2009/07/04(土) - 09:50
モナコでのチームプレゼンで目立った選手やチームを、個人的主観に基づいて順次紹介していこう。ツールでイメチェンを図るチームが続出だ。
モスクワのシンボルがイタリア色に染まった? カチューシャ
まずはカチューシャのポッツァート。ロシアのチームに移籍したイケメン・イタリアンスターは、先のイタリア選手権を制して、緑、白、赤のトリコローレに身を包んで登壇した。その柄はロシアのシンボル、赤の広場の聖ワシーリイ寺院とスパスカヤ塔のシルエット。つまり「イタリア色に染まったクレムリン」だ。同チームにはロシアチャンピオンになったセルゲイ・イワノフがいて、彼のジャージは正真正銘、青・白・赤のロシアチャンピオンカラーのクレムリン。
もはやワイルドカードは指定席? アグリチュベル
アグリチュベルはツールでのステージ優勝経験者シルヴァン・カルザティをアージェードゥゼルより獲得。ロメン・フェイユの弟、ブリス・フェイユも出場メンバーに選ばれた。ちなみにブリスは2008年パリ〜コレーズで清水都貴(エキップアサダ)が優勝した際に振り切った選手だ。チームジャージはグリーンが消え、ダークブルー一色に変わり新しいイメージだ。
「まだ走るのか」と、昨年すでに言われていたモローは、アームストロングが復帰した今、違和感なくチームにいられるようだ。
ボーネンに出場の可能性あり? クイックステップ
クイックステップはボーネンの代わりにアラン・デーヴィスをラインナップに揃えてきた。ボーネンはCAS(スポーツ仲裁裁判所)への提訴の後、出場の最後の可能性にかけてニースの空港に到着したという話だったが、姿は見えず。昼のクイックステップのチーム記者会見でも「ボーネンについての話は一切できない」との話だったが、ASOがCASの決定に従うなら出場できる可能性が出てきたようだ。この記者会見での時点でのチームのエースはシャバネルとデヴォルデルだった。
デヴォルデルは昨年フランドルを制した後の期待を一身に浴び、一部に「アームストロングの再来か」とまでも呼ばれたが、ツールではあっさり崩れた。そして今年のフランドルを連覇したが、昨年よりもずっとプレッシャーが無いという。それはイコール「総合は狙わない」との宣言とも取れる。フランドルの英雄も、ツールでは役不足だ。
チームコロンビアHTC
新サブスポンサーがついたことで新ジャージになったのがチームコロンビアHTC。筋肉ジャージ柄は腹筋部分がややおとしくなり、イエローも抑え目の発色になった。HTCは携帯電話会社とのこと。「チームハイロード」は2年連続で「ツールをツールに」大きなスポンサーを獲得し、ツールごとにチーム名とウェアが変わったというわけだ。今シーズンの獲得勝利数ナンバーワンのチームはこの不況下にもスポンサーには困らない。クリーンなチームを掲げてきたことでの好影響でもあるだろう。
チョコミント? AG2R
ジャージが渋くなったのはAG2Rだ。茶色と水色という、ぱっと見「チョコミント」を連想させるなんともいえないカラーリングで登場した。胸のロゴもレトロでシンプルなイメージ。チームカー&バスもこの色になっていた。保険会社のAG2Rのコーポレートカラーが刷新されたということなのだろうか。
バルベルデ抜きの布陣 ケースデパーニュ
ケースデパーニュはバルベルデ抜きでなんともさびしいラインナップだ。LLサンチェスと2006ツール覇者ペレイロのコンビは総合でも充分闘えるポテンシャルがあるようにも思えるが、華のなさはいかんともしがたい。
ダークホース"クロイツィゲル。中野さんも帯同決定
リクイガスは背中のポッケに恐竜のマスコットを忍ばせて登場(何を意味するかは聞けなかった)。エースはクロイツィゲルとペッリツォッティだ。とくにクロイツィゲルの伸びしろは未知数。ダークホースの筆頭としてシャンゼリゼでの彰台を狙えるのではないかという声もある。ナス型サングラスでキメて妖しさも充分。日本の中野喜文マッサーも帯同するとのことだ。
3人のナショナルチャンプ
サクソバンクはカンチェッラーラ、アルヴェセン、フランク・シュレクの3人のナショナルチャンピオンを揃えて、とくにカンチェッラーラは白地に赤十字ではなく、赤字に白十字で、真っ赤なイメージだ。午前の記者会見では第1ステージの優勝の可能性についてかなり自信の有る発言をしていた。モナコのTTコースは上りが厳しいことでタイムトライアルのスペシャリストには難しいのではないかという予想が立っていたが、どうやら上りもパワーで押し切る自信があるようだ。ツール・ド・スイスもスイス選手権も制した人間発電所は、ロンドン以来のマイヨジョーヌに袖を通すか。
エースはバッラン、それともブルセギン?
