2022/11/29(火) - 13:12
レーシングタイヤの定番として世界中のサイクリストから愛されるヴィットリアのCORSAシリーズ。コットンケーシングによる優れた走行性能を実現してきた同モデルだが、今夏ナイロンケーシングの新型モデル"CORSA N.EXT(コルサ・ネクスト)"がローンチされた。CORSAの名前を冠しながらも従来の枠を飛び出したこの次世代タイヤを、徹底的にインプレッションする。
ヴィットリアのフラッグシップモデル"CORSA”シリーズは、レーシングモデルの決定版だ。プロ選手が愛用し続けたチューブラー、ホビーサイクリストに支持されるクリンチャー、近年勢力を伸ばしプロユースも開始されたチューブレスレディの3種類があり、全てがプロアマ問わずCORSAらしい走りを提供してきた。
CORSAらしさを支えるのはコットンケーシングとグラフェンコンパウンドの組み合わせ。しなやかなコットンによって路面から加わる衝撃の角を丸め、バイクの挙動に対して素直に追従することで、コンパウンドと共に高いグリップを発揮してきた。
その"らしさ”はCORSAのアイデンティティを確立する大きな要因だったものの、ヴィットリアは2022年に大きな変革に乗り出した。CORSAという名前を冠しながらも、ケーシングの素材をナイロンにスイッチした"CORSA N.EXT”をローンチ。ヴィットリアのN.EXT Generation(次世代)へと駒を進める一本だ。
ミドルグレードRubino以下に採用されてきたナイロンケーシングだが、CORSAの名前を冠した理由は、生地の密度を100TPIに変更し、コンパウンドを最先端かつ最上級の物を採用したため。ヴィットリアが誇る技術の粋を結集したナイロンケーシングタイヤということになる。
ヴィットリアのラインアップとしては、既存のCORSAに次ぐセカンドモデルというポジションとなるCORSA N.EXT。一方で、"CORSA"という名が示すように、トップレベルのパフォーマンスを持った一本として、同社のナイロンケーシングの頂点に立つ存在でもある。
これまでヴィットリアは、レースタイヤをコットンケーシングのみとし、ナイロンケーシングタイヤはトレーニングユースを前提とした耐久性重視の味付けをしてきた。一方、レーシングパフォーマンスを有したナイロンケーシングタイヤ、つまりライバル各社のハイエンドモデルに相当するプロダクトは空席だった。乗り味と性能に優れたCORSAと、耐久性とコスト面にメリットを持つRubino。CORSA N.EXTは、それぞれの長所を合わせたタイヤとしてラインアップのニッチを埋め、サイクリストのニーズを満たすピースとなる製品でもある。
テクノロジーでポイントとなるのは、新開発のコンパウンド。ヴィットリアはグラフェンを配合したコンパウンドだったが、トレッドのセンターにシリカ、サイド部分にグラフェンを配置するハイブリッド式とされた。部分ごとに素材を使い分けた結果、トラディショナルなコンパウンドとの比較では、転がり抵抗が9%、グリップが32%、耐パンク性が21%も性能向上を実現している。
Rubino PROとの比較では、クリンチャーで転がり性能が20%、耐パンク性能が9%、重量は14%アドバンテージを得ている。またチューブレスレディでは転がり性能が23%、耐パンク性能が30%向上し、重量は8%軽くなっているとヴィットリアは説明する。
トレッドパターンはCORSAシリーズの縦溝パターンを踏襲。センター部分は溝の間隔を空けることで転がり抵抗を低減させ、グリップ力が求められるサイド部分は溝の間隔を狭めている。このパターンの性能は、ワールドチームの勝利で証明されていると言っても過言ではない。
今回は、チューブレスレディとクリンチャーでそれぞれテストを行った。本ページではチューブレスレディの性能にフォーカスするインプレッションをお届けしよう。
高木:これまでCORSAというタイヤから感じていたヴィットリアらしさから飛び出した、新時代のタイヤという印象を受けました。コンパウンドはCORSAらしく低転がり抵抗、高いグリップ力を備えているのですが、ケースを中心にタイヤ全体が若干硬くなり、他ブランドのタイヤのようです。
磯部:確かにケーシングの違いは感じられましたが、自分は乗っていくうちに馴染んでいきました。元々のCORSAは懐が深くて、誰もが好きだよねっていうイメージがありますが、高木くんが思うCORSAらしさってどんなところでしょう?
