2013/05/20(月) - 22:02
プロトンがテレグラフ峠に差し掛かった頃、それまで快晴だったガリビエ峠に雪雲が広がり始めた。暖かかった岩山に冷たい風が吹き始める。マリアローザが見える頃、横殴りの雪が降り始める。真冬の山岳風景をプロトンが進む。
前日にステージ優勝を飾ったマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)は人気者に photo:Kei Tsuji
これはブルーノ(ピレス)の photo:Kei Tsuji
チェザーナ・トリネーゼのスタート地点 photo:Kei Tsuji
朝からサクソ・ティンコフの宮島正典マッサーは忙しそうに走り回っていた。雪が降る山岳ステージだけに、いつもと用意するものが異なる。手早くサコッシュに選手の名前を書き込み、1級山岳モンセニス峠の頂上で補給を行なう準備を整える。
宮島マッサーはジロ1週目はホテル担当(ホテルに先着して選手を受け入れる準備を整える)だったが、2週目からレース現場担当に。テキパキと仕事をこなしながら「大変だけど、やっぱり現場は楽しい」と言う笑顔が眩しい。選手やスタッフからの信頼も厚い。
どんどんサインが集まってきました photo:Kei Tsuji
楽しそうにレースの準備をするサクソ・ティンコフの宮島正典マッサー photo:Kei Tsuji
チェザーナ・トリネーゼをスタートするプロトン photo:Kei Tsuji
積雪によって大幅なコース変更が噂されていた第15ステージ。懸命な除雪作業によってコース変更は最小限に留まった。フランス側からは「ガリビエとモンセニスをコースから外してくれ」という強い要望が出ていたが、主催者と地元の努力によって何とか開催にこぎつけた。レース当日の朝、ガリビエ峠は真っ白だったらしい。
ピエモンテの地元新聞によると、仮にフランス国境の1級山岳モンセニス峠が通行不可の場合は、アルプス山脈を貫く全長13kmのフレジュストンネル(高速道路:普通車の通行料金41ユーロ)を通す案も出ていたという。
ゴール地点は標高2642mのガリビエ峠頂上ではなく、4.2km下ったところにある標高2301mの「モニュメント・パンターニ」に移動した。主催者は元々この第15ステージを「パンターニに捧げるステージ」に設定していたので、ゴール地点としてしっくりくる。
標高2301mにあるパンターニのモニュメント photo:Kei Tsuji
フランスに入ると警察もフランス風に photo:Kei Tsuji
ガリビエ峠でお酒を飲みながら photo:Kei Tsuji
マリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が集団のペースを上げる photo:Kei Tsuji
1998年、ジロ・デ・イタリアで初めて総合優勝したマルコ・パンターニは、ツール・ド・フランスでヤン・ウルリッヒ(ドイツ)と総合争いを繰り広げていた。第14ステージを終えて、タイムトライアルで先行したウルリッヒをパンターニは3分01秒差で追う展開。第15ステージのガリビエ峠でパンターニが攻撃に出た。
ゴールまで48kmを残してメイン集団から飛び出したパンターニは、雨のガリビエをハイペースで駆け上がり、ウルリッヒを3分近く引き離して頂上をクリア。一旦止まってジャケットを着たパンターニに対し、タイムを惜しんでジャケットを着なかったウルリッヒ。両者のタイム差は縮まるどころか広がって行く。ウルリッヒを8分57秒引き離してゴールしたパンターニが、史上7人目のダブルツールを果たした。パンターニはこのガリビエステージを「キャリア最高の日」と回想している。イタリア人がガリビエ峠と聞いて思い出すのは、そんなパンターニの伝説的な走りだ。
2004年に突然の死を遂げたパンターニにはドーピング疑惑が常につきまとうが、今でもその人気は衰えない。「アイドルはパンターニ」と答える現役選手も多い。「ピラータ」のトレードマークであるドクロを描いた旗があちこちで風になびく。
そんなパンターニと誕生日が同じ(1月13日)のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が、ガリビエで勝った。偶然にも、パンターニが亡くなった2004年にヴィスコンティはプロデビューを果たしている。ジロとツールという違いはあるが、偶然にも同じ第15ステージ。ちょうど1年前の第15ステージでヴィスコンティはジロをリタイアしている。そんなシンクロがヴィスコンティの勝利を特別なものにしている。
雪が降る1級山岳ガリビエ峠を登るジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) photo:Riccardo Scanferla
雪の降る1級山岳ガリビエ峠を登る photo:Kei Tsuji
ガリビエ峠は、ジロの到着に合わせるように雪雲に包まれた。山の天気は変わりやすい。到着30分前まですっかり晴れていたのに、岩山を照らしていた太陽は厚い雲に隠れてしまう。一時は吹雪と言っていいほどの雪にガリビエは包まれた。
そしてレース終了と同時に雪雲は去る。美しきアルプス山脈が姿を見せる。今年のジロは本当に雲と一緒に移動しているのかも知れない。そんな天気を味方につけないとジロでは勝てない。2日連続の雪の頂上ゴールのダメージは大きい。さすがに選手たちの顔には疲労感が漂う。あまり疲れた表情を見せないヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がマリアローザを着たまま、ジロは2回目の休息日を迎える。
疲れた表情を見せるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla
text&photo:Kei Tsuji in Col du Galibier, France
![前日にステージ優勝を飾ったマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)は人気者に](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131506.jpg)
![これはブルーノ(ピレス)の](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131502.jpg)
