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いよいよ日本最高峰のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンが目前に迫った。本特集では日本が誇るタイヤメーカー「iRC」がサポートする3チームに所属するトップ選手にフォーカスを当て、2023年大会に期待すること、これまでとこれから、そしてタイヤのことについて話を聞いていく。

2021年に活動を開始した気鋭のロードレースチームが「スパークルおおいたレーシングチーム」だ。国内屈指のスプリンターである黒枝士揮(兄)と咲哉(弟)、そしてGM兼監督の黒枝美樹さん(父)が、ロードレースと地元九州を盛り上げたい思い、そして新たなチャレンジとして、地元大分で立ち上げたプロチームだ。

スパークルおおいたレーシングチーム:UCIコンチネンタル登録で活躍の場を広げる

スパークルおおいたが注目を集めたのは、世界にも類を見ないスプリンター中心のチームだということ。初年度は黒枝兄弟に加えて沢田桂太郎や孫崎大樹など、中心メンバー全員がスプリントで勝てる実力を持つ選手で構成。設立1年目から勝利を挙げレースを盛り上げてきた。

昨年のツアー・オブ・ジャパン(以下、TOJ)の東京ステージでは2021年に沢田が3位、咲哉が4位、その翌年は沢田が2位、咲哉が3位を獲得。3年目となる今年、ファンからワンツーフィニッシュを望まれる中でTOJを戦うという。今回は黒枝咲哉、沢田桂太郎、そして黒枝美樹GM/監督に設立時の想い、TOJについて、そしてタイヤセッティングなどについて話を聞いた。

選手自らが価値を生み出すチームを

沢田桂太郎が優勝を掴んだ2022年のJCL宇都宮清原クリテリウム photo:Nobumichi Komori

―スパークルおおいた設立から早くも3年が経過しました。今年はチームとしてUCI登録を行ったことが大きな変化ですね

黒枝:今年からUCIコンチネンタル登録を行い、UCIの1クラスのレースにも出場できるよう体制を整えました。設立当初、2年目もクラブチームとしてツアー・オブ・ジャパン(以下、TOJ:コロナ禍では2クラスとして開催)に出場できていましたが、1クラスに戻ったTOJにも出場できるのは誇らしく感じています。

1年目からチャレンジャーとしてTOJに臨んでいましたが、今年は海外チームも参戦しますし、改めてチャレンジャーとしての気持ちを持って戦いたいと考えています。

今回インタビューに応えてくれた黒枝咲哉と新規加入の半田子竜、チーム設立の中心人物の黒枝士揮 photo:Michinari TAKAGI

―チーム設立時の想いや考えはどのようなものがあったのでしょうか。

黒枝GM:スパークルおおいたレーシングチームを立ち上げたのは2020年。翌21年に活動を開始しました。立ち上げ当初はコロナ禍でレースに出ることもできないばかりか、練習も行えないという状況に直面しており、そのような環境で選手たちは自分たちの価値を作ることができていませんでした。

難しい状況でも選手たちが自らを表現できる環境を整えたい、そんな考えのもとチームが発足しました。元々、士揮と咲哉は大分にチームを作りたいと考えていましたし、その思いに賛同してくれるメンバーがチームに加入してくれたので、チームとしての活動が始まったという経緯があります。

この2年間「他のチームがやっていないことに取り組む」ことをチームの合言葉に、色々なことにチャレンジしてきました。時には苦しいこともありましたが、自らの価値観を表現し続け、3年目を迎えています。


―設立当初から写真や動画のクオリティが高く"魅せる"ことを意識していますよね。SNSの発信も頻繁ですし、レースを盛り上げたいという思いが伝わってきます

黒枝:プロ入り前、選手生活はキラキラした世界なのかなと思っていましたが、実際は過酷で、そのようなものじゃありません。でも、そういう魅力的な発信を通してプロ選手でいることの付加価値をもっと高めたいと思っているんです。もっともっとチャレンジしたいし、ロードレースを見てもらいたい、盛り上げたいと思いチームを立ち上げています。だから作り込んだ写真や動画の発信は必要だったんです。

―沢田選手は初年度から所属していますね。加入のきっかけは?

