2013/04/05(金) - 12:52
バイシクルコンポーネントブランドのSRAMから登場した新型XC用コンポーネント、「XX1」。フロントシングル×リア11速という「ワンバイイレブン」を採用した注目の新システムを実際に使用し、その性能を味わってみた。
シマノ、カンパニョーロと共に覇権を競っているコンポーネントブランド、SRAM(スラム)。昨年に発表された「XX1」はMTBライダーに大きな衝撃をもたらした。
トレイルで頻繁に現れる急勾配に対応するため、MTB・XCではフロント3枚、リア10枚の30速が現在のスタンダード。そして下りを重視するDH系バイクならトレイルでのヒットによるギア板のダメージを回避するためにアウターリングを外しバッシュガードを装着してシングルにするのが現在のトレンドだ。
しかしXX1は、リアルXCレーシング機材ながらフロントシングルを採用することが最大のトピックス。その理由は、レース時間の短縮や29erの登場で高速化した昨今のXCレースに対応するため。シンプルな機構とすることで大きなタイムロスとなるチェーン落ちやジャム(噛みこみ)を防ぐ狙いがある。
こういった傾向は過去にもリッチーがリア8速時代に登場させた「2X9」や、シクロクロスでもフロントシングルが使われていたりと、従来から存在するものだ。
XX1ではフロントがシングルとなったことに対応し、シマノに先駆けてXX1のシステムは11速を採用した。
フロントシングル&リア11スピードに的を絞って開発されたXX1には特徴的な新システムが数多く盛り込まれている。カーボンクランクにセットされる「X-SYNCTM チェーンリング」は、交互に幅の違う歯で専用のチェーンを使って確実なチェーンの噛み合わせを実現。従来のチェーンデバイスを不要としている。
リアスプロケットは 10-12-14-16-18-21-24-28-32-36-42 とワイドとなっており、
チェーンリングは 28-30-32-34-36-38 と6種類用意され、コースやバイクのセッティングで好みのギア比が選択できる。ただしホイールはスプロケットが対応する専用の「XDドライバー」が求められ、現在はSRAM、DT Swiss、Mavicのみ対応している。今後は他メーカーからもリリースの予定だ。
リアディレーラーも新設計で、「ホリゾンタル・パラレログラム・デザイン」はディレーラーとスプロケットが常に平行する事によってチェーンとスプロケットのギャップを全てのギアで間隔を一定に保ち、オフセットされたラージプーリーと組み合わせることにより確実な変速を可能としたもの。
また走行中のチェーン暴れを抑える「ローラーベアリングクラッチ」で荒れた路面をスムーズに走れるのも特徴だ。シフターはトリガーシフトとグリップシフトの2種類が用意される。
フロント変速に必要なシフター、フロントディレーラー、チェーンリングを無くしたことによる軽量化も相まって、現在のXCレースシーンに必要な要素を全て投入したコンポーネントと言えよう。
静かで確実な変速。上りから平坦まで十分に対応するワイドなギア比
今回試乗をしたのは、多気町のMTBコース。バイクはSRAMを取り扱うダートフリークが展開するオリジナルブランド、「ライテック」のチタンMTB「ハッソTi」。プレイバイクにカテゴライズされるフレームを用いたバイクだ。多気町のMTBトレールは長い急勾配の登りがあるクロスカントリー系コースのため、このバイクとコンポはこのフィールドにはちょっと不釣り合いかな、と最初は思っていた。
コースに入ってしばらくすると現れる急な登り坂では、すぐにローギアへ。フロントチェーンリングは32Tと一般的だが、登りのポジションが出しにくいプレイバイクであるハッソTiでも、ロー側42Tは効果的。急勾配でも難なくこなすことができる。一方でトップは10Tで、平坦路でも足が回りきる軽さではなく、この辺りに歯数設計の妙を感じる。
もちろんフロントディレーラーがある事による不満、例えばチェーンがディレーラーのガイドプレートに擦れたり、調整不足で勝手にチェーンが落ちるといったトラブルも無く、それらのストレスから解放されるあたりは流石フロントシングル。また変わりにデバイスを装着する事による接触の抵抗も無い。
ローギアにしているとチェーンラインはかなりオフセットしているのだが、剛性感があって、ペダルを力づくで踏んでもよれる感じがせず、外れる兆候も全く無い。下りはさらに印象がよく、チェーンのばたつきが無くて外れる心配をすること無く安心して踏める。シフターもカチカチとした小気味好いタッチだ。
コースによってギア比を変える必要も出てくるが、その場合はクランクを付けたままチェーンリングを交換する事が可能で、チェーンもピンで外せるからレース会場で容易にセッティングができる。
コースを走って思ったのは、「ワンバイイレブンは実に良く考えられたシステムだ」ということ。ただシングルにしただけではない、各部の専用設計による完成度の高さ、そのポテンシャルの凄さを感じた。やはりシングルなので走行中に「脚」を使うことは確かだが、適切なギア比選択ができれば、このストレスフリーさはレースでも有効な武器になると感じる。使用感がとても快適なので、今後の下位グレードへの展開も非常に楽しみだ。
