2023/12/13(水) - 18:13
ジャイアントが誇るエンデュランスロードがDEFY(ディファイ)だ。ロングライド派サイクリストに愛され、支持されてきたモデルが第5世代として生まれ変わった。この特集では新型DEFYの走りを2人のサイクリストが徹底的に掘り下げる。ジャイアントが描くエンデュランスロードの現在とは。
毎年発表される新作バイクの数々。話題性をさらうマーケティングで目を惹くものはあれど、「こんなバイクが欲しかった!」と心から思える一台に巡り合うことは稀。しかし2024年モデルとして新世代に生まれ変わったDEFY(ディファイ)はその一台かもしれない。トレンドセッターたるジャイアントがこのモデルで示すエンデュランスロードの設計思想とスタイリング、そして走り。これは2020年代後半のロードサイクリングのあり方を定義するものだ。
その反映のスピード感は他ブランドを圧倒するもので、必要と判断されたフィーチャーはすぐに実装され、製品としてリリースされる。今日のジャイアントを象徴するものは、製品の価格帯ではなく、トレンドセッターとしての先進性である。
具体例を挙げよう。2023年では当たり前になったロードバイクのディスクブレーキ化とチューブレスタイヤ。ジャイアントがディスクブレーキ専用バイクを発表したモデルイヤーは2015年。この10年ロードサイクリングを楽しんでいる方なら、2014年(2015イヤーモデル発表時)にディスクブレーキ専用に割り切った市販ロードバイクがほぼ存在しなかったことを思い出せるだろう。かように、他社に先立って、あるいはイノベーターとしての自負がそうさせるのかもしれないが、まだマーケットのない分野に果敢に切り込み、ロードサイクリングのあり方を提示するのがジャイアントというブランドだ。
そしてこの2015年モデルでディスクブレーキ専用車として発表されたのが、このとき第3世代にモデルチェンジしたDEFYだった。今日になって振り返ると、「エンデュランスロード」であるDEFYに真っ先にディスクブレーキを搭載したことは全く正しかったと言える。まだロードレースにおいてはUCIの認可が下りていなかった時代。競技ではなくロングライドや日々のサイクリングに主眼を置いたDEFYだからこそ搭載できた事情もあろうが、何よりジャイアントがこうしたサイクリングを楽しむユーザーのことを第一に考えていたということでもある。
最初にDEFYが登場したのは2009年モデルだから、すでにその歴史は15年を誇るロングセラーだ。ジャイアントが誇るレースバイク、TCRの対になる「エンデュランスロード」として、レース志向の強くないライダーが乗り心地の良さとともにロードサイクリングを楽しめるバイクとして誕生した。
2012年モデルで第2世代となり、ジャイアントが誇るオーバードライブ2(OD2)規格を採用。上側に1-1/4インチ径、下側に1-1/2インチ径のヘッドセットベアリングを採用することでステアリングの剛性を獲得。バイクが持つ快適性というキャラクターと、TCRよりも軽量な車体、さらに上位グレードAdvanced SLの登場によって、パリ〜ルーベに代表される北のクラシックレースでワールドツアーチームが使用するまでになった。
第3世代の2015年モデルでは前述の通りディスクブレーキ専用設計にリファイン。さらに、シートポストにこれまでシクロクロスバイクのTCXに採用されていた「D-Fuse」を採用。さらなる快適性を得た。
2019年モデルの第4世代では、さらにハンドルバーの快適性を追求。「D-Fuse」テクノロジーをハンドルにも採用し、さらなる乗り心地の良さやライダーの疲労感低減を目指した。フレームも最大タイヤ幅35mmまでの仕様となった。発表当初は28Cタイヤをアッセンブルしていたが、2020年モデルからは32Cタイヤを標準装備。ワイドタイヤ・ロードバイクとしての立ち位置を示した。
こうして見てみると、「エンデュランスロード」という概念の時代の変遷が感じられるが、この間にジャイアントのレースバイクはTCRのほかに、エアロロードのプロペルも加わり、より細分・先鋭化した。これによりDEFYのターゲットは「レース志向ではないライダー」と明確になる。
