2013/03/01(金) - 07:58
ピュア国産ブランドとしてその名が定着したグラファイトデザイン。秩父の里山でテストを繰り返し生まれた2台のMTBがDOKKE(ドッケ)XCとAMだ。クロスカントリーとオールマウンテンそれぞれに別設計された2台のインプレションをお届けしよう。
DOKKE(ドッケ)。聞きなれない名前だが、その由来は秩父連山にある三ツドッケと言う山にある。国立公園に指定され広大な自然が広がり美しくあり、過酷な環境であることからバイクのテストライドが幾度となく行われた場所で、秩父地方の方言で尖った峰の事を「トッケ」と言うところから、「尖った製品に作りあげたい」という思いが込められたネーミングだ。
XC(クロスカントリー)とAM(オールマウンテン)という2台のドッケを生んだグラファイトデザインは、ご存知のようにゴルフのカーボンシャフト製造ブランドとして地位を築き、カーボンに関する卓越した知識や技術を応用して、自転車業界に参入してきた。
当初メテオスピードとメテオランチという2台のロードバイクからラインナップをスタートさせたが、2012年モデルより今回のインプレッション車両であるDOKKE、そしてシクロクロスバイクであるWROCCA(ウロッカ)をカタログに加え、ロードからMTBまで幅広いバリエーションを誇るに至った。
しかもそれらは全て秩父周辺のフィールドでテストされ、地道な改良を繰り返すことで、日本人のライディングや走行環境に最適な性能を備える。今回のインプレッションを行うDOKKEも2年半という開発期間、3台のプロトタイプの製作を経て製品化されたフルカーボンマシンだ。
2台に共通するテーマは、ロードと同じく「しなやかさ」をプッシュするバイクであること。シートステーが下側に大きくベントしていることが共通の特徴だが、互いに性格を大きく異なるものとしている。
80~120mmストロークサスペンションを推奨するXCは各部の剛性を高め、サッパリとしたフィーリングと性能を求めたバイクだ。特にバックステーの剛性を調整することでしなやかな乗り心地と軽快でタイミングの良いペダリングを生み出すことに注力された。
世界的にもあまり類を見ないフルカーボンオールマウンテンバイクであるAMは、XCよりもカーボンパイプを強化し、信頼性と強度を増したバイク。強靭なフレームでありながらしなやかな乗り心地を実現し、ラフな路面も安心してクリアできる高い走破性が特徴だ。推奨サスペンションストロークは100~140mmとなる。
フレーム重量はXCが1170g、AMが1300gと軽く、厳しい上りで武器になることは言うまでも無い。テストライドでは15km以上に渡るダート上りを走らせているため、王滝などのエンデュランス系レースでの使用も視野に入れているのだろう。
日本の環境でテストを繰り返し生まれた2台のDOKKE。テストライドを行うのはRiseRide店長の鈴木祐一氏だ。2週間に渡る長期テストライドの末の感想とは。早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッションby鈴木祐一(RiseRide)
テストしたバイクは2台とも同じブランドが同時期に作ったマシンで、性格は異なりますが、共通項が多く発見できました。どちらも非常に自然で、ナチュラルな走り心地です。
XCはクロスカントリーライドに適した性能で、砂利道ダート、シングルトラック、担ぎなど、どうバイクを走らせても重心位置が掴みやすく、身体が素早く馴染んでくれます。身体をどう変化させても自然な走り心地。"どう乗ったら良い"というのが無く、非常に収まりが良いですね。
日本の山道は基本的に自転車が走るために作られていません。そのため急勾配やタイトコーナーが連続し、全体的な速度は低くなりますが、そういった中低速での扱いやすさが顕著で、「日本の山道を良く知っているな」と感じた部分です。
XCはリアバックは適度にしなってくれるため、衝撃の角を和らげてストレスをあまり感じさせないのが特徴です。適度な味付けのため柔らかすぎる事はありませんが、まるでストローク量の小さなサスペンションが付いているかのよう。根やリアトラクションが強いられる場面での走りやすさは特筆すべきところです。