沢田:士揮さんからチームを立ち上げるという話を聞いていて、そこに誘われたのが単純に嬉しかったんです。初期のメンバーになれるって特別なことじゃないですか。なおかつ、自分自身も自転車競技をもっと一般の方に知ってもらいたいという想いもありましたし、色々な人と交流する機会があればいいなと思っていた。

だからチームの想いに共感できましたし、このチームに入ること自体が楽しそうだなと思いましたし、ほぼ二つ返事で加入を決めました。結果的に今、本当に楽しめること、意味のあることをやらせてもらっていると感じています。

黒枝:自転車競技はファンとの距離が近いですよね。それって物理的だけじゃなくて、心の距離感もそうなんです。皆が応援してくださることでロードレースが盛り上がり、僕らが走る環境も整っていくはず。僕は大分出身で、(鹿児島の)鹿屋体育大学卒業ですから九州がホーム。九州を盛り上げていきたい気持ちはいつも持ち続けていました。

スプリンターズチームのスパークル、その編成は狙っていた

隊列を組むスパークルおおいたレーシングチーム photo:Satoru Kato

―チームにはスプリンターが集まっていますが、これは当初から狙っていたことなのでしょうか?

黒枝:意識はかなりしていますよ。自分がそうだからというわけではありませんが、やっぱり僕にとって、ロード選手の中でスプリンターが一番カッコいいと思っているんです。だからスプリンターの活躍で盛り上がれるチームがあるといいなという気持ちがありました。世界を見てもスプリンターだけを集めているチームって中々ありません。だからこそ、尖ったチームが存在した方がファンがレースを見た時に面白いのかな、と(笑)。

黒枝GM:スプリンターのレースはチームごとが組織力で競うところに魅力があると思うんですよね。

黒枝:スプリントは力のぶつかり合いでもあるんですが、チームへの信頼感と強さが勝敗を分けるので、勝った時は全員で喜べる。アシスト選手の存在は山岳勝負以上に重要ですし、そこがスプリントの魅力でもあるんです。

沢田桂太郎がスパークルおおいたレーシングチームの地元大会「おおいたいこいの道クリテリウム」で優勝をもたらす photo:Satoru Kato

黒枝GM:一方で、平坦レースだけではないのがロードレース。スプリンターにとって山岳のレースは苦手なのも事実ですし、ステージレースの場合は翌日に繋げるために遅れても一生懸命走っています。優勝争いの華やかな部分もあれば、裏で苦しんでいる選手たちもいる。その奥深さがロードレースの魅力で、そこに気がついてもらえれば面白いんじゃないかと。

黒枝:スプリンターだからと言って山岳で遅れることが良いとは思っていなく、常に全力で走っています。優勝争いとは違う場所で、その日を乗り越えられるかどうかのレースをしているので、レースを観戦する人にとってはそこにも面白さはあるかもしれませんね。

8日間のビッグレース、ツアー・オブ・ジャパンに挑む

TOJの東京ステージでの活躍が期待されるスパークルおおいた (c)スパークルおおいた

―スプリンターが輝く日もあれば、そうでない日もある。まさに来たるTOJもそのようなレースではないでしょうか。今年はTOJは久々にフルステージで開催されますが、どんな展開となるでしょうか。

黒枝:スパークルおおいたがフルステージのTOJに参戦するのは初。ただメンバーの半分は8日間のTOJを経験していますから、何もかもが初めてというわけでもありません。僕自身が狙うのは8日のうち2日間。美濃ステージ、そして最終日の東京ステージでリザルトを残したい。

美濃は過去にシングルリザルトを残していますし、得意なコースというイメージがあります。東京は2021年は3位・4位、2022年は2位・3位と続いているので、今年は僕たち自身ワンツーフィニッシュを狙っています。

沢田:もちろん、そんなに簡単にいくとは考えていません。僕はフルステージのTOJは初めてなので、まずはしっかりと最終日まで生き残ることが大事で、その上で東京ステージでスプリントを狙いたいです。

勝利をメンバー全員で喜ぶスパークルおおいた (c)スパークルおおいた

黒枝:最終日まで残ることができれば、その日はその日のレースをいつも通りに臨むだけです。ただ今年は海外チームも参戦しますし、どこのチームもリザルトを求めてくると思うので、僕らはチャレンジャーとして挑みます。そこで結果を残せるようにトレーニングに励んでいるところです。

沢田:個人的には短距離タイムトライアルで争われる堺ステージは狙えるんじゃないかとずっと考えているんです。2.6kmと非常に短くコーナー立ち上がりのダッシュでタイム差がつくので、十分に攻めることができればシングルリザルトのチャンスはあるとは思います。

レースで攻めるためには機材の信頼性は必須

設立当初よりiRCのタイヤを使用するスパークルおおいた (c)iRC

―スプリントのように、極限まで攻める時には信頼できる機材は大事ですよね。

沢田:機材の信頼性は本当に重要です。普段の練習で使っていても感覚に合わなければレース中の不安要素になってしまうので、慣れていてかつ実績のある機材を使うことは大切。タイヤに関して言えば僕たちはiRCのFORMULA PROを使っていますが、雨で滑ったことはありません。

