2011/08/12(金) - 14:09
プレゼンテーションにおいてSUPERSIX EVOのテクノロジーについて説明を受けた後、ジャーナリストたちは用意された各自のサイズのバイクでテストライドを行うべく走りだした。フィールドはイタリア・トリノ郊外の丘陵地帯。リクイガス・キャノンデールのライダーも同行してくれ、素晴らしい環境で一日フルに乗ることができた。
セットアップを済ませたバイクを手にすると、やはりその軽さが際立つ。市販製品だけでパーツ構成によっては6.4kg程度に収まることができるのはリクイガス・キャノンデールモデルが実証しているが、市販のマスプロバイクがこれだけ軽いのはなかなか衝撃的ではある。しかし、同時に不安感はやはり持ってしまう。
そして外観からは「細身だな」という印象を受ける。ヘッド周りもBBも、チューブ外形が大口径する最近の流れに逆らってスリム。ワイヤーケーブルの内蔵はリアブレーキ側のみ。目新しく映るルックスがないことでむしろクラシックな印象さえ受ける。
しかしスリムゆえに私の小さめの500mmサイズでも綺麗なシルエットになるのは嬉しい。これは小柄な日本人ユーザーにはウケる点だろうと感じた。
ライドにはリクイガス・キャノンデールのヤコポ・グアルニエーリとダニエル・オスが同行してくれる。こちらも楽しみ。
実は渡欧前に現行のSUPERSIX Hi-Modに1週間乗り込み、その違いも体感しようと意気込んできた。乗ってすぐに「別物だ」と感じた。
SUPERSIX Hi-Modはインプレッションでも芯のあるなかにしなやかさを備えた快適性が好評のバイクだ。しかしEVOは乗ってすぐ「シルキー」と感じるスムーズさを感じとることができた。
登りは、やはり重量の軽さが効いている。ヒョイヒョイと軽いペダリングで進む。これは比較対象にもよるだろうが、普段乗っているバイクと数百グラムの違いとなれば、その違いは体感せざるを得ない。トップチューブはホリゾンタルに近いわずかなスローピングだが、左右の振りも軽い。振ることがロスにならないので、ダンシングの助けにすることができる感覚がある。
フレームの剛性は高いが、あまり脚にくるような感じはしない。かといってたわむ感覚もない。そしてダウンヒルではフォークが非常に効果的に路面の微振動を取り去ってくれ、スムーズに下れる。このフルカーボンフォークはクラシックなフォルムの曲げ形状になっていて、フォークエンドがオフセットされている。CAAD10とほぼ共通の形状をしている。
CAAD10のテストライドでも感じたことだが、このフォークは非常に優秀だ。ダウンヒルでわざと路肩の「ローレット目」の上を選んで走っても、はじかれること無くいなしてくれる。フォークが前後に細かくブレてバイブレーションしているのが手に取るように判るが、横方向にはよじれないから安心して突っ込んでいける。
リアステーはシート周辺で二股のまま整形されるダブルステータイプになっている。しかも接合位置は横方向に広げられ、横剛性を高めようという意図がはっきり感じられる。チェーンステイは上下方向に扁平している。
これらの工作はクロスカントリーMTBの"FLASH"やシクロクロスモデルの"SUPER X"にも採用されていて、縦方向には振動をいなすが、横方向のたわみは抑える作用がある。それらはライドで体験してきたが、EVOはそのサスペンション効果が必要最小限に取り入れられていると感じた。荒れ気味のアスファルト上で、ペダルを踏み込んでなお加速できる楽しさは、EVOのライディングの醍醐味だ。
同行したリクイガス・キャノンデールのグアルニエーリとオスは、ふたりともスプリンター系の選手だ。まだEVOの供給は間に合わず、SUPERSIX Hi-Modに乗っていた。チームの中でもまだヴィンチェンツォ・ニーバリが乗り始めたばかりで、テスト用のプロトタイプバイクに何度か乗った程度だという。逆に完成したモデルの乗り心地の質問攻めにあってしまった。
ふたりは言う「待ち遠しいよ。チームではツールから使うことになる。「EVOは完全に違うと思う。僕たちプロは残念ながら規定重量の6.8kgまで400gもの錘(おもり)を付けなくっちゃならないんだよ!」