高木:タイヤ全体の柔軟性が路面追従性の高さと転がりの軽さにいい影響を与えているところです。N.EXTは柔軟性を失わないまでも、コットンと比較すると硬めのタイヤかなと感じました。とはいえ、他のブランドはもっと硬めなので、ヴィットリアのタイヤらしさがある範疇での硬さという印象です。
磯部:他ブランドと比較して光るところはどんなところですか?
高木:ヴィットリア特有の転がりの軽さで、ひと漕ぎ目からその俊敏性は感じられます。乗り心地の良さも勝っていると思います。テストの際に4から6気圧の間で走行を繰り返しましたが、体重60kgの自分の場合は、4.7から5.2気圧の間がヴィットリアらしい転がりの軽さ、路面から受ける衝撃の角を取るしなやかさ、路面を捉え続けるグリップ力の高さを感じられるセッティングでした。
磯部:硬めの作りだけに、タイヤ全体を変形させてグリップさせるヴィットリアの良さを発揮させるための空気圧に関しては、セッティングがシビアだと感じました。しかも今までのCORSAは4.5気圧まで下げられたけど、N.EXTに関しては5.4から5.1気圧がベストで、少し高めに圧をあげる必要がある。
もちろん高圧ぎみに設定してコンパウンドのグリップ力だけを使うのもいいですが、自分にあった空気圧の下限で走れば乗り心地は抜群にしなやかで、白線の上を走っているかのようなスムーズな転がりと、それによるスピード維持のしやすさを感じられると思います。
ただ空気圧を下げると、何よりもブレーキがしっかりと効くようになります。5.1気圧だとブレーキング時にタイヤが潰れる感覚があって、タイヤがグリップしようとする感覚が伝わってきます。この柔軟性がヴィットリアの魅力で、N.EXTでもしっかりと受け継がれているのは間違いないです。
この柔軟性を発揮させられるほど空気圧を下げると、グリップだけではなくコーナリング中の衝撃も吸収するので外に弾かれる心配もないし、安心感に繋がってコーナーで自信を持てるはず。だから、チューブレスレディでも高めに空気圧を設定してしまう方でも、N.EXTでは少し低めに設定してみて欲しいです。
高木:今回のテストではCORSAのTLRも同時に試したんですけど、N.EXTもコーナリング中の挙動はヴィットリアのタイヤそのもの。ただ、コットンケーシングの路面を捉え続けてくれる能力には驚かされるほど良いと感じてしまったので、レースで攻めたい人の場合はコットンケーシングも視野に入れてもいいかもしれません。
ただ、タイヤ装着の面ではN.EXTが圧倒的にアドバンテージがありました。コットンCORSAはブースターやコンプレッサーを駆使してようやくビードをあげたのに対して、N.EXTはフロアポンプ一本で完了。日々のツーリングやトレーニングライドなどで実用性を考える場合はN.EXT一択ですよ。
磯部:このタイヤは空気圧を高くしなくていいから、太いタイヤほどいいかもしれないです。そうなるとツーリング目的にはばっちりハマると思います。
高木:ヴィットリアのコットンケーシングは独自の立ち位置を確立していましたが、N.EXTはナイロンケーシングを採用することで他ブランドに近い乗り味となりました。他ブランドのハイエンドと肩を並べる存在となったため、これまで硬めのタイヤに慣れ親しんだ人でも初めてのヴィットリア・タイヤとして試しやすいと思います。ヴィットリアが考えるハイエンドのナイロンケーシングタイヤをぜひ試してもらいたいです。
高木三千成(シクロワイアード編集部)
さいたまディレーブ所属選手兼シクロワイアード編集スタッフ。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経てさいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。薄くしなやかなロードタイヤを好み、2015年の総刷新以降コットンケーシングのCORSAクリンチャーはお気に入りの一つ。ナイロンケーシングのN.EXTの走りには?マークだったものの、今回のテストで「大アリ」と思わされた。
ナイロンケーシングのCORSA N.EXT ヴィットリアの次世代を占う新型タイヤ
ヴィットリアのフラッグシップモデル"CORSA”シリーズは、レーシングモデルの決定版だ。プロ選手が愛用し続けたチューブラー、ホビーサイクリストに支持されるクリンチャー、近年勢力を伸ばしプロユースも開始されたチューブレスレディの3種類があり、全てがプロアマ問わずCORSAらしい走りを提供してきた。
CORSAらしさを支えるのはコットンケーシングとグラフェンコンパウンドの組み合わせ。しなやかなコットンによって路面から加わる衝撃の角を丸め、バイクの挙動に対して素直に追従することで、コンパウンドと共に高いグリップを発揮してきた。
