2023/05/15(月) - 18:00
先日の発表以降、高い注目度を集めているヴィットリアの新型フラッグシップレーシングタイヤ「CORSA PRO(コルサプロ)」。長年CORSAシリーズを履きレースを戦うシマノレーシングのメンバーに、チームに届いたばかりのニュータイヤの印象を聞いた。
日本が世界に誇るサイクルコンポーネントメーカー、シマノが直接スポンサーを務めるロードレースチームが「シマノレーシング」だ。同社のコーポレートカラーである水色のチームキットに身を包むメンバーは若手中心で、今年は元全日本王者である入部正太朗や、全日本選手権U23のロード/TTで3位を収めた香山飛龍ら4名が加入。野寺秀徳監督の指揮のもと、若手育成とともにシマノ製品のテストなど、様々な役割を担いレース活動を行っている。
シマノのコンポーネントと共に、彼らの走りを長年支えているのがヴィットリアのレーシングタイヤだ。シマノレーシングは歴代のCORSAに絶対の信頼をおき、長年チューブラータイヤを、そして昨年からは新型デュラエース投入と併せチューブレスタイヤを投入。今日に至るまで使い続けている。
目前に迫ったツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野。重要な2連戦に向け、長野県の白樺湖周辺で高地合宿を積むシマノレーシングを訪ねた。チームにはヴィットリアから新型CORSA PROが届いたばかりで、既に装着後300〜400kmを乗り込んだ中井唯晶と、取材日が初乗りだという横山航太がその使用感を語ってくれた。
二人が口を揃えたのは「しなやか」というキーワード。「とにかく走りが上質で、路面の凹凸を包み込むように走ってくれます。コントローラブルだし、通じて安心感が強い。レースで大きな武器になりますね」と横山は太鼓判を押す。野寺監督も交えた対談トークでCORSA PROの走りを紹介していきたい。
CW:CORSA PROは数日前に届いたばかりだそうですが、中井選手はすでに距離を乗っているそうですね。第一印象はいかがでしたか?先代モデルとの差は感じますか?
中井:従来モデルとの違いはすぐに分かりましたよ!しなやかさが増していて、ケーシング、特にサイド部分が柔らかいように感じます。ただしそれも「ヤワい」というマイナス要素じゃなくて、しっかり路面を捉えてくれるイメージ。従来モデルであまり空気圧を下げるとヨレる感覚でしたが、CORSA PROは違う。すごく良いタイヤです。
横山:ヴィットリアのタイヤって全般的にしなやかで状況を掴みやすいんですが、CORSA PROはさらにその良さが伸び、コーナリング中の「今は大丈夫ですよ、ここから先はゆっくり滑り出しますよ」という声を拾いやすくなった。
実は僕はアマチュア時代からヴィットリア一択なんです。タイヤの剛性が高くコンパウンドでグリップを稼ぐタイヤもありますが、それだとハイグリップであっても、限界地点で一気にブレイク(滑る)してしまう。でもヴィットリアは滑りだしからブレイクするまでの幅があって状況を掴みやすい。だから選んでいます。
CW:そのしなやかさは、当然乗り心地にも繋がる部分だと思いますが、いかがでしょう。
横山:もちろん乗り心地もぐっとよくなったと思います。今この合宿を重ねている白樺湖周辺のような積雪エリアは舗装が割れているし、特に恩恵を感じやすい。わざと凹凸の激しい場所を走ってみても、先代より格段にショックは少なく感じます。長距離を走った時の身体への負担は少なくなるでしょうね。
ロードレースって、イメージしているよりも舗装状態が良くない場所を走ることも多いんです。ステージレースでは特にその傾向が強いし、定番の群馬CSCだって舗装状態は良いと言えませんよね。乗り心地が良いからストレスを感じにくく、気持ちがシビアにならないで済む。CORSA PROはその要素が強いですね。
CW:チームが使うのは26cですね。それぞれ空気圧はどのくらいが好みですか?