ただし「レース志向ではないライダー」=ゆっくり走るライダー、を意味しない。日本語では「サイクリング」というとどうしてもゆったりペースのライドが想定されるが、英語圏での本来の意味はよりスポーティだ。非日常に至るロングライドや、いくつもの峠を超えるチャレンジングなライド、あるいはクラブの仲間とのファストラン。近所の1時間のライドであっても自分なりのいいペースで走って爽快感を覚えるもの。DEFYがターゲットとするのは、こうしたロードバイクの快走感や走行性能を存分に味わいたいライダーだ。
レースを主眼に置くと、やれ重量だ、やれエアロだと、数値的な要件に焦点が行きがちであるが、ジャイアントはこの新型DEFYで数字的なフィーチャーを前面に打ち出していない。細かな数字よりも、乗ればわかる、と言わんばかりなのだ。ある意味でこのバイクを選ぶライダーを信用しているともとれるが、その裏で着実なバイクの進化を達成しているのも事実。数字的なフィーチャーと数字に表れないフィーチャーの両方の視点から、この新しいDEFYを見てみよう。
第5世代、2024年モデルとしてフルモデルチェンジを果たしたDEFY。整流効果が期待できそうなヘッド周りやボリュームのあるBB周り、ドロップドシートステイといったフレーム造形は、レースバイク然とした佇まい。落ち着いた近年のジャイアントらしいカラーリングとスタイリングもあって、上質で洗練されたロードバイクという印象をもたらす。
あるいはギミックに頼らない開発姿勢もそれに寄与しているかもしれない。快適性を重視したエンデュランスロードと呼ばれるカテゴリーの各社のバイクを見ると、サスペンション機能であったり、異素材を採用していたりとバイクの外観にも変化が現れる。ジャイアントはあくまでロードバイクのシンプルさを損なわずに、高い快適性を確保したDEFYを生み出した。ギミックの採用は好き嫌い分かれるところだが、美的観点のみならず、シンプルな作りゆえに故障のリスクを負わなくて済むのはメリットだろう。
それではどのようにして、DEFYは自身の宿命である快適性を担保するのか。それはやはり、DEFYの代名詞とも言える「D-Fuse」テクノロジーだ。D型断面の形状が特徴のハンドルとシートポストである。
前世代モデルからハンドルバーとシートポストの両方に搭載されていたD-Fuseを、今回のモデルチェンジに伴いそれぞれ進化させた。D-Fuseハンドルバーは第2世代、D-Fuseシートポストは第3世代となる。ハンドルとシートポストはともにライダーとバイクの接点に極めて近い(ハンドルは時として直接触れる)箇所。ここの振動吸収性に着目したのは慧眼といえるが、まず何と言ってもシートポストが大きく生まれ変わった。
Advanced Pro以上のグレードに標準装備される新型D-Fuseシートポストは、ヤグラ部分にかけて大きくベンドするようになった。路面からの衝撃によって、最大で7mmしなる設計で高い振動吸収性を獲得している。フレームと合わせた総合的な柔軟性では、先代のADVANCED PROよりも42%優れるというテスト結果が確認されている。Advanced SLグレードのバイクにアッセンブルされるD-Fuse SLRシートポストは155gと軽量さに磨きをかけている。
ハンドルも進化した。D-Fuseのハンドルバー CONTACT SLR、SLのトップ部(D型断面)の形状変更により、前世代より40%も柔軟性がアップしている。新型ではドロップ部が8°外側にフレアするようになったことも見逃せない。ロードレースシーンでも流行中のフレアハンドルは、ドロップ部を握ったポジションでのバイクコントロールに余裕が生まれ、ロングライド時の安全にもつながる。
前モデルよりも「D」形状がやや楕円形状へと変更となったが、これにより縦方向の振動吸収性を高め、ブラケット部分への衝撃を和らげる。手のしびれや疲労感低減に一役買う一方で、ドロップ部分を握って力を入れた時は横方向にはたわまない剛性設計になっており、パワーを掛けてもがいた時や高速巡航時には力が逃げないという。