![チェザーナ・トリネーゼのスタート地点](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131503.jpg)
朝からサクソ・ティンコフの宮島正典マッサーは忙しそうに走り回っていた。雪が降る山岳ステージだけに、いつもと用意するものが異なる。手早くサコッシュに選手の名前を書き込み、1級山岳モンセニス峠の頂上で補給を行なう準備を整える。
宮島マッサーはジロ1週目はホテル担当(ホテルに先着して選手を受け入れる準備を整える)だったが、2週目からレース現場担当に。テキパキと仕事をこなしながら「大変だけど、やっぱり現場は楽しい」と言う笑顔が眩しい。選手やスタッフからの信頼も厚い。
![どんどんサインが集まってきました](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131507.jpg)
![楽しそうにレースの準備をするサクソ・ティンコフの宮島正典マッサー](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131501.jpg)
![チェザーナ・トリネーゼをスタートするプロトン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131508.jpg)
積雪によって大幅なコース変更が噂されていた第15ステージ。懸命な除雪作業によってコース変更は最小限に留まった。フランス側からは「ガリビエとモンセニスをコースから外してくれ」という強い要望が出ていたが、主催者と地元の努力によって何とか開催にこぎつけた。レース当日の朝、ガリビエ峠は真っ白だったらしい。
ピエモンテの地元新聞によると、仮にフランス国境の1級山岳モンセニス峠が通行不可の場合は、アルプス山脈を貫く全長13kmのフレジュストンネル(高速道路:普通車の通行料金41ユーロ)を通す案も出ていたという。
ゴール地点は標高2642mのガリビエ峠頂上ではなく、4.2km下ったところにある標高2301mの「モニュメント・パンターニ」に移動した。主催者は元々この第15ステージを「パンターニに捧げるステージ」に設定していたので、ゴール地点としてしっくりくる。
![標高2301mにあるパンターニのモニュメント](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131513.jpg)
![フランスに入ると警察もフランス風に](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131512.jpg)
![ガリビエ峠でお酒を飲みながら](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131515.jpg)
![マリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が集団のペースを上げる](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131522.jpg)
1998年、ジロ・デ・イタリアで初めて総合優勝したマルコ・パンターニは、ツール・ド・フランスでヤン・ウルリッヒ(ドイツ)と総合争いを繰り広げていた。第14ステージを終えて、タイムトライアルで先行したウルリッヒをパンターニは3分01秒差で追う展開。第15ステージのガリビエ峠でパンターニが攻撃に出た。
ゴールまで48kmを残してメイン集団から飛び出したパンターニは、雨のガリビエをハイペースで駆け上がり、ウルリッヒを3分近く引き離して頂上をクリア。一旦止まってジャケットを着たパンターニに対し、タイムを惜しんでジャケットを着なかったウルリッヒ。両者のタイム差は縮まるどころか広がって行く。ウルリッヒを8分57秒引き離してゴールしたパンターニが、史上7人目のダブルツールを果たした。パンターニはこのガリビエステージを「キャリア最高の日」と回想している。イタリア人がガリビエ峠と聞いて思い出すのは、そんなパンターニの伝説的な走りだ。
2004年に突然の死を遂げたパンターニにはドーピング疑惑が常につきまとうが、今でもその人気は衰えない。「アイドルはパンターニ」と答える現役選手も多い。「ピラータ」のトレードマークであるドクロを描いた旗があちこちで風になびく。
そんなパンターニと誕生日が同じ(1月13日)のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が、ガリビエで勝った。偶然にも、パンターニが亡くなった2004年にヴィスコンティはプロデビューを果たしている。ジロとツールという違いはあるが、偶然にも同じ第15ステージ。ちょうど1年前の第15ステージでヴィスコンティはジロをリタイアしている。そんなシンクロがヴィスコンティの勝利を特別なものにしている。
![雪が降る1級山岳ガリビエ峠を登るジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131518.jpg)
![雪の降る1級山岳ガリビエ峠を登る](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131525.jpg)
ガリビエ峠は、ジロの到着に合わせるように雪雲に包まれた。山の天気は変わりやすい。到着30分前まですっかり晴れていたのに、岩山を照らしていた太陽は厚い雲に隠れてしまう。一時は吹雪と言っていいほどの雪にガリビエは包まれた。
そしてレース終了と同時に雪雲は去る。美しきアルプス山脈が姿を見せる。今年のジロは本当に雲と一緒に移動しているのかも知れない。そんな天気を味方につけないとジロでは勝てない。2日連続の雪の頂上ゴールのダメージは大きい。さすがに選手たちの顔には疲労感が漂う。あまり疲れた表情を見せないヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がマリアローザを着たまま、ジロは2回目の休息日を迎える。
![疲れた表情を見せるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2013/05/20/GIRO20131535.jpg)
text&photo:Kei Tsuji in Col du Galibier, France
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