2022/09/30(金) - 17:33
新潟と長野をまたぎ、上信越高原と妙高戸隠連山の2つの国立公園が広がる信越エリア。近年、国内有数のサイクリングフィールドとして注目されている。今シーズン、この地に、とある"夢の車両"が誕生したという。その正体を知り、実際に体験すべく信越へと向かった。
こんにちは、自転車ジャーナリストのハシケンです。坂好きモデルでサイクリングアドバイザーの日向涼子と夫婦でペダルを漕ぐ日々。8月下旬、1年ぶりに信越エリアに訪れた。僕らが信越エリアでサイクリングを楽しむときは、北陸新幹線が停まるJR飯山駅を玄関口に利用することが多い。飯山から走り始めると、サイクリストにとって贅沢この上ないフィールドが広がっているからだ。
志賀高原エリアには日本国道最高地点のある渋峠。野沢温泉スキー場のヒルクライムとMTBコース、グラベルの聖地である斑尾高原、山岳高原エリアが広がる妙高・黒姫など。すべて飯山を起点に自転車で走れる範囲にある。1年前には、信越エリアを象徴する信越五岳(北信五岳)の山岳ロードをつないで走る「5 Peaks Challenge 2021 by #信越ペダル」に挑戦。その累積獲得標高は10000mに迫るビッグチャレンジだった。
昨年挑んだ5 Peaks Challengeのコース詳細はこちらの特集ページにて。なお、今年も10月31日までの期間で「5 Peaks Challenge 2022 by #信越ペダル」として開催されているので、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
さて、今回の信越エリアでの、「とある」車両を使ったサイクリング体験は、ロングライドの新たな遊び方を提案してくれる。きっと多くのサイクリストが未だかつて体験したことのない世界観にワクワクするはずだ。
その新しい体験を叶えてくれるのが、”夢の車両”こと、サイクルツアーサポートバスだ。これは信越エリアのサイクリングはじめアウトドアアクティビティ全般をサポートする信越自然郷が企画し誕生した、いわゆるプライベートサポートカーだ。
サイクリングの全行程を帯同サポートしてくれて、ライド中に不要な荷物はすべて運搬してくれる。疲れてしまったり、メカトラブルになってしまっても安心! マイクロバスの後部を改造して、バイクをそのまま積み込むこともできる。もちろん、自転車工具やフロアポンプ、サイクルラックも用意。ルーフにも常時10台分のバイクを積載可能なため、10人を超えるグループライドでも全員分の自転車を積み、天候やコースなどによってルートを自由にワープすることもできる。
さらに、バスに特注で設置されたタープを広げれば、サイクリングにプラスαな楽しみが広がる。いわゆる最近流行りのバイク&キャンプ的な世界観。アウトドアアクティビティとしてのサイクリングを体験できる。
見晴らしの良いロケーションでアウトドアランチを楽しみ、ラグジュアリーなひと時が約束される。そんなことを想像するだけで、ワクワクする気持ちが抑えられない。
自然あふれる信越エリアに誕生したサイクルツアーサポートバス。このほかにも活用次第では、ただ単にサイクリングを楽しむだけでない、サポートバス利用による付加価値が、新しいサイクリングの楽しみ方や世界を無限に広げてくれるだろう。
今回、僕らは仲間たちとともに実際にこのサイクルツアーサポートバスを1日利用して、山岳ロングライドにチャレンジした。この体験があまりに魅力的すぎて、もっと多くのサイクリストに知ってもらいたいと心の底から思った。そのため、前置きなしに冒頭からこのサポートバスの特徴をザッと紹介することにした。「ところでプライベートバスって料金がお高いのでは?」そんな疑問にも、以降のレポートで触れていくことにしよう。
それでは、ここからはサイクルツアーサポートバスを利用した僕らの信越山岳ロングライドをお楽しみください。