十分な軽さがあるためレースで使ってもメリットがありますが、高速区間では持ち味の「自然さ」によって、純粋なレーシングバイクに引けを取る部分が出てきました。XCと言うと「レーシング」をイメージしがちですが、このバイクは様々なシチュエーションを楽しむための「クロスカントリーライディング用」として捉えた際に一番引き立ちます。
激坂を足を着かずに登ってみたり、そういった純粋な楽しさに重きを置いたバイクだと感じました。身体と路面を自然にリンクさせてくれるバイク。そのあたりがXCの魅力・良さだと思います。
「自然さ」は悪く言ってしまえば「特徴の無さ」に繋がってしまう部分ですが、ここまで乗りやすいバイクというのもなかなか存在しないと思います。魅力の一つですし、ライダーの実力がそのままライディングに反映されるため、スキルを養うのにはうってつけのバイクと言えますね。
AMはXCに比べ、より下りにフォーカスしたバイクです。しかし同じフィールドでテストして生まれたバイクですので、どちらも中低速域での走りが得意。全く違うフィーリングなのですが、一貫した乗りやすさが味わえました。
具体的にはXCと比較して剛性が高く、四角いものは四角く、丸いものは丸く、ダイレクトに分かりやすく路面の衝撃を伝えてくる性格があります。下りの路面状況に合わせて身体を動かしたり、バイクを操作することはMTBライディングの面白さですが、路面状況がしっかりと伝わることに加えて自然なフィーリングであることで、そういった動作がスムーズにできることがAMの特徴だと言えます。
ホイールは26インチですが、ヘッドアングルを立たせてあるため急なドロップオフでもハンドリングの切れ込みがナチュラルで、どこかBMXのようなコントロール性が感じられます。ライダーのポテンシャルをそのまま走りに反映するバイクで、スキルを養うのにも適していますね。
リフトや車が用意される欧米のコースとは違い、日本では下りを楽しむために頂上まで自走で登らないといけません。AMというカテゴリーは欧米ブランドが積極的にクロモリフレームをリリースしていますが、そういったバイクはどうしても日本のフィールドにフィットしない部分が出てきてしまいます。
その点このAMは軽くできていますので、ヒルクライムや急峻な上りで担ぎを強いられた際に大きなメリットを生み出します。体力のロスを防ぐことができますし、女性ライダーにとっては大きなメリットとなってくれるはずです。
一方XCと共通して、中低速にフォーカスしているために超高速では若干不安定な挙動を出してしまいます。そのためターゲットはこれからオールマウンテン的な走りを楽しみたいビギナーでしょう。カーボン製で軽いため体力が削がれることも防ぎますし、何と言っても乗りやすい。中級レベルのライダーでも十分に楽しんで走ることができるでしょう。
グラファイトデザイン DOKKE XC
サイズ:S、M、L
フレーム重量:1170g
ディスクローターサイズ:φ140mm
シートポストサイズ:φ31.6mm
シートパイプサイズ:φ34.9mm
BBタイプ:BB幅73mm BC1.37(JIS)
ステム超:(設計寸法) 90mm
ヘッドパイプ外径/内径:OD 50mm/ID 44mm
MAXタイヤクリアランス:26×2.35
ヘッドパーツ:FSA Orbit Z
ボトルケージ数:2(Sは1)
Fディレーラータイプ/外径:ダウンスイング/φ34.9mm
シートクランプ:クイックリリースタイプ43g/サイズφ31.6mm
価 格:199,500円(税込)
グラファイトデザイン DOKKE AM
サイズ:S、M、L
フレーム重量:1,300g(サイズM)
ディスクローターサイズ:φ160mm
シートポストサイズ:φ31.6mm
シートパイプサイズ:φ34.9mm
BBタイプ:BB幅73mm BC1.37(JIS)
ステム長(設計寸法):70mm
ヘッドパイプ外径/内径:OD 50mm/ID 44mm
MAXタイヤクリアランス:26×2.50
ヘッドパーツ:FSA Orbit Z
ボトルケージ数:1(ダウンパイプ)
Fディレーラータイプ/外径:ダウンスイング/φ34.9mm
シートクランプ:クイックリリースタイプ43g/サイズφ31.6mm
価 格:199,500円(税込)
