2022/12/10(土) - 20:23
CWスタッフの私、磯部がAethosを手に入れた。このご時世において、エアロなし、ギミックなしという、極めてプレーンなロードバイクだ。これから3編に渡り、Aethosを選んだ理由、Aethosのスペシャリストとも言えるメカニックの手による組み上げ、"軽さの魔術師"ピーター・デンク氏へのインタビュー、そして実際乗ってみてどう実感したのかを、お伝えしていきたい。
「選んで良かった」。組み上げてから3度目のライドを終えた後、私ことCWスタッフの磯部は、シューズのダイヤルを緩めたあと、視線の先にあるAethos(エートス)をぼうっと眺めながら、確かにそう思っていた。
はっきり言ってしまうと、Aethosの良さは少し分かりづらい。実際私もファーストライド後は「...?」だったけれど、2回目は「これで良かった、かも」になり、3回目でようやく納得に繋がった。スペシャライズドお得意のエアロも、RoubaixやDivergeのような目を引く衝撃吸収機構もないけれど、Aethosは乗れば乗るほど良いものになる。納車から1ヶ月を経た今、私はそう感じている。
Aethosを選んだ理由はいくつかあるけれど、何より優先したのは、気持ちよくライドを楽しみたいという欲求だった。
なぜかといえば、CWオフィスにほど近い東京西部から、周囲を山に囲まれた埼玉県の田舎に引っ越したからだ。東京方面からのサイクリストがクルマや輪行で、あるいは自走で走りに来る(ロードもMTBも)メッカとも言える場所で、つまりそういう環境を求めたというのも大きかった。
編集部への通勤距離は10倍に増えてしまったけれど、反対に、都心のサイクリストからは羨望の眼差しを浴びるような環境を手に入れた。でも、新しい生活に慣れて落ち着いてもなお、ふとある時、プライベートで乗る回数が増えていないというか、以前よりもライドに費やす時間が減っていることに気づいた。
その理由の一つが(言い訳だけれど...)周りが山ばかりなのに、手持ちのロードバイク(ファクターONE)があまりにも高速重視仕様だったからだ。ホイールは60mmハイトだし、下りを踏み倒すために選んだギア比は細かく急峻な登りが続くこのエリアにはちょっと重すぎた。乗る機会が減るから脚力は落ちるし、そうすると余計にギアを踏めなくなる。もっと言うと、かつてシクロクロスでカテゴリー1に上がった時の「走れていた感覚」との隔絶感もあって、乗ると落ち込んでしまうのがどうにも嫌だった。
また、気持ち良く走りたい。そう思った。でも、すぐさまテンションとフィジカルを上げるのは難しい。それならば、と約1年ぼんやりと新しいロードバイク構想を練り続ける中、1番や2番じゃないけれど、ずっと頭から消えなかったのが、結果的に選ぶことになるAethosだった。
なぜ一番じゃなかったのか。失礼を承知の上で言えば、Aethosがあまりにも普通だったからだ。フレーム重量500g台という驚異的な軽さはあれど、パッと見「フツー」なディスクロードバイクは、エアロロードばかりを選んできた自分にとって正直一番じゃなかった。
でも、立ち止まってよく考えるほどに、ライドを楽しむことを優先させたいと思った。「レースバイクに乗りたい」という足かせを外すのにけっこう時間と勇気が必要だったけれど、Aethosは何台も乗り継いだサイクリストのために開発されたロードバイクだ。「純粋にロードライドを楽しむための、ひらめきが生んだ革命(HPより抜粋)」は、おそらく自分にとってベストなはずだった。
グレードはあまり迷うことなくS-WORKSにした。開発者が思う存分作った最上級グレードに乗って、そのメッセージを体感したいという思いがあったからだ。国内在庫があったことも好都合(スペシャライズドの場合、オンラインストアの在庫数が国内在庫数だ)で、こうして、あまり待つことなく、手元にフレームセットのダンボール箱が届いたのだった。
Aethosを組むのであれば、Aethosに精通した人に組んでもらいたい。そんな無理を受け入れてくれたのは東京・神宮前にある名門中の名門ショップ、なるしまフレンドのメカチーフを務める小畑郁さんだった。
おそらく国内で最も名の知れたプロショップメカニックであり、長年トップカテゴリーを走る現役レーサーとしての顔も持つ小畑さん。でも、その小畑さんが今愛機として駆るのがAethosであることは、あまり知られていない事実かもしれない。
「完成されたバイクですよね。お客さんのバイクに乗せてもらった時に、これ、レース全然できるじゃないって思ったんです」と、小畑さんは開口一番にAethosを選んだ理由を教えてくれた。「ピーター・デンクが作ったバイクだという事実も大きかったですね。いいモノに違いないと思っていたし、レースバイクとして考えた時に面白い。所有していて無駄じゃありませんから」とも。