中井:前後5.0ですね。去年からCORSAのチューブレスを使っていますが、転がり抵抗が低く空気圧を落とせるのが好み。僕はあまりコーナリングが得意な方ではないので、安心感を出すために低めの空気圧が好きなんです。
横山:僕は5.0〜5.5の間。自分はオフロード競技に取り組んでいたこともあってか、みんながまだ8気圧あたりで走っていた時から低めでした。ここまでCORSAのチューブラー、チューブレス、そしてクリンチャーと3種類を使ってきましたが、チューブレスが一番空気圧が低く、チューブラーとクリンチャーがやや高めのセッティングです。
なぜかと言えば、チューブレスの転がり抵抗が一番低く感じるから。チューブラーとクリンチャーの場合は少し高めにセットした時にチューブレスとフィーリングが揃うイメージ。構造的な違いだと思いますが、チューブラーをチューブレスと低めの気圧で乗り比べると走りが重く感じます。チューブレスの優位性が分かりますね。
CW:お二人はずっとCORSAを使ってきましたが、全般的にヴィットリアタイヤにはどのようなイメージを抱いているのでしょうか。
中井:横山選手からは「しなやかさ」が出ましたよね。それはもちろん、僕にとってはパンクしない、耐久性が高いという印象が一番。2019年にシマノ入りして以降ずっとCORSAを使っていますが、レース中のパンクは1度あったかどうか。レース後のタイヤを見ると小石の突き刺しはありますが、パンクに至っていないということが良くあります。
雨のレースで他社タイヤを使っているチームのパンクが続出する中でもノントラブル、ということも何度かありましたし...とにかく絶対の信頼を置いています。
横山:パンクでレースを落とすほど残念なことはありませんが、僕らヴィットリアユーザーはそれと無縁です。レースが「パンク祭り」と呼ばれる状況も稀にありますが、「スペアホイールが無くなるんじゃないか」っていうチームがあっても僕たちはほぼ大丈夫。何度かそんな経験をしていますから、このCORSA PROも大きな期待感と共に使うことができています。
野寺監督:全幅の信頼をおけるタイヤ。それがヴィットリアなんです。実は僕が監督に就いてから、何度か他のタイヤメーカーに移る可能性もあったんですが、ただ、選手側からはヴィットリアを使い続けたいという声が多く、今に至るまで変えていません。もちろん「他社のOOが良さそう」という話も聞きますが、総合力で比べた時にヴィットリアは頭ひとつ抜けている。
特にグラフェンコンパウンドになってからは絶対的な信頼を置いていますし、他に変える理由が見つかりません。チームの運営側も、選手側も、それには全く異存はありません。これまで唯一の不満は長く使ったタイヤのトレッドが剥がれる場合がある、ということでしたが、一体成形になったと聞いていますから、それも改善されているはず。
中井:本当に大切ですよ。下りが得意ではない僕には結構「ヤバい」と感じる場面は何度もありますが、ヒヤッとしたただけでタイヤには余裕がある場面も多かった。思い切って速い選手についていったり、自分から攻めることもできる。「滑るかも」とビビりながら下るのと、安心して下るのでは疲れ方も全く違います。
野寺監督:札立峠の下りと言えば、自分が出場した2009年の熊野は思い出深い大会でしたよ!当時アジアレースを席巻していたカザフスタンの(ヴァレンティン)イグリンスキーがカザフチームとして出場したんですが、彼らのタイヤは性能が悪く、僕らシマノ勢は「札立頂上で1分差なら追いつける」と踏んでいて、まさにその通りになったんです。まあ、それは極端な例ですが、タイヤ選びってそれくらい展開、そして成績に直結します。ヴィットリアの万能性はすごく武器ですね。
CW:今チームには26Cが供給されていますが、今後28Cや、あるいは細身の24Cを使うことはありそうですか?
