2010/10/27(水) - 11:09
各バイクメーカーが販売する上位車種・フレームは、ここ10年でその素材を急速にアルミからカーボンへと変更してきた。現にハイエンドに位置するカーボンバイクに対抗しうる上位グレードを意識したアルミバイクは、全盛期にくらべると激減していると言って過言ではない。
たしかにカーボンは振動吸収性も高く、設計もより自由度が増した。かつてロードバイクの主流がクロモリからアルミへと変遷していったように、カーボンもまたロードバイクの新時代を謳うに相応しい素材と言えるのは確かだろう。
しかしクロモリがそうであるように、アルミにはアルミの妙味がある。今なおハイエンドなアルミバイク独特の乗り味を求める上級者がいるのもその証拠のひとつだ。
そしてこのような状況のなか、30年という年月に渡って独創的なアルミフレーム開発を行ってきたキャノンデールが、CAAD10を投入してきた。
「世界一軽量なアルミバイク」
「世界一の剛性バランスを持つアルミバイク」
「世界一快適なアルミバイク」
この3点を使命に掲げたCAAD10。素材に6069T6アルミを採用したフレームは重量1,130g。インストールされるCAAD10フルカーボンフォークの重量が390gで、フレーム&フォーク合計で1,520gと、言葉通り軽く仕上げられている。
横剛性を上げつつ縦方向に柔軟性を持たせたスーパーワイドトップチューブのほか、オーバーサイズダウンチューブ、左右非対称チェーンステー、デルタシートチューブ、鍛造ブレーキブリッジ、上下異径ヘッドベアリング、BB30など、これでもかと新しい技術がつぎ込まれている。
そして快適性は、マウンテンバイクのFLASHやコンフォートモデルのシナプスにも搭載される同社自慢の振動吸収マイクロサスペンション機構「SAVEステー」や、オフセットドロップアウトを採用したフルカーボン・テーパーフォークなどで獲得するとしている。
前作CAAD9に比べても、新たな試みと新たな技術が惜しみなく注ぎ込まれている。まさしく刷新されたアルミバイクがCAAD10だ。こうなると、その走りが気になるところ。
ちなみにCAAD10は完成車販売の際にコンポの違いで末尾の数字が変わる。シマノ105仕様なら5、アルテグラ仕様なら3、デュラエース仕様なら1になる。今回インプレッションに使用したのはアルテグラ仕様のCAAD10 3、リクイガスのイメージカラーであるグリーンを取り入れたモデルだ。それではインプレッションに入ろう。
スプリントもイケるし、ロングライドもイケる。まずキャノンデールがこのバイクで目指した「どんな用途にでも使える1台」であろうことが伺えた。
コーナリングもハードブレーキも満足できる。BB周りもかなりの上級者でもない限り剛性不足を感じないだろう。むしろこれ以上BB周りを硬くすると快適さを失うことにも繋がるので、このバイクには適した硬さだ。
驚くことにバックの振動吸収性が非常に高く、アルミバイクとは思えないほど衝撃を吸収してくれる。
快適なバイクというと「柔らかい」「もったりした」といったネガティブなイメージを持ちがちだが、このバイクは違う。ロードレーサーに必要な剛性感をしっかり備えつつ、その上で快適性を保持しているのだ。
クセのない走りで快適性能、レーシング性能ともに満足できるレベルのバイクに仕上がっている。ロードレース、グランフォンド、ロードツーリング...。何に使うにも適している。逆に言えば、何に使っても不満は出ないだろう。ここまでバランスの良いバイクはなかなかない。
何にでも使えるバイク……そういったことを目指したバイクは、中庸な性格を目指した結果、どの部分も平均以下、合格点以下になることが珍しくない。しかしCAAD10に関しては、どの点においても合格点以上のデキ。この完成度の高さは驚くべきだ。
しかも20万円弱から完成車が買えるという価格設定が嬉しい。もっとも、他社のバイクよりは、「アルミとしては価格が少し高め」で、これに類するモデルがあまりないために割高感を感じる人はいるかも知れない。シマノ105仕様の完成車アルミバイクで20万円というと、他のブランドなら少し予算を足せばカーボンバイクまで視野に入る値段帯だからだ。
しかしそれらを性能で見比べたとしても、間違いなくトップクラスの実力がある。逆にコストパフォーマンスがかなり高い1台だ。それに性能だけではなく、グラフィックの仕上げも美しく、見た目も満足できる。ここも重要なポイントだ。
