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シマノがフラッグシップシューズ RC9をモデルチェンジしてから1年。そのテクノロジーを応用したミドルグレードのRC7とRC5が発表された。本特集ではRC9に次ぐセカンドグレードのRC7をインプレッションを通じ魅力に迫ろう。

S-PHYREのテクノロジーを多く採用するRC7

シマノ RC7(レッド)シマノ RC7(レッド) photo:Makoto AYANO
RC7はRC9のテクノロジーが多く採用され、フラッグシップの色を濃く受け継ぐレーシングシューズだ。継承されたテクノロジーの中でも重要なポイントの一つがサラウンドラップという包み込むようなアッパー構造。その言葉通り足を包み込むように作られたアッパーにより、快適なフィット感を実現する技術だ。

RC9のサラウンドラップアッパーは生地が土踏まずまで回り込む360°仕様だが、RC7ではアッパーが土踏まず部分まで巻き込まれてはいない。一方でソールカバーが土踏まず部分で細身の形状となっているため、その分だけアッパーが足裏の一部まで回り込んでいる。RC9ほど大胆ではないもののシマノのサラウンドラップ構造が進化していることがわかるだろう。

前足部にはワイヤーのルーティングを変えることが可能前足部にはワイヤーのルーティングを変えることが可能 アキレス腱周りをホールドできるクッションアキレス腱周りをホールドできるクッション

ソールカバーには歩きやすさを意識したディティールが設けられているソールカバーには歩きやすさを意識したディティールが設けられている ヒールカップは低めながら、確かなホールド力を実現しているヒールカップは低めながら、確かなホールド力を実現している

アッパーは前足部に軽量メッシュ/TPU、中足部以降は高密度シンセティックレザーが用いられている。さらにRC7では左右のアッパーが重なる前足部にメッシュを設け、フィット感の向上を狙っている。

クロージャーシステムもRC9を踏襲。足首側のBOAダイヤルを載せたベルトが足の甲を包み込む構造となっている。BOAダイヤルはL6で、前足部のワイヤールーティングを変更できるパワーゾーンシューレースガイドももちろん採用されている。

メッシュも配されフィット感を向上させているメッシュも配されフィット感を向上させている
ソールはRC9のようなミッドソール構造を採用し、ラスティングボードを廃止することで低スタックハイトを実現。ソールはカーボンソールとレジンプレートを組み合わせ、カーボンソールの周りを取り囲むようなソールカバーはヒールと一体の仕様だ。RC7ではこれらの内側にレジンプレートを設ける構造により、剛性指数10(RC9は12)を実現しながら、ソールの快適性を確保しているという。

RC7は低スタックハイトによるペダリング効率向上を目指しながらも、ほどよいソール剛性とされているため、プロスペックの高剛性ソールでは必要以上に疲れが溜まってしまうホビーレーサーに最適なシューズに進化を遂げている。

カーボンソールによって高い剛性を実現したカーボンソールによって高い剛性を実現した
そんなRC7をなるしまフレンドの藤野智一さんがインプレッション。RC9を愛用する藤野さんから見たRC7はどのような印象のシューズなのだろうか。

インプレッション by 藤野智一(なるしまフレンド)

インプレライダープロフィール

藤野智一(なるしまフレンド)藤野智一(なるしまフレンド) 藤野智一
なるしまフレンドの店長。バルセロナ五輪ロードレース代表、2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦績を持つ元プロレーサー。ブリヂストンアンカー在籍時にはフレームやタイヤの開発ライダーも務めた、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ人物。現在のシューズはシマノ S-PHYRE RC9を愛用中だ。

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「ハイエンドに近い履き心地ながら疲れにくい一足」 藤野智一(なるしまフレンド)

「RC7はレーシーなモデルだが履きやすいシューズ」藤野智一(なるしまフレンド)「RC7はレーシーなモデルだが履きやすいシューズ」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Makoto AYANO
CW編集部:RC7の全体的な印象を教えて下さい。

藤野:今はS-PHYRE RC9(RC902)を履いているんですけど、それと比べても履きやすいという印象です。普段から着用しているRC9と同じサイズを試してみましたが、RC7はレーシーなモデルでありながら窮屈なフィット感もなく、履きやすいです。