東京方面から信越エリアへのアクセスは北陸新幹線がおすすめだ。玄関口となる飯山駅までは、東京駅からはくたか号で1時間50分。飯山駅には、信越自然郷の拠点となる信越自然郷アクティビティセンターがあり、アウトドアギアのレンタルや体験型ツアーの案内、情報提供など信越でのアクティビティをフルコーディネートしてくれる。中でも取り揃えるレンタサイクルの台数とバリエーションは、国内でも指折り。
ロード、MTB、小径車、e-BIKE各種、子供乗せのチャイルドトレーラーも用意がある。手ぶらで飯山に向かって、駅でロードバイクやe-BIKEをレンタルして走り出す、ということもできる。
今回僕らは飯山駅で3人の仲間たちと落ち合った。そして飯山駅舎から外に出ると、駅前ロータリーには、レトロ感あふれるクラシックな車両が僕らの到着を待っていてくれた。今日のライドは、このサイクルツアーサポートバスにお世話になる。ここで、簡単にこのバスについて紹介しよう。
丸いフロントライトとメッキの外装がレトロな味わいがあり、一般的なレースサポートカーとは異なる雰囲気が印象的。サイクルツアーサポートバスは妙高のバス会社が運行管理し、車両の通行が困難な一部の細い林道などを除いてフルで帯同してくれる。
利用方法は、まず「信越自然郷アクテビティセンター」へ利用計画やコースなどをまず問い合わせしてみよう。その後、バス運行会社へ直接予約をすれば利用可能となる。気になる利用料金は、バスを1日チャーターして信越エリアをしっかり走り回るとおよそ10万円ほど。距離や利用時間により料金は異なるが、たとえば10人グループで利用すれば1人あたり1万円ほどの予算で、単純にロングライドするだけでは体験できない楽しい遊び方ができたり、自転車旅の道中の安心を手にすることができる。
今回、ぼくらが計画実行したプランは、信越エリアでサイクルツアーサポートバスを上手に使ったライド企画としてなかなかインパクトがあってオススメだ。
今回のライドのゴール地点は、渋峠にある日本国道最高地点の石碑だ。志賀高原から渋峠のロングヒルクライムをしたあと、この石碑の前でやること……、それはビールで乾杯だ!!
とても画期的かつ斬新なプランで、サポートバスがあるからこそのプランだろう。サポートバスなしではイメージすら湧かない。当然、アルコールを飲んだ後は、サポートバスにバイクを積んでバスで下山という流れだ。
そんな最高のフィナーレを楽しみにしつつ、飯山駅からサポートバスが帯同してくれるライドをスタートさせた。市内を流れる千曲川には河川敷を爽快に走れるサイクリングロードが続いている。飯山駅からほんの10分も走らせれば、開放的な千曲川沿いだ。雄大な山並みを眺めながらフラットな川沿いのルートを、サイクルツアーサポートバスを後ろに従えて北上していく。このあとはじまるヒルクライム前のウォーミングアップにはちょうどよいアプローチだ。
僕ら5人のためだけにサポートバスが随行してくれている特別感。これは普段の週末などに仲間たちと走るロングライドとはまったく気持ちが違う。そう、スペシャルなイベントなのだ。
千曲川沿いを15kmほど走ると、野沢温泉エリアが近づいてくる。「野沢温泉自転車祭」が毎年10月初旬(2022年は10月1日・2日予定)に開催される野沢温泉は、自転車が盛んな温泉地として有名だ。グリーンシーズンの野沢温泉スキー場は、MTB専用のロングトレイルコースがあり、そこを横断するようにオンロードの坂道が通っている。イベントでは初日がMTBロングダウンヒル(6.5km)、2日目がオンロードのヒルクライム(13.2km)を楽しめる。
今回は、麓から標高1417m地点のやまびこ駅まで、観光気分も味わうため全員でスキー場の長坂ゴンドラリフトを利用。ゴンドラに愛車と共に乗り込み、一緒におよそ15分間の空中散歩を楽しんだ。もちろん、ガッツリとライドしたければスキー場のヒルクライムコースがおすすめ。平均勾配7%超えの走りごたえ満点のハードな上り坂だ。途中に見晴台もあるから、信越の絶景を楽しみながらヒルクライムを楽しむとよいだろう。