ランプレはアルカンシェルに身を包んだバッランとブルセギンのダブルトップ。バッランはウィルス性の病気で長らくレースに出れなかったが、真っ黒に日焼けしての登場だ。バッランにツールで活躍するイメージは無いが、ジロをスキップしたぶん活躍を期待したいところ。アルカンシェルと金をあしらったウィリエールのバイクで色気は満点だが、オーラを感じないのは病み上がりのイメージがあるから?
派手なバイクに乗るエヴァンス
サイレンス・ロットのエース、カデル・エヴァンスはカンガルーマークをあしらった派手派手スペシャルペイントのバイクに乗って表れた。山岳アシストとして期待し、ポポヴィッチの代わりにと獲得した獲得したトーマス・デッケルのepo使用判明による除外。エヴァンスは今年もついていない。
一番人気はアームストロング
そして最強アスタナ。モナコの声援がもっとも大きくなったのはアームストロングが紹介されたときのこと。やはり世界の各界のトップアスリートが多く住むモナコだけに、スポーツの枠を超えたスーパースターのアームストロングの人気はダントツ。コンタドールへの声援の数倍の人気だ。
アームストロングとコンタドールは壇上に並んでいるが、とくに話をするでもなく、すれ違いの空気が漂う。ランスが話しかけるのは隣のクレーデンのみ。やはり「コンタドールにとってアームストロングはライバルの一人」説は、あながちウソではなさそうだと思える。
ランスは見るからにジロの時よりも身体が絞れて、ジロのときに感じた加齢感が薄れていた。多くの選手が「優勝候補の一角になるだろう」という言うとおり、8度目のツール制覇にもリアリティが有ると思える。
トレードカラー変更であっさり系に サーヴェロ・テストチーム
サーヴェロテストチームはトレードマークのはずの赤が抜けて、ホワイト&ブラックの、ホルスタイン柄に見えてしまうジャージにデザインチェンジ。昨年の覇者サストレへの声援はまったく小さい。どうにも盛り上がらないプレゼンの締めだった。
ツールへのあてつけ モナコでのヴィノの復帰会見
ところでこのプレゼンが行われている最中に、モナコに住むアレクサンドル・ヴィノクロフが復帰会見を行い、出場停止処分が明ければアスタナチームに戻る意向を表明していたという。
「アスタナチームを作ったのはこの私。他のチームで走ることなど考えられない。カザフもそれを望んでいる。私を必要ないと言うのなら、チームを去るのはブリュイネールのほうだ」という発言をしている。
ヴィノはアスタナの幹部でもあった。ブリュイネール監督が入り、元ディスカバリーチャンネルの選手たちを呼び寄せて生まれ変わったアスタナは、ヴィノの影を消し去ることでツールへの出場権を得た。しかし復帰をかけるヴィノが主張を始めている。
スポンサーであるアスタナの企業による資金が途絶えた一件も、単に経済状況の悪化だけでなく、ヴィノの関与もあったのだろうか。今いる主要選手には去ってもらい、再びチームに戻りたいとするヴィノ。そしてスポンサーといえどカザフに対して尽くす理由の無いコンタドールやライプハイマー、アームストロングたち。今シーズン持ちこたえても、チームが存続するにはやはりスポンサーから丸ごと変わる必要がありそうだ。
photo&text:綾野 真
モスクワのシンボルがイタリア色に染まった? カチューシャ
まずはカチューシャのポッツァート。ロシアのチームに移籍したイケメン・イタリアンスターは、先のイタリア選手権を制して、緑、白、赤のトリコローレに身を包んで登壇した。その柄はロシアのシンボル、赤の広場の聖ワシーリイ寺院とスパスカヤ塔のシルエット。つまり「イタリア色に染まったクレムリン」だ。同チームにはロシアチャンピオンになったセルゲイ・イワノフがいて、彼のジャージは正真正銘、青・白・赤のロシアチャンピオンカラーのクレムリン。
もはやワイルドカードは指定席? アグリチュベル
