フルモデルチェンジしたシマノの最高峰MTBコンポーネント、XTR。その最後のピースとなるエンデューロ/トレイルペダル “PD-M9220”にフィーチャー。ワイドな踏み面を備えた新設計ケージによってペダリング効率を向上し、グラビティ系ペダルの新基準となるタフさと性能を兼ね備えた新型ペダルをDH日本チャンピオン・清水一輝選手らとともに掘り下げた。

シマノXTRペダル PD-M9220
シマノ初のフルワイヤレス電動化、そして更なるタフネスとスムースな変速を実現した新型XTR。ドライブトレイン、ブレーキ、ホイール、そしてXC向けペダルを一気呵成にリリースしたXTRの、最後のピースとなるのがエンデューロ/トレイルペダル“PD-M9220”だ。
過酷なライドが想定されるグラビティモデルとして堅牢なケージを備えつつ、従来モデルからケージデザインを一新。よりワイドなコンタクトエリアをもつプラットフォームの採用と、片面4本配置されたピンによって、クリップインしていないシーンでも安定したグリップと高いコントロール性を実現する。
シューズとの接触面積も大きく広げられ、ペダリング効率を向上。エンデューロのリエゾン区間でもパワーをロスすることなく効率的にペダルアップすることが出来る。

XTRグレードのケージ付ビンディングペダル“PD-M9220” (c)シマノ
より堅牢に設計されたケージは、岩や木の根などの障害物にペダルがヒットした時でも衝撃からビンディング機構を保護し、トラブルのリスクを低減。ベアリングシールも改良され、より長期間にわたって滑らかでガタつきの無い回転を維持できるよう進化した。
DH&エンデューロライダーにとっては待望の新型ペダルとなるPD-M9220。変化したポイントについて、清水一輝選手らとともに掘り下げた。

シマノ開発者を代表して新型XTRの質問に応える島田真琴氏(シマノセールス ) photo:Makoto AYANO 島田(シマノセールス):シマノとしては久々のトレイル用のペダルの刷新です。昨今のエンデューロレースは激しさを増しており、ライダーからの要求で「SAINT(セイント)のように頑丈かつ軽くて、グラウンドクリアランスを確保できるペダルが欲しい」という声が挙がっていました。
XTRペダル=PD-M9220は、クリートが嵌っていないときにもペダリングができることを狙ってピンつきとし、ケージによってビンディング機構が保護されている。XTRが謳っているRobust=堅牢であるトレイル用ペダルとしてデビューしました。

DHやエンデューロで使われてきたトレイルペダルPD-M8120(左)、SAINTペダルPD-M821(右) photo:Makoto AYANO
今までダウンヒラーに長らく使われてきたSAINTは、やや重量があり、ケージに厚みもあるため地面とのクリアランスが少なく、岩などの凹凸や木の根など障害物にぶつけやすかった。そしてエンデューロではペダルアップが求められるため、重量の軽さも求められます。ケージ前後に埋め込まれるピンはワッシャー(付属)を入れることで突出長を調整できるようになっています。
CW:清水選手もずっとSAINTを使ってきたかと思います。新しいXTRペダルはそれにとって変わるものですか? 使い心地の差は?

PD-M9220ペダルでダウンヒルを走る清水一輝 photo:Noriyasu Kato
清水:僕はDHだけでなくエンデューロにもSAINTペダルを使ってきました。ピンの有無を重視していて、例えば難しいセクションでペダルから足を外したときに滑らないことが重要です。SAINTはケージが大きく、ピンがあるため滑りいくいというメリットがありました。
PD-M9220でエンデューロを走り出してから、その使い勝手の良さにダウンヒルでも使うようになりました。SAINTに比べてケージが小ぶりであるものの、有効な踏み面の大きさではそれほど変わらないという感触があり、十分な捉えやすさがある。

PD-M9220ペダルについて語る清水一輝 日本ダウンヒル界の第一人者だ photo:Makoto AYANO
スピンドルの回転の良さも気に入っています。ペダルが軽く回ることはエンデューロでもDHでも重要です。また、回転部の構造が変わったので、長く使っても抜けたりガタがでないのではないかと期待しています。今までペダルによってはレース中に緩んだり抜けたりするトラブルも経験してきていますから。ピンにはワッシャーを使用せず、もっとも突出する状態で使っています。

