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マキシスのロードタイヤの進化は止まるところを知らない。前回インプレッションしたレーシングモデルの軽量モデルである"HIGH ROAD SL"がフルモデルチェンジを果たした。新たなケーシング構造を手に入れた新世代を、フォーチュンバイクの錦織店長が、2週間にわたり実地テストを行った。

第2世代へと進化したマキシス HIGH ROAD SL

マキシス HIGH ROAD SL photo:Naoki Yasuoka

日本で最もマキシスタイヤを熟知するショップ店長が、フォーチュンバイクの錦織大祐さん。錦織店長がマキシスのタイヤについて語る言葉は、長きに渡って各モデルを使用した経験、そしてマキシス本社や工場のスタッフたちとの密な交流に裏打ちされている。

錦織店長からみたマキシスの開発姿勢、そしてそのタイヤ自体が持つ魅力について語ってもらった前回の記事の取材時から約半月。マキシスから超軽量レーシングタイヤであるHIGH ROAD SLのモデルチェンジについてインフォメーションが届いた。

コンパウンドはそのままに、ケーシング素材と構造を変更したという新型HIGH ROAD SL (c)マルイ

とはいえ、モデルチェンジに際してマキシスより届いた情報は非常にシンプルなもの。ケーシングを170TPIから150TPIへと変更し、新たなターンアップ構造を採用することで耐パンク性能と転がり性能を向上させたという。

コンパウンドは第1世代と同じHYPR-S コンパウンドを引き続き採用し、トレッドパターンもスリックのまま。チューブレス、クリンチャーそれぞれに25C,28Cが用意され選択の幅が広がった。

重量はチューブレスは軽量化しつつ、クリンチャーモデルは微増(25Cが170g→175g、28Cが180g→190g)となっている。このモデルチェンジがもたらした変化とは一体どういったものか。錦織店長からクリンチャーモデルの25Cと28Cそれぞれに乗り込んだレポートが届いた。

プロフィール

マキシスを愛用するフォーチュンバイクの錦織大祐 photo:Naoki Yasuoka

錦織大祐さん(フォーチュンバイク)

東京都江東区亀戸に店舗を構えるフォーチュンバイク店主。マキシスの本社、工場ともに見学した経験もあり、本社スタッフとも交流を持つ。代理店のマルイを通じて意見交換を行うほどマキシスのタイヤに通じている。自身もマウンテンバイクタイヤのCrossmarkやHighrollerを愛用していたこともあり、お気に入りのブランドの一つにマキシスを挙げる。

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マキシス HIGH ROAD SLインプレッション by錦織大祐(フォーチュンバイク)

軽量クリンチャーの現在地とは

マキシスが満を持して送り出した新型HIGH ROAD SL (c)マルイ

まず、タイヤ自体のインプレッションに入る前に、軽量クリンチャータイヤを取り巻く状況について、少しまとめていこうと思います。

軽量さを売りにするクリンチャータイヤは以前から比較すると大幅に進歩しています。ただ軽いだけでグリップ感が乏しいモデルは市場から引退し、一定のグリップ力と軽量化を両立したモデルが増えました。

ヒルクライムに特化した秘密兵器としての軽量タイヤではなく、アップダウンのあるコースに総合的に順応できるタイヤであることが求められるようになっています。

新型HIGH ROAD SLのライバルは、そう多くないと、錦織店長は語る photo:Naoki Yasuoka

そうした観点で、HIGH ROAD SLの競合として比較検討すべきタイヤというのはそう多くありません。そもそも25mm幅で重量200g以下のレーシングタイヤという存在が、実は6モデルほどしかないのです。その中で、最新作と言える今回のHIGH ROAD SLはどういった走りを見せてくれるのでしょうか。