黒枝:雨のレースで白線を踏んだ時は一瞬だけ流れますけど、アスファルトの上に戻ればグリップが戻る。スパークルは立ち上げ当初からiRCタイヤにサポートしてもらっていますが、タイヤスリップが原因となった落車はゼロです。あまりにもグリップするから、レース中にどこまで攻められるのか試そうかと冗談を言い合ったこともあります。

高いグリップ力がスパークルおおいたの勝利を支えている (c)iRC

FORMULA PROを使っていると本当にそのくらい余裕が生まれますし、レース中に前走者に何かアクシデントがあった場合に咄嗟の回避動作でもタイヤがしっかり対応してくれます。ライバルチームも含めてプロトン全員が履けば安全性は高くなるかもしれません。もしそうなったらなったでアドバンテージがなくて困りますが...(笑)。

沢田:スプリントで勝つには最終コーナーで攻めきることが本当に大切なんです。昨年勝利したJCL宇都宮清原クリテリウムはまさにタイヤの差で勝てたレースで、ライバルが最終コーナーで膨らんでいくのを横目に、そのイン側を抜けることができた。明確な機材差を感じましたね。

スパークルおおいたのメンバーはFORMULA PRO S-LIGHTを選ぶ (c)スパークルおおいた

―複数のバリエーション、そしてサイズがFORMULA PROには存在しますが、どのようなタイヤ選び、そしてセッティングでレースを走っているのでしょうか?

黒枝:スパークルおおいたのメンバーは全員軽量なS-LIGHTをチョイスしています。僕の場合、タイヤ幅は前が28Cで後ろが25Cを使っています。これはホイールのリムハイトが前45mm、後ろ54mmと異なるので、ホイールの特性に合わせるためにいくつかの組み合わせを試したところ、これが一番良かったんです。空気圧は前後5.6(体重58kg)です。

沢田:僕は練習で28Cを使うようになりましたが、レースではまだ25Cですね。空気圧はリアがおおよそ6気圧後半から7気圧にかけてセッティングして、フロントはそこからコンマ1〜2気圧ほど落としています。体重は78kg〜80kgほどを行き来していますね。

ファンと一緒にロードレースを盛り上げるスパークルおおいたレーシングチーム

集まったサポーターと共に喜ぶ沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム) photo:Satoru Kato

―ありがとうございます。ファンに向けて一言メッセージをお願いします。

沢田:レースではもちろん頑張りますので、応援をお願いします。TOJは大きなお祭りのようなレースなので、ぜひ会場に足を運んでいただいて、タイミングがあえばチームピットまで来てもらいたいです。声を掛けられる距離の近さがロードレースの魅力ですし、僕らは基本的にウェルカムな状態でお待ちしていますので顔を出していただけたら嬉しいです。

黒枝:まずはコンチネンタル登録を行い、大きなレースに出場できるようになりました。その初戦となるTOJでは勝利する姿を見てもらいたいです。そして、今後の自転車界を盛り上げていきたいと思いチームを立ち上げ、活動をしてきましたので、自転車好きとして僕らと一緒に盛り上げていきませんか。ぜひ応援をよろしくお願いします。

IRC FORMULA PRO HOOKLESS

FORMULA PRO HOOKLESS TUBELESS RBCC

サイズ重量空気圧価格
700×25C275g500~800kPa、5.0~8.0kgf/cm2、73~115PSI9,240円
700×28C310g500~700kPa、5.0~7.0kgf/cm2、73~100PSI9,240円
700×30C340g450~600kPa、4.5~6.0kgf/cm2、65~90PSI9,240円

FORMULA PRO HOOKLESS TUBELESS X-GUARD(クロスガード)

サイズ重量空気圧価格
700×25C305g500~800kPa、5.0~8.0kgf/cm2、73~115PSI9,240円
700×28C345g500~700kPa、5.0~7.0kgf/cm2、73~100PSI9,240円
700×30C375g450~600kPa、4.5~6.0kgf/cm2、65~90PSI9,240円

FORMULA PRO HOOKLESS TUBELESS READY S-LIGHT(スーパーライト)

サイズ重量空気圧価格
700×23C205g600~800kPa、6.0~8.0kgf/cm2、90~115PSI9,240円
700×25C220g500~800kPa、5.0~8.0kgf/cm2、73~115PSI9,240円
700×28C255g500~700kPa、5.0~7.0kgf/cm2、73~100PSI9,240円
700×30C275g450~600kPa、4.5~6.0kgf/cm2、65~90PSI9,240円
提供:iRC 制作:シクロワイアード編集部