一方、体力レベルに応じてこのヒルクライム区間だけサポートバスに乗ってワープしてもよいのだ。また、参加者の足並みが揃っていなくても、サポートバスに予備のeバイクを積んでおけば、上り区間だけロードからeバイクに乗り換えて全てのルートを無理なく楽しく実走することもできてしまう。このようにサポートバスは、体力に自信がない人や初心者、体力差が大きいメンバーが集まってライドする時に大活躍してくれる。
野沢温泉スキー場のゴンドラ休憩を挟んで、ここからは野沢温泉エリアから志賀高原エリアへと奥志賀高原栄線を南下していく。標高1200~1600m地帯の山伝いのアップダウンを繰り返しながらのライドは爽快そのもの。手付かずの自然が広がる上ノ平からカヤの平までの高原を一気に走り抜けていく。急勾配区間はほぼなく、一列になって緩やかなコーナーを次々に抜けていける気持ちよいルート。ちなみに、この尾根沿いのルートは11月初旬から5月下旬までは冬季通行止めとなるので、チャレンジする時期には注意が必要だ。
サポートバスも僕らの背後を一定間隔で随行。仲間と隊列を組みながら、サポートバスを後ろに従えて走るなんて、まるでプロチームのような気分だ。
爽快に高原を駆け抜けていると、広大な草原が広がるカヤの平高原が姿をあらわした。お待ちかねのランチ休憩。牧草地のど真ん中に停めたサイクルツアーサポートバス。やや離れたところでは同じく食事中の牛たちの姿も。こんな開放的な空間でランチタイムとは、最高という言葉しか出てこない。
ここは皆で手分けをしてランチの準備に取り掛かる。サポートバスにはアウトドアテーブルやイスが積んであり、もちろんサイクルラックもある。好きなタイミングで休憩やランチタイムにできることは嬉しい限り。この日は、今回のバスを予約するタイミングで「地元の方おすすめのお弁当」を教えていただきバスに準備していた。
地元食材を使用したお弁当は、地元のホテルが用意してくれたスペシャルランチボックス。こうして地元の食を楽しむことが出来れば、旅の思い出がひとつ増えるというもの。カフェやレストランに立ち寄るのもいいけれど、お店が少ない山岳コースライドでは、おいしいランチは贅沢な時間。ましてやコンビニ弁当で済ませるのとでは大違いだ。
仲間たちと満足度の高いランチ時間を終えたら、バスにあらかじめ積んでいたドリンクをボトルに追加。ちなみに、ドリンクはバスに備付けの冷蔵庫で冷やておける。ちなみに、先ほどゴンドラ乗車前にNagasaka cafeで購入した地ビールもこの中に。給水準備を完了させて、ふたたびサポートバスと共に走り出した。
ここからのルートは次のとおり。これまで走ってきた奥志賀高原栄線を走ったのち、北信州もみじわかばラインへと合流して志賀高原をめざす。野沢温泉からここまでの林道区間は、下りの勢いで上り返せるような緩やかなアップダウンなので、リズミカルに爽快な高原サイクリングを体験できる。また、北信州もみじわかばラインの名の通り、これからの季節は赤黄の美しいトンネルに変わり、また夏とは違った世界を楽しめるだろう。
今回サイクルツアーサポートバスを利用した、全長およそ100kmのルートのフィナーレは国道292号。聞き覚えのあるサイクリストも多いはず。この日本国道最高地点へと続く志賀草津高原ルートは、誰もが一度はチャレンジしたい憧れの道だからだ。志賀高原から国道最高地点までは、およそ13kmのヒルクライム。
ここで一旦、サポートバスから最後のエナジーバーを受け取って登坂へと向かう。平均勾配は5%以下の緩やかなヒルクライムは、ついついペースアップしたくなる。5人は阿吽の呼吸で先頭交代しながら、ひとつひとつコーナーをクリアしていく。足は疲れ気味だが、僕ら専用のプライベートサポートバスの存在が今回のライドに特別な高揚感を与えてくれていることを実感する。
ゴールが近づくにつれ、山並みは霧に包まれていった。過去の経験から、ここ渋峠は10回訪れて3回晴れれば御の字。霧でも仕方がないのだ。過去に走ったダイナミックな九十九折りのマウンテンロードの記憶を呼び覚ましつつ、単色に覆われた渋峠のピークをめざした。