そしてキャノンデールのラインナップのなかで性能の軸、基準となる走りを達成していると言えるだろう。
もしこれ以上にレーシーなほうがいいと思うならスーパーシックス、もっとコンフォートさを望むならシナプスを選べばいい。
CAAD10はすべての性能がレベルの高いところでまとまっているので、何にでも使える。まだ自分に適した走りやバイクが分からないといった人にもオススメしたい1台だ。
最初の1台はもちろん、自分の好みをまだ把握できていない状態なら、基準を作る意味でもオススメだ。
購入時のアドバイスとしては、ジオメトリーがスーパーシックスとほとんど同じであるため、ヘッドチューブが短めだ。もしコンフォート気味に乗りたい人なら、気持ち大きめのフレームを選ぶことで、ステムが高めに設定できるようにすればいいだろう。
しかしそれなのに、その走りにはCAAD9とは共通点がまったくない。これまでのキャノンデールのアルミらしさがない点に驚かされた。
CAAD4から続いた、あの曲がった形状が印象的なアワーグラスシートステーから変わり、SAVEシートステーを採用したことで振動吸収性の向上を図ったり、バックのたわみ感などを良い方向に変えてきている。
加えて後方にオフセットしたフロントフォークや、前三角の作り方も、従来とはまったく違うモノを採用してきたことも大きいだろう。
従来のCAADシリーズ、もといキャノンデールのアルミバイクすべてとは違う方向でまとめられ、高い快適性と走行性を強く押し出してきている。
アルミのバイクは“硬い”というイメージがどうしても強く、最近の風潮として「アルミバイクとしてはいい」などと、アルミというだけで評価が低く見積もられる傾向が、少なからずあるように思われる。しかしこのバイクは他のカーボンバイクと比較しても、CAAD10のほうが乗り心地がいい、と評価してもおかしくはない高いレベルに仕上がっている。
「この性能はもはや従来のアルミバイクの域を越えてしまった」そう思わせるほどだ。
ドラスティックなまでに変わった乗り心地の快適さ。それでいてアルミの反応の良さ、瞬発性を活かす剛性感などがしっかり保たれている点が優れている。CAAD10の特徴をまとめるとこうなる。キャノンデールらしく高い走行性能を有したクセがないバイクなので、使用用途は選ばないだろう。
それまでに理想と謳ってきたアワーグラスシートステーなど、長らく採用し続けてきたシステムを捨てることはなかなかできないことだったろう。アルミバイクを真剣に考えてきたキャノンデールにとって、CAAD10はかなり覚悟の要る決断を迫られた1台だったことは想像に難くない。
しかしキャノンデール開発陣はそれができたからこそ、CAAD10でここまで劇的な変化を得られたのだろう。そしてその英断のおかげで、とても10万円台から買えるバイクとは思えない性能のバイクに仕上がっている。対性能比でのコストパフォーマンスの高さは、市場にあるカーボンバイクを含めても有数のモノと言えるだろう。
CAAD10は素材だけではなく設計がいかに大切かということも再確認させてくれた。同時に、まだまだアルミの可能性を感じさせてくれた。同社の今後の展開が楽しみな1台だ。
たしかにカーボンは振動吸収性も高く、設計もより自由度が増した。かつてロードバイクの主流がクロモリからアルミへと変遷していったように、カーボンもまたロードバイクの新時代を謳うに相応しい素材と言えるのは確かだろう。
しかしクロモリがそうであるように、アルミにはアルミの妙味がある。今なおハイエンドなアルミバイク独特の乗り味を求める上級者がいるのもその証拠のひとつだ。
そしてこのような状況のなか、30年という年月に渡って独創的なアルミフレーム開発を行ってきたキャノンデールが、CAAD10を投入してきた。
「世界一軽量なアルミバイク」
「世界一の剛性バランスを持つアルミバイク」
「世界一快適なアルミバイク」
この3点を使命に掲げたCAAD10。素材に6069T6アルミを採用したフレームは重量1,130g。インストールされるCAAD10フルカーボンフォークの重量が390gで、フレーム&フォーク合計で1,520gと、言葉通り軽く仕上げられている。
