2023/02/14(火) - 12:01
iRCがリリースし、人気沸騰中のレーシングクリンチャータイヤ、ASPITE PRO(アスピーテプロ)シリーズ。本章ではEFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチームの留目夕陽と、日本を代表するプロショップ「なるしまフレンド」の店長を務める藤野智一さんによるインプレッションをお届けしたい。プロ選手とショップ店長という、角度の異なる2人からの言葉に注目してほしい。
「普段はチューブレス(FORMULA PRO)なんですが、ASPITE PROもすごくいい。全然レース走れちゃう」と1500kmを乗り込んだ留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)は言い、なるしまフレンドの藤野智一店長には「グリップ力を含め、コーナリング性能がすごく魅力的」と言わしめた。
今回シクロワイアード編集部がテスターとして招聘したのは、登坂力とタイムトライアル能力を兼ね備える若きホープ留目夕陽と、かつて選手として、監督としてプロレースに携わり、現在は超有名ショップ店長として活躍する藤野智一さんという2人だ。
世界選手権個人タイムトライアル(U23)で21位。近年稀に見る好成績を叩き出した留目は、ASPITE PRO S-LIGHTを使ったロケ直前の沖縄合宿で2週間強で1,500kmを走破。雨が降れば特に滑りやすくなる沖縄の路面でスリップはなく、パンクもガラスが突き刺さった1度きりだったという。
一方の藤野店長はロケ前の乗り込み距離こそ少なかったものの、「このタイヤは総合力がいい。性能チャートで言えば綺麗な円を描きますね」と、選手時代から製品開発に携わった経験をもとに的確な評価を話す。プロ選手とショップ店長という、見方の異なる2人のトークでASPITE PROの性能を紐解きたい。
留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)
エカーズや日本ナショナルチームのメンバーとして戦績を積み重ね、2022年6月から現在チームに加入した2002年生まれの19歳。登坂力とタイムトライアル能力を兼ね備え、2021年のツアー・オブ・ジャパン新人賞、2022年はツール・ド・北海道山岳賞、全日本U23個人TT優勝、そして世界選手権ではU23カテゴリー2年目で21位と目覚ましい好成績を獲得した。
シーズン終盤にはワールドチームのスタジエとしてエース級選手と共にツール・ド・ランカウイに出場。2023年はレース経験を積み重ね、レース勘とフィジカル向上、その先にチャンスの見えるワールドチーム入りを目指す。大学時代からiRCタイヤのサポートを受けて走り続けている。
藤野智一(なるしまフレンド神宮店店長)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権を優勝するなど輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は店長としてショップに集うビギナーからエキスパートまで親身な相談に乗る。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
CW:今日はお集まりいただきありがとうございます。早速お二人にASPITE PROシリーズの印象を伺いたいのですが、留目さんは(ロケ直前の)合宿で1500kmを走ったそうですね。印象はいかがでしたか?
留目:すごく良かったですよ。普段使っているチューブレス(FORMULA PROの25C)とほぼ同じフィーリングだったので驚きました。合宿で使ったのは28CのS-LIGHTで、当然チューブレスよりも重いのでどうなんだろう?と少し疑問に思っていたのですが...。結構ひどい道も走りましたが、パンクはガラスを踏んだ一回だけでしたし。
当然重量が嵩むのでバイクの挙動は重くなりますが、それよりも安定や耐パンクというメリットが大きくなりますよね。最近はワイドリムですし、28Cは重たいからレースで嫌だなんてことも思いませんでした。ヨーロッパレース、特にヘント〜ウェヴェルヘムのような春のクラシックレースはすごく荒れているし、石畳もあるし、そういう場合は28Cが基本で30Cを選ぶ時もありますから。
藤野:私も非常に好印象でした。特にコーナリング性能はすごくいい。表面のコンパウンドだけではなく、タイヤの形状やトレッドパターンも含めた結果でしょうね。私まだリムブレーキバイクなので通常25Cなのですが、ASPITE PROはRBCC、S-LIGHTともに28Cにしても重さを全く感じません。ディスクブレーキなら制動力やリムとの相性で28Cがベストでしょうし、これだけ軽快に走れるのはすごいことです。
CW:藤野さんはテストでRBCCとS-LIGHTを乗り比べたとおっしゃっていましたが、2モデル間の乗り味の違いはありましたか?
