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フェルト新時代を創るNEXARを国内インプレッション

国内ロケのインプレッションをお届けする新生フェルト・NEXAR(ネクサー)深掘りレポートVol.3。今回は上級グレードであるFRD完成車を借り受け、日本国内でテストを行った。

FRD完成車を借り受け、テストを行った。担当するのはニコー製作所の頼れるスタッフ、渡邊誉大さん。学生時代は学連レースを走った photo:Naoki Yasuoka

テスターとして迎えたのは、名古屋の名門ショップ「ニコー製作所」のスタッフであり、学生レーサー上がりという確かな脚と目を持つ渡邊誉大さん。そして同店の吉田幸司店長だ。

実のところ、試乗前、二人の表情には期待と同時に、どこか不安げな視線が混ざっていたことは否めなかった。「ぶっちゃけ、今のフェルトってどこを目指しているのかな?って疑問に思っていたんです」と吉田店長は明かす。親会社が二転三転し、ラインナップは絞られ、フェルトのイメージとは全く異なるスペインに本拠地を移した。ショッププロとしてブランドを案じるのは当然のことだった。

しかし、NEXAR FRDのメインテスターを担った渡邊さんが戻ってきたとき、その表情は遥かに明るかった。「エアロロードに乗っていることを、完全に忘れていました。とにかく走りがめちゃくちゃ軽い」。

「ザ・エアロロード」たるルックスを裏切る、NEXARの乗り味とは?二人のダイレクトな言葉をお届けする。

カテゴリーを飛び越える「走りの軽さ」

NEXAR FRD Dura-Ace Di2
(54サイズ、税込1,980,000円) photo:Naoki Yasuoka

「率直に、軽い。とにかく軽い。走りが驚くほど軽いんです。テストコースの登りに入った瞬間に『うおお!』って思いました」。その軽快さは、これまでのエアロロードが抱えていた宿命を過去のものにする感覚だったという。

「エアロロードというと、どうしても『登りでもたつく』とか『斜度が変わった時に踏み直さなきゃいけない』という先入観に囚われがちで、実際にそういうバイクも少なくないですよね。でも、NEXARにはそういったフィーリングが一切ない。エアロロードというカテゴリーを完全に飛び越えて、軽量オールラウンドバイクと遜色ない走りの軽さがあります。登りに入ってもインナーに落とすのをすっかり忘れていて、気づいたらアウターでガシガシ踏んでいました。バイクの振り自体もすごく軽い」。

通常、エアロロードは空力を稼ぐためにフレームのボリュームが増し、結果として剛性が高くなる。特にプロレーサーの使用を前提としたハイエンドグレードともなれば、アマチュアにとっては「硬すぎて踏み切れない」という壁に当たることも少なくない。「でもNEXARなら踏み抜ける」と渡邊さんは言う。

「それはおそらくですが、車重が軽いことと、前乗りのジオメトリーになっていることが大きく起因していそうです。今回は最高グレードのFRD完成車を試したので、ヴィジョンのMETRON 45 RSホイールが非常に軽いことも関係しているとは思います。それにしても、見た目はこれだけエアロ形状ですから、この走りには本当にびっくりしました。『アマチュアのためのバイク』と聞いていましたが、走りは完全にレーシングバイク。アマチュア向けというのは、あくまでジオメトリーの部分ですね。このギャップ、二面性がすごく面白いバイクだと感じます」

「エアロロードにありがちな、踏み切れない硬さが無い。この軽さはクラス超え」と評価する photo:Naoki Yasuoka

特にその走りが光るのが、平坦でスピードに乗せたまま、登坂区間へと突入するシチュエーションだ。

「これまでの硬いエアロロードでも緩斜面ならこなせるでしょう。でもNEXARは、本格的な勾配が始まってからもスピードの維持が楽。『さあ、ここから坂になるから踏み直すぞ』っていうタイミングがワンテンポ遅れてやってくるし、踏み直すときのあの“よっこらしょ感”が希薄なんです。登りに入っても早いリズムのまま、スタタッとこなせてしまう。だから登りに対しても気持ちが楽だし、攻めのテンションをずっと維持できる。速度を落とさずに処理していくようなアップダウンコースのレースなら、そんじょそこらのエアロロードと比べて、レース中の体力も、気持ちの余裕も、ずっと大きく違ってくるはずです」

