2022/12/08(木) - 17:22
世界最高峰のレース現場で愛され続けるコットンケーシングのチューブラータイヤ。現在はチューブレスに移行するチームが少なくない中で、一部のチームや選手から根強く支持されており、タイヤブランドはプロのためにチューブラーのみコットンケーシングを用意している。
そんな潮流の中、ヴィットリアはコットンケーシングにこだわり、フラッグシップCORSAの名前を冠したクリンチャーをラインアップしている。プロ選手が愛用し続けているその乗り味をクリンチャーで再現することで、タイヤのしなやかさを武器とした、優れた走行性能を多くのサイクリストに届けてきた。
だからこそ、CORSAの名前を冠したナイロンケーシングのCORSA N.EXT(コルサ・ネクスト)の登場は驚きを持って受け入れられた。薄くしなやかなコットンに空気の保持層を追加しなければならないチューブレスレディならば変革は受け入れやすいものではあるが、伝統的なクリンチャーのケーシングを置き換えた新型は果たしてCORSAなのか。CORSA グラフェン2.0バージョンとN.EXTのチューブレスレディとクリンチャーをそれぞれ試すことで、N.EXTクリンチャーの真価に迫る。
磯部:今回のテストでN.EXTとCORSAのクリンチャー、チューブレスレディを試したけど、やっぱりCORSAだよねってなるくらい良さを再確認できました。どれも完成度が高いし、CORSAらしさを残しつつ、でもそれぞれで違いを感じられたことが印象深いです。
高木:新型も、CORSAというフラッグシップの名前が与えられている理由は、乗ってみると感じるところですよね。若干ケーシングがコットンよりも硬くなっていますが、他ブランドと比較すると柔らかめの部類に入りますし、CORSAとそれ以外のタイヤの間にあるギャップを埋める一作だと思います。Rubinoと比較してもケーシング、コンパウンドともにCORSAと言えるキャラクターがありました。
磯部:そう。CORSAの良さって路面の凹凸を丸め込み、不快なノイズをカットする快適性と、タイヤが跳ねて発生するロスがない転がりの軽さ、ブレーキングやコーナリング時にタイヤ全体を使うことで得られる高いグリップ力が魅力でした。N.EXTのクリンチャーでは、それらが薄まっている気もするけど「やっぱりCORSAだよね」と感じるくらい完成度は高い。
高木:コットンのCORSAはタイヤ全体でグリップ力を生み出していましたが、N.EXTの場合はコンパウンドに頼る割合が高くなっている印象があります。センターはシリカで、サイドはグラフェンを使うコンパウンドが新しく採用されたことが、ケーシング素材の変更とばっちりハマっていると感じています。
磯部:ケーシングが硬くなったことによるロードインフォメーションの伝わり方がダイレクトになっているけど、タイヤサイドを使うまでバイクを倒し込んだ時のグリップ力はCORSAシリーズのどのモデルとも変わらないのは素晴らしい。空気圧に関してはコットンのCORSAよりも、適正と感じる幅が狭めなのでしっかりと調整した方が良いと思います。自分の場合は5〜5.5Barかな。
高木:自分の場合は体重60kgで、4Barまで空気圧を落としてみましたがケーシングが腰砕けにならず、持ち前の柔らかさを発揮しつつタイヤがグリップし続け、その空気圧で直線を走っても重さを感じることはありませんでした。ただロングライドで使うのであれば、4.5Bar〜5Barの間で調整したいですね。
磯部:転がりの軽さといえば、N.EXTとコットンケーシングのCORSAと比較すると、N.EXTの方が踏み出しが突出して軽いです。タイヤ断面が、CORSAは綺麗な真円になるのに対して、N.EXTの方はやや尖っているように見えます。断面の違いがコーナリング中の挙動に影響を与えるほどではないけど、直進時の接地面積が小さいのかなと思うほど、N.EXTの踏み出しが軽く感じました。
高木:踏み出しの軽さは確かに感じました。CORSAシリーズ共通の特徴になってしまいますが、縦溝のトレッドパターンが効いていると思います。縦溝なしのタイヤを使うこともありますが、縦溝タイヤのアドバンテージは感じています。
