2023/12/21(木) - 18:16
Vol.1で詳しく掘り下げた新型DEFYを実際に乗ってインプレッション。ライダーは元プロライダーの岸崇仁と自転車ジャーナリストの小俣雄風太。脚質もバックボーンも自転車の楽しみ方も違う2名は、ジャイアントが提示するエンデュランスロードのあり方をDEFYというバイクを通じてどう体感したのか。
岸崇仁(きし・たかひと)
ロードバイクライドコーチ。国内チームでのレース活動を経て2021年に引退。ライドコーチとして安全・快適な走り方を伝えるとともに、各種媒体でのバイクインプレッションも担当する。愛車はジャイアントTCR。
小俣雄風太(おまた・ゆふた)
自転車ジャーナリスト。グラベルバイクやオールロードと呼ばれるバイクが好き。ロードバイクに太めのタイヤを履いてのライドを愛する。今年のパリ〜ブレスト〜パリを取材し、ロングライドに興味を持ち始めている。
―テストライドを終えての率直な感想を教えてください。
岸:軽さと快適性がひと漕ぎ目からわかるバイク、でした。
小俣:“快適さ”ってなかなか表現するのが難しい属性なんですが、これは疲れないバイクだぞ、と最初の100メートルを走った段階で体感できたのは驚きました。
―このバイクで感じられる快適性を具体的に言うなら?
岸:テストコースは最初に荒れた路面を下るレイアウトだったのですが、そこを下ってすぐ2人して驚きましたね。レースバイクはフレームが硬いぶん路面の段差や衝撃がダイレクトに体に伝わりますが、DEFYではそれをあまり感じなかったんです。段差はあるのに、自分が思ったラインをまっすぐに走ってくれる。今までの硬いバイクで行っていた自分の身体を動かしての“いなし“や、抜重したりということが不要になるイメージです。
小俣:それはすごく僕も感じました。あえてネガティブなことを言うと、これに最初に乗っちゃうとバイクの操作が下手になるな、と。ラインを選ばなくて良くなるし、サドルの上でちょっと腰を浮かすような動きも必要が無くなる。こうしたバイク操作をする喜びがスポイルされるなと感じた反面、僕の場合200kmを超えるようなライドになってくるとだんだんと疲れて体を動かすのが億劫になります。そんなライドで使ってみたいと思いましたね。効果は絶大そう。
岸:ロードバイク最初の1台にこれを選んだら、DEFYの持つ振動吸収性の恩恵を感じないでしょうね。これが当たり前なんだって思っちゃうから。それくらい、走っていて路面の違和感を拾わない。
―DEFYは距離を長く快適に走れるバイクだと感じましたか?
岸:実際に100km、200kmと走ってみないと見えてこない部分はあると思いますが、短時間でもそれが想像できるという意味でキャラクターが明確なバイクでした。
小俣:1日に1時間や2時間くらいしか乗らない人にもいいバイクだと感じました。無理なく自転車を続けられそうというか。僕は常に感じていることですが、身の丈に合うバイクというのがなかなか見つからないんです。トップエンドのバイクがいいのはわかるけど、自分の脚力では持て余す。それでエンデュランスロードと言われて探し出しても、パーツやフレームのスペックが低くて、ブランドのマーケティングでもどこか2軍扱いされてて。
トップエンドのレースバイクより多少は価格が落ち着いているといっても、何十万円も出してそんな扱いのバイクを買うのかというと気持ち的にもしんどいんです。目指すものはレースじゃないけれど、ライド体験に妥協しないバイク。それが本当に市場に少ない。最近になってその流れも変わりつつあるように感じていますが、そんなこじらせライダーにも刺さるバイクだと思います。