コックピット周りにもジャイアントの考えるエンデュランスロードの思想が反映されている。ケーブルの配線をこれまでの上側ではなく、CONTACT SLR/SL AEROLIGHTステムを使用することでケーブルをステム下側に沿わせる方式へ変更。フル内装、あるいはほぼ内装レベルのクリーンさを手に入れた。これは近年ロングライド派のサイクリストが多く愛用するフロントバッグ等の装着を容易にするメリットもある。
また一体型ハンドルを不採用とすることで、乗り込む中で変化するポジション変更にも細かくアジャストが可能。ロングライドにおける自身最良のポジション探しもまた楽しいものだが、その過程をサポートしてくれる。ライダーに寄り添うバイクだといえよう。
標準でアッセンブルされるタイヤが32CであることもDEFYの性格を良く表している。当初は28Cだった第4世代においても、2020年のマイナーアップデートから許容幅に近い実測34mm幅となる32Cタイヤが標準となった。それが今回の第5世代になり、最大タイヤ幅は38mmにまで拡大を遂げた。
現在のロードレースシーンの主流が28Cであることを考えると、32Cの採用は明確に路面からの振動緩和や快適性向上を狙ったものだ。チューブレス化の恩恵を受け、低圧での運用が可能になった。ロングライドには欠かせないフィーチャーといえる。フレームは太いタイヤの装着を前提としたジオメトリーを採用しており、このあたりも抜かりない。現在では32C を飲み込めるレースバイクも増えてきているが、無理に太いタイヤを履くとレースバイク特有の軽快感がスポイルされることも少なくない。
さて、太いタイヤを履くエンデュランスロードと聞くと必然的に重量増が想起されるが、トップグレードのADVANCED SLグレードのフレーム重量はMサイズで785g。前世代より20%の軽量化を果たし、フロントフォークも345gと15%の軽量化を達成しているという。完成車の参考重量として最上級グレードとなるADVANCED SL0のSサイズで7.0kg、アルテグラDi2を搭載するADVANCED SL1はMサイズで7.3kg、105Di2で組まれるADVANCED PRO1で7.7kgに収められている。十分にロードバイクの軽快さを期待できる重量だといえよう。
新型DEFYにはジャイアントの考えるロードサイクリングのヴィジョンが詰め込まれている。サイクリングは機材スポーツである以上、レース至上主義から脱するのが難しいマーケットではあるが、現実的にはレースをしないライダーが大多数を占めるのも事実。ジャイアントは彼らのためのバイクをここに定義する。
DEFYが誇る数々のフィーチャーは、果たして実際のライドでどう機能するのか。次ページでは元プロライダーと一般ライダーの二人の視点から、実走インプレッションをお届けしよう。元プロライダーをして「欲しい」と言わしめた新型DEFYの実力と、このバイクが描くサイクリングのあり方についてそれぞれ意見を出し合った。
毎年発表される新作バイクの数々。話題性をさらうマーケティングで目を惹くものはあれど、「こんなバイクが欲しかった!」と心から思える一台に巡り合うことは稀。しかし2024年モデルとして新世代に生まれ変わったDEFY(ディファイ)はその一台かもしれない。トレンドセッターたるジャイアントがこのモデルで示すエンデュランスロードの設計思想とスタイリング、そして走り。これは2020年代後半のロードサイクリングのあり方を定義するものだ。
革新を続けるジャイアントのスピード感
台湾発の総合ブランドであるジャイアントは、文字通り世界の自転車界における巨人だ。コストパフォーマンスに優れるスポーツバイクを展開する一方、ツール・ド・フランスに代表される世界のトップレースシーンに供給を行い、プロ選手やスタッフからのフィードバックを反映してきた。その反映のスピード感は他ブランドを圧倒するもので、必要と判断されたフィーチャーはすぐに実装され、製品としてリリースされる。今日のジャイアントを象徴するものは、製品の価格帯ではなく、トレンドセッターとしての先進性である。