ゴールまで残り1kmを切り、サポートバスがゴール地点へと先回り。僕らのフィニッシュの瞬間を待ち構えてくれる粋な演出だ。
長野と群馬の県境にある渋峠のピークを過ぎて間もなく、うっすらとサポートバスのヘッドライトの光が確認できる。その横に日本国道最高地点の石碑を確認した。思わず、5人全員で歓喜の声と拳をあげながらフィニッシュへ。標高2,172mの国道最高地点は、何度訪れても特別な瞬間として記憶に残る。
特に今回はフィニッシュ直後に国道最高地点の石碑前での乾杯ビールという、この上ないフィナーレ。この発想は、今回のライドに参加するまで思いもしなかった。峠は上ったら下るもの。サイクリングの途中でアルコールを飲むのはご法度。そんな常識を持っていたら思いつくわけがない。
しかし、このサイクルツアーサポートバスの存在が良い意味でサイクリングの常識をぶち壊してくれた。信越自然郷アクティビティセンターが全国に先駆けてはじめたこのワンランク上のサイクリングサービスは、魅力に溢れていると思う。
渋峠を走っている時は濃霧に包まれていた山肌も、気づけば姿を現し最高のロケーションが広がっていた。100km走って、日本国道最高地点で躊躇なく飲むビールの味と言ったら……!
ただシンプルに頑張って走って、地元のカフェに立ち寄って楽しむ。そんな従来のスタイルも悪くはないけれど、サイクルツアーサポートバスを利用してのライドを一度体験してしまうと……。今後、信越エリアに走りに行く機会はプライベートも含めて多々あると思うので、その際はサイクルツアーサポートバスを利用するつもりだ。
サイクルツアーサポートバスは、楽しむシンプルにロングライドをするだけの楽しみの幅をグッと広げてくれるものだった。自転車文化が根付き、メジャーなアクティビティとしてその遊び方も多様な欧米では、レジャーとしてのサイクリングを安心して楽しむためのサポートカーの存在やサポートカー付きのツアーがあるが、国内ではまだまだ貸出スタイルのプライベートサポートバスは数少ない。
ショップチームなどでサポートカーを持っているところもあるが、この場合は誰かしらサポートに徹することになる。でもサポートバスなら誰も犠牲になることなく仲間全員でサイクリングを楽しむことができる。
さらに、今回のライドを終えて魅力に感じたことは、サイクルツアーサポートバスはもちろん、信越エリアでのサイクリングを充実したものにしてくれる窓口となる信越自然郷アクティビティセンターの存在だった。まさに信越エリアのコンシェルジュ。はじめての土地に走りにいく時、推奨ルートがわからない場合が多いが、地元に詳しいガイドが体力レベルやライドコンセプトに応じてルートを提案してくれる。
さらに、信越という広域エリアを案内するため、各エリアごとに詳しいガイドを紹介してくれる。コースはもとより、おススメの飲食店や立ち寄りどころの情報提供や、プライベートの自転車旅をフルパッケージでコーディネートしてくれる。もちろん希望があればランチを本格バーベキューにしてもよいだろう。必要な調理キットの貸出しもある。
あらためて、約100km走った先の日本国道最高地点で仲間たちとグビっといくビールは至福だった。飲んだあとはそのままサポートバスに乗り込んで、この日宿泊する麓の湯田中温泉にあるサイクリストに優しい宿「HOTEL&RESORT きよみず望山荘」(※2024年11月現在休業中)へ向けて出発。ほろ酔いのなか、車中でこの日のライドの思い出話に花を咲かせ、改めてスペシャルなライドだったことを実感するのだった。
坂バカ夫妻、再び信越の地へ。
こんにちは、自転車ジャーナリストのハシケンです。坂好きモデルでサイクリングアドバイザーの日向涼子と夫婦でペダルを漕ぐ日々。8月下旬、1年ぶりに信越エリアに訪れた。僕らが信越エリアでサイクリングを楽しむときは、北陸新幹線が停まるJR飯山駅を玄関口に利用することが多い。飯山から走り始めると、サイクリストにとって贅沢この上ないフィールドが広がっているからだ。