ケージの前後にはピンを備え、アンクリップ時のグリップを高める photo:Makoto AYANO 
PD-M9220はスピンドルの固定方法や内部構造も刷新されたという photo:Makoto AYANO
島田:ほとんどの競技系ライダーはピンにワッシャーを入れずに使用しているようですね。PD-M9220はシャフト周りの固定構造や強度も見直されています。製造工程が増え、造りも良くなったことで回転抵抗も軽くなっています。ライダーとしてそれらの差を体感できているのはさすがプロですね。

清水一輝が愛用するXTRペダル PD-M9220 photo:Makoto AYANO
清水:もちろん片側−53gの軽量化も感じ取れます。PD-M9220は軽くて頑丈になっている。これならダウンヒルでも今後SAINTからXTRに替える人が増えると思います。

PD-M9220ペダルでエンデューロを走る清水一輝 photo:Noriyasu Kato
島田:ダウンヒルではレース中に切り株や岩にヒットしたりと、ペダルには想像を超える衝撃がかかることがあるんです。そんなストレスがあってもライダーを確実にフィニッシュまで到達させなければならないという使命がペダルにはあります。
ペダルの堅牢性は軽さとのトレードオフになりますが、シマノの基準は非常に高いところにあって、軽量化しつつも、ビンディング機構が破損したりケージが割れたりすることがない強度を確保してつくられています。トレイル/エンデューロ用ペダルなので激しいDHレースで使ったときにどうかは、これからの実戦での検証が必要です。

よりワイドなコンタクトエリアをもつプラットフォームを採用したPD-M9220
清水:新型XTRコンポはリアディレイラーのケージも短くでき(9-45Tスプロケットの場合)、そしてペダルも薄くなった。グラウンドクリアランスを稼げることはグラビティ系レースではとてもメリットがあります。
島田:選手は数ミリの差に敏感ですね。グラビティペダルの難しいところは、地面とのクリアランスを求めるためにペダルを薄くしたいが、薄くすると強度が下がり、耐久性も下がる。その兼ね合いのバランスをとることです。

強度を高めつつも薄さを追求したPD-M9220ペダル
清水:厚いペダルでは地面に当てないように丁寧に走ることになってしまうんです。僕のバイク(ジャイアントTrance X)にはリアエンドにFlip chip(スルーアクスル固定位置の変更機構)が備わっていて、BB高が数ミリ上がるように設定しています。薄いペダルにはそれと同じ効果があって、そのミリ+ミリの積み重ねでグラウンドクリアランス(地上高)を稼ぎ、ライディングで自信を持って攻められるセッティングを求めています。
あるいはペダルが薄くなったぶん、Flip chipでBB位置を下げて低重心にすることもできる。それらが勝利へのライディングを左右します。
CW:昨年のダウンヒル全日本選手権などをみても、0.2秒差でレースの勝敗が変わるので、無視できない差ですね。

マルチエントリーを実現した新型CL-MT001クリート photo:Makoto AYANO
ここでは同時にリリースされたCL-MT001クリートについて、その使い心地を訊いた。シマノとして約30年ぶりとなるSPDクリートのアップデートは、従来からの「つま先からかかと」というステップイン方法だけでなく「かかとからつま先」、そして「真上から踏み込む」ことでもステップインが可能なマルチエントリーを実現したことだ。グラベルでも新型クリートを使う永田隼也選手にも話を訊いた。

新型ペダルとクリートを使いこんだ清水一輝(左)と永田隼也(右) photo:Makoto AYANO
CW:おふたりとも新型クリートを使い込んでいるようですが、使い心地は今までのものとは違ったものですか?
清水:マルチエントリーになっていて、真上からのクリップイン動作に慣れないのですが、嵌ったか分からないうちにすでにビンディングされている感じがあります。素早くスムーズに入る。かかとからの動作は難しかった。
島田:すでにSPDペダルに慣れてしまっている人にとっては、真上から踏む動作自体が慣れないアクション。だから違いを実感しにくいという人が多いようです。SPD初心者ほど差が分かるというもののようです。
清水:あと、嵌った後の違いが実は大きいんです。ガタのない固定力が向上しています。以前のクリートだと嵌ってからも少し動いたのが、新クリートはガタが少なくなっている。そして「ペダリング中に外れやすいのでは?」と思っていたのと反対で、固定力が高い。それでいてエントリー方向が増えている。