横剛性を上げつつ縦方向に柔軟性を持たせたスーパーワイドトップチューブのほか、オーバーサイズダウンチューブ、左右非対称チェーンステー、デルタシートチューブ、鍛造ブレーキブリッジ、上下異径ヘッドベアリング、BB30など、これでもかと新しい技術がつぎ込まれている。
そして快適性は、マウンテンバイクのFLASHやコンフォートモデルのシナプスにも搭載される同社自慢の振動吸収マイクロサスペンション機構「SAVEステー」や、オフセットドロップアウトを採用したフルカーボン・テーパーフォークなどで獲得するとしている。
前作CAAD9に比べても、新たな試みと新たな技術が惜しみなく注ぎ込まれている。まさしく刷新されたアルミバイクがCAAD10だ。こうなると、その走りが気になるところ。
ちなみにCAAD10は完成車販売の際にコンポの違いで末尾の数字が変わる。シマノ105仕様なら5、アルテグラ仕様なら3、デュラエース仕様なら1になる。今回インプレッションに使用したのはアルテグラ仕様のCAAD10 3、リクイガスのイメージカラーであるグリーンを取り入れたモデルだ。それではインプレッションに入ろう。
インプレッション by 白川賢治(YOUCANリバーサイド店)
「高品位なレベルの完成度を誇るオールラウンドアルミバイク」
まずCAAD10の購入を考える人はアルミバイクということで「カーボンバイクより下のもの」と考えがちだが、まったくそんなことはなくて、カーボンバイクと同等、あるいは上に位置するバイクに仕上がっていると考えて欲しい。スプリントもイケるし、ロングライドもイケる。まずキャノンデールがこのバイクで目指した「どんな用途にでも使える1台」であろうことが伺えた。
コーナリングもハードブレーキも満足できる。BB周りもかなりの上級者でもない限り剛性不足を感じないだろう。むしろこれ以上BB周りを硬くすると快適さを失うことにも繋がるので、このバイクには適した硬さだ。
驚くことにバックの振動吸収性が非常に高く、アルミバイクとは思えないほど衝撃を吸収してくれる。
快適なバイクというと「柔らかい」「もったりした」といったネガティブなイメージを持ちがちだが、このバイクは違う。ロードレーサーに必要な剛性感をしっかり備えつつ、その上で快適性を保持しているのだ。
クセのない走りで快適性能、レーシング性能ともに満足できるレベルのバイクに仕上がっている。ロードレース、グランフォンド、ロードツーリング...。何に使うにも適している。逆に言えば、何に使っても不満は出ないだろう。ここまでバランスの良いバイクはなかなかない。
何にでも使えるバイク……そういったことを目指したバイクは、中庸な性格を目指した結果、どの部分も平均以下、合格点以下になることが珍しくない。しかしCAAD10に関しては、どの点においても合格点以上のデキ。この完成度の高さは驚くべきだ。
しかも20万円弱から完成車が買えるという価格設定が嬉しい。もっとも、他社のバイクよりは、「アルミとしては価格が少し高め」で、これに類するモデルがあまりないために割高感を感じる人はいるかも知れない。シマノ105仕様の完成車アルミバイクで20万円というと、他のブランドなら少し予算を足せばカーボンバイクまで視野に入る値段帯だからだ。
しかしそれらを性能で見比べたとしても、間違いなくトップクラスの実力がある。逆にコストパフォーマンスがかなり高い1台だ。それに性能だけではなく、グラフィックの仕上げも美しく、見た目も満足できる。ここも重要なポイントだ。
そしてキャノンデールのラインナップのなかで性能の軸、基準となる走りを達成していると言えるだろう。
もしこれ以上にレーシーなほうがいいと思うならスーパーシックス、もっとコンフォートさを望むならシナプスを選べばいい。
CAAD10はすべての性能がレベルの高いところでまとまっているので、何にでも使える。まだ自分に適した走りやバイクが分からないといった人にもオススメしたい1台だ。
最初の1台はもちろん、自分の好みをまだ把握できていない状態なら、基準を作る意味でもオススメだ。
購入時のアドバイスとしては、ジオメトリーがスーパーシックスとほとんど同じであるため、ヘッドチューブが短めだ。もしコンフォート気味に乗りたい人なら、気持ち大きめのフレームを選ぶことで、ステムが高めに設定できるようにすればいいだろう。
インプレッション by 西谷雅史(オーベスト)