その"らしさ”はCORSAのアイデンティティを確立する大きな要因だったものの、ヴィットリアは2022年に大きな変革に乗り出した。CORSAという名前を冠しながらも、ケーシングの素材をナイロンにスイッチした"CORSA N.EXT”をローンチ。ヴィットリアのN.EXT Generation(次世代)へと駒を進める一本だ。
ミドルグレードRubino以下に採用されてきたナイロンケーシングだが、CORSAの名前を冠した理由は、生地の密度を100TPIに変更し、コンパウンドを最先端かつ最上級の物を採用したため。ヴィットリアが誇る技術の粋を結集したナイロンケーシングタイヤということになる。
ヴィットリアのラインアップとしては、既存のCORSAに次ぐセカンドモデルというポジションとなるCORSA N.EXT。一方で、"CORSA"という名が示すように、トップレベルのパフォーマンスを持った一本として、同社のナイロンケーシングの頂点に立つ存在でもある。
これまでヴィットリアは、レースタイヤをコットンケーシングのみとし、ナイロンケーシングタイヤはトレーニングユースを前提とした耐久性重視の味付けをしてきた。一方、レーシングパフォーマンスを有したナイロンケーシングタイヤ、つまりライバル各社のハイエンドモデルに相当するプロダクトは空席だった。乗り味と性能に優れたCORSAと、耐久性とコスト面にメリットを持つRubino。CORSA N.EXTは、それぞれの長所を合わせたタイヤとしてラインアップのニッチを埋め、サイクリストのニーズを満たすピースとなる製品でもある。
グラフェン+シリカのコンパウンドで性能を全方位向上
テクノロジーでポイントとなるのは、新開発のコンパウンド。ヴィットリアはグラフェンを配合したコンパウンドだったが、トレッドのセンターにシリカ、サイド部分にグラフェンを配置するハイブリッド式とされた。部分ごとに素材を使い分けた結果、トラディショナルなコンパウンドとの比較では、転がり抵抗が9%、グリップが32%、耐パンク性が21%も性能向上を実現している。
Rubino PROとの比較では、クリンチャーで転がり性能が20%、耐パンク性能が9%、重量は14%アドバンテージを得ている。またチューブレスレディでは転がり性能が23%、耐パンク性能が30%向上し、重量は8%軽くなっているとヴィットリアは説明する。
トレッドパターンはCORSAシリーズの縦溝パターンを踏襲。センター部分は溝の間隔を空けることで転がり抵抗を低減させ、グリップ力が求められるサイド部分は溝の間隔を狭めている。このパターンの性能は、ワールドチームの勝利で証明されていると言っても過言ではない。
CORSA N.EXTラインアップ
サイズ | 700x24C、700x26C、700x28C、700x30C、700x32C、700x34C |
ビードタイプ | チューブレスレディ、クリンチャー |
ケーシング | ナイロン100TPI |
コンパウンド | グラフェン+シリカ |
税込価格 | 10,450円(チューブレスレディ)、8,998円(クリンチャー) |
サイズ | チューブレスレディ | クリンチャー |
24C | 260g | 190g |
26C | 285g | 200g |
28C | 300g | 210g |
30C | 310g | 220g |
32C | 330g | 235g |
34C | 340g | 240g |
CORSAと相性抜群 UNIVERSAL SEALANT
80ml | 1,100円(税込) |
150ml | 1,760円(税込) |
250ml | 2,310円(税込) |
500ml | 3,190円(税込) |
1000ml | 4,730円(税込) |
今回は、チューブレスレディとクリンチャーでそれぞれテストを行った。本ページではチューブレスレディの性能にフォーカスするインプレッションをお届けしよう。
CORSA N.EXT(チューブレスレディ)を徹底インプレッション
高木:これまでCORSAというタイヤから感じていたヴィットリアらしさから飛び出した、新時代のタイヤという印象を受けました。コンパウンドはCORSAらしく低転がり抵抗、高いグリップ力を備えているのですが、ケースを中心にタイヤ全体が若干硬くなり、他ブランドのタイヤのようです。
磯部:確かにケーシングの違いは感じられましたが、自分は乗っていくうちに馴染んでいきました。元々のCORSAは懐が深くて、誰もが好きだよねっていうイメージがありますが、高木くんが思うCORSAらしさってどんなところでしょう?