エンデューロやグラベルで新型クリートを使い込んでいる永田隼也 photo:Makoto AYANO 永田隼也:もう慣れましたが、クリートの使用感は新鮮でした。SPD特有の「パチンッ」が無いから最初は戸惑いましたね。
「ニュルッ」とスムーズに嵌るので、嵌ったかどうか疑ってしまった。でも慣れるとどの角度からでも嵌るので、トレイルで足を外した後にペダルが嵌められなくてパタパタすることが無くなりました。ペダルにシューズを載せればすぐに嵌る。クリートの性能とあわせて新型ペダルは踏み心地が大きく向上していますね。バランスが良くなって、踏み替えがしやすいとも感じます。
清水:クリートが改良されたのが30年ぶりというのは凄いことだと思います。旧ペダルにも問題なく嵌る。いいですね。

前部がカットオフされ、路面との接触音が少なくなった photo:Makoto AYANO
島田:SPDクリートはすでに莫大な数が売れた製品で、既存ユーザーがあまりにも多いから規格を変更するのが難しいんです。技術陣が新しくしようとしても、すべてのユーザーがそれを受け入れてくれるようなメリットが上回らないと逆に問題となってしまう。今回の新クリートは、すべての人が交換・ランニングチェンジするにあたってのデメリットが無いんです。
歩いたときにカチカチという不快音がしなくなったのもあります。クリート前部が斜めにカットされた新形状になっているので、路面に擦りにくく、嫌な金属音が発生しにくいんです。これはスペックには表せない向上点です。

ダウンヒル/エンデューロ用SPDシューズ SH-GE700 photo:Makoto AYANO
島田:シマノのグラビティシューズは、アウトソールに「ペダルチャンネル」という前後方向の溝があり、ビンディングしていないときの収まりが良くなっています。嵌っていない状態でもペダリングすることができるんです。ソールがペダルを捉えやすい。新クリートは上から踏んでステップインできるので、足を外した状態からの再クリップインが素早くできます。今回ペダル側にピンが設けられたことで、非クリップイン状態でもペダルがソールを捉えてくれ、さらに踏みやすくなっています。

ソール中央にペダルのビンディング部が収まるペダルチャンネルを備える photo:Makoto AYANO
他の多くのシューズメーカーがアウトソールにソールメーカー製のものを採用しているのに対し、シマノのシューズはOEM(委託生産)ではなく、ソール含めた構成パーツほとんどが自社生産です。 そのためペダルに合わせた設計が可能になっています。

縦方向に強く、左右方向にはねじれるTOBAL機構搭載ソール photo:Makoto AYANO
「TORBALトーショナル・ミッドソール」と呼ぶ、ソールの内部に溝が切られており、3Dにねじれる構造になっているのもシマノ独自のソールの特徴です。3Dで動くことで、ペダルを踏んだときには縦方向に力が逃げず、横方向には逃げがある。ソールがサスペンションのように機能し、ダウンヒルを下っている最中の衝撃を消してくれる。クリップインしていないときにも安定したペダリングが可能です。

ペダルと統合設計されたシューズによりさらにメリットが増す
ラスト(足形)は世界中のライダーの数値の平均値に基づいた、ほとんどすべてのライダーにフィットするラストでつくられています。くるぶしやつま先を保護するプロテクション機能など、トレイルライドに最適化した設計も取り入れています。
シマノのMTBグラビティシューズは需要と供給のバランスにより、国内での取扱が無かった時期が一時的にありましたが、2年前から国内のMTBシーンの盛り上がりに合わせて販売を再開しています。 清水選手や永田選手をはじめトッププロにはより剛性の高い選手供給用モデル”HOT SEAT” を供給しています。それらはまだ国内での取り扱いは無いのですが、 今後のユーザーからの要望次第で国内展開することも視野に入れています。ご期待ください。
軽く、堅牢なエンデューロ/トレイルペダル、PD-M9220

シマノ初のフルワイヤレス電動化、そして更なるタフネスとスムースな変速を実現した新型XTR。ドライブトレイン、ブレーキ、ホイール、そしてXC向けペダルを一気呵成にリリースしたXTRの、最後のピースとなるのがエンデューロ/トレイルペダル“PD-M9220”だ。
過酷なライドが想定されるグラビティモデルとして堅牢なケージを備えつつ、従来モデルからケージデザインを一新。よりワイドなコンタクトエリアをもつプラットフォームの採用と、片面4本配置されたピンによって、クリップインしていないシーンでも安定したグリップと高いコントロール性を実現する。
シューズとの接触面積も大きく広げられ、ペダリング効率を向上。エンデューロのリエゾン区間でもパワーをロスすることなく効率的にペダルアップすることが出来る。

より堅牢に設計されたケージは、岩や木の根などの障害物にペダルがヒットした時でも衝撃からビンディング機構を保護し、トラブルのリスクを低減。ベアリングシールも改良され、より長期間にわたって滑らかでガタつきの無い回転を維持できるよう進化した。
DH&エンデューロライダーにとっては待望の新型ペダルとなるPD-M9220。変化したポイントについて、清水一輝選手らとともに掘り下げた。