具体例を挙げよう。2023年では当たり前になったロードバイクのディスクブレーキ化とチューブレスタイヤ。ジャイアントがディスクブレーキ専用バイクを発表したモデルイヤーは2015年。この10年ロードサイクリングを楽しんでいる方なら、2014年(2015イヤーモデル発表時)にディスクブレーキ専用に割り切った市販ロードバイクがほぼ存在しなかったことを思い出せるだろう。かように、他社に先立って、あるいはイノベーターとしての自負がそうさせるのかもしれないが、まだマーケットのない分野に果敢に切り込み、ロードサイクリングのあり方を提示するのがジャイアントというブランドだ。
そしてこの2015年モデルでディスクブレーキ専用車として発表されたのが、このとき第3世代にモデルチェンジしたDEFYだった。今日になって振り返ると、「エンデュランスロード」であるDEFYに真っ先にディスクブレーキを搭載したことは全く正しかったと言える。まだロードレースにおいてはUCIの認可が下りていなかった時代。競技ではなくロングライドや日々のサイクリングに主眼を置いたDEFYだからこそ搭載できた事情もあろうが、何よりジャイアントがこうしたサイクリングを楽しむユーザーのことを第一に考えていたということでもある。
歴代DEFY 15年の歩み
新型DEFYのフィーチャーをつぶさに確認する前に、足早にこのDEFYというバイクがジャイアントブランドにおいてどんな意味を持つのか。どんなユーザーのことを考え、どんな進化を遂げてきたのかを見てみよう。最初にDEFYが登場したのは2009年モデルだから、すでにその歴史は15年を誇るロングセラーだ。ジャイアントが誇るレースバイク、TCRの対になる「エンデュランスロード」として、レース志向の強くないライダーが乗り心地の良さとともにロードサイクリングを楽しめるバイクとして誕生した。
2012年モデルで第2世代となり、ジャイアントが誇るオーバードライブ2(OD2)規格を採用。上側に1-1/4インチ径、下側に1-1/2インチ径のヘッドセットベアリングを採用することでステアリングの剛性を獲得。バイクが持つ快適性というキャラクターと、TCRよりも軽量な車体、さらに上位グレードAdvanced SLの登場によって、パリ〜ルーベに代表される北のクラシックレースでワールドツアーチームが使用するまでになった。
第3世代の2015年モデルでは前述の通りディスクブレーキ専用設計にリファイン。さらに、シートポストにこれまでシクロクロスバイクのTCXに採用されていた「D-Fuse」を採用。さらなる快適性を得た。
2019年モデルの第4世代では、さらにハンドルバーの快適性を追求。「D-Fuse」テクノロジーをハンドルにも採用し、さらなる乗り心地の良さやライダーの疲労感低減を目指した。フレームも最大タイヤ幅35mmまでの仕様となった。発表当初は28Cタイヤをアッセンブルしていたが、2020年モデルからは32Cタイヤを標準装備。ワイドタイヤ・ロードバイクとしての立ち位置を示した。
こうして見てみると、「エンデュランスロード」という概念の時代の変遷が感じられるが、この間にジャイアントのレースバイクはTCRのほかに、エアロロードのプロペルも加わり、より細分・先鋭化した。これによりDEFYのターゲットは「レース志向ではないライダー」と明確になる。
ただし「レース志向ではないライダー」=ゆっくり走るライダー、を意味しない。日本語では「サイクリング」というとどうしてもゆったりペースのライドが想定されるが、英語圏での本来の意味はよりスポーティだ。非日常に至るロングライドや、いくつもの峠を超えるチャレンジングなライド、あるいはクラブの仲間とのファストラン。近所の1時間のライドであっても自分なりのいいペースで走って爽快感を覚えるもの。DEFYがターゲットとするのは、こうしたロードバイクの快走感や走行性能を存分に味わいたいライダーだ。
レースを主眼に置くと、やれ重量だ、やれエアロだと、数値的な要件に焦点が行きがちであるが、ジャイアントはこの新型DEFYで数字的なフィーチャーを前面に打ち出していない。細かな数字よりも、乗ればわかる、と言わんばかりなのだ。ある意味でこのバイクを選ぶライダーを信用しているともとれるが、その裏で着実なバイクの進化を達成しているのも事実。数字的なフィーチャーと数字に表れないフィーチャーの両方の視点から、この新しいDEFYを見てみよう。
新型DEFYに貫かれるデザイン美学