実測重量とタイヤ幅、そして空気圧について

まずは軽量タイヤのお約束(笑)、重量測定から。また、あわせて装着時の幅も計測しました。それぞれ、下記のようになっています。
700x25C
実測重量 173.1g(カタログ重量175g)
内幅19mmリムに装着した状態の実測幅 26.11mm
内幅21mmリムに装着した状態の実測幅 27.40mm
700x28C
実測重量 194.2g(カタログ重量190g)
内幅19mmリムに装着した状態の実測幅 28.32mm
内幅21mmリムに装着した状態の実測幅 28.98mm
(※タイヤ幅については、80PSI加圧後、72時間以上経過時点での数値)

25Cの実測重量は173.1g photo:Daisuke Nishikouri
25Cを内幅19mmリムに装着時の実測幅は26.11mm photo:Daisuke Nishikouri
25Cを内幅21mmリムに装着時の実測幅は27.40mm photo:Daisuke Nishikouri


28Cの実測重量は194.2g photo:Daisuke Nishikouri
28Cを内幅19mmリムに装着時の実測幅は28.32mm photo:Daisuke Nishikouri
28Cを内幅21mmリムに装着時の実測幅は28.98mm photo:Daisuke Nishikouri


25Cで175gというのは間違いなく最軽量クラスです。カタログ値で170g表記の商品でも実測は172~175gぐらいの幅があるので、新ハイロードSLの25Cタイヤもまた、そのクラスに存在しています。前モデルはカタログ重量で170g、実測では175g弱の個体が多かったのですが、軽量タイヤはある程度の重量差があるものですので、ターゲット重量を実現しているのは間違いありません。

28Cでも実測194.2gと、200gを切っているのは強いですね。軽い28Cタイヤというのは、ホビーライダー目線だとかなりオイシイ立ち位置で、走りの軽さと、グリップの掴みやすさ、そしてエアボリュームによる振動減衰といった性能が全部手に入ります。トレッドが薄くなる分、寿命が減るのは事実ですが、カリカリのレーシングタイヤと同程度のライフスパンではあるので、練習量が多くないライダーにとってはむしろちょうど使い切りやすいとも言えます。

非常に高精度な造りはマキシスの大きな美点 photo:Naoki Yasuoka

実測幅については、どちらも72時間置いた後の数値ですが、使っていくうちにもう少し太くなりそうな印象です。22mm幅リムであれば、実使用では30mm程度になるのではないでしょうか。その辺りは他のブランドと変わりません。

今回25Cタイヤは5.1気圧、28Cタイヤは4.5気圧でテストを行いました。どちらもメーカー推奨圧より少ないセッティングですが、体重62kg/バイク重量8.0kg/リム内幅21mmという条件では、この辺りが感触を評価しやすいと個人的に感じました。どちらのサイズももう少し空気圧を下げてもリム打ちの不安などは感じませんでしたね。

出先でも確実に作業できる装着しやすさは大きなメリット photo:Naoki Yasuoka

また、タイヤ自体の精度が非常に高いのはマキシスらしいポイントです。タイヤの脱着作業も硬すぎず、緩すぎない絶妙な塩梅です。出先でパンク修理が必要になった時でも確実に作業出来るかどうかは、タイヤ選びにおいて無視できない要素だと思いますね。

ただの軽量タイヤに非ず。実戦的な性格のオールラウンドレーシングタイヤへ

軽さと安定感が同居する。マキシスの歩みの集大成とも呼べるレーシングタイヤ photo:Naoki Yasuoka

まず最初に驚いたのがチューブレスタイヤに匹敵するような路面への追従感です。軽量なレーシングタイヤの傾向として、大なり小なりピーキーで接地感の最後にちょっとコリッとした芯を残すような感触になることが多いですが、HIGH ROAD SLはあくまでしなやかで路面をしっかり掴んでいることが伝わってきます。

第1世代のHIGH ROAD SLは軽くシャープな乗り味が印象的でした。一方、ノーマルモデルのHIGH ROADは、コンパウンドとケーシングのバランスが良く、しっとりと連続的に路面を捉え続けるような感触が強かった。

この第2世代のHIGH ROAD SLは、その両者の良い所を併せ持っていると言えばよいでしょうか。なんの引っかかりもない初動から、スルスルとスピードが乗っていく感覚は軽量タイヤそのもの。一方、安定感も特筆モノ。この軽さでありがら、不安に感じるような挙動は一切見せず、乱暴なペダリングでもスムーズにスピードへと繋げてくれるタイヤは初めてです。

