自転車競技のなかで最もアクロバティックでエンターテインメント性溢れるレースが「トライアル」だ。日本一を決める全日本選手権、注目のエリート20インチクラスで寺井一希が昨年に続き2連覇を達成した。

エリート20チャンピオンの寺井一希エリート20チャンピオンの寺井一希 (c)Akihiro.NAKAO

昨年発足したJCF管轄のトライアル競技団体「JBTA(日本自転車トライアル協会)」による全日本トライアル選手権大会が、4月13・14日に愛知県新城市桜淵県立自然公園にて開催された。

トライアルはJCF(日本自転車競技連盟)とは別の団体によるレースもあり、全日本選手権は今年は2回目の開催で、別団体からの競技者にも認知されて参加者は増えた。

丸太を組み合わせたセクション丸太を組み合わせたセクション (c)Akihiro.NAKAOセクションは見渡せるぐらいの広さセクションは見渡せるぐらいの広さ (c)Akihiro.NAKAO


トライアルはセクションと呼ばれる障害物のあるコースを、制限時間内に足や自転車を触れずにクリアする競技だ。ミスした場合は加算点となり、5点以上となると失格となる。
用意された6セクションを2ラップ、エリート20・26は予選・決勝で争われる。使用バイクはトライアル専用のバイクとなり、エリートクラスは20と26インチに分かれる。また年齢でも細かくクラスが分かれる。

川の岩場のセクション川の岩場のセクション (c)Akihiro.NAKAO

昨年に続いて会場となった桜淵県立自然公園は、今年は散った後だったものの愛知県下では桜の名所だ。今回ここに設置されたセクションは、人工物は丸太やパレット、巨大なタイヤを組み合わせたものと、自然の地形を生かした川の岩場や斜面といった場所がある。ここをバランスをとりつつ、”ダニエル”という立ち上がる技から飛んだり飛び降りたりしながらクリアする。
トライアルはセクションを如何に攻略するかが見もので、選手それぞれ自分の技術を引き出して果敢に挑戦する。正確にそして大胆な動きは観客を魅了する。

クラスによってマーカーでコースが指示されるクラスによってマーカーでコースが指示される (c)Akihiro.NAKAO巨大タイヤを飛び越える!巨大タイヤを飛び越える! (c)Akihiro.NAKAO


国内トライアル選手の中で最も注目される、エリート20は昨年優勝した寺井一希に注目が集まった。昨年の世界選手権6位と「トライアルの帝王」と言われるほどの実力者である。

予選は寺井の圧勝、決勝は波乱の展開

13日の午前はエリート20・26の予選が行われた。今回、各セクションは「世界のレベルを意識した」ものとなっており、国内大会では例のない難易度の高いものとなっている。ただし、エリートクラスは予選と決勝ではレイアウトは異なり、決勝は難易度が高くなる。

エリート20 優勝した寺井一希エリート20 優勝した寺井一希 (c)Akihiro.NAKAO

予選の結果は寺井が1ポイントで押さえる走りで、2番手の柴田泰嵩は複数のセクションを落として19ポイントと、圧倒的な実力を示した。
日曜の決勝は難易度の上がったセクションで、寺井が1ラップ目から3つのセクションを落として17ポイントと波乱の展開になった。2番手には19ポイントで山本雅哉が続く。

エリート20 2位の山本雅也エリート20 2位の山本雅也 (c)Akihiro.NAKAOエリート20 3位の柴田泰嵩エリート20 3位の柴田泰嵩 (c)Akihiro.NAKAO


2ラップ目は寺井が挽回し、1セクションを落としたものの8ポイントで計25ポイント。山本が34ポイントと、寺井が昨年に続き2連覇を達成した。

全日本エリート20を2連覇となった寺井一希全日本エリート20を2連覇となった寺井一希 (c)Akihiro.NAKAO寺井のコメント「納得する走りがなかなかできなくて、反省点が見えたかな、という大会でした。行けなかったセクションが一カ所あったので、こういう練習もしなくてはいけないなと思いました。世界のレースだと高さももっともあるし、難しさもあります。
(JCFの大会になって)トライアルをアピールするのに、競技会などに出てお声がかかれば出席して一般の方々にもアピールしたいですね。人目に触れれば自然とトライアルの知名度は上がると思うので、惜しまず協力したいと思います。
トライアルは道具を使って目標が分かりやすく、また成長も分かり達成感もあるのでそこが魅力だと思います。
今後はJシリーズがはじまるのでそこでチャンピオンを獲ります。また海外はワールドカップが一ヶ月おきに開催されるので、参戦が難しいですが1レースは行きたいと考えています」。