text&photo:Akihiro.NAKAO
シマノ、カンパニョーロと共に覇権を競っているコンポーネントブランド、SRAM(スラム)。昨年に発表された「XX1」はMTBライダーに大きな衝撃をもたらした。
トレイルで頻繁に現れる急勾配に対応するため、MTB・XCではフロント3枚、リア10枚の30速が現在のスタンダード。そして下りを重視するDH系バイクならトレイルでのヒットによるギア板のダメージを回避するためにアウターリングを外しバッシュガードを装着してシングルにするのが現在のトレンドだ。
しかしXX1は、リアルXCレーシング機材ながらフロントシングルを採用することが最大のトピックス。その理由は、レース時間の短縮や29erの登場で高速化した昨今のXCレースに対応するため。シンプルな機構とすることで大きなタイムロスとなるチェーン落ちやジャム(噛みこみ)を防ぐ狙いがある。
こういった傾向は過去にもリッチーがリア8速時代に登場させた「2X9」や、シクロクロスでもフロントシングルが使われていたりと、従来から存在するものだ。
XX1ではフロントがシングルとなったことに対応し、シマノに先駆けてXX1のシステムは11速を採用した。
フロントシングル&リア11スピードに的を絞って開発されたXX1には特徴的な新システムが数多く盛り込まれている。カーボンクランクにセットされる「X-SYNCTM チェーンリング」は、交互に幅の違う歯で専用のチェーンを使って確実なチェーンの噛み合わせを実現。従来のチェーンデバイスを不要としている。
リアスプロケットは 10-12-14-16-18-21-24-28-32-36-42 とワイドとなっており、
チェーンリングは 28-30-32-34-36-38 と6種類用意され、コースやバイクのセッティングで好みのギア比が選択できる。ただしホイールはスプロケットが対応する専用の「XDドライバー」が求められ、現在はSRAM、DT Swiss、Mavicのみ対応している。今後は他メーカーからもリリースの予定だ。
リアディレーラーも新設計で、「ホリゾンタル・パラレログラム・デザイン」はディレーラーとスプロケットが常に平行する事によってチェーンとスプロケットのギャップを全てのギアで間隔を一定に保ち、オフセットされたラージプーリーと組み合わせることにより確実な変速を可能としたもの。
また走行中のチェーン暴れを抑える「ローラーベアリングクラッチ」で荒れた路面をスムーズに走れるのも特徴だ。シフターはトリガーシフトとグリップシフトの2種類が用意される。
フロント変速に必要なシフター、フロントディレーラー、チェーンリングを無くしたことによる軽量化も相まって、現在のXCレースシーンに必要な要素を全て投入したコンポーネントと言えよう。
静かで確実な変速。上りから平坦まで十分に対応するワイドなギア比
今回試乗をしたのは、多気町のMTBコース。バイクはSRAMを取り扱うダートフリークが展開するオリジナルブランド、「ライテック」のチタンMTB「ハッソTi」。プレイバイクにカテゴライズされるフレームを用いたバイクだ。多気町のMTBトレールは長い急勾配の登りがあるクロスカントリー系コースのため、このバイクとコンポはこのフィールドにはちょっと不釣り合いかな、と最初は思っていた。
コースに入ってしばらくすると現れる急な登り坂では、すぐにローギアへ。フロントチェーンリングは32Tと一般的だが、登りのポジションが出しにくいプレイバイクであるハッソTiでも、ロー側42Tは効果的。急勾配でも難なくこなすことができる。一方でトップは10Tで、平坦路でも足が回りきる軽さではなく、この辺りに歯数設計の妙を感じる。
もちろんフロントディレーラーがある事による不満、例えばチェーンがディレーラーのガイドプレートに擦れたり、調整不足で勝手にチェーンが落ちるといったトラブルも無く、それらのストレスから解放されるあたりは流石フロントシングル。また変わりにデバイスを装着する事による接触の抵抗も無い。
ローギアにしているとチェーンラインはかなりオフセットしているのだが、剛性感があって、ペダルを力づくで踏んでもよれる感じがせず、外れる兆候も全く無い。下りはさらに印象がよく、チェーンのばたつきが無くて外れる心配をすること無く安心して踏める。シフターもカチカチとした小気味好いタッチだ。
コースによってギア比を変える必要も出てくるが、その場合はクランクを付けたままチェーンリングを交換する事が可能で、チェーンもピンで外せるからレース会場で容易にセッティングができる。
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text&photo:Akihiro.NAKAO
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