藤野:コンパウンドもトレッドパターンも共通ですから大きな差はありませんが、 S-LIGHTは耐パンクベルトがない分走り自体もなめらか。軽さを活かそうと思ってラテックスチューブを入れたのですが、乗り味ももっとスムーズになって良かったですよ。
思い返せば前作もすごくハイレベルなタイヤでしたよね。私は下りを飛ばしてリスクを冒すのが好きなタイプですが(笑)、タイヤテストの場合はそこから更に攻めます。そういう場面においても前作はトレッドパターンも効いていて全然不安はありませんでした。でも、新型はもっと印象が良くなった。
両モデル共に総合力が高く、性能チャートで言えば綺麗な円を描くんです。平均点が高い、iRCらしいタイヤだなと思うのですが、その中でもコーナリング性能は秀でているように思います。最初から最後までスッと自然にバンクさせられるんですね。断面形状をよりラウンドさせたとのことですから、それが活きているんでしょう。
留目:僕も下りは好きなのですが、確かに不安感は全くありませんよね。それにiRCのタイヤは全体的に雨の日の安心感が強い。ドライコンディションだとタイヤの滑る・滑らないは相当攻めた状態じゃないと分かりませんが、雨の日だとその差は顕著です。特にウェットの制動力はすごくて、雨のレースであれば下りで差をつけて、足を使わず有利な展開に持ち込むことができますから。選手にとっては雨のレースなんてしょっちゅうです。だからそこでのグリップ力、コーナリングはすごく武器になります。
CW:それぞれお二人の空気圧セッティングを教えてもらえますか?
藤野:私は今体重62kgですが、RBCCは4.8〜5気圧くらい。S-LIGHTはしなやかなので、もう少し上げるのが良かったですね。5.5くらいでしょうか。
留目:僕はFORMULA PROの25Cで6気圧ですね。ASPITE PROだともう少し高く、6.2くらい。
藤野:お客さんと話していると、まだ皆さんロードタイヤ=7気圧というイメージから抜け出せないのですが、それではワイドリムと組み合わせる今のタイヤの美味しいところを全く使えませんからね...。常々ご案内しているのですが、なかなか周知徹底は苦労しています(苦笑)。
CW:2022年は各社からレーシングクリンチャータイヤが出揃った"当たり年"でした。その中においてASPITE PROはどのような特徴、あるいはメリットがあると感じますか?
藤野:実は、ここ最近はパナレーサーのAGILESTを使っていたんですよね。AGILESTとASPITE PROを比較した時、一番違うのは重量ですよね。重量値だけ見れば少しパナレーサー有利でASPITEは代わりにずっと信頼性がある。私自身はどちらもパンク経験はありませんが、手で触った時に安心感があるのはASPITE PROですし、これはお店のユーザーからもよく言われることなんです。
留目:iRC製品は海外ブランドに対して入手しやすいというのはすごく大きいメリットですよね。何かタイヤにトラブルを抱えた時、すぐショップにあるというのはすごくいい。特にここ数年は入荷遅れでモノがないものもたくさんあると聞きますし。
藤野:価格も比較的買い求めやすくて良いですよね。海外ブランドのタイヤなんて一万円を超えていますし、この先値上げも止まらないでしょうし。iRCさんは相当頑張っていると思いますよ。
藤野:私も選手時代はずっとiRCさんのサポートを受けていましたが、昔のペーパーライトとか、それこそ名前の通り紙みたいなペラさでしたよね(笑)。その時代から考えれば、総合的にとてつもない進化をしている。サイズ展開も25、28、30と今風ですし、太くしても軽快感が損なわれにくいので、28Cメイン、林道をよく走る方であれば30Cだって全く不満はないと思います。
留目:2023年はレースがFORMULA PRO(25C)、トレーニングがASPITE PRO(S-LIGHT)と聞いていますが、正直トレーニング仕様のままレースに出ることになっても全然大丈夫。FORMULA PROで普段走らせて頂いているからこそ、このASPITE PROは素晴らしいタイヤだなと感じました。
iRC ASPITE PROを乗り比べ、そして評価する
