2013/05/08(水) - 16:15
ジロ・デ・イタリアはカンパニア州からカラブリア州へ。夜にかけて激しく降った雨のおかげで、朝から路面が猛烈に滑る。ワックスでもかけたんじゃないかと思うほど滑りやすい道を進んでスタート地点に着くと、とたんに熱い太陽が顔を出した。
青い海と切り立った崖とプロトン photo:Kei Tsuji
黄色や緑に色づいた植生 photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリアとワンコ photo:Kei Tsuji
おそらくイタリアの中で最も路面状況のよろしくないカンパニア州とカラブリア州。幹線道路であっても亀裂が入っていたり、段差がついていたり、舗装が剥がれていたり。高速道路は工事区間が無いに等しいと思うほどずっと工事している。
特にカンパニア州の路面は、雨が降ればとにかく滑る。選手に聞くと、どのメーカーのタイヤも共通して滑る。困ったことに、コンパウンドが柔らかくても、パターンが入っていても、滑るものは滑るらしい。逆に、落車しても上手く滑れば擦過傷は少なくて済むらしい。
真っ青な海を右に見て、岩が露出した崖を左に見ながら、プロトンはティレニア海沿いをひたすら南下する。246kmというワンデークラシック並の長いコース。海から吹く横風が懸念されていたが、波乱を起こすほど強い風は吹かなかった。
なお、イタリア半島を南に行けば行くほど選手と観客の距離が近くなるので、見ていてヒヤヒヤすることが多い。この日は、補給ポイントの近くでレースを待っていた12歳の女の子が救急車にはねられるという事故が発生。幸い命に別状はないとイタリアのメディアは伝えている。
2級山岳クローチェフェラータを集団前方で登るマリアローザのルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji
遅れた選手にはより暖かい声援が飛ぶ photo:Kei Tsuji
ソリアネッロの街を行く選手たち photo:Kei Tsuji
「君たちは強い」 photo:Kei Tsuji
平野部は晴れで、山間部は雨。標高500mを境に天候が異なる一日。2級山岳クローチェフェラータの頂上は標高907m。斜面にへばりつくようなソリアネッロの村を抜けると、九十九折りの登りが深い森の中へと入って行く。
深い霧に覆われる幻想的な登りで飛び出したのは、蛍光イエローのジャージが眩しいダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)。ジロ開幕直前に同チームに合流した「キラー」が、久々にジロで見せる殺し屋の目。
ヴィーニファンティーニにはワイン会社のファルネーゼ社の他、セッレイタリア社、ネーリ社、スペア社など、多くのスポンサーがついている。ジャージにところ狭しとスポンサーの名前が入るあたり、イタリアのUCIプロコンチネンタルチームらしい。
ジロ開幕の2日前には、ベネトングループの会長アレッサンドロ・ベネトン氏(ベネトン創業者の息子)が新たにチームをバックアップすることが発表された。ベネトン氏の投資会社は昨年からファルネーゼ社の投資を始めており、その流れでチームにも関わることに。ファルネーゼ社を介しているため、チームにベネトン色が反映されることはないという。
昨年チームスポンサーを終了したアックア・エ・サポーネ社とファーストウェブ社もスポンサーに加わるなど、UCIプロチームを凌ぐほどのチーム規模に成長しつつある。イタリア第3の強豪として、国内における注目度は高い。そしてお尻にあるアックア・エ・サポーネの泡のデザインが可愛い。
新たに加わったアックア・エ・サポーネの泡がヴィーニファンティーニのジャージに photo:Kei Tsuji
雨の2級山岳クローチェフェラータを登るダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ) photo:Riccardo Scanferla
霧に包まれた2級山岳クローチェフェラータの頂上付近 photo:Kei Tsuji
ゴール後しばらくたってから、ラジオコルサ(競技無線)が何やら騒がしくなる。ウィギンズにタイム差を与えるべきなのかどうかUCIのコミッセール(審判)がやりあっている。
ウィギンズはこの日17秒遅れでゴールにやってきた。スカイ側の言いぶんは、ウィギンズが遅れた原因は、ラスト3kmを切ってから落車したクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)に前を塞がれたため。「ラスト3km以内の落車は同タイム扱い」というルールによって、タイム差はつかないはずだと主張した。
しかしコミッセールが最終的に出した答えは「ウィギンズは17秒遅れ」だった。コミッセールはラスト3km以内で発生した落車によって遅れたのか、もしくはもともと遅れていたのかを判断するため、ラスト3km地点で全選手の通過時間を計測している。その通過時間とゴール時間を照らし合わせることで、どのタイミングでどの選手が遅れたのかを把握しているという。
結果、ウィギンズはラスト3kmの通過時点で集団から遅れていた。17秒のビハインドを食らったウィギンズは総合2位から総合6位にダウンする。チームタイムトライアルでスカイが稼いだタイム差がチャラになった。
第4ステージを終えて、ウィギンズはディフェンディングチャンピオンのライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)と同タイム、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)と3秒差。奇しくも今年のジロの三強が並ぶ。
総合4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +31"
総合5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ) +34"
総合6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +34"