横山:細くすることは選択肢にありません。現状維持か、あるいは28Cか。「太いから重くて転がりも悪い」というのは過去の話ですし、ホイールとの兼ね合いもあって、細いものは重量しかメリットがない状況です。ヒルクライムなど登り一本勝負の時は良いかな、と思いますが、平坦からアップダウンまでを含むのがロードレースですから。
中井:従来のCORSAにも全く不満はありませんでしたが、CORSA PROはもう一歩先を行く完成度を持つタイヤだと感じています。こうなると楽しみなのはCORSA SPEEDの新型ですよね。特にまだ情報を聞いていませんが、圧倒的に走りが軽いSPEEDがモデルチェンジしたら、どんなことになってしまうんだろうと今からワクワクしてしまいます。とにかくCORSA PROで走る初レースが楽しみです。
シマノレーシングの走りを支えるヴィットリアタイヤ
日本が世界に誇るサイクルコンポーネントメーカー、シマノが直接スポンサーを務めるロードレースチームが「シマノレーシング」だ。同社のコーポレートカラーである水色のチームキットに身を包むメンバーは若手中心で、今年は元全日本王者である入部正太朗や、全日本選手権U23のロード/TTで3位を収めた香山飛龍ら4名が加入。野寺秀徳監督の指揮のもと、若手育成とともにシマノ製品のテストなど、様々な役割を担いレース活動を行っている。
シマノのコンポーネントと共に、彼らの走りを長年支えているのがヴィットリアのレーシングタイヤだ。シマノレーシングは歴代のCORSAに絶対の信頼をおき、長年チューブラータイヤを、そして昨年からは新型デュラエース投入と併せチューブレスタイヤを投入。今日に至るまで使い続けている。
目前に迫ったツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野。重要な2連戦に向け、長野県の白樺湖周辺で高地合宿を積むシマノレーシングを訪ねた。チームにはヴィットリアから新型CORSA PROが届いたばかりで、既に装着後300〜400kmを乗り込んだ中井唯晶と、取材日が初乗りだという横山航太がその使用感を語ってくれた。
二人が口を揃えたのは「しなやか」というキーワード。「とにかく走りが上質で、路面の凹凸を包み込むように走ってくれます。コントローラブルだし、通じて安心感が強い。レースで大きな武器になりますね」と横山は太鼓判を押す。野寺監督も交えた対談トークでCORSA PROの走りを紹介していきたい。
チームに届いたばかりのCORSA PROをファーストインプレ
「しなやかさが大幅アップ。すぐに違いが分かった」
CW:CORSA PROは数日前に届いたばかりだそうですが、中井選手はすでに距離を乗っているそうですね。第一印象はいかがでしたか?先代モデルとの差は感じますか?
中井:従来モデルとの違いはすぐに分かりましたよ!しなやかさが増していて、ケーシング、特にサイド部分が柔らかいように感じます。ただしそれも「ヤワい」というマイナス要素じゃなくて、しっかり路面を捉えてくれるイメージ。従来モデルであまり空気圧を下げるとヨレる感覚でしたが、CORSA PROは違う。すごく良いタイヤです。
横山:ヴィットリアのタイヤって全般的にしなやかで状況を掴みやすいんですが、CORSA PROはさらにその良さが伸び、コーナリング中の「今は大丈夫ですよ、ここから先はゆっくり滑り出しますよ」という声を拾いやすくなった。
実は僕はアマチュア時代からヴィットリア一択なんです。タイヤの剛性が高くコンパウンドでグリップを稼ぐタイヤもありますが、それだとハイグリップであっても、限界地点で一気にブレイク(滑る)してしまう。でもヴィットリアは滑りだしからブレイクするまでの幅があって状況を掴みやすい。だから選んでいます。
CW:そのしなやかさは、当然乗り心地にも繋がる部分だと思いますが、いかがでしょう。
横山:もちろん乗り心地もぐっとよくなったと思います。今この合宿を重ねている白樺湖周辺のような積雪エリアは舗装が割れているし、特に恩恵を感じやすい。わざと凹凸の激しい場所を走ってみても、先代より格段にショックは少なく感じます。長距離を走った時の身体への負担は少なくなるでしょうね。
ロードレースって、イメージしているよりも舗装状態が良くない場所を走ることも多いんです。ステージレースでは特にその傾向が強いし、定番の群馬CSCだって舗装状態は良いと言えませんよね。乗り心地が良いからストレスを感じにくく、気持ちがシビアにならないで済む。CORSA PROはその要素が強いですね。
CW:チームが使うのは26cですね。それぞれ空気圧はどのくらいが好みですか?