XTRペダル=PD-M9220は、クリートが嵌っていないときにもペダリングができることを狙ってピンつきとし、ケージによってビンディング機構が保護されている。XTRが謳っているRobust=堅牢であるトレイル用ペダルとしてデビューしました。

今までダウンヒラーに長らく使われてきたSAINTは、やや重量があり、ケージに厚みもあるため地面とのクリアランスが少なく、岩などの凹凸や木の根など障害物にぶつけやすかった。そしてエンデューロではペダルアップが求められるため、重量の軽さも求められます。ケージ前後に埋め込まれるピンはワッシャー(付属)を入れることで突出長を調整できるようになっています。
CW:清水選手もずっとSAINTを使ってきたかと思います。新しいXTRペダルはそれにとって変わるものですか? 使い心地の差は?

清水:僕はDHだけでなくエンデューロにもSAINTペダルを使ってきました。ピンの有無を重視していて、例えば難しいセクションでペダルから足を外したときに滑らないことが重要です。SAINTはケージが大きく、ピンがあるため滑りいくいというメリットがありました。
PD-M9220でエンデューロを走り出してから、その使い勝手の良さにダウンヒルでも使うようになりました。SAINTに比べてケージが小ぶりであるものの、有効な踏み面の大きさではそれほど変わらないという感触があり、十分な捉えやすさがある。

スピンドルの回転の良さも気に入っています。ペダルが軽く回ることはエンデューロでもDHでも重要です。また、回転部の構造が変わったので、長く使っても抜けたりガタがでないのではないかと期待しています。今までペダルによってはレース中に緩んだり抜けたりするトラブルも経験してきていますから。ピンにはワッシャーを使用せず、もっとも突出する状態で使っています。


島田:ほとんどの競技系ライダーはピンにワッシャーを入れずに使用しているようですね。PD-M9220はシャフト周りの固定構造や強度も見直されています。製造工程が増え、造りも良くなったことで回転抵抗も軽くなっています。ライダーとしてそれらの差を体感できているのはさすがプロですね。

清水:もちろん片側−53gの軽量化も感じ取れます。PD-M9220は軽くて頑丈になっている。これならダウンヒルでも今後SAINTからXTRに替える人が増えると思います。

島田:ダウンヒルではレース中に切り株や岩にヒットしたりと、ペダルには想像を超える衝撃がかかることがあるんです。そんなストレスがあってもライダーを確実にフィニッシュまで到達させなければならないという使命がペダルにはあります。
ペダルの堅牢性は軽さとのトレードオフになりますが、シマノの基準は非常に高いところにあって、軽量化しつつも、ビンディング機構が破損したりケージが割れたりすることがない強度を確保してつくられています。トレイル/エンデューロ用ペダルなので激しいDHレースで使ったときにどうかは、これからの実戦での検証が必要です。

清水:新型XTRコンポはリアディレイラーのケージも短くでき(9-45Tスプロケットの場合)、そしてペダルも薄くなった。グラウンドクリアランスを稼げることはグラビティ系レースではとてもメリットがあります。
島田:選手は数ミリの差に敏感ですね。グラビティペダルの難しいところは、地面とのクリアランスを求めるためにペダルを薄くしたいが、薄くすると強度が下がり、耐久性も下がる。その兼ね合いのバランスをとることです。

清水:厚いペダルでは地面に当てないように丁寧に走ることになってしまうんです。僕のバイク(ジャイアントTrance X)にはリアエンドにFlip chip(スルーアクスル固定位置の変更機構)が備わっていて、BB高が数ミリ上がるように設定しています。薄いペダルにはそれと同じ効果があって、そのミリ+ミリの積み重ねでグラウンドクリアランス(地上高)を稼ぎ、ライディングで自信を持って攻められるセッティングを求めています。
あるいはペダルが薄くなったぶん、Flip chipでBB位置を下げて低重心にすることもできる。それらが勝利へのライディングを左右します。
CW:昨年のダウンヒル全日本選手権などをみても、0.2秒差でレースの勝敗が変わるので、無視できない差ですね。
マルチエントリーを実現したCL-MT001クリート

ここでは同時にリリースされたCL-MT001クリートについて、その使い心地を訊いた。シマノとして約30年ぶりとなるSPDクリートのアップデートは、従来からの「つま先からかかと」というステップイン方法だけでなく「かかとからつま先」、そして「真上から踏み込む」ことでもステップインが可能なマルチエントリーを実現したことだ。グラベルでも新型クリートを使う永田隼也選手にも話を訊いた。