ナーバスなカンパニア&カラブリア州のステージを終えて、4日後に迫る54.8km個人タイムトライアルに向けてウィギンズは気持ちを切り替えている頃だろう。いつにも増して愛想のない(アムステルダムでマリアローザを着た3年前はもっと楽しんでいた)ウィギンズは、アウェーの地でヒール役を演じている感もある。
text&photo:Kei Tsuji in Serra San Bruno, Italy
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おそらくイタリアの中で最も路面状況のよろしくないカンパニア州とカラブリア州。幹線道路であっても亀裂が入っていたり、段差がついていたり、舗装が剥がれていたり。高速道路は工事区間が無いに等しいと思うほどずっと工事している。
特にカンパニア州の路面は、雨が降ればとにかく滑る。選手に聞くと、どのメーカーのタイヤも共通して滑る。困ったことに、コンパウンドが柔らかくても、パターンが入っていても、滑るものは滑るらしい。逆に、落車しても上手く滑れば擦過傷は少なくて済むらしい。
真っ青な海を右に見て、岩が露出した崖を左に見ながら、プロトンはティレニア海沿いをひたすら南下する。246kmというワンデークラシック並の長いコース。海から吹く横風が懸念されていたが、波乱を起こすほど強い風は吹かなかった。
なお、イタリア半島を南に行けば行くほど選手と観客の距離が近くなるので、見ていてヒヤヒヤすることが多い。この日は、補給ポイントの近くでレースを待っていた12歳の女の子が救急車にはねられるという事故が発生。幸い命に別状はないとイタリアのメディアは伝えている。
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平野部は晴れで、山間部は雨。標高500mを境に天候が異なる一日。2級山岳クローチェフェラータの頂上は標高907m。斜面にへばりつくようなソリアネッロの村を抜けると、九十九折りの登りが深い森の中へと入って行く。
深い霧に覆われる幻想的な登りで飛び出したのは、蛍光イエローのジャージが眩しいダニーロ・ディルーカ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)。ジロ開幕直前に同チームに合流した「キラー」が、久々にジロで見せる殺し屋の目。
ヴィーニファンティーニにはワイン会社のファルネーゼ社の他、セッレイタリア社、ネーリ社、スペア社など、多くのスポンサーがついている。ジャージにところ狭しとスポンサーの名前が入るあたり、イタリアのUCIプロコンチネンタルチームらしい。
ジロ開幕の2日前には、ベネトングループの会長アレッサンドロ・ベネトン氏(ベネトン創業者の息子)が新たにチームをバックアップすることが発表された。ベネトン氏の投資会社は昨年からファルネーゼ社の投資を始めており、その流れでチームにも関わることに。ファルネーゼ社を介しているため、チームにベネトン色が反映されることはないという。
昨年チームスポンサーを終了したアックア・エ・サポーネ社とファーストウェブ社もスポンサーに加わるなど、UCIプロチームを凌ぐほどのチーム規模に成長しつつある。イタリア第3の強豪として、国内における注目度は高い。そしてお尻にあるアックア・エ・サポーネの泡のデザインが可愛い。
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ゴール後しばらくたってから、ラジオコルサ(競技無線)が何やら騒がしくなる。ウィギンズにタイム差を与えるべきなのかどうかUCIのコミッセール(審判)がやりあっている。
ウィギンズはこの日17秒遅れでゴールにやってきた。スカイ側の言いぶんは、ウィギンズが遅れた原因は、ラスト3kmを切ってから落車したクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)に前を塞がれたため。「ラスト3km以内の落車は同タイム扱い」というルールによって、タイム差はつかないはずだと主張した。
しかしコミッセールが最終的に出した答えは「ウィギンズは17秒遅れ」だった。コミッセールはラスト3km以内で発生した落車によって遅れたのか、もしくはもともと遅れていたのかを判断するため、ラスト3km地点で全選手の通過時間を計測している。その通過時間とゴール時間を照らし合わせることで、どのタイミングでどの選手が遅れたのかを把握しているという。
結果、ウィギンズはラスト3kmの通過時点で集団から遅れていた。17秒のビハインドを食らったウィギンズは総合2位から総合6位にダウンする。チームタイムトライアルでスカイが稼いだタイム差がチャラになった。
第4ステージを終えて、ウィギンズはディフェンディングチャンピオンのライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)と同タイム、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)と3秒差。奇しくも今年のジロの三強が並ぶ。
総合4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +31"
総合5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ) +34"
総合6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) +34"
ナーバスなカンパニア&カラブリア州のステージを終えて、4日後に迫る54.8km個人タイムトライアルに向けてウィギンズは気持ちを切り替えている頃だろう。いつにも増して愛想のない(アムステルダムでマリアローザを着た3年前はもっと楽しんでいた)ウィギンズは、アウェーの地でヒール役を演じている感もある。
text&photo:Kei Tsuji in Serra San Bruno, Italy
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