4月14日、オランダ・リンブルグ地方で第48回アムステル・ゴールドレース(UCIワールドツアー)が開催される。ゴール地点がカウベルグ頂上の1.8km先に移動したことで、ますますペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)向きと言われるこの大会。日本からは好調な新城幸也(ユーロップカー)が出場する。

「1000のカーブ」と「34の登り」を含む251kmのアップダウンコース

アムステル・ゴールドレース2013コースマップアムステル・ゴールドレース2013コースマップ image: Amstel Gold Raceいよいよアルデンヌ3連戦が始動する。アムステル・ゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催される。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手も「北のクラシック」とは異なる。

オランダと聞いて思い描くのは、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る平原だ。確かに国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下。国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味するほど、国土の大部分は起伏に乏しい。

いくつもの登りと下りを繰り返しながらカウベルグを目指すいくつもの登りと下りを繰り返しながらカウベルグを目指す photo:Kei Tsujiしかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステル・ゴールドレースは、上りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部の丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルグ州を駆け巡る(プロが試走中に間違うほど!)複雑な周回コースが設定される。登場する短い登りの数は34カ所。251kmのコースはまさにアップダウンの連続だ。

2012年ロード世界選手権 独走でゴールに飛び込むフィリップ・ジルベール(ベルギー)2012年ロード世界選手権 独走でゴールに飛び込むフィリップ・ジルベール(ベルギー) photo:Kei Tsujiコースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続。アップダウンとワインディングを繰り返すため、ときに「ジェットコースター」と形容される。

これらの試練を“フレッシュな状態”で乗り越え、最後のカウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。

ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いしがちだが、その名前はメインスポンサーのアムステル社からきている。アムステル社はオランダを代表するビール会社。レース公式サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。

注目したいのは、レース終盤の周回コースに変更が加えられたことだろう。合計30個の坂をこなした後、選手たちは最後の周回コースに突入する。この周回コースは2012年ロード世界選手権の周回コースと似通ったもので、カウベルグとグールヘンメルベルグ(世界選には登場せず)、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、再びカウベルグに挑む。

合計4回通過することになるアムステル名物のカウベルグは、登坂距離1200m、高低差68m、平均勾配5.8%、最大勾配12%。昨年までこのカウベルグ頂上にゴールが置かれていたが、今年レース主催者は頂上の1.8km先にゴールを設置した。頂上通過後に平坦路があるレイアウトは2012年ロード世界選手権と共通だ。

アムステル・ゴールドレース2013コースプロフィールアムステル・ゴールドレース2013コースプロフィール image: Amstel Gold Race

登りとスプリントで他を圧倒するサガン 対抗出来るのは誰か?

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vos2012年大会はカウベルグでのスプリント勝負に持ち込まれ、イェーレ・ファネンデルト(ベルギー)とペーター・サガン(スロバキア)を破ったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)が勝利した。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos大会連覇が懸かったガスパロットはマキシム・イグリンスキー(カザフスタン)やヤコブ・フグルサング(デンマーク)らを従えての出場。しかしコースの変更によって連覇が難しくなったと打ち明ける。「ゴール地点が変更されたことで、これまでと全く違うスプリント勝負になる。ペーター・サガンのようにスプリント力のある選手はコース変更を歓迎していると思う。ペーター・サガンこそ優勝候補の筆頭。彼が一番強いことは間違いない」。

ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vosヘント〜ウェベルヘムで優勝し、ロンド・ファン・フラーンデレンで2位に入ったサガンは、このアムステルに集中するために「シーズンの中で一番勝ちたいレース」というパリ〜ルーベを欠場。完全にコンディションを合わせて来た。サガンのために設計された感もあるほど、アムステルのコースは彼向きだ。

サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiサガンはアルデンヌの前哨戦として知られるブラバンツ・ペイルで優勝。短い登りでパワーを誇示するとともに、スプリントで世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)を下した。モレーノ・モゼール(イタリア)という心強い伴侶を得たサガンが、戦歴にクラシックのタイトルをもう一つ追加しようとしている。サガンが徹底マークによって身動きが取れない場合は、モゼールで勝利を狙うことも出来るだろう。

新城幸也(日本、ユーロップカー)新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji2012年ロード世界選手権のカウベルグで鋭いアタックを成功させてゴールまで独走したジルベールにとって、このアムステルは地元レースの一つ。国は違えど、ジルベールの出身地ベルギー・ワロン地方は国境を挟んだ目と鼻の先。ジルベールは2010年と2011年に優勝を果たしている。

ジルベールは世界選と同じシナリオを描きたいところだが、そのためにはサガンを登りで引き離す必要がある。フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)らとともに先制攻撃を仕掛けてくるだろう。サガン擁するキャノンデールとジルベール擁するBMCを中心にレースは展開されるはずだ。

オランダ最大のレースだけに、オランダの3チームの士気は高い。ブランコプロサイクリングはツアー・ダウンアンダー覇者のトムイェルテ・スラグテル(オランダ)、ヴァカンソレイユ・DCMはブラバンツ・ペイル3位のビョルン・ルークマンス(ベルギー)、そしてアルゴス・シマノは同5位のサイモン・ゲスク(ドイツ)をエースに立てる。オランダ人選手ならびにオランダチームによるアムステル制覇は、2001年のエリック・デッケル(オランダ、ラボバンク)以来果たされていない。

スペインのカタルーニャ一周やバスク一周で活躍したコロンビアのナイロ・クインターナ(モビスター)、セルジオルイス・エナオモントーヤ(スカイプロサイクリング)、カルロスアルベルト・ベタンクール(アージェードゥーゼル)や、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らは登りでレースを動かしてくるはず。好調のサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)や2008年大会の覇者ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ジロ・デ・イタリアで連覇を狙うライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らもカウベルグ決戦に加わるだろう。

日本からは新城幸也(ユーロップカー)が出場する。トマ・ヴォクレール(フランス)やダヴィデ・マラカルネ(イタリア)のアシストとして動くことになるだろう。ユキヤはアムステル出場後、フレーシュ・ワロンヌに出場せずイタリアのジロ・デル・トレンティーノに出場。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュとツール・ド・ロマンディへの出場が控えている。

text:Kei Tsuji

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