「普段はチューブレス(FORMULA PRO)なんですが、ASPITE PROもすごくいい。全然レース走れちゃう」と1500kmを乗り込んだ留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)は言い、なるしまフレンドの藤野智一店長には「グリップ力を含め、コーナリング性能がすごく魅力的」と言わしめた。
今回シクロワイアード編集部がテスターとして招聘したのは、登坂力とタイムトライアル能力を兼ね備える若きホープ留目夕陽と、かつて選手として、監督としてプロレースに携わり、現在は超有名ショップ店長として活躍する藤野智一さんという2人だ。
世界選手権個人タイムトライアル(U23)で21位。近年稀に見る好成績を叩き出した留目は、ASPITE PRO S-LIGHTを使ったロケ直前の沖縄合宿で2週間強で1,500kmを走破。雨が降れば特に滑りやすくなる沖縄の路面でスリップはなく、パンクもガラスが突き刺さった1度きりだったという。
一方の藤野店長はロケ前の乗り込み距離こそ少なかったものの、「このタイヤは総合力がいい。性能チャートで言えば綺麗な円を描きますね」と、選手時代から製品開発に携わった経験をもとに的確な評価を話す。プロ選手とショップ店長という、見方の異なる2人のトークでASPITE PROの性能を紐解きたい。
インプレッションライダー プロフィール
留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム)
エカーズや日本ナショナルチームのメンバーとして戦績を積み重ね、2022年6月から現在チームに加入した2002年生まれの19歳。登坂力とタイムトライアル能力を兼ね備え、2021年のツアー・オブ・ジャパン新人賞、2022年はツール・ド・北海道山岳賞、全日本U23個人TT優勝、そして世界選手権ではU23カテゴリー2年目で21位と目覚ましい好成績を獲得した。
シーズン終盤にはワールドチームのスタジエとしてエース級選手と共にツール・ド・ランカウイに出場。2023年はレース経験を積み重ね、レース勘とフィジカル向上、その先にチャンスの見えるワールドチーム入りを目指す。大学時代からiRCタイヤのサポートを受けて走り続けている。
藤野智一(なるしまフレンド神宮店店長)
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権を優勝するなど輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は店長としてショップに集うビギナーからエキスパートまで親身な相談に乗る。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
CW:今日はお集まりいただきありがとうございます。早速お二人にASPITE PROシリーズの印象を伺いたいのですが、留目さんは(ロケ直前の)合宿で1500kmを走ったそうですね。印象はいかがでしたか?
留目:すごく良かったですよ。普段使っているチューブレス(FORMULA PROの25C)とほぼ同じフィーリングだったので驚きました。合宿で使ったのは28CのS-LIGHTで、当然チューブレスよりも重いのでどうなんだろう?と少し疑問に思っていたのですが...。結構ひどい道も走りましたが、パンクはガラスを踏んだ一回だけでしたし。
当然重量が嵩むのでバイクの挙動は重くなりますが、それよりも安定や耐パンクというメリットが大きくなりますよね。最近はワイドリムですし、28Cは重たいからレースで嫌だなんてことも思いませんでした。ヨーロッパレース、特にヘント〜ウェヴェルヘムのような春のクラシックレースはすごく荒れているし、石畳もあるし、そういう場合は28Cが基本で30Cを選ぶ時もありますから。
藤野:私も非常に好印象でした。特にコーナリング性能はすごくいい。表面のコンパウンドだけではなく、タイヤの形状やトレッドパターンも含めた結果でしょうね。私まだリムブレーキバイクなので通常25Cなのですが、ASPITE PROはRBCC、S-LIGHTともに28Cにしても重さを全く感じません。ディスクブレーキなら制動力やリムとの相性で28Cがベストでしょうし、これだけ軽快に走れるのはすごいことです。
CW:藤野さんはテストでRBCCとS-LIGHTを乗り比べたとおっしゃっていましたが、2モデル間の乗り味の違いはありましたか?