CW編集部:具体的にどのような部分がその履きやすさを実現していると思いますか。

藤野:前足部と踵周りのホールド感はしっかりしていて、ダンシングやスプリントをした時でも足がシューズ内でズレたり、アッパーがよれたりすることはありません。そのうえで、生地の肌当たりに柔らかさが感じられるので、履きやすいという印象がありますね。

「RC7(右)はRC9(左)よりもフィット感に余裕があります」藤野智一(なるしまフレンド)「RC7(右)はRC9(左)よりもフィット感に余裕があります」藤野智一(なるしまフレンド)
特にRC7の前足部はRC9よりも余裕がある印象です。RC9では爪が伸びていると生地に当たりタイトな印象を受けることもあるのですが、RC7の柔らかい生地の場合はそのような心配もありませんでした。

個人的な話ですが、RC9は踵のヒールカップが骨に干渉して、使い込んでいるうちに痛みの原因となってしまいました。今は工夫しながら履いているんですが、RC7はヒールカップがソフトで、そこも履きやすさに貢献しているのかと思います。ただ、レーシーに走りたいのであればRC9で間違いはないんですけどね。

使用している生地の伸び方もRC9とは違います。現行のRC9では以前のモデルと比べると生地が柔らかくなるアップデートが行われていますが、その点を考慮してもなおRC7の方がしなやかな履き心地であると思います。長時間履き続けても疲れにくいですし、シューズのホールド感がしっかりしているのでダンシングやスプリントの状況で前足部に力がかかる時に、アッパーがストレスや負担になっている感覚はありませんでした。

「ハイエンドに近い履き心地ながら、長時間履いていても疲れない」藤野智一(なるしまフレンド)「ハイエンドに近い履き心地ながら、長時間履いていても疲れない」藤野智一(なるしまフレンド)
CW編集部:アッパーが柔軟性に富むとのことですが、引き足の時などに影響はありますか。

藤野:BOAクロージャーでしっかりと足がホールドされているで、それは問題ありません。BOAクロージャーはワイヤーが長いルーティングの場合、ワイヤーの締め付けテンションにバラつきが出てしまいます。具体的にはダイヤルに近い部分が締まりやすく、遠いところは締まりにくいんです。なので、きちんと履く時はワイヤーを締め上げた後に一度その場で足踏みしてください。ワイヤーのテンションムラが無くなります。それで締め付けにゆとりができたら、再度締め増ししてください。

「前足部をタイトに締めたい時はワイヤールーティングをかえる」藤野智一(なるしまフレンド)「前足部をタイトに締めたい時はワイヤールーティングをかえる」藤野智一(なるしまフレンド)
CW編集部:RC7の場合は前足部のルーティングを変更できますが、これは使っていますか。

藤野:RC7のテストでは初期状態のフィット感が良かったので入れ替えていません。ただ、前作のRC9を履いていた時は使っているうちにアッパーが緩んできたので、しっかりとしたフィット感を得たい時は調整していましたよ。ですので、前足部をギュッと締め付けたい方はタイトなルーティングにすると良いでしょう。これに関しては好みですよね。

ミッドソール構造によりスタックハイトが低く作られるシマノ RC7ミッドソール構造によりスタックハイトが低く作られるシマノ RC7
CW編集部:ソール周りについてはいかがでしょうか。

藤野:単純な硬さであれば、RC9の方が剛性指数通り硬いです。RC7でも前足部には十分な硬さがあって、スプリントでパワーを受け止めてくれますね。対して、RC7のヒール部分はソフトな印象があり、足の裏が疲れにくいと思います。

選手によってはソールがしなったほうがスプリントが掛かると言って、剛性が高すぎるものを避けるため、あえてシューズのグレードを落とす人もいますよね。そういう方のニーズにも十分応えられると思いますし、レースに出ない方であれば十分マッチします。

「ソールは前足部に十分な硬さがありながら、踵周りはソフトな印象」藤野智一(なるしまフレンド)「ソールは前足部に十分な硬さがありながら、踵周りはソフトな印象」藤野智一(なるしまフレンド)
RC7もRC9同様にシームレスミッドソール構造を採用しており、低スタックハイトに作られているので、ペダリングのダイレクト感は感じられます。ただ、RC7はRC9に比べると少しスタックハイトが高いのかな? サドル高を調節せずにRC7を履いてライドしてみると、サドルが低く感じられました。