「選んで良かった」。組み上げてから3度目のライドを終えた後、私ことCWスタッフの磯部は、シューズのダイヤルを緩めたあと、視線の先にあるAethos(エートス)をぼうっと眺めながら、確かにそう思っていた。
はっきり言ってしまうと、Aethosの良さは少し分かりづらい。実際私もファーストライド後は「...?」だったけれど、2回目は「これで良かった、かも」になり、3回目でようやく納得に繋がった。スペシャライズドお得意のエアロも、RoubaixやDivergeのような目を引く衝撃吸収機構もないけれど、Aethosは乗れば乗るほど良いものになる。納車から1ヶ月を経た今、私はそう感じている。
マイバイクとしてAethosを選ぶ。
Aethosを選んだ理由はいくつかあるけれど、何より優先したのは、気持ちよくライドを楽しみたいという欲求だった。
なぜかといえば、CWオフィスにほど近い東京西部から、周囲を山に囲まれた埼玉県の田舎に引っ越したからだ。東京方面からのサイクリストがクルマや輪行で、あるいは自走で走りに来る(ロードもMTBも)メッカとも言える場所で、つまりそういう環境を求めたというのも大きかった。
編集部への通勤距離は10倍に増えてしまったけれど、反対に、都心のサイクリストからは羨望の眼差しを浴びるような環境を手に入れた。でも、新しい生活に慣れて落ち着いてもなお、ふとある時、プライベートで乗る回数が増えていないというか、以前よりもライドに費やす時間が減っていることに気づいた。
その理由の一つが(言い訳だけれど...)周りが山ばかりなのに、手持ちのロードバイク(ファクターONE)があまりにも高速重視仕様だったからだ。ホイールは60mmハイトだし、下りを踏み倒すために選んだギア比は細かく急峻な登りが続くこのエリアにはちょっと重すぎた。乗る機会が減るから脚力は落ちるし、そうすると余計にギアを踏めなくなる。もっと言うと、かつてシクロクロスでカテゴリー1に上がった時の「走れていた感覚」との隔絶感もあって、乗ると落ち込んでしまうのがどうにも嫌だった。
また、気持ち良く走りたい。そう思った。でも、すぐさまテンションとフィジカルを上げるのは難しい。それならば、と約1年ぼんやりと新しいロードバイク構想を練り続ける中、1番や2番じゃないけれど、ずっと頭から消えなかったのが、結果的に選ぶことになるAethosだった。
なぜ一番じゃなかったのか。失礼を承知の上で言えば、Aethosがあまりにも普通だったからだ。フレーム重量500g台という驚異的な軽さはあれど、パッと見「フツー」なディスクロードバイクは、エアロロードばかりを選んできた自分にとって正直一番じゃなかった。
でも、立ち止まってよく考えるほどに、ライドを楽しむことを優先させたいと思った。「レースバイクに乗りたい」という足かせを外すのにけっこう時間と勇気が必要だったけれど、Aethosは何台も乗り継いだサイクリストのために開発されたロードバイクだ。「純粋にロードライドを楽しむための、ひらめきが生んだ革命(HPより抜粋)」は、おそらく自分にとってベストなはずだった。
グレードはあまり迷うことなくS-WORKSにした。開発者が思う存分作った最上級グレードに乗って、そのメッセージを体感したいという思いがあったからだ。国内在庫があったことも好都合(スペシャライズドの場合、オンラインストアの在庫数が国内在庫数だ)で、こうして、あまり待つことなく、手元にフレームセットのダンボール箱が届いたのだった。
Aethosと言えば小畑メカ ―なるしまフレンドでAethosを組む―
Aethosを組むのであれば、Aethosに精通した人に組んでもらいたい。そんな無理を受け入れてくれたのは東京・神宮前にある名門中の名門ショップ、なるしまフレンドのメカチーフを務める小畑郁さんだった。
おそらく国内で最も名の知れたプロショップメカニックであり、長年トップカテゴリーを走る現役レーサーとしての顔も持つ小畑さん。でも、その小畑さんが今愛機として駆るのがAethosであることは、あまり知られていない事実かもしれない。
「完成されたバイクですよね。お客さんのバイクに乗せてもらった時に、これ、レース全然できるじゃないって思ったんです」と、小畑さんは開口一番にAethosを選んだ理由を教えてくれた。「ピーター・デンクが作ったバイクだという事実も大きかったですね。いいモノに違いないと思っていたし、レースバイクとして考えた時に面白い。所有していて無駄じゃありませんから」とも。
「ケーブルやブレーキホースの出入り口の位置や場所も良い」と、流れるような手つきでフレームとパーツの下準備をこなす小畑さんは言う。カーボン目地が美しいマットブラック(サテンカーボン)のフレームに組み合わせるのは、シマノ新型アルテグラのDI2コンポーネントとC36ホイールシステムだ。