中井:前後5.0ですね。去年からCORSAのチューブレスを使っていますが、転がり抵抗が低く空気圧を落とせるのが好み。僕はあまりコーナリングが得意な方ではないので、安心感を出すために低めの空気圧が好きなんです。
横山:僕は5.0〜5.5の間。自分はオフロード競技に取り組んでいたこともあってか、みんながまだ8気圧あたりで走っていた時から低めでした。ここまでCORSAのチューブラー、チューブレス、そしてクリンチャーと3種類を使ってきましたが、チューブレスが一番空気圧が低く、チューブラーとクリンチャーがやや高めのセッティングです。
なぜかと言えば、チューブレスの転がり抵抗が一番低く感じるから。チューブラーとクリンチャーの場合は少し高めにセットした時にチューブレスとフィーリングが揃うイメージ。構造的な違いだと思いますが、チューブラーをチューブレスと低めの気圧で乗り比べると走りが重く感じます。チューブレスの優位性が分かりますね。
「ヴィットリアのタイヤは、とにかくトラブルと無縁」
CW:お二人はずっとCORSAを使ってきましたが、全般的にヴィットリアタイヤにはどのようなイメージを抱いているのでしょうか。
中井:横山選手からは「しなやかさ」が出ましたよね。それはもちろん、僕にとってはパンクしない、耐久性が高いという印象が一番。2019年にシマノ入りして以降ずっとCORSAを使っていますが、レース中のパンクは1度あったかどうか。レース後のタイヤを見ると小石の突き刺しはありますが、パンクに至っていないということが良くあります。
雨のレースで他社タイヤを使っているチームのパンクが続出する中でもノントラブル、ということも何度かありましたし...とにかく絶対の信頼を置いています。
横山:パンクでレースを落とすほど残念なことはありませんが、僕らヴィットリアユーザーはそれと無縁です。レースが「パンク祭り」と呼ばれる状況も稀にありますが、「スペアホイールが無くなるんじゃないか」っていうチームがあっても僕たちはほぼ大丈夫。何度かそんな経験をしていますから、このCORSA PROも大きな期待感と共に使うことができています。
野寺監督:全幅の信頼をおけるタイヤ。それがヴィットリアなんです。実は僕が監督に就いてから、何度か他のタイヤメーカーに移る可能性もあったんですが、ただ、選手側からはヴィットリアを使い続けたいという声が多く、今に至るまで変えていません。もちろん「他社のOOが良さそう」という話も聞きますが、総合力で比べた時にヴィットリアは頭ひとつ抜けている。
特にグラフェンコンパウンドになってからは絶対的な信頼を置いていますし、他に変える理由が見つかりません。チームの運営側も、選手側も、それには全く異存はありません。これまで唯一の不満は長く使ったタイヤのトレッドが剥がれる場合がある、ということでしたが、一体成形になったと聞いていますから、それも改善されているはず。
「タイヤはレース結果を大きく左右する。CORSA PROは大きな武器」
CW:例えば(ツール・ド)熊野の札立峠だったり、ジャパンカップの古賀志林道だったり、下りがキモになるような有名コースもいくつかありますよね。そういう場面においてタイヤの性能次第で差がつきそうですよね。中井:本当に大切ですよ。下りが得意ではない僕には結構「ヤバい」と感じる場面は何度もありますが、ヒヤッとしたただけでタイヤには余裕がある場面も多かった。思い切って速い選手についていったり、自分から攻めることもできる。「滑るかも」とビビりながら下るのと、安心して下るのでは疲れ方も全く違います。
野寺監督:札立峠の下りと言えば、自分が出場した2009年の熊野は思い出深い大会でしたよ!当時アジアレースを席巻していたカザフスタンの(ヴァレンティン)イグリンスキーがカザフチームとして出場したんですが、彼らのタイヤは性能が悪く、僕らシマノ勢は「札立頂上で1分差なら追いつける」と踏んでいて、まさにその通りになったんです。まあ、それは極端な例ですが、タイヤ選びってそれくらい展開、そして成績に直結します。ヴィットリアの万能性はすごく武器ですね。
「CORSA PROで走る初レースが楽しみ」
CW:今チームには26Cが供給されていますが、今後28Cや、あるいは細身の24Cを使うことはありそうですか?
横山:細くすることは選択肢にありません。現状維持か、あるいは28Cか。「太いから重くて転がりも悪い」というのは過去の話ですし、ホイールとの兼ね合いもあって、細いものは重量しかメリットがない状況です。ヒルクライムなど登り一本勝負の時は良いかな、と思いますが、平坦からアップダウンまでを含むのがロードレースですから。
中井:従来のCORSAにも全く不満はありませんでしたが、CORSA PROはもう一歩先を行く完成度を持つタイヤだと感じています。こうなると楽しみなのはCORSA SPEEDの新型ですよね。特にまだ情報を聞いていませんが、圧倒的に走りが軽いSPEEDがモデルチェンジしたら、どんなことになってしまうんだろうと今からワクワクしてしまいます。とにかくCORSA PROで走る初レースが楽しみです。
提供:VTJ 制作:シクロワイアード編集部