「CAAD9とは別モノの仕上がり。勇気ある決断をした意欲作だ」
普段からプライベートのレースバイクにキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗っていることもあってか、違和感なく乗ることができた。ジオメトリが基本的にはCAAD9などと一緒なので、クセのない走りと、カーブでフラつかない剛性感など、キャノンデールの全体的な特徴がよく反映された作りになっているためだろう。しかしそれなのに、その走りにはCAAD9とは共通点がまったくない。これまでのキャノンデールのアルミらしさがない点に驚かされた。
CAAD4から続いた、あの曲がった形状が印象的なアワーグラスシートステーから変わり、SAVEシートステーを採用したことで振動吸収性の向上を図ったり、バックのたわみ感などを良い方向に変えてきている。
加えて後方にオフセットしたフロントフォークや、前三角の作り方も、従来とはまったく違うモノを採用してきたことも大きいだろう。
従来のCAADシリーズ、もといキャノンデールのアルミバイクすべてとは違う方向でまとめられ、高い快適性と走行性を強く押し出してきている。
アルミのバイクは“硬い”というイメージがどうしても強く、最近の風潮として「アルミバイクとしてはいい」などと、アルミというだけで評価が低く見積もられる傾向が、少なからずあるように思われる。しかしこのバイクは他のカーボンバイクと比較しても、CAAD10のほうが乗り心地がいい、と評価してもおかしくはない高いレベルに仕上がっている。
「この性能はもはや従来のアルミバイクの域を越えてしまった」そう思わせるほどだ。
ドラスティックなまでに変わった乗り心地の快適さ。それでいてアルミの反応の良さ、瞬発性を活かす剛性感などがしっかり保たれている点が優れている。CAAD10の特徴をまとめるとこうなる。キャノンデールらしく高い走行性能を有したクセがないバイクなので、使用用途は選ばないだろう。
それまでに理想と謳ってきたアワーグラスシートステーなど、長らく採用し続けてきたシステムを捨てることはなかなかできないことだったろう。アルミバイクを真剣に考えてきたキャノンデールにとって、CAAD10はかなり覚悟の要る決断を迫られた1台だったことは想像に難くない。
しかしキャノンデール開発陣はそれができたからこそ、CAAD10でここまで劇的な変化を得られたのだろう。そしてその英断のおかげで、とても10万円台から買えるバイクとは思えない性能のバイクに仕上がっている。対性能比でのコストパフォーマンスの高さは、市場にあるカーボンバイクを含めても有数のモノと言えるだろう。
CAAD10は素材だけではなく設計がいかに大切かということも再確認させてくれた。同時に、まだまだアルミの可能性を感じさせてくれた。同社の今後の展開が楽しみな1台だ。
キャノンデール CAAD10
フレーム | CAAD10 BB30 |
フォーク | CAAD10フルカーボンテーパーフォーク |
サイズ | 44、48、50、52、54、56、58(CAAD10 1のみ48、50、52、54、56、58、60、63) |
カラー | CAAD10 1、CAAD10 5:Black、RED CAAD10 3、フレームセット:GREEN、WHITE |
希望小売価格(税込み) | フレームセット149,000円 CAAD10 5(シマノ105仕様完成車)199,000円 CAAD10 3(シマノアルテグラ仕様完成車)269,000円 CAAD10 1(シマノデュラエース仕様完成車)399,000円 |
WEB | CAAD10製品詳細ページ(キャノンデール・ジャパンHP) |
インプレライダーのプロフィール
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
レースではキャノンデールスーパーシックスHI-MODを、そして日常の足にはフーリガンを愛用中。
サイクルポイント オーベスト
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
レースではキャノンデールスーパーシックスHI-MODを、そして日常の足にはフーリガンを愛用中。
サイクルポイント オーベスト
提供:キャノンデール・ジャパン 制作:シクロワイアード