2013/05/15(水) - 17:26
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州というあまり日本では聞き慣れない州がイタリアの北の端にある。ジロ・デ・イタリアにはあまり登場しない地域だ。オーストリアとスロベニアに接する山岳地帯は険しく、美しい。そしてジロ初登場の1級山岳アルトピアーノ・デル・モンタジオは、笑ってしまうほど、厳しい。
第9ステージのゴール後、選手たちは足早にトスカーナ州を離れ、エミリア=ロマーニャ州に脇目も振らずにヴェネト州へ。地理的に分かりやすく言えば、長靴(イタリア半島)の付け根、ヴェネツィアの周辺で休息日を過ごした。
そして第10ステージはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山奥に入って行く。同州は、スロベニアとオーストリアと国境を接する最北の地。第10ステージは主にスロベニアに近い一帯を走る。これまでオーストリアにジロは何度も脚を踏み入れているが、スロベニアにはあまり馴染みがない。
四国より少し大きい程の国土をもつスロベニア。人口200万人。ペーター・サガン(キャノンデールプロサイクリング)を生んだ東欧の国スロバキアと間違えやすいが、これは国名がともに「スラブ人」に由来するから。両国は別に隣り合っているわけではない。ただ、両国の国旗は何度見ても間違えるほど似ている。
ドロミテはドロミテでも、一帯は「ドロミーティ・フリウラーネ」と呼ばれる。何年ドロミテに通ってみても、あまりにも景色が雄大なので、ハリボテの発泡スチロールに粉砂糖を振ったように見える時がある。稜線が国境で、山の向こうはスロベニアだ。
「モンタジオ高原」を意味するゴール地点アルトピアーノ・デル・モンタジオの沿道には、スロベニア人の観客がぎっしり詰めかけた。周りから聞こえてくるのはスロベニア語ばかりで、スロベニア国旗が風になびく。イタリアのレースであることを忘れてしまいそうな光景が広がる。
最大勾配20%という目を覆いたくなるような激坂が崖の上に向かって続いている。大型トレーラーがフェンスを運び込むことが出来ないため、山岳警備隊やスキー学校の生徒が数珠つなぎに手を組んでコースを封鎖した。写真を見ていただくと分かるが、別にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の人がみんな仲良しだという訳ではありません。
リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)の勝利によって、ますますマリアローザ争いが分からなくなった。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)はライバルたちとのタイム差を広げようと必死。カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はここにきて抜群の安定感を見せる。
ゾンコランやアングリルにも似た急勾配のアルトピアーノ・デル・モンタジオは、決してブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)向きではなかった。急勾配区間でもダンシングせず、眉をハの字にしてシッティングで38x28を踏む姿は、2011年ブエルタ・ア・エスパーニャのアングリルを思い起こさせた。
グランツールでウィギンズのアシストが活躍する…。ウランの優勝記者会見では、やはり昨年ツールでのウィギンズとフルームの確執の話題になる。記者からは「これからはウィギンズがあなたをアシストすることになるのですか?」という質問が飛ぶ。
ウランの答えは「まだ決まっていない」という、否定も肯定もしないものだった。「でも僕はフルームとは違う。チームのために走ることしか考えてないし、何も問題は起こっていない。今日はライバルたちの動向を探るために僕がアタックする作戦だったんだ」。ウランはウィギンズの株を奪うためのアタックではなかったと強調する。
ウランは昨年のジロで総合7位。マリアビアンカを獲得している。スカイプロサイクリングは、ウランとウィギンズの様子を見ながら、この先の山岳ステージを闘う。そのチーム力はアスタナやBMCを充分に上回っている。
ニーバリとウィギンズのタイム差は2分。たかが2分、されど2分。登坂距離の長い山岳が連続する3週目に入ると形勢が逆転するとの見方も有るが、ウィギンズからは「ニーバリがリードしていることに変わりは無いけど、まだ終わったわけじゃない。まだチャンスは残っている。でも総合優勝のチャンスは少し遠ざかった。総合優勝は無理でも、総合表彰台に向けた闘いが残っている」と、事実上の敗北宣言が出た。
ウランとウィギンズの総合タイム差は1秒。2ステージ連続で2位に入ったカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)によると、「スカイの中で一番強いのはリゴベルト(ウラン)だ」。スカイプロサイクリングの首脳陣はジロでも頭を悩ますことになりそうだ。