高木:タイヤ全体の柔軟性が路面追従性の高さと転がりの軽さにいい影響を与えているところです。N.EXTは柔軟性を失わないまでも、コットンと比較すると硬めのタイヤかなと感じました。とはいえ、他のブランドはもっと硬めなので、ヴィットリアのタイヤらしさがある範疇での硬さという印象です。
磯部:他ブランドと比較して光るところはどんなところですか?
高木:ヴィットリア特有の転がりの軽さで、ひと漕ぎ目からその俊敏性は感じられます。乗り心地の良さも勝っていると思います。テストの際に4から6気圧の間で走行を繰り返しましたが、体重60kgの自分の場合は、4.7から5.2気圧の間がヴィットリアらしい転がりの軽さ、路面から受ける衝撃の角を取るしなやかさ、路面を捉え続けるグリップ力の高さを感じられるセッティングでした。
磯部:硬めの作りだけに、タイヤ全体を変形させてグリップさせるヴィットリアの良さを発揮させるための空気圧に関しては、セッティングがシビアだと感じました。しかも今までのCORSAは4.5気圧まで下げられたけど、N.EXTに関しては5.4から5.1気圧がベストで、少し高めに圧をあげる必要がある。
もちろん高圧ぎみに設定してコンパウンドのグリップ力だけを使うのもいいですが、自分にあった空気圧の下限で走れば乗り心地は抜群にしなやかで、白線の上を走っているかのようなスムーズな転がりと、それによるスピード維持のしやすさを感じられると思います。
ただ空気圧を下げると、何よりもブレーキがしっかりと効くようになります。5.1気圧だとブレーキング時にタイヤが潰れる感覚があって、タイヤがグリップしようとする感覚が伝わってきます。この柔軟性がヴィットリアの魅力で、N.EXTでもしっかりと受け継がれているのは間違いないです。
この柔軟性を発揮させられるほど空気圧を下げると、グリップだけではなくコーナリング中の衝撃も吸収するので外に弾かれる心配もないし、安心感に繋がってコーナーで自信を持てるはず。だから、チューブレスレディでも高めに空気圧を設定してしまう方でも、N.EXTでは少し低めに設定してみて欲しいです。
高木:今回のテストではCORSAのTLRも同時に試したんですけど、N.EXTもコーナリング中の挙動はヴィットリアのタイヤそのもの。ただ、コットンケーシングの路面を捉え続けてくれる能力には驚かされるほど良いと感じてしまったので、レースで攻めたい人の場合はコットンケーシングも視野に入れてもいいかもしれません。
ただ、タイヤ装着の面ではN.EXTが圧倒的にアドバンテージがありました。コットンCORSAはブースターやコンプレッサーを駆使してようやくビードをあげたのに対して、N.EXTはフロアポンプ一本で完了。日々のツーリングやトレーニングライドなどで実用性を考える場合はN.EXT一択ですよ。
磯部:このタイヤは空気圧を高くしなくていいから、太いタイヤほどいいかもしれないです。そうなるとツーリング目的にはばっちりハマると思います。
高木:ヴィットリアのコットンケーシングは独自の立ち位置を確立していましたが、N.EXTはナイロンケーシングを採用することで他ブランドに近い乗り味となりました。他ブランドのハイエンドと肩を並べる存在となったため、これまで硬めのタイヤに慣れ親しんだ人でも初めてのヴィットリア・タイヤとして試しやすいと思います。ヴィットリアが考えるハイエンドのナイロンケーシングタイヤをぜひ試してもらいたいです。
インプレッションライダー プロフィール
高木三千成(シクロワイアード編集部)
さいたまディレーブ所属選手兼シクロワイアード編集スタッフ。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経てさいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。薄くしなやかなロードタイヤを好み、2015年の総刷新以降コットンケーシングのCORSAクリンチャーはお気に入りの一つ。ナイロンケーシングのN.EXTの走りには?マークだったものの、今回のテストで「大アリ」と思わされた。
提供:VTJ 制作:シクロワイアード編集部