磯部:その軽さはN.EXTのチューブレスレディとクリンチャーでも印象は違います。クリンチャーは0〜35km/hまでの間は驚くくらい軽快で、力を必要としない。ただ、35km/hを維持しようとすると踏み足し続ける必要があると感じたのは事実。チューブレスレディはスピード維持に力が必要ないくらいスムーズに転がるから、エアロロードのように流れると例えるなら、クリンチャーは軽量クライミングバイクのように瞬発力に性能が割り当てられているよう。ヒルクライムにはクリンチャーと軽量チューブの組み合わせで、空気圧を高めに設定すると相性が良さそうです。
高木:ヴィットリアは超軽量TPUチューブをリリースしましたし、ラテックスしかり、高性能なチューブを使うことで、CORSAらしいハイスペックタイヤの良さを引き出せるはずです。チューブレスの場合は出先でのトラブルを不安に感じる方はいますし、運用しやすいクリンチャーかつ、ハイエンド同等のスペックを備えるN.EXTはライドクオリティーを高めてくれると思います。
磯部:今回はタイヤ幅28Cに統一してテストしてたから、クリンチャーは軽すぎと感じたのかもしれません。30Cや32Cを程々の空気圧に設定することで、反応性と気持ちよく感じる巡航速度のバランスが取れるという期待感もあります。何よりもCORSAシリーズと呼べるほどの高い性能を実現している素晴らしいタイヤなのは間違いないです。
高木:ラインアップの並びで見るとコットンのCORSAにつぐセカンドグレードと思われますが、レースで使っても良いと思えるだけの性能を備えていますし、実質1.5グレードと言っても過言では無いです。レーサーからホビーライダーまで、扱いやすくかつ良さを感じられるタイヤなので、ぜひ試してもらいたいと思います。
高木三千成(シクロワイアード編集部)
さいたまディレーブ所属選手兼シクロワイアード編集スタッフ。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経てさいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。薄くしなやかなロードタイヤを好み、2015年の総刷新以降コットンケーシングのCORSAクリンチャーはお気に入りの一つ。ナイロンケーシングのN.EXTの走りには?マークだったものの、今回のテストで「大アリ」と思わされた。
そんな潮流の中、ヴィットリアはコットンケーシングにこだわり、フラッグシップCORSAの名前を冠したクリンチャーをラインアップしている。プロ選手が愛用し続けているその乗り味をクリンチャーで再現することで、タイヤのしなやかさを武器とした、優れた走行性能を多くのサイクリストに届けてきた。
だからこそ、CORSAの名前を冠したナイロンケーシングのCORSA N.EXT(コルサ・ネクスト)の登場は驚きを持って受け入れられた。薄くしなやかなコットンに空気の保持層を追加しなければならないチューブレスレディならば変革は受け入れやすいものではあるが、伝統的なクリンチャーのケーシングを置き換えた新型は果たしてCORSAなのか。CORSA グラフェン2.0バージョンとN.EXTのチューブレスレディとクリンチャーをそれぞれ試すことで、N.EXTクリンチャーの真価に迫る。
CORSA N.EXT(クリンチャー)ラインアップ
サイズ | 24C(190g)、26C(200g)、28C(210g)、30C(220g)、32C(235g)、34C(240g) |
ビードタイプ | チューブレスレディ、クリンチャー |
ケーシング | ナイロン100TPI |
コンパウンド | グラフェン+シリカ |
税込価格 | 7,997円(クリンチャー) |
ナイロンケーシングで伝統を再現するCORSA N.EXTクリンチャーをテスト
磯部:今回のテストでN.EXTとCORSAのクリンチャー、チューブレスレディを試したけど、やっぱりCORSAだよねってなるくらい良さを再確認できました。どれも完成度が高いし、CORSAらしさを残しつつ、でもそれぞれで違いを感じられたことが印象深いです。
高木:新型も、CORSAというフラッグシップの名前が与えられている理由は、乗ってみると感じるところですよね。若干ケーシングがコットンよりも硬くなっていますが、他ブランドと比較すると柔らかめの部類に入りますし、CORSAとそれ以外のタイヤの間にあるギャップを埋める一作だと思います。Rubinoと比較してもケーシング、コンパウンドともにCORSAと言えるキャラクターがありました。
磯部:そう。CORSAの良さって路面の凹凸を丸め込み、不快なノイズをカットする快適性と、タイヤが跳ねて発生するロスがない転がりの軽さ、ブレーキングやコーナリング時にタイヤ全体を使うことで得られる高いグリップ力が魅力でした。N.EXTのクリンチャーでは、それらが薄まっている気もするけど「やっぱりCORSAだよね」と感じるくらい完成度は高い。