タイヤの動きを把握しやすく、コーナーで倒しこんでも安心。非常に深い限界点と引っかかりのない旋回性能。 photo:Naoki Yasuoka

タイヤの動きを把握しやすく、コーナーで倒しこんでも安心できる。オフロードタイヤでマキシスが評価されている良さは、ロードタイヤにおいても発揮されています。新しいHIGH ROAD SLはその安心感がより強く感じられるようになり、コーナーの限界点を深くしつつも、スムーズな旋回性能をバランスさせることで、トータルで速いタイヤへと進化しています。ただ軽いだけでなく、加減速、急なアクションを求められる実戦において、真に実用的な一本です。

今回は梅雨時期ということもあり、短時間ですがウェット路面でもテストしてみました。そこまで攻めた走りをしたわけではないですが、レインコンディションでもグリップの感触に差異が出ないのは、マキシスの強みだと改めて感じました。

ウェット路面でもトラクションを把握しやすい photo:Naoki Yasuoka

28Cを選べば、より巡航が楽になりますね。太いのに軽いので、少しタレても上げなおしやすいのは嬉しいです。振りが軽い、非エアロなバイクにあえて組み合わるとサーキットエンデューロなんかは楽になるんじゃないでしょうか。

太くなることで、25Cよりも挙動が遅く感じるのではないかと予想していましたが、決してそんなことも無く。それ以上に、振動吸収の要素をワイドリムと28C以上のタイヤを前提として設計されている現代のレーシングバイクとのマッチングの良さは絶大なメリットになるでしょう。チューブレスも期待大ですね。

マキシスロードタイヤのメルクマールとなる一本


マキシスロードタイヤのメルクマールとなる一本 photo:Naoki Yasuoka

この新型HIGH ROAD SLの登場によって、マキシスロードタイヤの「特徴」が遂に完成したと感じます。人気のあるロードタイヤのブランドには、それぞれ独自の方向性があるのは、いろいろなブランドのタイヤを使ったことがある方にはわかってもらえると思います。例えば、ヴィットリアならしなやかさと真円度の高さ、コンチネンタルなら転がり抵抗の軽さと耐パンクのバランス、ミシュランならモチッとしたコンパウンドグリップの圧倒的な高さ、パナレーサーなら反応性の俊敏さ、といったように。

このタイヤが「これはGP5000っぽくなったな」 とか「転がり抵抗が大きく下がったよ、速いよっていうだけで、操作感がこれまでより損なわれていたり、ピーキーさが際立つ変更になったな」という感じなら、僕はがっかりしていたはずです。それを遠慮して言わないなんてこともなかったと思います。そこは忖度しないので(笑)。

マキシスのタイヤに求めていたものが、最高の形で返ってきた。それが新しいHIGH ROAD SL。 photo:Naoki Yasuoka

コンパウンドとケーシングのバランスからくる素直な反応と絶対的な安心感は、僕がマキシスのタイヤに求めていたものでした。こういうタイヤを作るために今まで走ってきたんだね、と感慨深い気持ちになるほどです。

マキシスなんだから、コーナリングで怖いタイヤにはならないはず。マキシスなんだから、精度や明確な弱点を放置したようなものは出さないはず。という信頼と期待感(勝手な押しつけですが笑)を「あったりまえだろ!まかせろや!」と言わんばかりに、最高の、そして新たなパフォーマンスでアンサーしてくれた感じが素晴らしいですね。

マキシス High Roadシリーズ

マキシス HIGH ROAD SL photo:Naoki Yasuoka

HIGH ROAD SL(チューブレスレディ)

サイズカラー重量税込価格
25C
28C
ブラック250g
280g
12,100円

HIGH ROAD SL(クリンチャー)

サイズカラー重量税込価格
25C
28C
ブラック175g
190g
10,780円
提供:マルイ 制作:シクロワイアード編集部