第5世代、2024年モデルとしてフルモデルチェンジを果たしたDEFY。整流効果が期待できそうなヘッド周りやボリュームのあるBB周り、ドロップドシートステイといったフレーム造形は、レースバイク然とした佇まい。落ち着いた近年のジャイアントらしいカラーリングとスタイリングもあって、上質で洗練されたロードバイクという印象をもたらす。
あるいはギミックに頼らない開発姿勢もそれに寄与しているかもしれない。快適性を重視したエンデュランスロードと呼ばれるカテゴリーの各社のバイクを見ると、サスペンション機能であったり、異素材を採用していたりとバイクの外観にも変化が現れる。ジャイアントはあくまでロードバイクのシンプルさを損なわずに、高い快適性を確保したDEFYを生み出した。ギミックの採用は好き嫌い分かれるところだが、美的観点のみならず、シンプルな作りゆえに故障のリスクを負わなくて済むのはメリットだろう。
それではどのようにして、DEFYは自身の宿命である快適性を担保するのか。それはやはり、DEFYの代名詞とも言える「D-Fuse」テクノロジーだ。D型断面の形状が特徴のハンドルとシートポストである。
ハンドル、シートポスト共に進化したD-Fuse
前世代モデルからハンドルバーとシートポストの両方に搭載されていたD-Fuseを、今回のモデルチェンジに伴いそれぞれ進化させた。D-Fuseハンドルバーは第2世代、D-Fuseシートポストは第3世代となる。ハンドルとシートポストはともにライダーとバイクの接点に極めて近い(ハンドルは時として直接触れる)箇所。ここの振動吸収性に着目したのは慧眼といえるが、まず何と言ってもシートポストが大きく生まれ変わった。
Advanced Pro以上のグレードに標準装備される新型D-Fuseシートポストは、ヤグラ部分にかけて大きくベンドするようになった。路面からの衝撃によって、最大で7mmしなる設計で高い振動吸収性を獲得している。フレームと合わせた総合的な柔軟性では、先代のADVANCED PROよりも42%優れるというテスト結果が確認されている。Advanced SLグレードのバイクにアッセンブルされるD-Fuse SLRシートポストは155gと軽量さに磨きをかけている。
ハンドルも進化した。D-Fuseのハンドルバー CONTACT SLR、SLのトップ部(D型断面)の形状変更により、前世代より40%も柔軟性がアップしている。新型ではドロップ部が8°外側にフレアするようになったことも見逃せない。ロードレースシーンでも流行中のフレアハンドルは、ドロップ部を握ったポジションでのバイクコントロールに余裕が生まれ、ロングライド時の安全にもつながる。
前モデルよりも「D」形状がやや楕円形状へと変更となったが、これにより縦方向の振動吸収性を高め、ブラケット部分への衝撃を和らげる。手のしびれや疲労感低減に一役買う一方で、ドロップ部分を握って力を入れた時は横方向にはたわまない剛性設計になっており、パワーを掛けてもがいた時や高速巡航時には力が逃げないという。
コックピット周りにもジャイアントの考えるエンデュランスロードの思想が反映されている。ケーブルの配線をこれまでの上側ではなく、CONTACT SLR/SL AEROLIGHTステムを使用することでケーブルをステム下側に沿わせる方式へ変更。フル内装、あるいはほぼ内装レベルのクリーンさを手に入れた。これは近年ロングライド派のサイクリストが多く愛用するフロントバッグ等の装着を容易にするメリットもある。
また一体型ハンドルを不採用とすることで、乗り込む中で変化するポジション変更にも細かくアジャストが可能。ロングライドにおける自身最良のポジション探しもまた楽しいものだが、その過程をサポートしてくれる。ライダーに寄り添うバイクだといえよう。
ワイドタイヤ前提のジオメトリー 32Cを標準装備
標準でアッセンブルされるタイヤが32CであることもDEFYの性格を良く表している。当初は28Cだった第4世代においても、2020年のマイナーアップデートから許容幅に近い実測34mm幅となる32Cタイヤが標準となった。それが今回の第5世代になり、最大タイヤ幅は38mmにまで拡大を遂げた。
