2013/04/22(月) - 04:31
ビッグスプリンターがひしめくツアー・オブ・ターキー。慣れ親しんだデコルトとのタッグでマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)が1勝目を掴んだ。別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は28位で初日を終えている。
第49回ツアー・オブ・ターキーの開幕地は、2年連続で地中海に面したリゾート地アランヤ。トルコの田舎町という趣ではなく、海岸通にはリゾートホテルが立ち並ぶ。目新しい建物も多く、海外からの観光客は年々増加しているという。
政府のバックアップによって、力の入ったオーガナイズで知られるツアー・オブ・ターキー。UCIヨーロッパツアーに組み込まれているものの、チームが現地に持ち込んだのはバイクなどの機材のみ。チームカーなどの車両は大会側が用意したものを使用する。
9つのUCIプロチームを含む25チームが集まったこの大会。史上初めて日本人選手が3名もスタートラインに並んだ。
ツール・ド・ランカウイ以降、佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)は持病によってしばらく日本で療養。復帰戦のブラバンツペイルで落車したものの、意気揚々とトルコに乗り込む。「今日はキッキでスプリントを狙うので、集団を引く展開になれば(自分の出番がやってくる)」と佐野。
「パリ〜ルーベ後、精神的に1週間ほどオフにした」と話すのは別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。5月にはツアー・オブ・カリフォルニア出場が予定されており、クラシックシーズンを終えた別府がここトルコで再び動き出す。
3年連続出場の宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は「ベルギーレースでの落車後、散々な状態が続いていたが、気温が上がってから調子が戻って来た」と笑顔をこぼす。その役割はキャントウェルのサポート。それぞれのチームでそれぞれの役目を担う3名がスタートを切った。
第1ステージはアランヤから海沿いを東に向かい、65km地点で折り返してアランヤに戻る143km。アタックがようやく決まったのは、42.6km地点にあるこの日唯一の、そして今大会最初のカテゴリー山岳。スタート前のチームプレゼンテーションでひと際大きな声援を受けていた地元トルコのムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)がアタックを成功させた。
サヤルにはミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)ら4名が合流し、5名の逃げが出来上がる。逃げの切っ掛けを作ったサヤルは2級山岳を先頭で通過し、真っ赤な山岳賞ジャージを着る栄誉を得る。これをスプリンターチームが追撃する“平坦ステージらしい”展開に。
メイン集団を牽引したのはブランコプロサイクリングとアルゴス・シマノ。それぞれボスとキッテルのために長時間メイン集団を引き続ける。地中海に面したアップダウン区間でも集団のペースは落ちず、最大5分まで広がったタイム差は見る見るうちに縮まって行く。
スプリンターチームを振り切るべく逃げグループは追い風に乗ってペースを刻んだが、やがてタイム差は1分を割り込む。ラスト16km地点のフィニッシュライン通過を前に独走に持ち込んだイグナチエフも吸収。スプリンターチームによるスピードバトルが始まった。
ラスト10kmを切ると、ヴィーニファンティーニの佐野も集団前方に姿を見せる。しかし佐野は「前に出るのが早すぎました。今日はリードアウトに失敗しているチームが多かったと思います。チームには小柄な選手が多いので、大柄でスピードのあるブランコやアルゴスには敵わなかった」と悔いる。ラスト5kmで最終コーナーを曲がると、ヴィーニファンティーニのトレインは崩れてしまう。
ブランコプロサイクリングとアルゴス・シマノの2チームが強力に集団を率いるその後ろでは、サクソ・ティンコフの宮澤がキャントウェルを連れてポジションを上げる。「ジョニー(キャントウェル)が残り2kmで良いポジションがとれてなかったので、ブランコの後ろまで連れて上がり、自分の仕事は終わった」と、120位でゴールした宮澤は振り返る。
オメガファーマ・クイックステップやアクセントジョブス、ロット・ベリソルもリードアウトバトルに加わり、ラスト1kmからアルゴス・シマノが再び先頭へ。するとユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール)が真っ先に仕掛けた。
一気に先頭に立つメトルシェンコ。その後ろからキッテルが落ち着いてスプリントを開始。付き位置のグライペルを引き離す勢いで加速したキッテルが一躍先頭に立つ。追随したグライペルに付け入る隙を与えない走りで、キッテルが悠々と先頭でゴールした。
「とにかく脚の調子はすごく良い。先週のトレーニングキャンプでチームメイトたちと徹底的に戦略を練ったんだ。デコルトの後ろからタイミングを待ってスプリントした。最高のチームワークだった」。ゴール横のトレーラーに作られた簡易記者会見デスクに腰を下ろしたキッテルはそう話す。
「アンドレ(グライペル)は調子が良さそう。今日トラブルで勝負には絡めなかったテオ・ボスとグアルディーニも好調だと聞いている。でも他の誰が強いかなんて関係ない。明日リーダージャージを着て走るのが楽しみだし、明後日まだリーダージャージを着ていたい」。ターコイズブルーのリーダージャージを着たキッテルは、翌日の第2ステージでも再び勝利を狙って行く。
終盤までハワードとクルオピスをサポートしながら走った別府は、ゴール前でエーススプリンターたちと離れてしまう。「ラスト500mで10番手あたりにつけていた。スプリントしたかった」と話し、そのままスプリントの流れに乗って28位。クラシックシーズンを終えてなお好調を維持していることを伺わせた。