岸:サイクリストと一口にいっても、色んな層がいて、色んな嗜好があって幅広いですよね。シリアスな競技者を頂点とした三角形があるとして、競技者の人口は少ない。DEFYは、自転車を始めた人から中級者と呼ばれる人たち、三角形の広い範囲のサイクリストが欲する性能を持つバイクだという印象を受けました。ハンドルが一体型でないこととか、パーツのアッセンブルもそうですが、色んな遊び方のできるバイクだな、と。ただ僕は…ホイールとタイヤを変えたらある意味レースを走れるんじゃないかと感じました。
小俣:それはやっぱりフレームとフォークが軽いからでしょうね。大前提としてそこが担保されているから、岸さんがレースでも使えるかもと感じたのだと思います。僕の走り方なら、十分レースでも使いたい軽快さでしたよ。
岸:レースに使ってもいいかも、と思えるのはバイク自体にギミックを詰め込んでいない、シンプルな形状であることも大きいと思います。やっぱりロードバイクとしての走行性能を突き詰めていることは重要ですから。
岸:最初にバイクのプレゼンテーションを聞いたときは、正直本当かな? と疑う気持ちがありました。でも実際に乗ると、すぐにそれが体感できた。誰もがこれを体感できるかはわからないですが、普段レースバイクに乗り慣れている人なら感じるはずです。
小俣:僕はシートポストの動きに関してはよくわかりました。ハンドルは少し感じづらかったです。手に来る衝撃が少ないのはわかりましたが。
岸:ハンドルのどこを握るかで、しなりを感じる方向が変わりますね。下ハンドルを持ってパワーをかけてダンシングしてもしなりはあまり感じません。でも悪路でブラケットや上ハンドルを持つと、この振動を吸収してくれているのがよくわかります。いろんな顔を持つハンドルです。
小俣:垂直方向にはしなるけど、横方向にはしならないということですね。だからギャップを越える時にラクに感じたのかもしれない。ブラケットを握って重めのギアをかけて高速巡航する時にもしなりを感じました。
岸:登りでブラケットを握ってダンシングするような時にもしなりますね。僕としては力が逃げちゃうので正直ここはあまりしなってほしくない。ただし下ハンドルを握る限りでは登りや平坦でもがいてもしなりを感じません。
小俣:上ハンと握るときと、下ハンを握るときでライダーの力の入力方向が違うのだと思いますが、それに合わせて剛性を調整している。ハンドルはもはやD型かと言われると大分扁平してますが、これがD-Fuseのキモという感じがします。用途的に上ハンドルを握ってアタックするような走りをそもそも想定していないんでしょうね。
岸:逆に言うと、最近流行りのブラケットを握ってのエアロポジション。これがものすごく快適でした。やったことのある人はわかると思いますが、前重心でけっこうキツい体勢になります。その分ハンドルやブラケットにも荷重がかかってしまい、硬いハンドルだと振動をそのまま拾っちゃうんですが、DEFYのD-Fuseは上部がいなしてくれるので、すごくエアロポジションが取りやすかった。
―コックピット周りではステムとハンドルが別体式。そのメリットは?
岸:もうちょっとポジションをアップライトにしたいなと思った時に、ステムの交換やハンドル位置の調整だけで済むのは使い勝手がいいですよね。ハンドルステム一体型だとそうはいきません。
小俣:ハイエンドのバイクが一体型に流れている中で、あえて別体型として世に問うたところに、ジャイアントがDEFYをどういうバイクにしたいかが透けて見える気がします。サードパーティのハンドルステムではなくて、バイクの性能をトータルで引き出すための別体型。性能とケーブルのルーティングなどは担保しますから、より自分のバイクとしてフィットを煮詰めてください、という。乗り込んでアグレッシブに変化するポジションもあると思いますし、明日はロングライドだから少し高くしよう、なんてこともできるかもしれない。
岸:互換性もあるとジャイアントは謳っていますね。PROPELのハンドルステムも使えるので、PROPELに乗っていた人がパーツを移植して、DEFYをエアロバイク寄りに味付けする、なんて楽しみ方もありますね。
―目を惹くシートピラーの印象は?