現在のロードレースシーンの主流が28Cであることを考えると、32Cの採用は明確に路面からの振動緩和や快適性向上を狙ったものだ。チューブレス化の恩恵を受け、低圧での運用が可能になった。ロングライドには欠かせないフィーチャーといえる。フレームは太いタイヤの装着を前提としたジオメトリーを採用しており、このあたりも抜かりない。現在では32C を飲み込めるレースバイクも増えてきているが、無理に太いタイヤを履くとレースバイク特有の軽快感がスポイルされることも少なくない。
しっかり軽くなっているバイク重量
さて、太いタイヤを履くエンデュランスロードと聞くと必然的に重量増が想起されるが、トップグレードのADVANCED SLグレードのフレーム重量はMサイズで785g。前世代より20%の軽量化を果たし、フロントフォークも345gと15%の軽量化を達成しているという。完成車の参考重量として最上級グレードとなるADVANCED SL0のSサイズで7.0kg、アルテグラDi2を搭載するADVANCED SL1はMサイズで7.3kg、105Di2で組まれるADVANCED PRO1で7.7kgに収められている。十分にロードバイクの軽快さを期待できる重量だといえよう。
新型DEFYにはジャイアントの考えるロードサイクリングのヴィジョンが詰め込まれている。サイクリングは機材スポーツである以上、レース至上主義から脱するのが難しいマーケットではあるが、現実的にはレースをしないライダーが大多数を占めるのも事実。ジャイアントは彼らのためのバイクをここに定義する。
DEFYが誇る数々のフィーチャーは、果たして実際のライドでどう機能するのか。次ページでは元プロライダーと一般ライダーの二人の視点から、実走インプレッションをお届けしよう。元プロライダーをして「欲しい」と言わしめた新型DEFYの実力と、このバイクが描くサイクリングのあり方についてそれぞれ意見を出し合った。
ジャイアント DEFY ADVANCED SL 1
フレーム | Advanced SL-Grade Composite OLD142mm、D-FUSE SLR Composite Seat Post |
F.フォーク | Advanced SL-Grade Composite、Full Composite OverDrive AERO Column 12mm Axle |
ギアクランク | SHIMANO ULTEGRA with GIANT POWER PRO |
変速パーツ | SHIMANO ULTEGRA Di2 |
ブレーキセット | SHIMANO ULTEGRA 160mm Rotors |
ホイール | GIANT SLR 1 36 DISC Hookless Carbon |
タイヤ | GIANT GAVIA FONDO 0 700x32C Tubeless Ready |
サイズ | 410(XS)、 445 (S)、 480 (M) mm |
重量 | 7.3kg (M) |
カラー | ゴールデンヘイズ |
価格 | 990,000円(税込) |
ジャイアント DEFY ADVANCED PRO 1
フレーム | Advanced-Grade Composite OLD142mm、D-FUSE SL Composite Seat Post |
F.フォーク | Advanced SL-Grade Composite、Full Composite OverDrive AERO Column 12mm Axle |
ギアクランク | SHIMANO 105 Compact |
変速パーツ | SHIMANO 105 Di2 |
ブレーキセット | SHIMANO 105 160mm Rotors |
ホイール | GIANT SLR 1 36 DISC Hookless Carbon |
タイヤ | GIANT GAVIA FONDO 1 700x32C Tubeless Ready |
サイズ | 410 (XS)、 445 (S)、480 (M)、 515 (ML) mm |
重量 | 7.7kg (S) |
カラー | ユニコーンホワイト |
価格 | 638,000円(税込) |
text:小俣雄風太、photo:Studio104、提供:ジャイアント