CW編集部:シマノのソールはクリート調整幅が広いことが特徴です。これはどのような恩恵があるのでしょうか。

藤野:まず、クリートを深い位置に装着できないブランドのシューズもあるので、そうした場合はお客さんのフィッティングをしていると困ることがあります。

ただ、クリートは深めにセットしたほうがペダリングしやすいと思うんですよ。スポーツバイクを初めてすぐの方は、ペダリングの時に踵が落ちやすいです。お店では初心者の方をフィッティングする場合、ペダリング時に踵が極端に下がってしまう場合はクリートポジションを深めにセットして安定感を見たりすることもあります。そういった時に調整幅が広いシューズはありがたいですし、ほとんどの方が恩恵を受けられると思います。

セカンドグレードとしてフラッグシップのテクノロジーを多く継承しているRC7セカンドグレードとしてフラッグシップのテクノロジーを多く継承しているRC7
CW編集部:RC7はどのようなサイクリストにおすすめできますか。

藤野:2万5千円という価格は、シマノのテクノロジーがふんだんに使われていて、高い性能を実現していることを考えると高価過ぎるということはありません。同グレード帯の他ブランドのシューズと比べても手頃な価格設定と言えます。おすすめしやすいです。

その上でハイエンドに近い履き心地とダイレクト感がありながら、長時間履き続けた時の疲れにくさ、タイトすぎず、しかし高いフィット感はアドバンテージがあると思います。エントリーグレードのシューズを履いていた方が2足目に選んでも良いですし、高品質で高性能なシューズが好みという方が選んでも満足できるでしょう。

シマノ RC7 スペック

シマノ RC7(ブラック、ホワイト、レッド)シマノ RC7(ブラック、ホワイト、レッド) photo:Makoto AYANO
ソール剛性10
重量255g(サイズ42)
スタンダードサイズ38~48(ハーフは39~43)
ワイドサイズ38~48(ハーフは39~43)
カラーレッド、ブラック、ホワイト
価格27,500円(税込)

フルモデルチェンジで上位グレードの技術を受け継いだRC5

シマノ RC5(ホワイト)シマノ RC5(ホワイト)
本ページでは同じタイミングでフルモデルチェンジを遂げたRC5もあわせて紹介しよう。上位モデル同様にサラウンドラップアッパーとシームレスミッドソール構造を採用したモデルであり、それらがアップデートされた。

最も大きな変化はアッパーに与えられた。上位グレードと同じように前足部をメッシュ生地、中足部以降はシンセティックレザー素材とすることで柔軟なフィット感と足をサポートする剛性の両立を実現した。

クロージャーシステムはBOA1つとベルクロが採用されているクロージャーシステムはBOA1つとベルクロが採用されている
アッパーが回り込むサラウンドラップ構造でフィット感を高めているアッパーが回り込むサラウンドラップ構造でフィット感を高めている
1BOA+1ベルクロという構成は変わらない一方、今までアッパー側にあったBOAダイヤルが、足首側のベルト上に移されたことが変更点。これはRC9とRC7ともに経た進化であり、RC5も順当にそのテクノロジーが与えられたことで、これまで以上の快適なフィット感を得ているはずだ。

シームレスミッドソールはこれまで通りの作り。ラスティングボードを廃止することで低スタックハイトを実現する構造で、ダイレクトかつ安定したペダリングを実現。ソール部分はカーボン強化ナイロンでできており、剛性指数は8を示している。レースモデルと比べソールの反発が小さく、ロングライドでも痛みが発生しにくい履き心地を目指している。

柔軟性に優れるクッションでカカトをホールドする柔軟性に優れるクッションでカカトをホールドする
シマノのハイエンドシューズに用いられるテクノロジーを体感できるミドルグレードとして、エントリーグレードから次のステップへ進みたい方にオススメの一足だ。

カーボン強化樹脂のソールを採用するカーボン強化樹脂のソールを採用する

シマノ RC5 スペック

シマノ RC5(ブラック、ホワイト、ブルー)シマノ RC5(ブラック、ホワイト、ブルー)
ソール剛性8
重量241g(サイズ42)
サイズ38~48
カラーブラック、ホワイト、ブルー
価格19,250円(税込)
提供:シマノ、制作:シクロワイアード編集部