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
DOKKE(ドッケ)。聞きなれない名前だが、その由来は秩父連山にある三ツドッケと言う山にある。国立公園に指定され広大な自然が広がり美しくあり、過酷な環境であることからバイクのテストライドが幾度となく行われた場所で、秩父地方の方言で尖った峰の事を「トッケ」と言うところから、「尖った製品に作りあげたい」という思いが込められたネーミングだ。
XC(クロスカントリー)とAM(オールマウンテン)という2台のドッケを生んだグラファイトデザインは、ご存知のようにゴルフのカーボンシャフト製造ブランドとして地位を築き、カーボンに関する卓越した知識や技術を応用して、自転車業界に参入してきた。
当初メテオスピードとメテオランチという2台のロードバイクからラインナップをスタートさせたが、2012年モデルより今回のインプレッション車両であるDOKKE、そしてシクロクロスバイクであるWROCCA(ウロッカ)をカタログに加え、ロードからMTBまで幅広いバリエーションを誇るに至った。
しかもそれらは全て秩父周辺のフィールドでテストされ、地道な改良を繰り返すことで、日本人のライディングや走行環境に最適な性能を備える。今回のインプレッションを行うDOKKEも2年半という開発期間、3台のプロトタイプの製作を経て製品化されたフルカーボンマシンだ。
2台に共通するテーマは、ロードと同じく「しなやかさ」をプッシュするバイクであること。シートステーが下側に大きくベントしていることが共通の特徴だが、互いに性格を大きく異なるものとしている。
80~120mmストロークサスペンションを推奨するXCは各部の剛性を高め、サッパリとしたフィーリングと性能を求めたバイクだ。特にバックステーの剛性を調整することでしなやかな乗り心地と軽快でタイミングの良いペダリングを生み出すことに注力された。
世界的にもあまり類を見ないフルカーボンオールマウンテンバイクであるAMは、XCよりもカーボンパイプを強化し、信頼性と強度を増したバイク。強靭なフレームでありながらしなやかな乗り心地を実現し、ラフな路面も安心してクリアできる高い走破性が特徴だ。推奨サスペンションストロークは100~140mmとなる。
フレーム重量はXCが1170g、AMが1300gと軽く、厳しい上りで武器になることは言うまでも無い。テストライドでは15km以上に渡るダート上りを走らせているため、王滝などのエンデュランス系レースでの使用も視野に入れているのだろう。
日本の環境でテストを繰り返し生まれた2台のDOKKE。テストライドを行うのはRiseRide店長の鈴木祐一氏だ。2週間に渡る長期テストライドの末の感想とは。早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッションby鈴木祐一(RiseRide)
テストしたバイクは2台とも同じブランドが同時期に作ったマシンで、性格は異なりますが、共通項が多く発見できました。どちらも非常に自然で、ナチュラルな走り心地です。
XCはクロスカントリーライドに適した性能で、砂利道ダート、シングルトラック、担ぎなど、どうバイクを走らせても重心位置が掴みやすく、身体が素早く馴染んでくれます。身体をどう変化させても自然な走り心地。"どう乗ったら良い"というのが無く、非常に収まりが良いですね。
日本の山道は基本的に自転車が走るために作られていません。そのため急勾配やタイトコーナーが連続し、全体的な速度は低くなりますが、そういった中低速での扱いやすさが顕著で、「日本の山道を良く知っているな」と感じた部分です。
XCはリアバックは適度にしなってくれるため、衝撃の角を和らげてストレスをあまり感じさせないのが特徴です。適度な味付けのため柔らかすぎる事はありませんが、まるでストローク量の小さなサスペンションが付いているかのよう。根やリアトラクションが強いられる場面での走りやすさは特筆すべきところです。
十分な軽さがあるためレースで使ってもメリットがありますが、高速区間では持ち味の「自然さ」によって、純粋なレーシングバイクに引けを取る部分が出てきました。XCと言うと「レーシング」をイメージしがちですが、このバイクは様々なシチュエーションを楽しむための「クロスカントリーライディング用」として捉えた際に一番引き立ちます。