岸:フレームのリア三角がシートピラーとすごく相性いいな、と感じました。乗り出してその恩恵をすぐに感じた下りでの安定性や振動吸収性は、この相性によって生まれているのではないでしょうか。シートポストがこのフレームの仕事を邪魔しないバランスに調整されています。それにハイケイデンスのペダリングでも、トルクのかかったペダリングでも受け入れてくれる懐の深さがありました。これもピラー単体と言うより、フレームとの相性がいいからだと思います。
小俣:これまで”エンデュランスロード”と聞いてイメージしていたものよりもはるかにスポーティで、自分の中では”ザ・ロードバイク”という印象です。40km/hで10分間ぐらいは巡航できるかな、という僕の脚力といい意味で合っている。速く走ろうとすると応えてくれる、という喜びがありました。
岸:僕は逆にゆっくり走った時の安定感が良かったですね。レースバイクだと例えば20km/hで走るとフラついたり、気を遣う場面が出てくる。でもDEFYだとこの速度域でも安定している。ゆっくり走りながら両手を離してもまっすぐ進むんです。重要なことです。残念ながらまっすぐ走らないバイクというのもありますから。
小俣:それは突き詰めたエアロロード化の弊害というか、ある程度はトレードオフなのかもしれませんね。逆説的に基本性能の良さが光ってくるというのも今の時代ならではというか。
―ホイール・タイヤといった足回りを含めたパッケージングについて
岸:32Cタイヤの太さが振動吸収性を高めているのは間違いないですが、フレームも含めた一台としてバランスが保たれていますよね。バイクをトータルで見た時にはベストマッチに感じます。
小俣:ふだん30Cのタイヤでロードライドをしているんですが、安定感のある反面、軽快に走るならやっぱり28Cかなぁと思うことは正直あります。でもそれはバイクの設計が28Cに合わせてあるからなんだと気づきました。今日DEFYに乗ってみて、これは32Cのバイクなんだと実感しました。すごく長い登りを走ったわけではありませんが、重さをネガに感じることはありませんでした。とはいえ、ふとハンドル越しにタイヤが見えると、やっぱり太いな〜と思いましたね。今後この感覚は変わっていくのかもしれませんが。
岸:走っているうえでその太さを感じないのなら、それはいいことだと思います。太いタイヤで走っているとそれなりのもっさり感が絶対に出てきますから。でもそれが無く、実測だと33.5mmぐらいある32Cタイヤを3.4barという低圧で履いているのに、普通のロードバイクに乗っている感覚で僕も今回走れましたし、むしろ下りでは太さの恩恵である高いグリップや快適性を感じて、むしろトータルでプラスだったなという感想です。
小俣:ロングライド時には下りのアドバンテージってばかにならないですよね。下ハンドルを握った深いポジションをとりつつ繰り返す抜重で、どれくらい肉体的・精神的に消耗していることか。僕は渋峠が大好きなんですが、登りはもちろん、草津側への下りもいいんですよ。渋峠の下りをこのバイクで走ってみたくなりました。
岸:わかります。長い下り坂を走ってみたい。走れる人がこのバイクに乗ったら、下りで攻め過ぎちゃうのではないでしょうか(笑)
―このバイクを手に入れたら、どう使ってみたい?
岸:選手を引退して、今はオフロードのライドに興味を持ち始めています。今まではロードバイクで速く走ることに特化してきたから、そうじゃない世界を知りたいのだと思います。今日DEFYに乗ってみて、その感覚に確信というか、自分の見たい世界が何なのかがわかった気がしました。今までロードバイクでしてこなかったことに挑戦できる、多方面に楽しみを見いだせるバイクでした。
小俣:レース志向ではない僕のなかではDEFYは正統なロードバイクでした。そのいい走りを犠牲にせず、快調なテンポで距離を刻むライドがしたい。憧れとしては一日400kmとか、そういう距離感ですね。先日パリ〜ブレスト〜パリを現地で取材してきて大いに感化されているんですが、4年後の出場を見越してブルベデビューするのなら、これは最高のバイクだなと感じました。
岸:可能性が広がるバイクですよね。こんな人にお勧め、というのではなく、手に入れた人がその使い方を広げていく。そんな懐の深さがこのDEFYの魅力だと思います。
プロフィール
岸崇仁(きし・たかひと)
ロードバイクライドコーチ。国内チームでのレース活動を経て2021年に引退。ライドコーチとして安全・快適な走り方を伝えるとともに、各種媒体でのバイクインプレッションも担当する。愛車はジャイアントTCR。
小俣雄風太(おまた・ゆふた)
自転車ジャーナリスト。グラベルバイクやオールロードと呼ばれるバイクが好き。ロードバイクに太めのタイヤを履いてのライドを愛する。今年のパリ〜ブレスト〜パリを取材し、ロングライドに興味を持ち始めている。
看板に偽りなし まずはその振動吸収性の高さに驚く
―テストライドを終えての率直な感想を教えてください。
岸:軽さと快適性がひと漕ぎ目からわかるバイク、でした。
小俣:“快適さ”ってなかなか表現するのが難しい属性なんですが、これは疲れないバイクだぞ、と最初の100メートルを走った段階で体感できたのは驚きました。
―このバイクで感じられる快適性を具体的に言うなら?