志賀高原エリアには日本国道最高地点のある渋峠。野沢温泉スキー場のヒルクライムとMTBコース、グラベルの聖地である斑尾高原、山岳高原エリアが広がる妙高・黒姫など。すべて飯山を起点に自転車で走れる範囲にある。1年前には、信越エリアを象徴する信越五岳(北信五岳)の山岳ロードをつないで走る「5 Peaks Challenge 2021 by #信越ペダル」に挑戦。その累積獲得標高は10000mに迫るビッグチャレンジだった。
昨年挑んだ5 Peaks Challengeのコース詳細はこちらの特集ページにて。なお、今年も10月31日までの期間で「5 Peaks Challenge 2022 by #信越ペダル」として開催されているので、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
想像するだけでワクワクが止まらない"夢の車両"
さて、今回の信越エリアでの、「とある」車両を使ったサイクリング体験は、ロングライドの新たな遊び方を提案してくれる。きっと多くのサイクリストが未だかつて体験したことのない世界観にワクワクするはずだ。
その新しい体験を叶えてくれるのが、”夢の車両”こと、サイクルツアーサポートバスだ。これは信越エリアのサイクリングはじめアウトドアアクティビティ全般をサポートする信越自然郷が企画し誕生した、いわゆるプライベートサポートカーだ。
サイクリングの全行程を帯同サポートしてくれて、ライド中に不要な荷物はすべて運搬してくれる。疲れてしまったり、メカトラブルになってしまっても安心! マイクロバスの後部を改造して、バイクをそのまま積み込むこともできる。もちろん、自転車工具やフロアポンプ、サイクルラックも用意。ルーフにも常時10台分のバイクを積載可能なため、10人を超えるグループライドでも全員分の自転車を積み、天候やコースなどによってルートを自由にワープすることもできる。
さらに、バスに特注で設置されたタープを広げれば、サイクリングにプラスαな楽しみが広がる。いわゆる最近流行りのバイク&キャンプ的な世界観。アウトドアアクティビティとしてのサイクリングを体験できる。
見晴らしの良いロケーションでアウトドアランチを楽しみ、ラグジュアリーなひと時が約束される。そんなことを想像するだけで、ワクワクする気持ちが抑えられない。
自然あふれる信越エリアに誕生したサイクルツアーサポートバス。このほかにも活用次第では、ただ単にサイクリングを楽しむだけでない、サポートバス利用による付加価値が、新しいサイクリングの楽しみ方や世界を無限に広げてくれるだろう。
今回、僕らは仲間たちとともに実際にこのサイクルツアーサポートバスを1日利用して、山岳ロングライドにチャレンジした。この体験があまりに魅力的すぎて、もっと多くのサイクリストに知ってもらいたいと心の底から思った。そのため、前置きなしに冒頭からこのサポートバスの特徴をザッと紹介することにした。「ところでプライベートバスって料金がお高いのでは?」そんな疑問にも、以降のレポートで触れていくことにしよう。
サポートバスと一緒に信越ロングライドへ
それでは、ここからはサイクルツアーサポートバスを利用した僕らの信越山岳ロングライドをお楽しみください。
東京方面から信越エリアへのアクセスは北陸新幹線がおすすめだ。玄関口となる飯山駅までは、東京駅からはくたか号で1時間50分。飯山駅には、信越自然郷の拠点となる信越自然郷アクティビティセンターがあり、アウトドアギアのレンタルや体験型ツアーの案内、情報提供など信越でのアクティビティをフルコーディネートしてくれる。中でも取り揃えるレンタサイクルの台数とバリエーションは、国内でも指折り。
ロード、MTB、小径車、e-BIKE各種、子供乗せのチャイルドトレーラーも用意がある。手ぶらで飯山に向かって、駅でロードバイクやe-BIKEをレンタルして走り出す、ということもできる。