アグリチュベルはツールでのステージ優勝経験者シルヴァン・カルザティをアージェードゥゼルより獲得。ロメン・フェイユの弟、ブリス・フェイユも出場メンバーに選ばれた。ちなみにブリスは2008年パリ〜コレーズで清水都貴(エキップアサダ)が優勝した際に振り切った選手だ。チームジャージはグリーンが消え、ダークブルー一色に変わり新しいイメージだ。
「まだ走るのか」と、昨年すでに言われていたモローは、アームストロングが復帰した今、違和感なくチームにいられるようだ。
ボーネンに出場の可能性あり? クイックステップ
クイックステップはボーネンの代わりにアラン・デーヴィスをラインナップに揃えてきた。ボーネンはCAS(スポーツ仲裁裁判所)への提訴の後、出場の最後の可能性にかけてニースの空港に到着したという話だったが、姿は見えず。昼のクイックステップのチーム記者会見でも「ボーネンについての話は一切できない」との話だったが、ASOがCASの決定に従うなら出場できる可能性が出てきたようだ。この記者会見での時点でのチームのエースはシャバネルとデヴォルデルだった。
デヴォルデルは昨年フランドルを制した後の期待を一身に浴び、一部に「アームストロングの再来か」とまでも呼ばれたが、ツールではあっさり崩れた。そして今年のフランドルを連覇したが、昨年よりもずっとプレッシャーが無いという。それはイコール「総合は狙わない」との宣言とも取れる。フランドルの英雄も、ツールでは役不足だ。
チームコロンビアHTC
新サブスポンサーがついたことで新ジャージになったのがチームコロンビアHTC。筋肉ジャージ柄は腹筋部分がややおとしくなり、イエローも抑え目の発色になった。HTCは携帯電話会社とのこと。「チームハイロード」は2年連続で「ツールをツールに」大きなスポンサーを獲得し、ツールごとにチーム名とウェアが変わったというわけだ。今シーズンの獲得勝利数ナンバーワンのチームはこの不況下にもスポンサーには困らない。クリーンなチームを掲げてきたことでの好影響でもあるだろう。
チョコミント? AG2R
ジャージが渋くなったのはAG2Rだ。茶色と水色という、ぱっと見「チョコミント」を連想させるなんともいえないカラーリングで登場した。胸のロゴもレトロでシンプルなイメージ。チームカー&バスもこの色になっていた。保険会社のAG2Rのコーポレートカラーが刷新されたということなのだろうか。
バルベルデ抜きの布陣 ケースデパーニュ
ケースデパーニュはバルベルデ抜きでなんともさびしいラインナップだ。LLサンチェスと2006ツール覇者ペレイロのコンビは総合でも充分闘えるポテンシャルがあるようにも思えるが、華のなさはいかんともしがたい。
ダークホース"クロイツィゲル。中野さんも帯同決定
リクイガスは背中のポッケに恐竜のマスコットを忍ばせて登場(何を意味するかは聞けなかった)。エースはクロイツィゲルとペッリツォッティだ。とくにクロイツィゲルの伸びしろは未知数。ダークホースの筆頭としてシャンゼリゼでの彰台を狙えるのではないかという声もある。ナス型サングラスでキメて妖しさも充分。日本の中野喜文マッサーも帯同するとのことだ。
3人のナショナルチャンプ
サクソバンクはカンチェッラーラ、アルヴェセン、フランク・シュレクの3人のナショナルチャンピオンを揃えて、とくにカンチェッラーラは白地に赤十字ではなく、赤字に白十字で、真っ赤なイメージだ。午前の記者会見では第1ステージの優勝の可能性についてかなり自信の有る発言をしていた。モナコのTTコースは上りが厳しいことでタイムトライアルのスペシャリストには難しいのではないかという予想が立っていたが、どうやら上りもパワーで押し切る自信があるようだ。ツール・ド・スイスもスイス選手権も制した人間発電所は、ロンドン以来のマイヨジョーヌに袖を通すか。
エースはバッラン、それともブルセギン?