岸:テストコースは最初に荒れた路面を下るレイアウトだったのですが、そこを下ってすぐ2人して驚きましたね。レースバイクはフレームが硬いぶん路面の段差や衝撃がダイレクトに体に伝わりますが、DEFYではそれをあまり感じなかったんです。段差はあるのに、自分が思ったラインをまっすぐに走ってくれる。今までの硬いバイクで行っていた自分の身体を動かしての“いなし“や、抜重したりということが不要になるイメージです。
小俣:それはすごく僕も感じました。あえてネガティブなことを言うと、これに最初に乗っちゃうとバイクの操作が下手になるな、と。ラインを選ばなくて良くなるし、サドルの上でちょっと腰を浮かすような動きも必要が無くなる。こうしたバイク操作をする喜びがスポイルされるなと感じた反面、僕の場合200kmを超えるようなライドになってくるとだんだんと疲れて体を動かすのが億劫になります。そんなライドで使ってみたいと思いましたね。効果は絶大そう。
岸:ロードバイク最初の1台にこれを選んだら、DEFYの持つ振動吸収性の恩恵を感じないでしょうね。これが当たり前なんだって思っちゃうから。それくらい、走っていて路面の違和感を拾わない。
―DEFYは距離を長く快適に走れるバイクだと感じましたか?
岸:実際に100km、200kmと走ってみないと見えてこない部分はあると思いますが、短時間でもそれが想像できるという意味でキャラクターが明確なバイクでした。
小俣:1日に1時間や2時間くらいしか乗らない人にもいいバイクだと感じました。無理なく自転車を続けられそうというか。僕は常に感じていることですが、身の丈に合うバイクというのがなかなか見つからないんです。トップエンドのバイクがいいのはわかるけど、自分の脚力では持て余す。それでエンデュランスロードと言われて探し出しても、パーツやフレームのスペックが低くて、ブランドのマーケティングでもどこか2軍扱いされてて。
トップエンドのレースバイクより多少は価格が落ち着いているといっても、何十万円も出してそんな扱いのバイクを買うのかというと気持ち的にもしんどいんです。目指すものはレースじゃないけれど、ライド体験に妥協しないバイク。それが本当に市場に少ない。最近になってその流れも変わりつつあるように感じていますが、そんなこじらせライダーにも刺さるバイクだと思います。
岸:サイクリストと一口にいっても、色んな層がいて、色んな嗜好があって幅広いですよね。シリアスな競技者を頂点とした三角形があるとして、競技者の人口は少ない。DEFYは、自転車を始めた人から中級者と呼ばれる人たち、三角形の広い範囲のサイクリストが欲する性能を持つバイクだという印象を受けました。ハンドルが一体型でないこととか、パーツのアッセンブルもそうですが、色んな遊び方のできるバイクだな、と。ただ僕は…ホイールとタイヤを変えたらある意味レースを走れるんじゃないかと感じました。
小俣:それはやっぱりフレームとフォークが軽いからでしょうね。大前提としてそこが担保されているから、岸さんがレースでも使えるかもと感じたのだと思います。僕の走り方なら、十分レースでも使いたい軽快さでしたよ。
岸:レースに使ってもいいかも、と思えるのはバイク自体にギミックを詰め込んでいない、シンプルな形状であることも大きいと思います。やっぱりロードバイクとしての走行性能を突き詰めていることは重要ですから。