今回僕らは飯山駅で3人の仲間たちと落ち合った。そして飯山駅舎から外に出ると、駅前ロータリーには、レトロ感あふれるクラシックな車両が僕らの到着を待っていてくれた。今日のライドは、このサイクルツアーサポートバスにお世話になる。ここで、簡単にこのバスについて紹介しよう。
丸いフロントライトとメッキの外装がレトロな味わいがあり、一般的なレースサポートカーとは異なる雰囲気が印象的。サイクルツアーサポートバスは妙高のバス会社が運行管理し、車両の通行が困難な一部の細い林道などを除いてフルで帯同してくれる。
利用方法は、まず「信越自然郷アクテビティセンター」へ利用計画やコースなどをまず問い合わせしてみよう。その後、バス運行会社へ直接予約をすれば利用可能となる。気になる利用料金は、バスを1日チャーターして信越エリアをしっかり走り回るとおよそ10万円ほど。距離や利用時間により料金は異なるが、たとえば10人グループで利用すれば1人あたり1万円ほどの予算で、単純にロングライドするだけでは体験できない楽しい遊び方ができたり、自転車旅の道中の安心を手にすることができる。
今回、ぼくらが計画実行したプランは、信越エリアでサイクルツアーサポートバスを上手に使ったライド企画としてなかなかインパクトがあってオススメだ。
今回のライドのゴール地点は、渋峠にある日本国道最高地点の石碑だ。志賀高原から渋峠のロングヒルクライムをしたあと、この石碑の前でやること……、それはビールで乾杯だ!!
とても画期的かつ斬新なプランで、サポートバスがあるからこそのプランだろう。サポートバスなしではイメージすら湧かない。当然、アルコールを飲んだ後は、サポートバスにバイクを積んでバスで下山という流れだ。
そんな最高のフィナーレを楽しみにしつつ、飯山駅からサポートバスが帯同してくれるライドをスタートさせた。市内を流れる千曲川には河川敷を爽快に走れるサイクリングロードが続いている。飯山駅からほんの10分も走らせれば、開放的な千曲川沿いだ。雄大な山並みを眺めながらフラットな川沿いのルートを、サイクルツアーサポートバスを後ろに従えて北上していく。このあとはじまるヒルクライム前のウォーミングアップにはちょうどよいアプローチだ。
僕ら5人のためだけにサポートバスが随行してくれている特別感。これは普段の週末などに仲間たちと走るロングライドとはまったく気持ちが違う。そう、スペシャルなイベントなのだ。
千曲川沿いを15kmほど走ると、野沢温泉エリアが近づいてくる。「野沢温泉自転車祭」が毎年10月初旬(2022年は10月1日・2日予定)に開催される野沢温泉は、自転車が盛んな温泉地として有名だ。グリーンシーズンの野沢温泉スキー場は、MTB専用のロングトレイルコースがあり、そこを横断するようにオンロードの坂道が通っている。イベントでは初日がMTBロングダウンヒル(6.5km)、2日目がオンロードのヒルクライム(13.2km)を楽しめる。
今回は、麓から標高1417m地点のやまびこ駅まで、観光気分も味わうため全員でスキー場の長坂ゴンドラリフトを利用。ゴンドラに愛車と共に乗り込み、一緒におよそ15分間の空中散歩を楽しんだ。もちろん、ガッツリとライドしたければスキー場のヒルクライムコースがおすすめ。平均勾配7%超えの走りごたえ満点のハードな上り坂だ。途中に見晴台もあるから、信越の絶景を楽しみながらヒルクライムを楽しむとよいだろう。
一方、体力レベルに応じてこのヒルクライム区間だけサポートバスに乗ってワープしてもよいのだ。また、参加者の足並みが揃っていなくても、サポートバスに予備のeバイクを積んでおけば、上り区間だけロードからeバイクに乗り換えて全てのルートを無理なく楽しく実走することもできてしまう。このようにサポートバスは、体力に自信がない人や初心者、体力差が大きいメンバーが集まってライドする時に大活躍してくれる。