激坂を足を着かずに登ってみたり、そういった純粋な楽しさに重きを置いたバイクだと感じました。身体と路面を自然にリンクさせてくれるバイク。そのあたりがXCの魅力・良さだと思います。
「自然さ」は悪く言ってしまえば「特徴の無さ」に繋がってしまう部分ですが、ここまで乗りやすいバイクというのもなかなか存在しないと思います。魅力の一つですし、ライダーの実力がそのままライディングに反映されるため、スキルを養うのにはうってつけのバイクと言えますね。
AMはXCに比べ、より下りにフォーカスしたバイクです。しかし同じフィールドでテストして生まれたバイクですので、どちらも中低速域での走りが得意。全く違うフィーリングなのですが、一貫した乗りやすさが味わえました。
具体的にはXCと比較して剛性が高く、四角いものは四角く、丸いものは丸く、ダイレクトに分かりやすく路面の衝撃を伝えてくる性格があります。下りの路面状況に合わせて身体を動かしたり、バイクを操作することはMTBライディングの面白さですが、路面状況がしっかりと伝わることに加えて自然なフィーリングであることで、そういった動作がスムーズにできることがAMの特徴だと言えます。
ホイールは26インチですが、ヘッドアングルを立たせてあるため急なドロップオフでもハンドリングの切れ込みがナチュラルで、どこかBMXのようなコントロール性が感じられます。ライダーのポテンシャルをそのまま走りに反映するバイクで、スキルを養うのにも適していますね。
リフトや車が用意される欧米のコースとは違い、日本では下りを楽しむために頂上まで自走で登らないといけません。AMというカテゴリーは欧米ブランドが積極的にクロモリフレームをリリースしていますが、そういったバイクはどうしても日本のフィールドにフィットしない部分が出てきてしまいます。
その点このAMは軽くできていますので、ヒルクライムや急峻な上りで担ぎを強いられた際に大きなメリットを生み出します。体力のロスを防ぐことができますし、女性ライダーにとっては大きなメリットとなってくれるはずです。
一方XCと共通して、中低速にフォーカスしているために超高速では若干不安定な挙動を出してしまいます。そのためターゲットはこれからオールマウンテン的な走りを楽しみたいビギナーでしょう。カーボン製で軽いため体力が削がれることも防ぎますし、何と言っても乗りやすい。中級レベルのライダーでも十分に楽しんで走ることができるでしょう。
グラファイトデザイン DOKKE XC
サイズ:S、M、L
フレーム重量:1170g
ディスクローターサイズ:φ140mm
シートポストサイズ:φ31.6mm
シートパイプサイズ:φ34.9mm
BBタイプ:BB幅73mm BC1.37(JIS)
ステム超:(設計寸法) 90mm
ヘッドパイプ外径/内径:OD 50mm/ID 44mm
MAXタイヤクリアランス:26×2.35
ヘッドパーツ:FSA Orbit Z
ボトルケージ数:2(Sは1)
Fディレーラータイプ/外径:ダウンスイング/φ34.9mm
シートクランプ:クイックリリースタイプ43g/サイズφ31.6mm
価 格:199,500円(税込)
グラファイトデザイン DOKKE AM
サイズ:S、M、L
フレーム重量:1,300g(サイズM)
ディスクローターサイズ:φ160mm
シートポストサイズ:φ31.6mm
シートパイプサイズ:φ34.9mm
BBタイプ:BB幅73mm BC1.37(JIS)
ステム長(設計寸法):70mm
ヘッドパイプ外径/内径:OD 50mm/ID 44mm
MAXタイヤクリアランス:26×2.50
ヘッドパーツ:FSA Orbit Z
ボトルケージ数:1(ダウンパイプ)
Fディレーラータイプ/外径:ダウンスイング/φ34.9mm
シートクランプ:クイックリリースタイプ43g/サイズφ31.6mm
価 格:199,500円(税込)
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
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