D-Fuseの威力を体感
―新型DEFYで大きな枠割を果たすD-Fuseハンドルとシートポストの印象は?岸:最初にバイクのプレゼンテーションを聞いたときは、正直本当かな? と疑う気持ちがありました。でも実際に乗ると、すぐにそれが体感できた。誰もがこれを体感できるかはわからないですが、普段レースバイクに乗り慣れている人なら感じるはずです。
小俣:僕はシートポストの動きに関してはよくわかりました。ハンドルは少し感じづらかったです。手に来る衝撃が少ないのはわかりましたが。
岸:ハンドルのどこを握るかで、しなりを感じる方向が変わりますね。下ハンドルを持ってパワーをかけてダンシングしてもしなりはあまり感じません。でも悪路でブラケットや上ハンドルを持つと、この振動を吸収してくれているのがよくわかります。いろんな顔を持つハンドルです。
小俣:垂直方向にはしなるけど、横方向にはしならないということですね。だからギャップを越える時にラクに感じたのかもしれない。ブラケットを握って重めのギアをかけて高速巡航する時にもしなりを感じました。
岸:登りでブラケットを握ってダンシングするような時にもしなりますね。僕としては力が逃げちゃうので正直ここはあまりしなってほしくない。ただし下ハンドルを握る限りでは登りや平坦でもがいてもしなりを感じません。
小俣:上ハンと握るときと、下ハンを握るときでライダーの力の入力方向が違うのだと思いますが、それに合わせて剛性を調整している。ハンドルはもはやD型かと言われると大分扁平してますが、これがD-Fuseのキモという感じがします。用途的に上ハンドルを握ってアタックするような走りをそもそも想定していないんでしょうね。
岸:逆に言うと、最近流行りのブラケットを握ってのエアロポジション。これがものすごく快適でした。やったことのある人はわかると思いますが、前重心でけっこうキツい体勢になります。その分ハンドルやブラケットにも荷重がかかってしまい、硬いハンドルだと振動をそのまま拾っちゃうんですが、DEFYのD-Fuseは上部がいなしてくれるので、すごくエアロポジションが取りやすかった。
―コックピット周りではステムとハンドルが別体式。そのメリットは?
岸:もうちょっとポジションをアップライトにしたいなと思った時に、ステムの交換やハンドル位置の調整だけで済むのは使い勝手がいいですよね。ハンドルステム一体型だとそうはいきません。
小俣:ハイエンドのバイクが一体型に流れている中で、あえて別体型として世に問うたところに、ジャイアントがDEFYをどういうバイクにしたいかが透けて見える気がします。サードパーティのハンドルステムではなくて、バイクの性能をトータルで引き出すための別体型。性能とケーブルのルーティングなどは担保しますから、より自分のバイクとしてフィットを煮詰めてください、という。乗り込んでアグレッシブに変化するポジションもあると思いますし、明日はロングライドだから少し高くしよう、なんてこともできるかもしれない。
岸:互換性もあるとジャイアントは謳っていますね。PROPELのハンドルステムも使えるので、PROPELに乗っていた人がパーツを移植して、DEFYをエアロバイク寄りに味付けする、なんて楽しみ方もありますね。
―目を惹くシートピラーの印象は?