野沢温泉スキー場のゴンドラ休憩を挟んで、ここからは野沢温泉エリアから志賀高原エリアへと奥志賀高原栄線を南下していく。標高1200~1600m地帯の山伝いのアップダウンを繰り返しながらのライドは爽快そのもの。手付かずの自然が広がる上ノ平からカヤの平までの高原を一気に走り抜けていく。急勾配区間はほぼなく、一列になって緩やかなコーナーを次々に抜けていける気持ちよいルート。ちなみに、この尾根沿いのルートは11月初旬から5月下旬までは冬季通行止めとなるので、チャレンジする時期には注意が必要だ。
サポートバスも僕らの背後を一定間隔で随行。仲間と隊列を組みながら、サポートバスを後ろに従えて走るなんて、まるでプロチームのような気分だ。
タープを広げてラグジュアリーなアウトドアランチ
爽快に高原を駆け抜けていると、広大な草原が広がるカヤの平高原が姿をあらわした。お待ちかねのランチ休憩。牧草地のど真ん中に停めたサイクルツアーサポートバス。やや離れたところでは同じく食事中の牛たちの姿も。こんな開放的な空間でランチタイムとは、最高という言葉しか出てこない。
ここは皆で手分けをしてランチの準備に取り掛かる。サポートバスにはアウトドアテーブルやイスが積んであり、もちろんサイクルラックもある。好きなタイミングで休憩やランチタイムにできることは嬉しい限り。この日は、今回のバスを予約するタイミングで「地元の方おすすめのお弁当」を教えていただきバスに準備していた。
地元食材を使用したお弁当は、地元のホテルが用意してくれたスペシャルランチボックス。こうして地元の食を楽しむことが出来れば、旅の思い出がひとつ増えるというもの。カフェやレストランに立ち寄るのもいいけれど、お店が少ない山岳コースライドでは、おいしいランチは贅沢な時間。ましてやコンビニ弁当で済ませるのとでは大違いだ。
仲間たちと満足度の高いランチ時間を終えたら、バスにあらかじめ積んでいたドリンクをボトルに追加。ちなみに、ドリンクはバスに備付けの冷蔵庫で冷やておける。ちなみに、先ほどゴンドラ乗車前にNagasaka cafeで購入した地ビールもこの中に。給水準備を完了させて、ふたたびサポートバスと共に走り出した。
ここからのルートは次のとおり。これまで走ってきた奥志賀高原栄線を走ったのち、北信州もみじわかばラインへと合流して志賀高原をめざす。野沢温泉からここまでの林道区間は、下りの勢いで上り返せるような緩やかなアップダウンなので、リズミカルに爽快な高原サイクリングを体験できる。また、北信州もみじわかばラインの名の通り、これからの季節は赤黄の美しいトンネルに変わり、また夏とは違った世界を楽しめるだろう。
バスのサポートを受けながら国道最高地点へ!
今回サイクルツアーサポートバスを利用した、全長およそ100kmのルートのフィナーレは国道292号。聞き覚えのあるサイクリストも多いはず。この日本国道最高地点へと続く志賀草津高原ルートは、誰もが一度はチャレンジしたい憧れの道だからだ。志賀高原から国道最高地点までは、およそ13kmのヒルクライム。
ここで一旦、サポートバスから最後のエナジーバーを受け取って登坂へと向かう。平均勾配は5%以下の緩やかなヒルクライムは、ついついペースアップしたくなる。5人は阿吽の呼吸で先頭交代しながら、ひとつひとつコーナーをクリアしていく。足は疲れ気味だが、僕ら専用のプライベートサポートバスの存在が今回のライドに特別な高揚感を与えてくれていることを実感する。
ゴールが近づくにつれ、山並みは霧に包まれていった。過去の経験から、ここ渋峠は10回訪れて3回晴れれば御の字。霧でも仕方がないのだ。過去に走ったダイナミックな九十九折りのマウンテンロードの記憶を呼び覚ましつつ、単色に覆われた渋峠のピークをめざした。
ゴールまで残り1kmを切り、サポートバスがゴール地点へと先回り。僕らのフィニッシュの瞬間を待ち構えてくれる粋な演出だ。
長野と群馬の県境にある渋峠のピークを過ぎて間もなく、うっすらとサポートバスのヘッドライトの光が確認できる。その横に日本国道最高地点の石碑を確認した。思わず、5人全員で歓喜の声と拳をあげながらフィニッシュへ。標高2,172mの国道最高地点は、何度訪れても特別な瞬間として記憶に残る。
峠のピークでビールで乾杯ができる!