ツアー・オブ・ターキー2013第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 3h08'37"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール)
4位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ)
5位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 フランチェスコ・ラスカ(イタリア、カハルーラル)
7位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、アクセントジョブス)
8位 グジェゴシ・ステプニャク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
9位 エドウィン・アビラバネガス(コロンビア、コロンビア)
10位 サーシャ・モードロ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
28位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)
120位 宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)
159位 佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)
個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 3h08'27"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) +04"
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール) +06"
4位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ) +10"
5位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 フランチェスコ・ラスカ(イタリア、カハルーラル)
7位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、アクセントジョブス)
8位 グジェゴシ・ステプニャク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
9位 エドウィン・アビラバネガス(コロンビア、コロンビア)
10位 サーシャ・モードロ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
ポイント賞
マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)
山岳賞
ムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)
ターキッシュビューティースプリント賞
ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Alanya, Turkey
第49回ツアー・オブ・ターキーの開幕地は、2年連続で地中海に面したリゾート地アランヤ。トルコの田舎町という趣ではなく、海岸通にはリゾートホテルが立ち並ぶ。目新しい建物も多く、海外からの観光客は年々増加しているという。
政府のバックアップによって、力の入ったオーガナイズで知られるツアー・オブ・ターキー。UCIヨーロッパツアーに組み込まれているものの、チームが現地に持ち込んだのはバイクなどの機材のみ。チームカーなどの車両は大会側が用意したものを使用する。
9つのUCIプロチームを含む25チームが集まったこの大会。史上初めて日本人選手が3名もスタートラインに並んだ。
ツール・ド・ランカウイ以降、佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)は持病によってしばらく日本で療養。復帰戦のブラバンツペイルで落車したものの、意気揚々とトルコに乗り込む。「今日はキッキでスプリントを狙うので、集団を引く展開になれば(自分の出番がやってくる)」と佐野。
「パリ〜ルーベ後、精神的に1週間ほどオフにした」と話すのは別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。5月にはツアー・オブ・カリフォルニア出場が予定されており、クラシックシーズンを終えた別府がここトルコで再び動き出す。
3年連続出場の宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は「ベルギーレースでの落車後、散々な状態が続いていたが、気温が上がってから調子が戻って来た」と笑顔をこぼす。その役割はキャントウェルのサポート。それぞれのチームでそれぞれの役目を担う3名がスタートを切った。
第1ステージはアランヤから海沿いを東に向かい、65km地点で折り返してアランヤに戻る143km。アタックがようやく決まったのは、42.6km地点にあるこの日唯一の、そして今大会最初のカテゴリー山岳。スタート前のチームプレゼンテーションでひと際大きな声援を受けていた地元トルコのムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)がアタックを成功させた。
サヤルにはミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)ら4名が合流し、5名の逃げが出来上がる。逃げの切っ掛けを作ったサヤルは2級山岳を先頭で通過し、真っ赤な山岳賞ジャージを着る栄誉を得る。これをスプリンターチームが追撃する“平坦ステージらしい”展開に。
メイン集団を牽引したのはブランコプロサイクリングとアルゴス・シマノ。それぞれボスとキッテルのために長時間メイン集団を引き続ける。地中海に面したアップダウン区間でも集団のペースは落ちず、最大5分まで広がったタイム差は見る見るうちに縮まって行く。
