2012/07/10(火) - 17:16
スイスで行われたプレスローンチで、いよいよ正式にその姿を現したマヴィックの次世代エアロホイール、コスミックCXR80。風洞実験を重ね、マヴィックがエンジニアリングの全てを結集して作り上げたCXR80のテクノロジーを詳しく掘り下げていく。
ひと通りCXR80ホイールシステムについての解説を受けた我々メディアは、風洞実験室の中へと案内された。実際にCXR80を使用してテストを行なってくれるという。中へ進むと、F1マシンや航空機などの開発に携わってきたことを証明する写真や模型などが誇らしげに飾られている。ここは世界中のエンジニア達が集まり研究を重ねる場所なのだ。
CXR80は、マヴィックがホイール供給を行うガーミンや、リクイガスチームからのリクエストを受けて開発が進められた。常に完璧が必要とされるプロからのリクエストは厳しく、「横風の中でもコントロールが容易な完璧なエアロホイール」というものだった。
常に吹きつける風を上手に後方へと流すことができないと、乱流、つまり空気抵抗が発生する。CXR80には、前方からはもちろん横方向からの風を受け流す性能と共に、快適で、安全な乗り味が求められた。
これをマヴィックは専用設計のエアロタイヤと、段差を埋めるリムフラップ、そして空気を受け流すために最適化されたリムシェイプをホイールそのものに持たせるという、"WTS"を進化させた「CX01テクノロジー」へと行き着いた。
さて、1つのホイールはタイヤ部分と、後ろ側のリム部分で2回風に当たる部分が存在する。そのためCXR80は、アメリカ航空局が提唱する「NACA0024」と、「NACA0011」という2つの翼断面形状に基づくものとされた。
タイヤとホイールを組み合わせた際、前側にはNACA0024形状を、そして後ろ側にはNACA0011形状に近づける仮想形状とし、ホイールのどの部分においても最適な形状となるようにデザインされた。
一般的なタイヤは円形断面のため大きな乱流を生み出していたが、イクシオンCXRは中央をやや尖った形状に。そしてサイドには細かなドットとスリットを設けることであえて小さな乱流を作り出し、その後方の空気の流れをスムーズにする工夫が取られた。タイヤサイズは近年プロレースのトレンドとなっている23cだ。
さらにリムとタイヤを完全に一体化させるラバー製のリムフラップ、CX01ブレードを設けることで微小な乱流までもを取り除く。ブレードはビードにエアロカバーを付けた構造をしており、ホイールとタイヤの隙間にはめ込むことで簡単に着脱が可能だ。
だがCX01ブレードはルール上UCIレースで使用が認められておらず、使用することができない。
そのためプロレースシーンではトライアスロンに特化したアイテムだが、「例えブレードを使用しない場合でも、ホイールとタイヤの組み合わせた際、ライバル製品よりもはるかに高いエアロ効果を発揮することが実証されているんだ」 とCXR80開発担当者のひとりは自信の表情で答える。
ブレードを外した状態のCXR80を選手たちがこぞって使用していることもその現れと言って良いだろう。
下に記した2つのグラフで見てみよう。CXR80の描く黄色の抵抗曲線は、どのヨー角においても、マヴィックがライバルとする2つのエアロホイールよりも下回ることが分かる。
左のグラフを見て欲しい。あるホイールがヨー角12°から抵抗が増え始めるのに対し、CXR80は抵抗の減少を続け、18°の方向から風を受ける際に最大の空気抵抗の差を生み出している。しかもヨー角14°~19°の範囲ではマイナスの値を示す(下右図)。つまり驚くべきことに、この角度から風を受けるとホイールは加速をするのだ。
現実的に高い可能性で起こりうるヨーアングル0~20°までの範囲で平均の値を取ると、ライバル製品に対して6.4Wセーブでき、距離40kmでは15秒、180kmのIM(アイアンマンディスタンス)では1分10秒の短縮が可能という。
そしてCXR80の描く抵抗曲線がライバル製品と比べ、緩やかなことにも注目したい。横風に対する抵抗値がゆっくりと変化することは、つまり安定したハンドリングを可能としているということ。CXR80はディープリムホイールの弱点である横風を制したホイールなのだ。
いくら机上の設計が優れていたとしても、実際に起こりうるシチュエーションで満足な結果を得ることができなければ意味を成さない。
CXR80はできる全てのテストを経て、プロチームでの実戦テストが重ねられてきた。そしてその中でのグランツールのチームのタイムトライアルで2勝を挙げた。この結果は単に選手の力が優れていただけではない。丸一日を掛けて説明を受け、そう感じた。
次のページは、ガーミン・バラクーダ(現ガーミン・シャープ)のデーヴィット・ミラーをゲストに迎えて行われた、テストライドの模様をお送りする。
ひと通りCXR80ホイールシステムについての解説を受けた我々メディアは、風洞実験室の中へと案内された。実際にCXR80を使用してテストを行なってくれるという。中へ進むと、F1マシンや航空機などの開発に携わってきたことを証明する写真や模型などが誇らしげに飾られている。ここは世界中のエンジニア達が集まり研究を重ねる場所なのだ。
ホイールとタイヤをトータルで捉えるWTSという考え