text&photo:Kei Tsuji in Altopiano del Montasio, Italy
第9ステージのゴール後、選手たちは足早にトスカーナ州を離れ、エミリア=ロマーニャ州に脇目も振らずにヴェネト州へ。地理的に分かりやすく言えば、長靴(イタリア半島)の付け根、ヴェネツィアの周辺で休息日を過ごした。
そして第10ステージはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山奥に入って行く。同州は、スロベニアとオーストリアと国境を接する最北の地。第10ステージは主にスロベニアに近い一帯を走る。これまでオーストリアにジロは何度も脚を踏み入れているが、スロベニアにはあまり馴染みがない。
四国より少し大きい程の国土をもつスロベニア。人口200万人。ペーター・サガン(キャノンデールプロサイクリング)を生んだ東欧の国スロバキアと間違えやすいが、これは国名がともに「スラブ人」に由来するから。両国は別に隣り合っているわけではない。ただ、両国の国旗は何度見ても間違えるほど似ている。
ドロミテはドロミテでも、一帯は「ドロミーティ・フリウラーネ」と呼ばれる。何年ドロミテに通ってみても、あまりにも景色が雄大なので、ハリボテの発泡スチロールに粉砂糖を振ったように見える時がある。稜線が国境で、山の向こうはスロベニアだ。
「モンタジオ高原」を意味するゴール地点アルトピアーノ・デル・モンタジオの沿道には、スロベニア人の観客がぎっしり詰めかけた。周りから聞こえてくるのはスロベニア語ばかりで、スロベニア国旗が風になびく。イタリアのレースであることを忘れてしまいそうな光景が広がる。
最大勾配20%という目を覆いたくなるような激坂が崖の上に向かって続いている。大型トレーラーがフェンスを運び込むことが出来ないため、山岳警備隊やスキー学校の生徒が数珠つなぎに手を組んでコースを封鎖した。写真を見ていただくと分かるが、別にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の人がみんな仲良しだという訳ではありません。
リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)の勝利によって、ますますマリアローザ争いが分からなくなった。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)はライバルたちとのタイム差を広げようと必死。カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はここにきて抜群の安定感を見せる。
ゾンコランやアングリルにも似た急勾配のアルトピアーノ・デル・モンタジオは、決してブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)向きではなかった。急勾配区間でもダンシングせず、眉をハの字にしてシッティングで38x28を踏む姿は、2011年ブエルタ・ア・エスパーニャのアングリルを思い起こさせた。
グランツールでウィギンズのアシストが活躍する…。ウランの優勝記者会見では、やはり昨年ツールでのウィギンズとフルームの確執の話題になる。記者からは「これからはウィギンズがあなたをアシストすることになるのですか?」という質問が飛ぶ。
ウランの答えは「まだ決まっていない」という、否定も肯定もしないものだった。「でも僕はフルームとは違う。チームのために走ることしか考えてないし、何も問題は起こっていない。今日はライバルたちの動向を探るために僕がアタックする作戦だったんだ」。ウランはウィギンズの株を奪うためのアタックではなかったと強調する。
ウランは昨年のジロで総合7位。マリアビアンカを獲得している。スカイプロサイクリングは、ウランとウィギンズの様子を見ながら、この先の山岳ステージを闘う。そのチーム力はアスタナやBMCを充分に上回っている。
ニーバリとウィギンズのタイム差は2分。たかが2分、されど2分。登坂距離の長い山岳が連続する3週目に入ると形勢が逆転するとの見方も有るが、ウィギンズからは「ニーバリがリードしていることに変わりは無いけど、まだ終わったわけじゃない。まだチャンスは残っている。でも総合優勝のチャンスは少し遠ざかった。総合優勝は無理でも、総合表彰台に向けた闘いが残っている」と、事実上の敗北宣言が出た。
ウランとウィギンズの総合タイム差は1秒。2ステージ連続で2位に入ったカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)によると、「スカイの中で一番強いのはリゴベルト(ウラン)だ」。スカイプロサイクリングの首脳陣はジロでも頭を悩ますことになりそうだ。
text&photo:Kei Tsuji in Altopiano del Montasio, Italy
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