スプリンターチームを振り切るべく逃げグループは追い風に乗ってペースを刻んだが、やがてタイム差は1分を割り込む。ラスト16km地点のフィニッシュライン通過を前に独走に持ち込んだイグナチエフも吸収。スプリンターチームによるスピードバトルが始まった。
ラスト10kmを切ると、ヴィーニファンティーニの佐野も集団前方に姿を見せる。しかし佐野は「前に出るのが早すぎました。今日はリードアウトに失敗しているチームが多かったと思います。チームには小柄な選手が多いので、大柄でスピードのあるブランコやアルゴスには敵わなかった」と悔いる。ラスト5kmで最終コーナーを曲がると、ヴィーニファンティーニのトレインは崩れてしまう。
ブランコプロサイクリングとアルゴス・シマノの2チームが強力に集団を率いるその後ろでは、サクソ・ティンコフの宮澤がキャントウェルを連れてポジションを上げる。「ジョニー(キャントウェル)が残り2kmで良いポジションがとれてなかったので、ブランコの後ろまで連れて上がり、自分の仕事は終わった」と、120位でゴールした宮澤は振り返る。
オメガファーマ・クイックステップやアクセントジョブス、ロット・ベリソルもリードアウトバトルに加わり、ラスト1kmからアルゴス・シマノが再び先頭へ。するとユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール)が真っ先に仕掛けた。
一気に先頭に立つメトルシェンコ。その後ろからキッテルが落ち着いてスプリントを開始。付き位置のグライペルを引き離す勢いで加速したキッテルが一躍先頭に立つ。追随したグライペルに付け入る隙を与えない走りで、キッテルが悠々と先頭でゴールした。
「とにかく脚の調子はすごく良い。先週のトレーニングキャンプでチームメイトたちと徹底的に戦略を練ったんだ。デコルトの後ろからタイミングを待ってスプリントした。最高のチームワークだった」。ゴール横のトレーラーに作られた簡易記者会見デスクに腰を下ろしたキッテルはそう話す。
「アンドレ(グライペル)は調子が良さそう。今日トラブルで勝負には絡めなかったテオ・ボスとグアルディーニも好調だと聞いている。でも他の誰が強いかなんて関係ない。明日リーダージャージを着て走るのが楽しみだし、明後日まだリーダージャージを着ていたい」。ターコイズブルーのリーダージャージを着たキッテルは、翌日の第2ステージでも再び勝利を狙って行く。
終盤までハワードとクルオピスをサポートしながら走った別府は、ゴール前でエーススプリンターたちと離れてしまう。「ラスト500mで10番手あたりにつけていた。スプリントしたかった」と話し、そのままスプリントの流れに乗って28位。クラシックシーズンを終えてなお好調を維持していることを伺わせた。
ツアー・オブ・ターキー2013第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 3h08'37"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール)
4位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ)
5位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 フランチェスコ・ラスカ(イタリア、カハルーラル)
7位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、アクセントジョブス)
8位 グジェゴシ・ステプニャク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
9位 エドウィン・アビラバネガス(コロンビア、コロンビア)
10位 サーシャ・モードロ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
28位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)
120位 宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)
159位 佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)
個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 3h08'27"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) +04"
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール) +06"
4位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ) +10"
5位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 フランチェスコ・ラスカ(イタリア、カハルーラル)
7位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、アクセントジョブス)
8位 グジェゴシ・ステプニャク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
9位 エドウィン・アビラバネガス(コロンビア、コロンビア)
10位 サーシャ・モードロ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
ポイント賞
マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)
山岳賞
ムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)
ターキッシュビューティースプリント賞
ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Alanya, Turkey
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