岸:フレームのリア三角がシートピラーとすごく相性いいな、と感じました。乗り出してその恩恵をすぐに感じた下りでの安定性や振動吸収性は、この相性によって生まれているのではないでしょうか。シートポストがこのフレームの仕事を邪魔しないバランスに調整されています。それにハイケイデンスのペダリングでも、トルクのかかったペダリングでも受け入れてくれる懐の深さがありました。これもピラー単体と言うより、フレームとの相性がいいからだと思います。
ロードバイクとして見た時の「走り」について
―バイク全体の走行性能はいかがでしたか?小俣:これまで”エンデュランスロード”と聞いてイメージしていたものよりもはるかにスポーティで、自分の中では”ザ・ロードバイク”という印象です。40km/hで10分間ぐらいは巡航できるかな、という僕の脚力といい意味で合っている。速く走ろうとすると応えてくれる、という喜びがありました。
岸:僕は逆にゆっくり走った時の安定感が良かったですね。レースバイクだと例えば20km/hで走るとフラついたり、気を遣う場面が出てくる。でもDEFYだとこの速度域でも安定している。ゆっくり走りながら両手を離してもまっすぐ進むんです。重要なことです。残念ながらまっすぐ走らないバイクというのもありますから。
小俣:それは突き詰めたエアロロード化の弊害というか、ある程度はトレードオフなのかもしれませんね。逆説的に基本性能の良さが光ってくるというのも今の時代ならではというか。
―ホイール・タイヤといった足回りを含めたパッケージングについて
岸:32Cタイヤの太さが振動吸収性を高めているのは間違いないですが、フレームも含めた一台としてバランスが保たれていますよね。バイクをトータルで見た時にはベストマッチに感じます。
小俣:ふだん30Cのタイヤでロードライドをしているんですが、安定感のある反面、軽快に走るならやっぱり28Cかなぁと思うことは正直あります。でもそれはバイクの設計が28Cに合わせてあるからなんだと気づきました。今日DEFYに乗ってみて、これは32Cのバイクなんだと実感しました。すごく長い登りを走ったわけではありませんが、重さをネガに感じることはありませんでした。とはいえ、ふとハンドル越しにタイヤが見えると、やっぱり太いな〜と思いましたね。今後この感覚は変わっていくのかもしれませんが。
岸:走っているうえでその太さを感じないのなら、それはいいことだと思います。太いタイヤで走っているとそれなりのもっさり感が絶対に出てきますから。でもそれが無く、実測だと33.5mmぐらいある32Cタイヤを3.4barという低圧で履いているのに、普通のロードバイクに乗っている感覚で僕も今回走れましたし、むしろ下りでは太さの恩恵である高いグリップや快適性を感じて、むしろトータルでプラスだったなという感想です。
小俣:ロングライド時には下りのアドバンテージってばかにならないですよね。下ハンドルを握った深いポジションをとりつつ繰り返す抜重で、どれくらい肉体的・精神的に消耗していることか。僕は渋峠が大好きなんですが、登りはもちろん、草津側への下りもいいんですよ。渋峠の下りをこのバイクで走ってみたくなりました。
岸:わかります。長い下り坂を走ってみたい。走れる人がこのバイクに乗ったら、下りで攻め過ぎちゃうのではないでしょうか(笑)
―このバイクを手に入れたら、どう使ってみたい?
岸:選手を引退して、今はオフロードのライドに興味を持ち始めています。今まではロードバイクで速く走ることに特化してきたから、そうじゃない世界を知りたいのだと思います。今日DEFYに乗ってみて、その感覚に確信というか、自分の見たい世界が何なのかがわかった気がしました。今までロードバイクでしてこなかったことに挑戦できる、多方面に楽しみを見いだせるバイクでした。
小俣:レース志向ではない僕のなかではDEFYは正統なロードバイクでした。そのいい走りを犠牲にせず、快調なテンポで距離を刻むライドがしたい。憧れとしては一日400kmとか、そういう距離感ですね。先日パリ〜ブレスト〜パリを現地で取材してきて大いに感化されているんですが、4年後の出場を見越してブルベデビューするのなら、これは最高のバイクだなと感じました。
岸:可能性が広がるバイクですよね。こんな人にお勧め、というのではなく、手に入れた人がその使い方を広げていく。そんな懐の深さがこのDEFYの魅力だと思います。
動画で見るDEFYインプレッション
DEFYインプレッション動画版ではゲストにジャイアント・ジャパン齋藤朋寛さんを迎え、DEFYという車種の歩んだ道のりやテクニカル面の解説、ロードバイクの進むべき方向性などについて語り合った。ぜひご覧ください。text:小俣雄風太、photo:Studio104、提供:ジャイアント