質量の少なさ、軽さから感じた脆さへの不安感は消え、逆にラフな扱いにも耐えるタフささえ感じるようになった。なにしろ一日じゅう、振動吸収性の高さを確かめるために路面の悪いところを見つけては振動試験よろしくバイクを痛め続けたのだから。
EVOはヒルクライムオンリーのバイクではなくオールラウンドなロードバイクだ。しかも非常にバランスの取れたロードレース向きのバイクだと思う。もちろんヒルクライムに有利な「695g」という数字に目が行くが、そこばかりが注目されると、逆に損をすることがあるのかもしれないと思った。
細身のシルエットはどこかクラシックなルックス
テストライドのため用意されたのはSUPEXSIX EVOのスラムRED&マヴィック・R-SYS仕様モデル。日本での販売はシマノ・デュラエース仕様が中心となるが、ほぼ欧州市販車の状態と言える。セットアップを済ませたバイクを手にすると、やはりその軽さが際立つ。市販製品だけでパーツ構成によっては6.4kg程度に収まることができるのはリクイガス・キャノンデールモデルが実証しているが、市販のマスプロバイクがこれだけ軽いのはなかなか衝撃的ではある。しかし、同時に不安感はやはり持ってしまう。
そして外観からは「細身だな」という印象を受ける。ヘッド周りもBBも、チューブ外形が大口径する最近の流れに逆らってスリム。ワイヤーケーブルの内蔵はリアブレーキ側のみ。目新しく映るルックスがないことでむしろクラシックな印象さえ受ける。
しかしスリムゆえに私の小さめの500mmサイズでも綺麗なシルエットになるのは嬉しい。これは小柄な日本人ユーザーにはウケる点だろうと感じた。
際立つ軽さとスムーズな乗り味
脚力別のグループに別れて、私とそのグループは丘陵の多い100kmコースに向かうことになった。コースには丘、平坦、ダウンヒル、荒れた路面などあらゆる状況が含まれているため「EVOが持っている性能はすべて判るよ」と同行する開発者のひとりがウィンクする。ライドにはリクイガス・キャノンデールのヤコポ・グアルニエーリとダニエル・オスが同行してくれる。こちらも楽しみ。
実は渡欧前に現行のSUPERSIX Hi-Modに1週間乗り込み、その違いも体感しようと意気込んできた。乗ってすぐに「別物だ」と感じた。
SUPERSIX Hi-Modはインプレッションでも芯のあるなかにしなやかさを備えた快適性が好評のバイクだ。しかしEVOは乗ってすぐ「シルキー」と感じるスムーズさを感じとることができた。
登りは、やはり重量の軽さが効いている。ヒョイヒョイと軽いペダリングで進む。これは比較対象にもよるだろうが、普段乗っているバイクと数百グラムの違いとなれば、その違いは体感せざるを得ない。トップチューブはホリゾンタルに近いわずかなスローピングだが、左右の振りも軽い。振ることがロスにならないので、ダンシングの助けにすることができる感覚がある。
フレームの剛性は高いが、あまり脚にくるような感じはしない。かといってたわむ感覚もない。そしてダウンヒルではフォークが非常に効果的に路面の微振動を取り去ってくれ、スムーズに下れる。このフルカーボンフォークはクラシックなフォルムの曲げ形状になっていて、フォークエンドがオフセットされている。CAAD10とほぼ共通の形状をしている。
CAAD10のテストライドでも感じたことだが、このフォークは非常に優秀だ。ダウンヒルでわざと路肩の「ローレット目」の上を選んで走っても、はじかれること無くいなしてくれる。フォークが前後に細かくブレてバイブレーションしているのが手に取るように判るが、横方向にはよじれないから安心して突っ込んでいける。
路面の微振動に効くマイクロサスペンション