「近くて高い」ジオメトリーの正体

75度に設定されたシートポスト。ゼロセットバックのポストと、ショートクランクを基準とする photo:Naoki Yasuoka
54サイズでスタックは558mm。ヘッドチューブ長だけで見ると140mm。レーシングバイクとしては極めて長めの設定だ photo:Naoki Yasuoka


300g切りを達成する専用ハンドル。ショートステムを基準とするが、スウィープ形状であるためレバー位置は表記よりも遠くなる photo:Naoki Yasuoka

新生フェルトがNEXARで打ち出した最大のトピックが「アマチュアライダーのために最適化した」という独自のジオメトリーだ。長いヘッドチューブや、独特なヘッド/シートチューブのアングル。これらは一見すると、これまでの常識とは一線を画するものだ。

「画像やジオメトリー表を事前に見たときは、結構クセがあるんじゃないかと感じていました。でも、パッと跨って乗ってみたら、そこまでの違和感がまったくないことに驚かされました。今回は試乗車のポジションのまま乗りましたが、自分の好みに合わせてしっかりと煮詰めていけば、もっと化ける予感がします。

特殊なジオメトリーだが「アマチュアライダーにとってはこれが正解と考えるべき」 photo:Naoki Yasuoka
そもそも、設計思想のターゲットがトップレーサーではなく、僕たちと同じアマチュアが乗るバイクであるならば、これが正解と考えるべきでしょう。例えシリアスなレース志向の方であっても、このくらい高めのハンドル位置って、別に悪じゃない。ガチンコでレースを走るときだって、極端に低い下ハンドルを持って戦闘体制を取るのって、実はかなり短時間ですから。

ここで、傍らで深く頷いていた吉田店長が口を開く。

「僕はね、乗ってみたら良いポジションにスポッとハマりましたよ。何も違和感がなかった。トップチューブがスローピングしているのでハンドルとサドルの落差はちゃんと出ているし、何よりフレームセットや完成車に標準でついてくる専用ステムがかなり低く設計されている。だから見た目のバランスも決して悪くないんですよ」

ポジションのハードルが下がった一方で、ハンドリングには独特の味付けがあると渡邊さんは続ける。

「ハンドリングに関しては、スパスパとイン側に切り込んでいける印象が強いですね。悪く言えば落ち着きがない、ピーキーと言えますが、いい意味で言えばクイック。他のバイクから乗り換えた瞬間だけは鋭さに驚くかもしれませんが、個人的には慣れの範疇です。ちなみに、試乗車はクリンチャーの28Cタイヤが装着されていて、路面の振動を少し拾いがちかな、という印象はありました。NEXARならではの走りの軽さを損なわないように、チューブレスの30Cあたりをセッティングしてあげれば、乗り心地とのバランスがバチっと決まりそうですね」

どこで使うか? ショップ目線でのリアルな最適解

では、この新生フェルトの第1作は、現在の群雄割拠のロードレースシーンにおいて、どのような立ち位置になるのだろうか。

「平均スピードが高いレースに。踏み出しの軽さが武器になるクリテリウムや、距離の短いトライアスロンには最適」 photo:Naoki Yasuoka

使い慣れた自前のホイールに換装してテスト。チューブレスタイヤとの相乗効果は抜群だった photo:Naoki Yasuoka
今、国内でレースバイクの中心といえば、スペシャライズドのTarmacや、キャノンデールのSuperSix EVOが王道として挙げられますよね。このNEXARは、そうした軽量オールラウンドバイクたちと渡り合える実力はありますが、ベストな使い方としては、もう少しハイスピード寄り、つまりアップダウンがそこまで険しくないコースを高速で走るような時に良いでしょうね。激坂と言われるような長いヒルクライムではなく、丘陵コースを飛ばして走るような方。平均スピードが高いレースや斜度の緩いヒルクライムを走る人には良いでしょう。