ランプレはアルカンシェルに身を包んだバッランとブルセギンのダブルトップ。バッランはウィルス性の病気で長らくレースに出れなかったが、真っ黒に日焼けしての登場だ。バッランにツールで活躍するイメージは無いが、ジロをスキップしたぶん活躍を期待したいところ。アルカンシェルと金をあしらったウィリエールのバイクで色気は満点だが、オーラを感じないのは病み上がりのイメージがあるから?
派手なバイクに乗るエヴァンス
サイレンス・ロットのエース、カデル・エヴァンスはカンガルーマークをあしらった派手派手スペシャルペイントのバイクに乗って表れた。山岳アシストとして期待し、ポポヴィッチの代わりにと獲得した獲得したトーマス・デッケルのepo使用判明による除外。エヴァンスは今年もついていない。
一番人気はアームストロング
そして最強アスタナ。モナコの声援がもっとも大きくなったのはアームストロングが紹介されたときのこと。やはり世界の各界のトップアスリートが多く住むモナコだけに、スポーツの枠を超えたスーパースターのアームストロングの人気はダントツ。コンタドールへの声援の数倍の人気だ。
アームストロングとコンタドールは壇上に並んでいるが、とくに話をするでもなく、すれ違いの空気が漂う。ランスが話しかけるのは隣のクレーデンのみ。やはり「コンタドールにとってアームストロングはライバルの一人」説は、あながちウソではなさそうだと思える。
ランスは見るからにジロの時よりも身体が絞れて、ジロのときに感じた加齢感が薄れていた。多くの選手が「優勝候補の一角になるだろう」という言うとおり、8度目のツール制覇にもリアリティが有ると思える。
トレードカラー変更であっさり系に サーヴェロ・テストチーム
サーヴェロテストチームはトレードマークのはずの赤が抜けて、ホワイト&ブラックの、ホルスタイン柄に見えてしまうジャージにデザインチェンジ。昨年の覇者サストレへの声援はまったく小さい。どうにも盛り上がらないプレゼンの締めだった。
ツールへのあてつけ モナコでのヴィノの復帰会見
ところでこのプレゼンが行われている最中に、モナコに住むアレクサンドル・ヴィノクロフが復帰会見を行い、出場停止処分が明ければアスタナチームに戻る意向を表明していたという。
「アスタナチームを作ったのはこの私。他のチームで走ることなど考えられない。カザフもそれを望んでいる。私を必要ないと言うのなら、チームを去るのはブリュイネールのほうだ」という発言をしている。
ヴィノはアスタナの幹部でもあった。ブリュイネール監督が入り、元ディスカバリーチャンネルの選手たちを呼び寄せて生まれ変わったアスタナは、ヴィノの影を消し去ることでツールへの出場権を得た。しかし復帰をかけるヴィノが主張を始めている。
スポンサーであるアスタナの企業による資金が途絶えた一件も、単に経済状況の悪化だけでなく、ヴィノの関与もあったのだろうか。今いる主要選手には去ってもらい、再びチームに戻りたいとするヴィノ。そしてスポンサーといえどカザフに対して尽くす理由の無いコンタドールやライプハイマー、アームストロングたち。今シーズン持ちこたえても、チームが存続するにはやはりスポンサーから丸ごと変わる必要がありそうだ。
photo&text:綾野 真