 40pts
モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 11pts
2位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 8pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 6pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) 8pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 13pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) 19pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード 81h29'16"
2位 サクソ・ティンコフ +05"
3位 ベルキンプロサイクリング +1'10"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic/Graham Watson