特に今回はフィニッシュ直後に国道最高地点の石碑前での乾杯ビールという、この上ないフィナーレ。この発想は、今回のライドに参加するまで思いもしなかった。峠は上ったら下るもの。サイクリングの途中でアルコールを飲むのはご法度。そんな常識を持っていたら思いつくわけがない。
しかし、このサイクルツアーサポートバスの存在が良い意味でサイクリングの常識をぶち壊してくれた。信越自然郷アクティビティセンターが全国に先駆けてはじめたこのワンランク上のサイクリングサービスは、魅力に溢れていると思う。
渋峠を走っている時は濃霧に包まれていた山肌も、気づけば姿を現し最高のロケーションが広がっていた。100km走って、日本国道最高地点で躊躇なく飲むビールの味と言ったら……!
ただシンプルに頑張って走って、地元のカフェに立ち寄って楽しむ。そんな従来のスタイルも悪くはないけれど、サイクルツアーサポートバスを利用してのライドを一度体験してしまうと……。今後、信越エリアに走りに行く機会はプライベートも含めて多々あると思うので、その際はサイクルツアーサポートバスを利用するつもりだ。
全員が安心して楽しめるプライベートサポートバス
サイクルツアーサポートバスは、楽しむシンプルにロングライドをするだけの楽しみの幅をグッと広げてくれるものだった。自転車文化が根付き、メジャーなアクティビティとしてその遊び方も多様な欧米では、レジャーとしてのサイクリングを安心して楽しむためのサポートカーの存在やサポートカー付きのツアーがあるが、国内ではまだまだ貸出スタイルのプライベートサポートバスは数少ない。
ショップチームなどでサポートカーを持っているところもあるが、この場合は誰かしらサポートに徹することになる。でもサポートバスなら誰も犠牲になることなく仲間全員でサイクリングを楽しむことができる。
さらに、今回のライドを終えて魅力に感じたことは、サイクルツアーサポートバスはもちろん、信越エリアでのサイクリングを充実したものにしてくれる窓口となる信越自然郷アクティビティセンターの存在だった。まさに信越エリアのコンシェルジュ。はじめての土地に走りにいく時、推奨ルートがわからない場合が多いが、地元に詳しいガイドが体力レベルやライドコンセプトに応じてルートを提案してくれる。
さらに、信越という広域エリアを案内するため、各エリアごとに詳しいガイドを紹介してくれる。コースはもとより、おススメの飲食店や立ち寄りどころの情報提供や、プライベートの自転車旅をフルパッケージでコーディネートしてくれる。もちろん希望があればランチを本格バーベキューにしてもよいだろう。必要な調理キットの貸出しもある。
あらためて、約100km走った先の日本国道最高地点で仲間たちとグビっといくビールは至福だった。飲んだあとはそのままサポートバスに乗り込んで、この日宿泊する麓の湯田中温泉にあるサイクリストに優しい宿「HOTEL&RESORT きよみず望山荘」(※2024年11月現在休業中)へ向けて出発。ほろ酔いのなか、車中でこの日のライドの思い出話に花を咲かせ、改めてスペシャルなライドだったことを実感するのだった。
text:日向涼子、橋本謙司 photo:橋本謙司、安岡直輝 提供:信州いいやま観光局