2013年5月10日、ジロ・デ・イタリアの第7ステージで逃げ切りが決まった。アブルッツォ州の険しい丘陵を駆け抜けるコースで、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が逃げ切り。終盤にかけて激しく降った雨が、総合狙いの選手たちの明暗を分けた。

スタート直後から集団は高速化スタート直後から集団は高速化 photo:Kei Tsujiサンサルヴォからペスカーラまでの177kmは、ほとんど登りと下りだけと言っても過言ではない。特にラスト70kmは2〜3km・標高差200m前後の登りが連続して登場。難易度の低いカテゴリー山岳が4つ設定されているだけのように思えるが、キエーティ旧市街に至る最大勾配19%の登りも取り入れられるなど、コース全体の難易度は極めて高い。

逃げグループを形成するマーティン・チャリンギ(オランダ、ブランコプロサイクリング)ら逃げグループを形成するマーティン・チャリンギ(オランダ、ブランコプロサイクリング)ら photo:Riccardo Scanferlaサンサルヴォのスタート地点は快晴。しかし内陸の丘陵地帯を進むにつれて雲行きが怪しくなり、後半にかけてついに雨が降り始めた。

ディルーカのためにメイン集団をコントロールするヴィーニファンティーニディルーカのためにメイン集団をコントロールするヴィーニファンティーニ photo:Riccardo Scanferla29km地点で集団を飛び出し、最大7分のリードを得たエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)やマーティン・チャリンギ(オランダ、ブランコプロサイクリング)、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)ら6名に対し、ヴィーニファンティーニが積極的にメイン集団をコントロール。逃げとのタイム差を詰めて行く。

ダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)を先頭にキエーティの激坂をクリアダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)を先頭にキエーティの激坂をクリア photo:Kei Tsujiゴールまで40kmを切り、キエーティの激坂で逃げグループはセッラとハンセンの2人に。2分後方のメイン集団からはファビオ・タボッレ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)がカウンターアタック。しかし脚の揃ったセッラとハンセンに追いつく選手は現れなかった。

アタックするダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)アタックするダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ) photo:Riccardo Scanferlaゴール20km手前の3級山岳サンタマリア・デ・クリプティスでハンセンが独走をスタートさせる。2度落車したセッラはそのまま集団に吸収。雨の中を逃げるハンセンの3分後方では、地元の大声援を受けるダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)らが繰り返しアタックしたが、メイン集団内のライバルたちがこれを許さない。

雨のペスカーラにゴールするアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)雨のペスカーラにゴールするアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji強い雨に見舞われた下りでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らが攻撃する姿勢を見せたが、滑りやすいコーナーの餌食になって落車。ここからレースの至る所で落車が発生する荒れた展開に。ニーバリは集団脱落を免れたが、同様に落車したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)はスローダウン。落車後さらに慎重にダウンヒルをこなしたウィギンズは、ライバルたちから1分以上の遅れを取った。

先頭ハンセンは最後まで後続を寄せ付けない力強い走りで優勝。普段はグライペルをはじめとするスプリンターのリードアウト役を務めるハンセンが、ノコギリの歯のようなアップダウンコースで勝利した。

2012年に史上32人目となるグランツール全戦完走を果たしたオージーは「まだ信じられない。『これは現実なんだ。ついに逃げ切りを達成する時がやってきた』と思いながら、2分30秒のリードをもってラスト6kmのアーチを越えた」と話す。ハンセンにとってはキャリア最大の勝利だ。「逃げ切りが決まりやすいコースだっただけに、今日は朝からモチベーションが高くて、頭を剃ってレースに挑んだんだ」。

そんなハンセンから遅れること1分07秒で27名の追走集団がゴール。下りでアタックしたニーバリをはじめ、多くの総合優勝候補がこの集団でゴールしたが、その中にウィギンズやマリアビアンカのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、マリアローザのルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)の姿は無かった。

ニーバリやヘジダル、エヴァンスに対して1分24秒失ったウィギンズは、一気に総合23位までダウン。第4ステージに続いて、濡れたダウンヒルが苦手ということを露呈してしまった。

また、パオリーニも遅れたため、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)が新たにマリアローザの座についた。マリアビアンカはアルからラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)の手に移っている。

翌日の第8ステージは54.8kmの個人タイムトライアル。選手たちは研究し尽くされたTTポジションで、1時間以上にわたる孤独な闘いに挑む。

エンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)やダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)を先頭に追走集団がゴールエンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)やダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)を先頭に追走集団がゴール photo:Kei Tsujiステージ初優勝を飾ったアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)がスプマンテを開けるステージ初優勝を飾ったアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)がスプマンテを開ける photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2013第7ステージ結果
1位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)              4h35'49"
2位 エンリーコ・バッタリーン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)+1'07"
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)
4位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)
5位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
7位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
8位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)

個人総合成績
1位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)               28h30'04"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)                 +05"
3位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)                 +08"
4位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)                 +10"
5位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)           +13"
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)            +16"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ブランコプロサイクリング)            +19"
8位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)            +28"
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)            +29"
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)      +34"

ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)

新人賞
ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)

チーム総合成績
カチューシャ

text&photo:Kei Tsuji in Pescara, Italy
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