高木:コットンのCORSAはタイヤ全体でグリップ力を生み出していましたが、N.EXTの場合はコンパウンドに頼る割合が高くなっている印象があります。センターはシリカで、サイドはグラフェンを使うコンパウンドが新しく採用されたことが、ケーシング素材の変更とばっちりハマっていると感じています。
磯部:ケーシングが硬くなったことによるロードインフォメーションの伝わり方がダイレクトになっているけど、タイヤサイドを使うまでバイクを倒し込んだ時のグリップ力はCORSAシリーズのどのモデルとも変わらないのは素晴らしい。空気圧に関してはコットンのCORSAよりも、適正と感じる幅が狭めなのでしっかりと調整した方が良いと思います。自分の場合は5〜5.5Barかな。
高木:自分の場合は体重60kgで、4Barまで空気圧を落としてみましたがケーシングが腰砕けにならず、持ち前の柔らかさを発揮しつつタイヤがグリップし続け、その空気圧で直線を走っても重さを感じることはありませんでした。ただロングライドで使うのであれば、4.5Bar〜5Barの間で調整したいですね。
磯部:転がりの軽さといえば、N.EXTとコットンケーシングのCORSAと比較すると、N.EXTの方が踏み出しが突出して軽いです。タイヤ断面が、CORSAは綺麗な真円になるのに対して、N.EXTの方はやや尖っているように見えます。断面の違いがコーナリング中の挙動に影響を与えるほどではないけど、直進時の接地面積が小さいのかなと思うほど、N.EXTの踏み出しが軽く感じました。
高木:踏み出しの軽さは確かに感じました。CORSAシリーズ共通の特徴になってしまいますが、縦溝のトレッドパターンが効いていると思います。縦溝なしのタイヤを使うこともありますが、縦溝タイヤのアドバンテージは感じています。
磯部:その軽さはN.EXTのチューブレスレディとクリンチャーでも印象は違います。クリンチャーは0〜35km/hまでの間は驚くくらい軽快で、力を必要としない。ただ、35km/hを維持しようとすると踏み足し続ける必要があると感じたのは事実。チューブレスレディはスピード維持に力が必要ないくらいスムーズに転がるから、エアロロードのように流れると例えるなら、クリンチャーは軽量クライミングバイクのように瞬発力に性能が割り当てられているよう。ヒルクライムにはクリンチャーと軽量チューブの組み合わせで、空気圧を高めに設定すると相性が良さそうです。
高木:ヴィットリアは超軽量TPUチューブをリリースしましたし、ラテックスしかり、高性能なチューブを使うことで、CORSAらしいハイスペックタイヤの良さを引き出せるはずです。チューブレスの場合は出先でのトラブルを不安に感じる方はいますし、運用しやすいクリンチャーかつ、ハイエンド同等のスペックを備えるN.EXTはライドクオリティーを高めてくれると思います。
磯部:今回はタイヤ幅28Cに統一してテストしてたから、クリンチャーは軽すぎと感じたのかもしれません。30Cや32Cを程々の空気圧に設定することで、反応性と気持ちよく感じる巡航速度のバランスが取れるという期待感もあります。何よりもCORSAシリーズと呼べるほどの高い性能を実現している素晴らしいタイヤなのは間違いないです。
高木:ラインアップの並びで見るとコットンのCORSAにつぐセカンドグレードと思われますが、レースで使っても良いと思えるだけの性能を備えていますし、実質1.5グレードと言っても過言では無いです。レーサーからホビーライダーまで、扱いやすくかつ良さを感じられるタイヤなので、ぜひ試してもらいたいと思います。
インプレッションライダー プロフィール
高木三千成(シクロワイアード編集部)
さいたまディレーブ所属選手兼シクロワイアード編集スタッフ。学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経てさいたまディレーブへと移籍。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。薄くしなやかなロードタイヤを好み、2015年の総刷新以降コットンケーシングのCORSAクリンチャーはお気に入りの一つ。ナイロンケーシングのN.EXTの走りには?マークだったものの、今回のテストで「大アリ」と思わされた。
提供:VTJ 制作:シクロワイアード編集部