藤野:コンパウンドもトレッドパターンも共通ですから大きな差はありませんが、 S-LIGHTは耐パンクベルトがない分走り自体もなめらか。軽さを活かそうと思ってラテックスチューブを入れたのですが、乗り味ももっとスムーズになって良かったですよ。
思い返せば前作もすごくハイレベルなタイヤでしたよね。私は下りを飛ばしてリスクを冒すのが好きなタイプですが(笑)、タイヤテストの場合はそこから更に攻めます。そういう場面においても前作はトレッドパターンも効いていて全然不安はありませんでした。でも、新型はもっと印象が良くなった。
両モデル共に総合力が高く、性能チャートで言えば綺麗な円を描くんです。平均点が高い、iRCらしいタイヤだなと思うのですが、その中でもコーナリング性能は秀でているように思います。最初から最後までスッと自然にバンクさせられるんですね。断面形状をよりラウンドさせたとのことですから、それが活きているんでしょう。
留目:僕も下りは好きなのですが、確かに不安感は全くありませんよね。それにiRCのタイヤは全体的に雨の日の安心感が強い。ドライコンディションだとタイヤの滑る・滑らないは相当攻めた状態じゃないと分かりませんが、雨の日だとその差は顕著です。特にウェットの制動力はすごくて、雨のレースであれば下りで差をつけて、足を使わず有利な展開に持ち込むことができますから。選手にとっては雨のレースなんてしょっちゅうです。だからそこでのグリップ力、コーナリングはすごく武器になります。
CW:それぞれお二人の空気圧セッティングを教えてもらえますか?
藤野:私は今体重62kgですが、RBCCは4.8〜5気圧くらい。S-LIGHTはしなやかなので、もう少し上げるのが良かったですね。5.5くらいでしょうか。
留目:僕はFORMULA PROの25Cで6気圧ですね。ASPITE PROだともう少し高く、6.2くらい。
藤野:お客さんと話していると、まだ皆さんロードタイヤ=7気圧というイメージから抜け出せないのですが、それではワイドリムと組み合わせる今のタイヤの美味しいところを全く使えませんからね...。常々ご案内しているのですが、なかなか周知徹底は苦労しています(苦笑)。
CW:2022年は各社からレーシングクリンチャータイヤが出揃った"当たり年"でした。その中においてASPITE PROはどのような特徴、あるいはメリットがあると感じますか?
藤野:実は、ここ最近はパナレーサーのAGILESTを使っていたんですよね。AGILESTとASPITE PROを比較した時、一番違うのは重量ですよね。重量値だけ見れば少しパナレーサー有利でASPITEは代わりにずっと信頼性がある。私自身はどちらもパンク経験はありませんが、手で触った時に安心感があるのはASPITE PROですし、これはお店のユーザーからもよく言われることなんです。
留目:iRC製品は海外ブランドに対して入手しやすいというのはすごく大きいメリットですよね。何かタイヤにトラブルを抱えた時、すぐショップにあるというのはすごくいい。特にここ数年は入荷遅れでモノがないものもたくさんあると聞きますし。
藤野:価格も比較的買い求めやすくて良いですよね。海外ブランドのタイヤなんて一万円を超えていますし、この先値上げも止まらないでしょうし。iRCさんは相当頑張っていると思いますよ。
藤野:私も選手時代はずっとiRCさんのサポートを受けていましたが、昔のペーパーライトとか、それこそ名前の通り紙みたいなペラさでしたよね(笑)。その時代から考えれば、総合的にとてつもない進化をしている。サイズ展開も25、28、30と今風ですし、太くしても軽快感が損なわれにくいので、28Cメイン、林道をよく走る方であれば30Cだって全く不満はないと思います。
留目:2023年はレースがFORMULA PRO(25C)、トレーニングがASPITE PRO(S-LIGHT)と聞いていますが、正直トレーニング仕様のままレースに出ることになっても全然大丈夫。FORMULA PROで普段走らせて頂いているからこそ、このASPITE PROは素晴らしいタイヤだなと感じました。
iRC ASPITE PROシリーズ スペック
iRC ASPITE PRO RBCC
サイズ | 重量 | 空気圧 | 税込価格 |
700×25C | 220g | 90~115PSI | 7,480円 |
700×28C | 250g | 80~100PSI | 7,480円 |
700×30C | 275g | 75~100PSI | 7,480円 |
iRC ASPITE PRO S-LIGHT
サイズ | 重量 | 空気圧 | 税込価格 |
700×25C | 200g | 90~115PSI | 7,480円 |
700×28C | 220g | 80~100PSI | 7,480円 |
700×30C | 245g | 75~100PSI | 7,480円 |
提供:iRC 制作:シクロワイアード編集部