自分がレースで使うのであれば、一番投入してみたいのはクリテリウムですね。クリテって平坦レースだから、重量級のエアロロードが合う印象が強いんですが、国内レースは速度がガクッと落ちるコーナーが多く、激しい加減速の繰り返しなんです。だから硬いバイクだと脚が削られてキツくなってしまいますが、NEXARなら低速域からの踏み直しが軽いし、ハンドリングのキレ味が良いこともあって、コーナリングが得意な方ならそのたびに前に出てアドバンテージを稼いでいける。ストレートではそもそも空力が良いですから、絶対的なメリットしかない。

トライアスロンでの優位性も忘れてはいけませんね。アイアンマンのようなロングディスタンスであれば専用のTTバイクになりますが、ロードバイクで行われるオリンピックディスタンスでは大きな武器になります。国内のショートディスタンス大会は会場の敷地制約もあってコンパクトにまとめられていることが多いので、コーナーが多いし、タイトな登りが入ってくることも少なくない。ゴリゴリに踏んでいってリザルトを貪欲に求める、エリートカテゴリーの選手にはすごく良い選択肢になります」。

「自信を持って勧められるブランド」へ

このNEXARの登場は、ショップとして、フェルトに対するアプローチを大きく変える可能性を秘めているという。

「既存のどれとも似ていないバイクです。フェルトの気合いを感じました」と吉田店長は言う photo:Naoki Yasuoka

ポジション合わせ中のワンシーン。「パッと乗ってもポジションに違和感は全くなかった」 photo:Naoki Yasuoka
スタックとリーチ量が記載されていることが面白い。ユニークなジオメトリーに対するフェルトの自信が読み取れる photo:Naoki Yasuoka


「いわゆる『ザ・エアロロード』という見た目は理屈抜きにカッコいいですし、こういうバイクを好まれるお客さんはショップでも多いんです。でも、誰もがプロのような剛脚というわけではありません。見た目が好きで購入したものの、いざ乗ってみたら車体の硬さに身体が負けてしまって、結果的に自転車選びを失敗してしまった、という方も少なからずいらっしゃった。だからこそ、このNEXARの存在意義がある。エアロな見た目が大好きで、でも脚はピュアレーサーなマインドじゃないという一般ライダーが選んでも、このバイクなら気持ちよく速く走り続けられる。ショップとしても、本当に大手を振ってお勧めしやすいリアルなバイクが出てきてくれな、という印象ですね」。

テストを終え、終始広い視点でバイクを観察していた吉田店長が、総括として新生フェルトへの思いを語ってくれた。

「今回、私も少し乗らせてもらいましたが、個人的な印象として、フェルトはかなり尖った、他とは明らかに違うバイクを出してきたなと感じました。設計思想も、実際の乗り味も、既存のどれとも似ていない。それでいて全体のレベルが高いんです。全く『フツー』のバイクではないけれど、ハマる人にはもの凄くハマる。

最初に言った通り、フェルトは親会社がコロコロ変わってラインナップもどんどん減っていたから、本当に今大丈夫なの?って心配していました。でも、このNEXARというプロダクトを見て、触って、その不安は一気に吹き飛びましたね。

NEXARはブランド復権への強烈なマニフェスト。そんなことを感じるテストライドとなった photo:Naoki Yasuoka

もし今、お客さんから『フェルトが気になってるんですけど、どうですか?』って聞かれたら、僕は自信をもって『すごく良いブランドだし、面白いバイクですよ』って言えます。今回の実走テストと、磯部さんが実際にバルセロナのスペイン本社を見て、現地で聞いてきた熱いストーリーとが、自分の中で繋がりました。今回は最上位のハイエンドモデル(FRD)を試しましたが、走りが良いぶんセカンドグレード(PROやEXPERT)にも期待できています」。

混迷の時期を抜け出し、バルセロナという新たな地で競技の頂点へと舵を切った新生フェルト。彼らが放った第1弾「NEXAR」は、単なるカタログスペックの刷新ではない。日本の、そして世界のアマチュアライダーが本当に欲していた「速さと扱いやすさの黄金比」を具現化した、ブランド復権への強烈なマニフェストだった。
提供:ライトウェイプロダクツジャパン | text&photo:So Isobe