CW:おふたりとも新型クリートを使い込んでいるようですが、使い心地は今までのものとは違ったものですか?
清水:マルチエントリーになっていて、真上からのクリップイン動作に慣れないのですが、嵌ったか分からないうちにすでにビンディングされている感じがあります。素早くスムーズに入る。かかとからの動作は難しかった。
島田:すでにSPDペダルに慣れてしまっている人にとっては、真上から踏む動作自体が慣れないアクション。だから違いを実感しにくいという人が多いようです。SPD初心者ほど差が分かるというもののようです。
清水:あと、嵌った後の違いが実は大きいんです。ガタのない固定力が向上しています。以前のクリートだと嵌ってからも少し動いたのが、新クリートはガタが少なくなっている。そして「ペダリング中に外れやすいのでは?」と思っていたのと反対で、固定力が高い。それでいてエントリー方向が増えている。

「ニュルッ」とスムーズに嵌るので、嵌ったかどうか疑ってしまった。でも慣れるとどの角度からでも嵌るので、トレイルで足を外した後にペダルが嵌められなくてパタパタすることが無くなりました。ペダルにシューズを載せればすぐに嵌る。クリートの性能とあわせて新型ペダルは踏み心地が大きく向上していますね。バランスが良くなって、踏み替えがしやすいとも感じます。
清水:クリートが改良されたのが30年ぶりというのは凄いことだと思います。旧ペダルにも問題なく嵌る。いいですね。

島田:SPDクリートはすでに莫大な数が売れた製品で、既存ユーザーがあまりにも多いから規格を変更するのが難しいんです。技術陣が新しくしようとしても、すべてのユーザーがそれを受け入れてくれるようなメリットが上回らないと逆に問題となってしまう。今回の新クリートは、すべての人が交換・ランニングチェンジするにあたってのデメリットが無いんです。
歩いたときにカチカチという不快音がしなくなったのもあります。クリート前部が斜めにカットされた新形状になっているので、路面に擦りにくく、嫌な金属音が発生しにくいんです。これはスペックには表せない向上点です。
シマノのグラビティ系シューズとのベストマッチ
ペダルとクリートの刷新。そしてシューズも製造しているシマノとしては、グラビティ系シューズとペダルを組み合わせて使ったときのインテグレーション=統合設計も考慮されているという。それらを組み合わせたときのメリットを島田さんに解説してもらった。
島田:シマノのグラビティシューズは、アウトソールに「ペダルチャンネル」という前後方向の溝があり、ビンディングしていないときの収まりが良くなっています。嵌っていない状態でもペダリングすることができるんです。ソールがペダルを捉えやすい。新クリートは上から踏んでステップインできるので、足を外した状態からの再クリップインが素早くできます。今回ペダル側にピンが設けられたことで、非クリップイン状態でもペダルがソールを捉えてくれ、さらに踏みやすくなっています。

他の多くのシューズメーカーがアウトソールにソールメーカー製のものを採用しているのに対し、シマノのシューズはOEM(委託生産)ではなく、ソール含めた構成パーツほとんどが自社生産です。 そのためペダルに合わせた設計が可能になっています。

「TORBALトーショナル・ミッドソール」と呼ぶ、ソールの内部に溝が切られており、3Dにねじれる構造になっているのもシマノ独自のソールの特徴です。3Dで動くことで、ペダルを踏んだときには縦方向に力が逃げず、横方向には逃げがある。ソールがサスペンションのように機能し、ダウンヒルを下っている最中の衝撃を消してくれる。クリップインしていないときにも安定したペダリングが可能です。

ラスト(足形)は世界中のライダーの数値の平均値に基づいた、ほとんどすべてのライダーにフィットするラストでつくられています。くるぶしやつま先を保護するプロテクション機能など、トレイルライドに最適化した設計も取り入れています。
シマノのMTBグラビティシューズは需要と供給のバランスにより、国内での取扱が無かった時期が一時的にありましたが、2年前から国内のMTBシーンの盛り上がりに合わせて販売を再開しています。 清水選手や永田選手をはじめトッププロにはより剛性の高い選手供給用モデル”HOT SEAT” を供給しています。それらはまだ国内での取り扱いは無いのですが、 今後のユーザーからの要望次第で国内展開することも視野に入れています。ご期待ください。
提供:シマノ、photo&text: Makoto AYANO