エリート26 優勝の長屋佳政エリート26 優勝の長屋佳政 (c)Akihiro.NAKAOエリート26 2位の西窪友海エリート26 2位の西窪友海 (c)Akihiro.NAKAO


エリート26は予選トップの西窪友海とベテラン長屋佳政との戦い。大会直前に腰を怪我で痛めたのを覆して、1ポイント差で長屋の勝利に。

ジュニア 優勝の飯沼裕慧ジュニア 優勝の飯沼裕慧 (c)Akihiro.NAKAOウィメン 優勝の小川菜花ウィメン 優勝の小川菜花 (c)Akihiro.NAKAO


ウィメンは出場規定年齢に達した15歳の小川菜花が勝利。長崎県島原市からの参加で「トライアルはキツいけど大会に参加して成績が上がったら嬉しい」と話す。
ジュニアは飯沼裕慧が昨年に続いて2連覇となった。

ミニメ 優勝の土屋凌我ミニメ 優勝の土屋凌我 (c)Akihiro.NAKAOカデット 優勝の泉沢 仁カデット 優勝の泉沢 仁



全日本トライアル選手権大会2013 各クラス結果

エリート20
1位 寺井一希  25P
2位 山本雅也  34P
3位 柴田泰嵩  41P
4位 大竹信太郎 54P
5位 齋藤倖太  58P
6位 高坂 光  59P

エリート26表彰エリート26表彰 (c)Akihiro.NAKAOウィメン表彰ウィメン表彰 (c)Akihiro.NAKAO


エリート26
1位 長屋佳政 46P
2位 西窪友海 47P
3位 梶谷隆太 55P
4位 石原諒也 59P
5位 藤原涼平 60P
6位 山田慎理 60P

ウィメン
1位 小川菜花 38P
2位 胡中理沙 49P
3位 水野真美 53P

ジュニア表彰ジュニア表彰 (c)Akihiro.NAKAOカデット表彰カデット表彰 (c)Akihiro.NAKAO


ジュニア(17-18)
1位 飯沼裕慧 39P
2位 甘利大斗 41P
3位 坪井大地 50P

カデット(15-16)
1位 泉沢 仁 15P
2位 大原聡一郎 17P
3位 斉藤夏樹 21P

ミニメ(13-14)
1位 土屋凌我 2P
2位 髙橋靖矢 17P
3位 塩崎太夢 24P

ベンジャミン表彰ベンジャミン表彰 (c)Akihiro.NAKAOプッシン表彰プッシン表彰 (c)Akihiro.NAKAO


ベンジャミン(11-12)
1位 氏川政哉 10P
2位 豊澤 剛 12P
3位 武田呼人 18P

プッシン(9-10)
1位 池田 力 14P
2位 中澤はくる 20P
3位 古瀬颯樹 50P

ガール
安藤七星 57P


2013トライアルJシリーズ
以下の4カ所でシリーズ戦が開催される。
Round 1 5/19 アルプスヴァン トライアルパーク 山梨県韮崎市
Round 2 7/14 岐阜県百年公園 アンテロープス 岐阜県関市
Round 3 9/15 オートキャンプ場 カルディア 奈良県五條市
Round 4 11/3 灰塚ダムトライアル場 広島県三次市

トライアルバイクとはこんなマシン

土屋凌我選手のウェルドワン土屋凌我選手のウェルドワン (c)Akihiro.NAKAO

トライアルで使用されるバイクは普通の自転車とは違い、サドルは無く、変速機も無い。フリーはクランク軸にあり、ノッチも凄く細かい。ブレーキはディスクが使用されるが、油圧のリムブレーキも使用されている。低重心でライダーが立ち上がった位置にハンドルバーがあるので、ステムがとても長い。選手は自分の体の一部のように操る。

変速機はなくクランク軸にフリーが組み込まれている変速機はなくクランク軸にフリーが組み込まれている (c)Akihiro.NAKAOリムには軽量化のために穴があけらているリムには軽量化のために穴があけらている (c)Akihiro.NAKAO


ミニメクラスで土屋凌我選手が使うのは、チタンバイクのウェルドワン。日本では製造していない「α-βチタニウム」を使用して、トライアル競技では実績のあるブランドだ。
「自転車自体がしなってすごくあってる。バネのように飛べます」とのこと。
土屋選手は昨年ワールドユースで3位と今後活躍が期待されている。今回2ポイントと卓越したテクニックで優勝。「今日はとても難しいセクションだったので楽しく走れました」。

とても幅の広いハンドルを使用するとても幅の広いハンドルを使用する (c)Akihiro.NAKAO今後活躍が期待される土屋凌我選手今後活躍が期待される土屋凌我選手 (c)Akihiro.NAKAO


text&photo:Akihiro.NAKAO

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