そして乗り込むうちに判るのが、リア周りの振動吸収性の良さだ。ひび割れの多い荒れた路面で、その振動をうまく収束してくれる。コツコツくることがないスムーズさで、スピードが落ちることがないのだ。プレゼンテーションで説明を受けた「マイクロサスペンション効果」は確かに発揮されている。SUPERSIX Hi-Mod もスムーズなバイクだと感じたが、EVOのスムーズさは明らかに数段上を行っている。リアステーはシート周辺で二股のまま整形されるダブルステータイプになっている。しかも接合位置は横方向に広げられ、横剛性を高めようという意図がはっきり感じられる。チェーンステイは上下方向に扁平している。
これらの工作はクロスカントリーMTBの"FLASH"やシクロクロスモデルの"SUPER X"にも採用されていて、縦方向には振動をいなすが、横方向のたわみは抑える作用がある。それらはライドで体験してきたが、EVOはそのサスペンション効果が必要最小限に取り入れられていると感じた。荒れ気味のアスファルト上で、ペダルを踏み込んでなお加速できる楽しさは、EVOのライディングの醍醐味だ。
同行したリクイガス・キャノンデールのグアルニエーリとオスは、ふたりともスプリンター系の選手だ。まだEVOの供給は間に合わず、SUPERSIX Hi-Modに乗っていた。チームの中でもまだヴィンチェンツォ・ニーバリが乗り始めたばかりで、テスト用のプロトタイプバイクに何度か乗った程度だという。逆に完成したモデルの乗り心地の質問攻めにあってしまった。
ふたりは言う「待ち遠しいよ。チームではツールから使うことになる。「EVOは完全に違うと思う。僕たちプロは残念ながら規定重量の6.8kgまで400gもの錘(おもり)を付けなくっちゃならないんだよ!」
軽さの第一印象を上回るバランスの良さ
一日のライドを終え、非常にいい感想をもつことができた。一日の始まりは軽さの印象が飛び抜けたが、乗り込むうちに全体のバランスの高さに感心した。質量の少なさ、軽さから感じた脆さへの不安感は消え、逆にラフな扱いにも耐えるタフささえ感じるようになった。なにしろ一日じゅう、振動吸収性の高さを確かめるために路面の悪いところを見つけては振動試験よろしくバイクを痛め続けたのだから。
EVOはヒルクライムオンリーのバイクではなくオールラウンドなロードバイクだ。しかも非常にバランスの取れたロードレース向きのバイクだと思う。もちろんヒルクライムに有利な「695g」という数字に目が行くが、そこばかりが注目されると、逆に損をすることがあるのかもしれないと思った。
テスターのプロフィール
綾野 真
シクロワイアード編集長。
1967年生まれ。スポーツサイクリング歴30年。
ロードレーサーとしてはBR-2登録選手として走ったことがある。近年はロードレースには出ていないが、最近はグランフォンドやシクロスポルティフなど海外市民レースの開拓をテーマにしている。2011年はパリ〜ルーベ・チャレンジ市民レース、ロンド・ファン・フラーンデレン市民シクロ、グランフォンド・エディメルクスなどを完走。秋から春はシクロクロスを楽しみ、マスターズクラスで入賞数度。
キャノンデールが2010年モデルとして欧米のみで発表したフルカーボンのシクロクロスバイクSUPERXを愛車とする。2009年にCAAD10のテストライドも経験。渡欧前にSUPERSIX Hi-Modに乗り込んでからテストを担当。脚質はスプリンター系のオールラウンダー。
シクロワイアード編集長。
1967年生まれ。スポーツサイクリング歴30年。
ロードレーサーとしてはBR-2登録選手として走ったことがある。近年はロードレースには出ていないが、最近はグランフォンドやシクロスポルティフなど海外市民レースの開拓をテーマにしている。2011年はパリ〜ルーベ・チャレンジ市民レース、ロンド・ファン・フラーンデレン市民シクロ、グランフォンド・エディメルクスなどを完走。秋から春はシクロクロスを楽しみ、マスターズクラスで入賞数度。
キャノンデールが2010年モデルとして欧米のみで発表したフルカーボンのシクロクロスバイクSUPERXを愛車とする。2009年にCAAD10のテストライドも経験。渡欧前にSUPERSIX Hi-Modに乗り込んでからテストを担当。脚質はスプリンター系のオールラウンダー。
提供:キャノンデールジャパン 制作:シクロワイアード