パーツ選択についてはライド編で詳しく触れようと思うけれど、デュラエースではなくR8100系アルテグラを選んだのは、デュラ同等と称されるセカンドグレードの性能を体感したかったし、少し肩の力を抜いて「ライドを愉しむ」には良い選択だと思ったからだ。シンプルなバイクゆえに、あまり組み上げた時にごちゃつかないよう、極力スペシャライズドとシマノのパーツでまとめるように気を配った。
「走りは癖がなくて素直ですよ。乗り手の思いのままに走ってくれる。」と小畑さんは続ける。「今のカーボンバイクはすごく剛性が高くなっているので、むしろアマチュアライダーにすごくフィットしますよね。軽い動作でコントロールできるし、ディスクロードユーザーがAethosに乗ったら、走りの軽さに驚くと思いますよ」。
小畑さんのAethosはS-WORKSグレードで、逆向きにつけたシートポスト、TarmacステムとMostのエアロハンドルなど、小畑さんらしいこだわりが詰まったバイクだ。公式レースには重量制限があるから特別な軽量パーツは決戦用ホイールを除いて一切つけていない。「Tarmacと比べて少し踏み心地は柔らかいけれど、僕の走り方であれば剛性不足も感じない」とも。
パーツ選択についてはライド編で詳しく触れようと思うけれど、デュラエースではなくR8100系アルテグラを選んだのは、デュラ同等と称されるセカンドグレードの性能を体感したかったし、少し肩の力を抜いて「ライドを愉しむ」には良い選択だと思ったからだ。シンプルなバイクゆえに、あまり組み上げた時にごちゃつかないよう、極力スペシャライズドとシマノのパーツでまとめるように気を配った。
「走りは癖がなくて素直ですよ。乗り手の思いのままに走ってくれる。」と小畑さんは続ける。「今のカーボンバイクはすごく剛性が高くなっているので、むしろアマチュアライダーにすごくフィットしますよね。軽い動作でコントロールできるし、ディスクロードユーザーがAethosに乗ったら、走りの軽さに驚くと思いますよ」。
小畑さんのAethosはS-WORKSグレードで、逆向きにつけたシートポスト、TarmacステムとMostのエアロハンドルなど、小畑さんらしいこだわりが詰まったバイクだ。公式レースには重量制限があるから特別な軽量パーツは決戦用ホイールを除いて一切つけていない。「Tarmacと比べて少し踏み心地は柔らかいけれど、僕の走り方であれば剛性不足も感じない」とも。
流れるような作業に目を奪われていたら、気づけば組み上げ作業も最終盤だ。プロの手によってバラバラだったパーツが一台のバイクとなっていく様子は、いつ見ていても時間が経つのを忘れてしまうもの。こうして着手から4時間ほど、Aethosを知り尽くした小畑さんだからこそのカスタマイズも行われ(写真参照)、あっという間に私のS-WORKS Aethosが形になったのだった。
組み上げたS-WORKS Aethosのパーツ構成
組み付けショップ:なるしまフレンド神宮店
言わずと知れた、東京の名門中の名門スポーツバイクプロショップ。常に「日本No.1」と評価されてきた老舗であり、ロードバイク関連のラインナップ、メンテナンスレベルは随一。スタッフも強豪ホビーレーサーや元プロ選手が多く在籍するが、その接客はとても物腰柔らかく専門的で、店内の雰囲気も親しみやすい。実践的なアドバイスにも定評がある頼れるプロショップだ。
なるしまフレンド(CWレコメンドショップ)
なるしまフレンドHP
次章では、Aethosの開発を担った稀代のロードバイクエンジニア、ピーター・デンク氏へのオンラインインタビューを紹介。Aethosとは、Aethosに込めた思いとは。
フレーム | S-WORKS Aethos(54サイズ) |
コンポーネント | シマノ R8170シリーズ ULTEGRA DI2 |
クランク | FC-R8100-P(172.5mm) |
チェーンリング&リアカセット歯数 | 52/36T、11-30T |
ホイール | シマノ WH-R8170-C36-TL |
タイヤ | スペシャライズド TURBO COTTON(28c) |
ハンドル&ステム | スペシャライズド(ハンドル420mm、ステム120mm) |
サドル | スペシャライズド POWER EXPERT |
言わずと知れた、東京の名門中の名門スポーツバイクプロショップ。常に「日本No.1」と評価されてきた老舗であり、ロードバイク関連のラインナップ、メンテナンスレベルは随一。スタッフも強豪ホビーレーサーや元プロ選手が多く在籍するが、その接客はとても物腰柔らかく専門的で、店内の雰囲気も親しみやすい。実践的なアドバイスにも定評がある頼れるプロショップだ。
なるしまフレンド(CWレコメンドショップ)
なるしまフレンドHP
次章では、Aethosの開発を担った稀代のロードバイクエンジニア、ピーター・デンク氏へのオンラインインタビューを紹介。Aethosとは、Aethosに込めた思いとは。
text:So Isobe
提供:スペシャライズド・ジャパン,シマノ,なるしまフレンド
提供:スペシャライズド・ジャパン,シマノ,なるしまフレンド