マヴィックは2011年に、ホイールのみならず、タイヤまで含めてトータルでの性能を追求する概念「WTS(ホイール・タイヤ・システム)」を発表した。従来切り離されていたホイールとタイヤをセットとし、さらに前後で専用のタイヤを使い分けることで新たな境地を開拓したのがこの考えだ。CXR80は、マヴィックがホイール供給を行うガーミンや、リクイガスチームからのリクエストを受けて開発が進められた。常に完璧が必要とされるプロからのリクエストは厳しく、「横風の中でもコントロールが容易な完璧なエアロホイール」というものだった。
常に吹きつける風を上手に後方へと流すことができないと、乱流、つまり空気抵抗が発生する。CXR80には、前方からはもちろん横方向からの風を受け流す性能と共に、快適で、安全な乗り味が求められた。
エアロ効果を最大限にするCX01テクノロジー
それでは、その空気抵抗の最大の発生源はどこにあるのか。それはホイールにあらず。前面から捉えた際にバイク全体の85%もの面積を占めるタイヤそのものと、タイヤとホイールとの接合部に生まれる小さな溝である。これをマヴィックは専用設計のエアロタイヤと、段差を埋めるリムフラップ、そして空気を受け流すために最適化されたリムシェイプをホイールそのものに持たせるという、"WTS"を進化させた「CX01テクノロジー」へと行き着いた。
さて、1つのホイールはタイヤ部分と、後ろ側のリム部分で2回風に当たる部分が存在する。そのためCXR80は、アメリカ航空局が提唱する「NACA0024」と、「NACA0011」という2つの翼断面形状に基づくものとされた。
タイヤとホイールを組み合わせた際、前側にはNACA0024形状を、そして後ろ側にはNACA0011形状に近づける仮想形状とし、ホイールのどの部分においても最適な形状となるようにデザインされた。
"エアロタイヤ"イクシオンCXR、CX01ブレード
CXR80に必要不可欠なのが専用タイヤの存在。大きな空気抵抗を生むタイヤとホイールをセットとして開発するという、今までに無いアプローチをすることで誕生したのがイクシオンCXRだ。一般的なタイヤは円形断面のため大きな乱流を生み出していたが、イクシオンCXRは中央をやや尖った形状に。そしてサイドには細かなドットとスリットを設けることであえて小さな乱流を作り出し、その後方の空気の流れをスムーズにする工夫が取られた。タイヤサイズは近年プロレースのトレンドとなっている23cだ。
さらにリムとタイヤを完全に一体化させるラバー製のリムフラップ、CX01ブレードを設けることで微小な乱流までもを取り除く。ブレードはビードにエアロカバーを付けた構造をしており、ホイールとタイヤの隙間にはめ込むことで簡単に着脱が可能だ。
だがCX01ブレードはルール上UCIレースで使用が認められておらず、使用することができない。
そのためプロレースシーンではトライアスロンに特化したアイテムだが、「例えブレードを使用しない場合でも、ホイールとタイヤの組み合わせた際、ライバル製品よりもはるかに高いエアロ効果を発揮することが実証されているんだ」 とCXR80開発担当者のひとりは自信の表情で答える。
ブレードを外した状態のCXR80を選手たちがこぞって使用していることもその現れと言って良いだろう。
幾多のデータに裏打ちされるCXR80の実力
一般的にホイールの空気抵抗は、風のヨーアングル0°、つまり完全な向かい風の際に大きく、ヨー角がついていく(横風になっていく)と一旦抵抗は小さくなり、更に増えると再び抵抗が増していく(右図参照)。下に記した2つのグラフで見てみよう。CXR80の描く黄色の抵抗曲線は、どのヨー角においても、マヴィックがライバルとする2つのエアロホイールよりも下回ることが分かる。
左のグラフを見て欲しい。あるホイールがヨー角12°から抵抗が増え始めるのに対し、CXR80は抵抗の減少を続け、18°の方向から風を受ける際に最大の空気抵抗の差を生み出している。しかもヨー角14°~19°の範囲ではマイナスの値を示す(下右図)。つまり驚くべきことに、この角度から風を受けるとホイールは加速をするのだ。
現実的に高い可能性で起こりうるヨーアングル0~20°までの範囲で平均の値を取ると、ライバル製品に対して6.4Wセーブでき、距離40kmでは15秒、180kmのIM(アイアンマンディスタンス)では1分10秒の短縮が可能という。
そしてCXR80の描く抵抗曲線がライバル製品と比べ、緩やかなことにも注目したい。横風に対する抵抗値がゆっくりと変化することは、つまり安定したハンドリングを可能としているということ。CXR80はディープリムホイールの弱点である横風を制したホイールなのだ。
風洞実験室でCXR80をテスト
風洞ではCXR80単体、またバイクへ取り付けた状態の2回、それぞれヨー角を変えながら実際に風を当てて数値を計測したが、抵抗曲線の値など、いずれも上記したデータと同じ結果を得ることができた。やはり実際にテストの現場を目の当たりにすると、講義で示された数値もより現実味を増して捉えることができる。いくら机上の設計が優れていたとしても、実際に起こりうるシチュエーションで満足な結果を得ることができなければ意味を成さない。
CXR80はできる全てのテストを経て、プロチームでの実戦テストが重ねられてきた。そしてその中でのグランツールのチームのタイムトライアルで2勝を挙げた。この結果は単に選手の力が優れていただけではない。丸一日を掛けて説明を受け、そう感じた。
次のページは、ガーミン・バラクーダ(現ガーミン・シャープ)のデーヴィット・ミラーをゲストに迎えて行われた、テストライドの模様をお送りする。
提供:アメアスポーツジャパン 編集/取材:シクロワイアード/So.Isobe