スイスの山岳地帯を舞台にした6日間のステージレース、ツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)が開幕。豪華メンバーが集ったこのレースの初日プロローグをクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が制し、リーダージャージを獲得した。

ツール・ド・ロマンディ2013 レースの見どころ

ツール・ド・ロマンディ2013 コースマップツール・ド・ロマンディ2013 コースマップ (c)Tour de Romandieその名の通りスイス西部のロマンディ地方で開催される、ツール・ド・ロマンディ。67回目を数える伝統のステージレースが、今年も4月23日から28日までの期間で開幕した。

ロマンディ地方を駆け巡るこのレースの特徴は、一帯に広がるジュラ山脈の峠が多く登場すること。スイスアルプスの本格的な難関山岳こそ登場しないもののレースのレベルは高く、開催を目前に控えるジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスに照準を合わせる選手が毎年多く出場する。

クリテリウム・アンテルナシオナルを制したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)クリテリウム・アンテルナシオナルを制したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.2013年度大会は昨年に引き続き、初日にはプロローグが、最終日には個人タイムトライアルが設けられ、その他の4ステージは中級山岳コースが続く。昨年との違いは、プロローグが3級山岳頂上を目指す、距離7.4kmの上り個人タイムトライアルとなったこと。この変更により、総合争いは初日からふるいに掛けられる。

リエージュ~バストーニュ~リエージュで献身的な走りを見せたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)リエージュ~バストーニュ~リエージュで献身的な走りを見せたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ) photo:Cor.Vosこのロマンディ閉幕から、ジロ・デ・イタリアの開幕まではわずか1週間ほど。そのため、ほとんどのチームはオールラウンダーをエースに立てた1軍編成をラインナップしてきた。

昨年覇者ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)は出場を見送ったものの、スカイプロサイクリングはツールを見据えるクリス・フルーム(イギリス)をエースに。さらに今季好調のリッチー・ポルト(オーストラリア)をアシストに添え、鉄壁の布陣で2連覇を狙う。

ガーミン・シャープのエースは、リエージュ~バストーニュ~リエージュでダニエル・マーティン(アイルランド)の勝利を強力にサポートしたライダー・ヘジダル(カナダ)やトム・ダニエルソン(アメリカ)をエースに据える。

更にクリスティアン・ヴァンデヴェルデや期待のアンドリュー・タランスキー、ピーター・ステティナ(いずれもアメリカ)などを揃え、山岳での力は出場チーム中随一といって良いだろう。

今季好調のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)今季好調のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Cor Vos初日プロローグのコースとなったのは、ロマンディ地方の山間に位置する街・ル・シャーブルをスタートし、ブルゾンの山肌をジグザグに駆け上がって高度を稼ぐ7.45km。ゴール地点は標高1110m、3級山岳にカテゴライズされるもので、コース全体での獲得標高は294mだ。

この山岳プロローグで、オールラウンダー・クライマーによる総合争いに早くも火が点いた。

14時21分に、第一走者であるマティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)がスタート。その後から1分おきに、続々と選手がコースに飛び出していく。

トップタイムをマークしたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)トップタイムをマークしたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Tour de Romandieステージ2位、アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)ステージ2位、アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:Tour de Romandieステージ3位、ロバート・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)ステージ3位、ロバート・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード) photo:Tour de Romandie


ゴール地点からヘリコプターで表彰式に向かうクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)やティボー・ピノ(フランス、FDJ)ゴール地点からヘリコプターで表彰式に向かうクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)やティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tour de Romandieまず序盤に好タイムを記録したのは、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)。そしてその後、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソ・ティンコフ)がブライコヴィッチを1秒上回る。しかし後半に有力勢がスタートしていくと、このタイムも次々と上書きされていく。

表彰台に立つクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)表彰台に立つクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Tour de Romandie残り5人のゴールを待つ時点で、トップタイムはパリ~ニースで新人賞を獲得して波に乗るアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)。ロバート・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)の好走も7秒届かなかったが、最終走者・フルームがこれらのタイムを全て上回った。

新人賞を獲得したティボー・ピノ(フランス、FDJ)新人賞を獲得したティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tour de Romandie「クリテリウム・アンテルナシオナル以来、ステージレースを走っていなかった。だから自分のコンディションがどうなのか、把握できずにいたんだ。」と後に語ったフルーム。ウィギンズに代わりエースを担うフルームは、最終的にタランスキーを6秒上回る、13分15秒のタイムで圧倒。平均勾配3.9%のコースで、33.86km/hのアベレージスピードをマークした。

「僕らはとても良いチーム編成で望んでいる。リッチー(ポルト)が4位に入ったことはとても重要なことで、つまり何枚かのカードを切ることができるということ。一週間、良いレースができるはずだ。」

「僕らは挑戦して、ジャージを守るつもり。他の総合陣に比べて、大きなアドバンテージを持っているとは思わない。今週末は一番ハードなステージとなるだろう。厳しい山岳があって、翌日はタイムトライアル。できることを可能な限り行っていくつもりだ。悪いことが何も起こらないことを願っているよ。」と語った。

なお、新城幸也は2分1秒遅れのステージ150位でゴールしている。

翌日第1ステージは、サン・モーリスからルナンにかけての176.8km。人数の絞られた集団によるスプリントとなる見込みだ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、スカイプロサイクリング)やマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らの走りに期待が掛かる。


ツール・ド・ロマンディ2013プロローグ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)           13′15″
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)         +6″
3位 ロバート・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)    +13″
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)         +15″
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                   +16″
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
7位 スタフ・クレメント(オランダ、ブランコプロサイクリング)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)             +17″
10位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)        +18″
150位 新城幸也(ユーロップカー)                       +2′01″

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)           13′15″
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)         +6″
3位 ロバート・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)    +13″
4位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)         +15″
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                   +16″
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
7位 スタフ・クレメント(オランダ、ブランコプロサイクリング)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)             +17″
10位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)        +18″

新人賞
ティボー・ピノ(フランス、FDJ)

チーム総合成績
スカイプロサイクリング


text:So.Isobe
photo:Tour de Romandie
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